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新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第044話

投稿です。
今回は一刀達が二年の修行をしている間に、如何にして重昌達は馬騰より西涼を託されたかの話です。
また今回は序章ですので、あと何話か続きます。
音々音のデレシーンもあります。
そして以前「一刀の話は?」的なことを読者に言われましたが、少なくとも影村軍が曹操や劉備とぶつかるまでは大々的にないんですよね。

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2015-05-11 19:58:08 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1165   閲覧ユーザー数:1122

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第044話「重昌達の二年間・(ハナ)

「ふぅ~~。いい湯だ」

現在、重昌は紅音と葵を連れて自宅の露天風呂にて一日の汗を流していた。

因みに影村邸の湯船は二つあり、一つは檜を存分に使った檜風呂。

湯船ごとの取り外しが可能であり、夏場はカビが生えやすい風呂場に備え、それを防ぐために、外で乾かすことを前提においた代物だ。

もう一つは石造りの露天風呂。

重昌が私財を使いに使って自宅に温泉を掘りだした。

実を言うと、長安の影村邸から城までの距離は少し離れている。

それはこの温泉を見つける為であり、出来うる限りは勤務地である城の近くに居を構えたかったが、温泉の地水を見つけた頃には既に自宅から少し遠い位置になってしまっていたのだ。

月明かりを酒の肴にして、夜であるので、周りを灯す灯篭がより一層雰囲気を醸し出す。

湯船には重昌・紅音・葵が浸かっており、彼の右手には紅音がモジモジと体を細めて委縮し、左手には葵が惜しげも無くその豊満なバストを露わにして、頭にタオルを乗せてくつろいでいた。

「……どうした紅音。お互いに裸は見せ合った仲ではないか。今更恥ずかしがることもあるまいて」

「そうさ。今日は恋義姉(ねぇ)達が重義兄(にぃ)の独占を許してくれたんだ。ここで甘えておかなきゃ損ってもんだよ」

葵は彼のその鍛え上げられた胸元に飛び込み、年には似合わぬ猫撫での様な声を挙げながら擦り寄ってくる。

それに対して紅音は、まだ緊張が取れないのか、未だにただ自身の肩に重昌の片手を置かれているだけである。

そんな緊張している紅音を見かねて、重昌は強引に自分の所に抱き寄せて、彼女もそれに抵抗することも無く引き寄せられる。

紅音の肉体も葵とは負けず劣らずの身体つきをしており、普段の服装のせいで着痩せしていたのか、その生意気なバストに加え、しっかりと曲線の入ったクビレ。安定性のよいヒップに魅せられる。

胸から腰にかけて重昌に密着し、彼女もまた重昌の胸板にもたれかかることが出来て嬉し恥ずかしいのか、より一層頬を赤く染める。

彼と足をからめようと足を動かすも、そこにはあるはずのモノがない。

彼女は忘れていたが、重昌の両足は義足なのだ。

彼の背中の先には外された義足があり、よく手入れされているのか、物を傷ませている様子は全くうかがえない。

重昌の体の下半身から上半身に視線を順に向けていくと、かつては豪脚を言わしていたであろう鍛え上げられた足。いつも自分を閨にて泣かせている立派なソレから、同じく鍛え上げられた腹筋胸筋。

お腹から胸にかけてはいくつもの傷があり、軽い切傷や深く掘られた致命傷までと、ありとあらゆる傷があり。その傷が哀愁を思わせると同時に何処か逞しさも感じるのだ。

だがただ重昌の肉体だけを凝視していれば、ただの変態に成り下がってしまいかねないので、彼女は話をふる。

「そ、そういえば。重昌様と葵が出会った時の馴初めなど聞いた事がないのですけれども」

突然のその発言に二人は肝を冷やしたのか『ギョッ』っとした顔をすると、紅音は発言を間違えたと思い、狼狽しながら「忘れて下さい」っと修正を入れる。

「………いや、今夜は月が綺麗だし。葵、月語りといこうか」

「そうさね。私と重義兄が出会ったのは大体2年以上前になるかね――」

 

それは一刀や重昌達がこの外史に来て一ヶ月と過ぎた時の事である。

既に重昌一行は西涼の隴西に留まり、その地で起きた部族の争いに一枚噛んで彼らを言葉で鎮め、それを聞いた涼州刺史;馬騰の目に止まり彼女に士官したのだ。

馬騰は常々、自軍の人材不足に頭を悩ませていた。

夫には先立たれて、先代である彼女の父馬平の頃より仕えていた者達も既に隠居してしまい何人かは亡くなっている。

残った者達は娘の馬超と姪の馬岱だけである。

娘の馬超は将としては優秀であり、兵を率いることと武に関しては自分の血を濃く受け継いでいることが窺えたが、如何せん性格が脳筋である為に人を率いる事や政事に関して才能は乏しい。

姪の馬岱は娘程脳筋度合が低く、突進思考の猪武者な娘とは違い、あの手この手で敵を絡めて翻弄する武が得意である。

それは敵を挑発する時などにも大いに役に立っているのだが、やはり根は脳筋であるのか政事に関しては娘よりはマシだが不得手らしい。

どうして自分も含め馬家には脳筋の者しか生まれないのか。

いや、全くと言って生まれなかったと言えば嘘になる。

他にも馬鉄・馬休という娘もおり、二人も政事は苦手と言う割に、長女よりは出来ていたので頑張ってくれていたが、突然二人揃って修業の旅に出ると言い出したのだ。

『可愛い者には旅をさせよ』っという言葉を何処かで聞いたことがあり。喜んで旅に行かせたが、二人の抜けた穴は大きく、政事に関しては案件が溜まっていく一方である。

天水の元領主で、今は自分の子に継がせて隠居している友人の董君雅に相談を持ちかけると、文官志望の者を二人程寄越してくれて、時が来たら返す条件で一時的に借りた。

賈駆と陳宮と名乗る娘二人であり、最初は何故こんな娘っ子を寄越したものかとも思ったが、予想は大きく外れてこの二人が働く働く。

次々と溜まっていった案件を処理していってくれて助かったが、しかし所詮は借りてきた人材であり部下ではない。

重要案件に関しては関係者が目を通さなければならなく、簡単な案件に関しては彼女達に任せて、馬家の人間は重要案件の処理に取り掛かったのだが、そこでまた馬超がやらかしてしまう。

“関係者で処理”っと言われている案件を、よりにもよって賈駆と陳宮に意見を求めたのだ。

これには流石の彼女達も顔を引き攣り、馬騰も烈火の如く馬超に雷を落とした。

そんなこともあり頭を痛めていると、西涼の部族間同士の争いがあったという。

彼女は痛い頭を押さえながらも部族達の仲裁に向かったが、そこでは既に争いの様子は全くなく、数人の旅の浪人によって鎮められたというらしい。

しかも頭が固い涼州の部族を力ではなく言葉で。こういった人材を求めていた馬騰は、直ぐにその者達と会い、なんとか自分たちの幕下に入ってくれるよう説得したが、彼らはあっさり了承。

こうした形で重昌は迎えられたのだが、その重昌達も馬騰の期待を想像以上の働きをする。

謙信は統率力に大変特化しており、その武も折り紙付き。

信廉は隠密の代名詞的な存在であるかのように、何度も隙を突かれては彼女の気を悟ることは出来なかった。

そしてなんといっても重昌の妻である恋歌と通綱である。

重昌の側室である柑奈と言う真名を持つ通綱という将は、武に関してはあらゆる点において隙はなく。それこそあらゆる武将の完成系と言っても過言ではなかった。

さらに重昌の正妻である恋歌。もし武神という者がいるのであれば彼女の事をいうのであろう。武においてあらゆることを極めているのか、対峙した瞬間に生まれて初めて”負ける”っと感じた。

もっとも素晴らしいのは、今言った彼女達。政事に関してもかなり優秀である。

謙信は話に聞くと元は一国の主の経験もあるらしく、信廉も一国の主の影武者として働いていた時期もあり、その時自身の主の代わりに政事を行っていたそうだ。

通綱と恋歌も政事は苦手と本人たちはぼやいていたが、娘の馬超の様な脳筋的な苦手ではなく、与えられた以上の事をやってくれている為、文官でも十分やれるほどである。

最後に彼女達の主である影村であるが、常識を逸脱していた。

聞くところによると彼は今挙げた者達の先生であるらしい。

それを試すとなかなかどうして、優秀過ぎた。

心技体に続き統力知の全てにおいて普通の文官武官では計り知れないのだ。

「武に関しては恋歌。統率に関しては虎に適わないけどね」っと笑いながら話していたが、それでも何故この様な人物が無名であり、さらに自分の下に来てくれたのか馬騰は大いに頭を捻った。

不気味さを感じていないと言えば嘘にもなるだろうが、しかし何と言っても今は味方であるので、深いこと考えず、今のこの状況に感謝することにしたのだ。

 

「先生、この案件なのですが……」

眼鏡が似合う知的な少女賈駆は、重昌を先生と呼ぶ。

話しを聞くと、彼女と陳宮は彼の仕事ぶりに惹かれて弟子入りを懇願したらしい。

勿論最初の方はいざこざもあった。

客将とはいえ後から来た重昌に何かと指摘されて、しかもそれが全て理に適っていることにいらだちを覚えたらしい。

賈駆と陳宮は知恵比べとばかりに将棋にて一戦交えたが完敗してしまい、そしていつの間にやら重昌の話術により取り込まれて、今ではすっかり従順に従ってしまっている。

 

「おい柑奈!!もう一度勝負しろ!!」

庭先では馬超……翠が通綱である柑奈に槍を構えて勝負をしかけていた。

「スミマセン。今日は都合が悪いのです」

「なんだと!?勝負を逃げるというのか!!」

「いえ、そういう訳ではなくてですね。今日は少し腰と股の方が痛くてですね……」

「……ん?腰と股」

柑奈は「ほう」っと小さなため息を吐くと、頬を染めながら片手を自分の頬に当てる。

「そうです。昨日、私と重昌様は非番でしたよね」

「そうだが、それがどうか………ッ!!?」

柑奈のいう事の意味をようやく悟った瞬間、翠の顔は見る見る赤くなり、言葉が詰まり始める。

「せっかくの二人の休日でしたので、重昌様は朝から晩まで私を求めて下さいました。それはもう腰が抜けるくらい………ああ――」

目を瞑ってその時の光景を思い出すように、柑奈は恍惚な表情を浮かべるが、対する翠は恥ずかしさの余り声にならない言語を話し出す。

「私が朝から精の付く物を作っている際に、重昌様は私を後ろからそっと抱きしめ、そうしてそのまま私の衣服にそのまま手を入り込ませ、私の乳房に手をかけました。『お止め下さい』と僅かに抵抗を示しましたが、その言葉は唇で遮られ、そのまま台所で――」

「わーーわーーわーー!!判った!!今日都合が悪いことは判ったから!!判ったからぁぁぁぁっ!!」

こうして純粋無垢な乙女の翠はその場を逃げるように退散していく。

「あら残念。台所から寝室に場所を移して、恋歌様が帰られた後の三人での愛し合いまで聞いて欲しかったのですが……」

柑奈は心底残念そうな顔をしながら翠の逃げ行く背中を見つめていた。

 

そして場所を街に移すと――

「ねぇ虎さん。お姉さまが女の子らしくなる方法は何かない?」

馬岱……蒲公英は虎と三葉を引き連れて、街のオープンテラス的な所で女子会を開いており、彼女は虎と三葉に恋の手ほどきを訪ねていた。

「昔から伯母様に武芸事ばかりさせられていたから、女の子らしいところが一つも無いの。だから美人なのに男がよりつかないのよ」

蒲公英はテラスで頼んだお茶の入ったコップを両手で持ち、静かにすする様にして飲みながら二人に愚痴る。

「まぁ、かくいう私も言うほど女らしくないのだが……」

「「何言っているの!!」」

虎がそう呟くと、蒲公英と三葉は声を揃えて声を発した。

「虎さんこそ女性の鏡みたいな存在じゃない!!周りへの気配りは上手だし、お淑やかだし」

「い、いや。周りの気配りや作法は姉上と亡き父上の教えに基づいているからであって。決して狙ってやっているわけでは……」

「虎ちゃん。背は高いし胸は大きいし髪は綺麗だし、いったいどこが女らしくないの」

虎とは対照的な立場にある三葉は、その髪と胸を羨むように眺める。

「い、いや、しかし、実際に男に言い寄られたことなど。そういう意味では一刀が初めての相手だが……」

彼女がしどろもじりしていると、三葉と蒲公英は揃ってため息を吐く。

「虎さんは綺麗過ぎて近寄り難いの!!それこそ何か神秘的な物が感じるぐらいに」

日ノ本の国では毘沙門天の化身と称えられた虎……上杉謙信。

毘沙門は戦いの神と言われているが、実はその性別は女性であるとも言われているのだ。

「知ってる?虎さんが来てからウチでは密かに『謙信愛好会』が出来ていることを」

「な、なんだそれは?そんな事されても困るぞ!!だ、だって、私には、ほら……一刀がいるし――」

頬を赤く染め、体をモジモジさせる虎の姿に、三葉と蒲公英は白い目で虎を見つめている。

「……ねぇ三葉ちゃん。一刀さんて三葉ちゃんのお兄さんよね?一体どんな人なの?」

蒲公英は興味津々に一刀の事を三葉に尋ねた。

「唐変木、天然ジゴロ、女性泣かせ、言い出せばキリがない」

「……そんなに?」

「そうです。いつも『自分はモテない』って呟きながら落ち込んでいる癖に、その毒牙にかかった女性は数知れず。判らぬのは本人だけ!!」

「三葉ちゃんもそうなのね?」

蒲公英にそう言われると、三葉は机に潰れる衝動に耐え切れなくなってしまった。

戦乱の日ノ本にて兄と再会し、思いを告げてそういった関係になれたはいいが、ライバルは多すぎて今もまだ継続的に増えている状況に肩の疲れが抜けたのだ。

「まぁまぁ。でもそんなお兄さんなら一度会ってみたいな」

「……駄目だよ。蒲公英ちゃんまで加わることになっちゃうよ」

「でもそれはそれで面白そうだけどな」

「なぁ……一体私たちは何の話をしていたんだ?」

 

またとある装飾品・洋服売り場では――

「あら可愛いじゃないねねちゃん。絶対こっちも似合うわよ」

「そ、そうなのですか?しかしねねは、こんなひらひらは着たことがないのです」

着替え室のカーテンが開かれ、現れた陳宮……音々音の姿は、いつもの全身黒のホットパンツに身の丈ギリギリまでのジャケット、額の中心にパンダのロゴが入った帽子ではなく、全身が白のフリルの付いたドレスである。

「あらあらまるでお人形さんの様ね。この姿を見たら全員が可愛いっていうこと間違いないわね」

「ほ、本当なのですか?」

音々音を愛でる恋歌はそれこそ必要以上に彼女を褒めて褒め殺し、音々音も満更ではないような感じで、フリルの裾を持って回ってみたりし、そんな姿を見た恋歌はそれこそ自身の娘の様に可愛がり、次の服次の服と着せ替えを楽しんでいた。

帰り道。既に日は傾けかけて夕焼け空が見えており、軽く街で夕食を済ませる。

だが恋歌がトイレに立った際に、音々音は疲れていたのか、机に俯せになり寝てしまっていた。

恋歌は音々音を背中に背負い、その背中に感じる温かさを楽しんでいた。

「そういえば、昌勝や雪、幸歌もこうやって背負ったわね」

挙げられたのは重昌と自分の子供達。

長女の雪を産んでから、物心ついた雪や昌勝に対して最初、恋歌は厳しく躾け、重昌はそんな雪や昌勝を優しくつつんだが、恋歌の父親である為景の死により立場は逆転した。

重昌の必要以上の英才教育はかつての自分以上であり、泣く雪と昌勝を慰めるのは自分の立場に変わった。

彼らが家出をする度に、こうして自分が背中に背負って連れて帰ったものであり。年を重ねていくごとに二人の子は逞しく成長して、そういった機会も無くなった。

他に二人で育てた養子も大きく成長し、最終的には自分が背負われる立場になるのかなと期待はしていたが、しかし背負う機会が無くなる寂しさも何処かにあったのだ。

「……う~ん。恋殿ぉ~」

恋と言うのは、彼女の主である呂布のことである。

呂布は元々丁原に仕える将であったが、十常侍への賄賂を丁原が拒否した為に、丁原は罪人として都に送られた。

そこで丁原は友人である董君雅に呂布を託して都に昇り、董君雅は喜んで呂布を迎え入れ、自身の娘の董卓の護衛として付けた。

それからしばらく経ち、呂布は任務で賊の討伐に向かった際、生き倒れになっている少女を発見。

それが陳宮……音々音である。

彼女は自分の村が賊に襲われた際、命辛々逃げてきたものの、体力の消耗が激しく、董君雅の所に着く前に力尽きたのだ。

それから呂布は音々音の面倒を見て行くうちに、董君雅が音々音を文官として教育。

予想に反して音々音は飲み込みが早かったが、欠点は自身の意見に自信を持ち過ぎる事。

董君雅の陣営でも音々音が言う事を聞くのは、教育を施してくれた董君雅。自身を拾ってくれた呂布。そして呂布の主であり、自分に親しくしてくれる董卓だけである。

自分の意見が絶対に正しい信念の下。もっと周りの意見も飲み込めば必ず大きく成長する可能性を秘めている音々音に董君雅は頭を悩ませたが、そんな時に舞い込んできた友人馬騰の話である。

もっと音々音に経験を積ませたいという親心により、彼女を馬騰の下に送り込んだが、それでも彼女は頑固で、あまり馬騰の話を聞かなく、最終的にはいつも馬騰に締め上げられ、ようやく折れる感じなのだ。

困った馬騰に飛んで来た朗報は、重昌の涼州軍加入である。

馬騰は彼女を重昌に預け、また彼も馬騰の期待に応える様に音々音を締めて締め上げる様に英才教育を施している現状で、ようやく最近になり音々音の方が折れ初めて、皆の意見を聞き入れるようになったのだ。

「う~~ん。先生ぃ~~、その課題の量は多すぎるのですぅ」

音々音の寝言に恋歌はクスリと笑い、そして昔の雪や昌勝のことも思い出したのだ。

すると音々音の体はブルブル震えだし、恋歌の背中にすがる様に擦り寄る。

「………うぅ、父様。……母様――」

そう。彼女の両親は村の賊襲来の際に殺されている。

そんな中、身寄りも無い彼女を拾った呂布。

彼女を育ててくれた董君雅。親身に接してくれた董卓だけが頼りであり、根は自分の意見を絶対に曲げない頑固者ではなく、ただ自信がないのだ。

自信がないからこそ強がり、自信がないからこそ自分の意見を絶対に変えないのだ。

もしも「出来ない」っと一言でも言ってしまうと、本当に出来なくなる恐れがあり、また自分が不要と思われ呂布達から見捨てられるのではないかという不安が心のどこかにあったのだ。

恋歌の背中を涙で濡らす音々音を、彼女はクスリと笑って軽く背負う形を直す様に背中を揺らした。

「そうですよ~~。貴女の母さんはここにいますよ~~」

すると恋歌は子守唄を口ずさんだ。

かつては若き日に重昌の心を一瞬にして掴んだその美声。

子供を産んでからは母親として毎日子守唄を口ずさみ、今その子守唄は音々音に歌われている愛の歌。

街行く人たちは振り向いてその恋歌の背中を見つめ。先程まで夢に怯えていた音々音は穏やかな吐息をたてて恋歌の背中で眠っていた。

 


 
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