No.77859

真・恋姫無双~魏・外史伝11

今回は早めに投稿しましたアンドレカンドレです。熱い部屋の中で、小説書いて、挿絵描いていました・・・。あ、でも今回は挿絵は無いですけどね。
というわけで、真・恋姫無双~魏・外史伝~第六章・前編。今回は、小蓮と明命以外の呉の人達が主に出てきます。ところで、みなさんは呉の武将の中で好きなのは誰でしょうか?ちなみに僕は、祭さんです。

2009-06-07 21:48:13 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:8255   閲覧ユーザー数:6846

第六章~朱色の君よ・前編~

 

 

  大男の暴動から二週間が過ぎた頃、建業・・。

 

  蜀・成都から冥琳、蓮華、穏達が戻って来ており、王宮にて建業で起きた出来事の

 一部始終を雪蓮から聞いていた。

  「・・・とまぁ、大体こんな感じかしら?」

  「その張本人の身元などは分かっておらぬのか?」

  一通り話終えた雪蓮に、疑問をぶつける冥琳。その質問に、雪蓮に代わり

 亞莎が答えた。

  「身元を割り出せる物を持っておらず、その上、身元そのものの損傷が酷いため

  人物の限定に時間が掛かりそうです。」

  今回の暴動事件、余りにも情報が不足し、事の原因が不明のままのため

 事件解決にいまだ至っていなかった。

  「・・・そうか。」

  「先程の話だと、その巨人さんをやっつけたのが北郷一刀さんだそうすね~。

  その北郷さんの居所とか・・・分かったんでしょうか?」

  冥琳に続き、穏が一刀の事について尋ねる。

  「現在、付近の調査を続けておりますが、これいった有力な情報は未だ得られて

  おりません。」

  今度は思春が答える。

  「そうなのよね~。一体どんな子なのかなって、少し楽しみだったのに・・・。

  空振りだものね。」

  「何か言ったか、雪蓮?」

  ぶつぶつと独り言を言うのに気が付いたのか、冥琳が雪蓮に問いただす。

  「べっつに~♪」

  そう言って、雪蓮ははぐらかした。

  「と・こ・ろ・で・・・、蓮華、あなたさっきから黙り込んでるけど、どうかしたの?」

  話を変えようと、先程から発言せず、静観している蓮華に話しかける。

  「・・・・・・。」

  いきなり振られたにもかかわらず、蓮華は黙ったまま雪蓮の方を見ている。

  「蓮華様・・・?」

  そんな彼女に、穏は心配気味に彼女の名を呼ぶ。

  「・・・正直な所を言わせてもらいますが、姉様のお話・・・あまりに絵空事。

  私は・・・その話全てを鵜呑みする事を出来かねております。」

  それは無論、冥琳と穏とて同じ思いではあった。

  「でしょうね・・・。私だって、この話を全て信じているわけじゃないわ。」

  どうやら雪蓮も同様であったようだ・・・。

  「シャオや明命だけがそう言っているなら・・・、夢か何かと流せるでしょうよ。

  でも、他の兵達皆も言ってるんだから、そのまま流す事は出来ないでしょ?」

  「はぁ・・・。」

  「事実がどうであれ、建業の街が、ある原因で滅茶苦茶にされてしまった事は確かな事。

  一刻も早く、犯人をあぶり出してそれ相応の報いを受けて貰うわ。」

  「はい・・・。」

  雪蓮の言葉を聞き終えた蓮華は、一応の納得をする。

  「そういえば・・・、華琳殿達は如何した?確かお前と共に建業に来ているはずだが?」

  「ああ、華琳達ね。そう言えば忘れてた。・・・実はね、華琳達と一緒に建業に

  戻ってきて、その少し後に・・・。」

  悪びれた様子も無く、冥琳の問いに答える。

  

  「華琳様、一体書状には、何が書かれていたのでしょうか?」

  秋蘭は、華琳に尋ねる。

  そして、華琳の口が開く。

  「・・・霞の報告では、五胡が魏領北方の砦を襲撃されて突破されたそうよ。数はおよそ五十万。」

  「「「っ!!!」」」

  春蘭、秋蘭、桂花は表情を硬くする。

  「今、冀州中山まで侵攻して、霞は常山付近で防衛線を張ってるわ。」

  「な、何ですと?!」

  「いくら霞でも、それだけの数を一度には対応できるまい・・・。」

  霞の部隊は、主に奇襲を前提に構成された少数精鋭部隊である。数の暴力の前には無力とかす。

  「でしょうね。桂花、許昌にはどれだけの戦力を残しているの?」

  「魏に残存する兵力はおよそ二十万。各防衛拠点から集めれば、三十万程かと。」

  「確かに霞一人で、それだけの兵力を扱える技術は持ち合わせてはいないでしょう。

  私達も急ぎ、許昌に戻るわ!」

  「ですが、華琳様!北郷は、北郷はどうするのですか!?」

  「一刀はここにはいないわ・・・。」

  「なっ・・・!?」

  華琳の冷めた言葉に驚きを隠せない春蘭。

  「そうなのでしょう、小蓮?」

  「・・・うん。」

  小蓮のその言葉に全てを理解した華琳は、雪蓮の方に顔を向ける。

  「雪蓮・・・。」

  「ええ、北郷一刀の方は私達の方で行方を追ってあげるわ。だから華琳・・・、

  急いぎなさい。自分の国を守るために!」

  「無論よ。・・・聞いての通りよ、皆!一刀は雪蓮達に任せ、私達は野蛮な五胡から自分達の国

  を守るわよ!」

  「「「御意!」」」

  華琳達は、魏北方から侵攻して来た五胡の撃退するべく、急ぎ許昌へと戻っていった。

 

  「五胡が魏領を攻めるか・・・?」

  「急にどうしたんでしょうね~?」

  五胡が魏領を攻めること自体は珍しい。普段は蜀の西方、または涼州から侵攻してくる。

 だが、今回の場合では魏領の北方から攻めてくる事は今までにない事態であった。

  「さあてね。連中が何を考えているのかなんて、私だって分からないわ。分かろうとも

  思わないけどね。」

  「姉様、曹操達に手を貸さなくてよろしかったのでしょうか?」

  「問題無いでしょうよ。それに仮に申し入れしたって華琳だったら、必要ないって、

  断るでしょうしね。」

  「それもそうですね・・・。」

  そんな時、王宮に一人の兵が入って来る。

  「孫策様、西方に向かわせた部隊から気になる報告が・・・!」

  「北郷一刀かしら?」

  西方に向かわせた者達には、北郷一刀の捜索を命じていた。

  「いえ、さすがにそこまでは・・・。ですが西方の村々で不審な人物の複数の目撃が

  確認できたとの報告が・・・。」

  「不審人物ねぇ・・・。他には?」

  「はっ。実は、その目撃された場所の近くで、同時に行方不明者が出ているとの事です。」

  「不審人物に行方不明者?何とも妙な組み合わせねぇ・・・。あなた達、どう思う?」

  雪蓮は、軍師達から意見を仰ぐ。

  「さて・・・、それだけの報告では北郷一刀が関係しているか、それとも無関係の別件なのか

  図りえないわね。」

  結論付けるには、さらに情報が必要だという軍師・周喩。

  「ひょっとしたら、建業を襲った巨人さんに関係する事かもしれませんしね~。」

  別の可能性を提示する軍師・陸遜。

  「その真偽を図るためには、情報源の元に向かい、さらに調査を進める必要があるかと。」

  情報を集めるべく、現場の調査をするべきだという軍師・呂蒙。

  「そうね。今の所、私達に出来そうな事はそれしかなさそうだしね。」

  三人の軍師の言葉から、結論に至る雪蓮。

  「あなた、今すぐ報告者をここに連れて来て頂戴。さらに詳しい事を聞きたいから。」

  「御意。」

  兵は、すぐさま王宮から去る。

  「そ・れ・じゃ・あ・・・、誰に行って貰おうかしら?私が行っても良いんだけど・・・。」

  「悪いが・・・お前には呉の王として、ここに居てもらなくてはならない。」

  「ですよね~。」

  幼い頃からの付き合いである親友からの突っ込みにへこむ呉の王。

  「では、私が行きます。」

  そう言うと、前に一歩出る蓮華。

  「その理由は?」

  「先程も述べたように・・・今回の件、私には理解できない事ばかり。故に私自身を納得させる

  ためにも、自分のこの目でその真偽を図りたいのです。」

  「そ、あなたがそう言うのならそうするといいわ。ただそうなると、蓮華だけを行かせる

  のは少し心許ないから・・・。」

  そう言いながら、雪蓮は思春の方を見る。それに気づいたのか、思春もその視線を交える。

  「思春、悪いんだけど蓮華に付き合ってくれるかしら?」

  「承知いたしました。甘興覇、必ずや蓮華様をお守りいたします。」

  「ありがとう、思春。それじゃ頼んだわよ、蓮華。」

  「「御意!」」

 

  「ふむふむ、成程・・・。やっぱりこれ以上『情報』を組み込んじゃうと建業の時みたいに

  暴走しちゃうのか・・・。」

  手に持つ資料読みながら、愚痴るように言う。

  「じゃあ、この辺は少し組み込む量を個人事に調整していく事になるかな?」

  そう言って、辺りに積まれている資料の山を漁る。

  「他の二人も頑張っているようだし、僕もそれに負けないように頑張らないといけないなぁ♪」

  どことなく嬉しそうに言う・・・。そんな時、誰かが近づいてくる。

  「・・・ん?あれ、どうしたの?」

  「・・・・・・・・・。」

  その人物が話しかける。

  「えぇー!?逃げ出しちゃったの?なにやっているんだよ~・・・!」

  「・・・・・・・・・。」

  「いや、だって僕はこの通り資料の山におぼれていて、それどころじゃないし・・・。」

  「・・・・・・・・・。」

  「ん、何?まだ話があるの?」

  「・・・・・・。」

  「え、本当!?孫権ちゃんがこの近くに来てるの?」

  「・・・・・・・・・。」

  「そっか・・・。あの子がねぇ~。・・・何て言うのかな、ちょっと運命を感じて来るよ。」

  「・・・。」

  「ちょ・・・!そこまでいう!?」

  「・・・・・・・・・。」

  「・・・まぁ、いいよ。実は、そろそろ実用も兼ねて実践投入してみようと思っていた所だし。

  その相手としては、申し分ないよね~♪」

  そう言うと、立ち上がる。

  「じゃあ、用意を手伝ってくれ。彼女を盛大に歓迎してやろうよ!あっははははははは!!!」

  高らかに声をあげて笑うその姿は、無邪気な子供のようであった。残酷な程までに・・・。


 
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