No.776441

艦隊 真・恋姫無双 55話目(居酒屋 前編)

いたさん

申し訳ありません。 今回、話が長すぎて、二回に分けて投稿します。 此方が前編。

2015-05-10 13:57:05 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1114   閲覧ユーザー数:1010

【 第二回戦 始まりの件 】

 

〖 洛陽 居酒屋 鳳翔 店内 にて 〗

 

華琳「………そうなの。 機転を利かして言い包め(くるめ)、相手を謀る(たばかる)話術を『頓知』と、天の国では称するのね?」

 

鳳翔「はい……だから、私が暗殺拳なんて怖いモノ……会得しているワケないじゃないですか! だから、今の勝負は無効と云う事で………」

 

華琳「無効? 何を寝ぼけた事を言っているのよ!」

 

鳳翔「ですが────」

 

華琳「いいこと? この曹孟徳を術策で出し抜くなんて……この大陸にそうは居ないわ! それなのに……正々堂々と戦って破れた私を、お情けで勝ちを譲られた愚か者にする気!? それは……最大の侮辱よ!!!」

 

鳳翔「────────!」

 

華琳「……私の認識が甘かった……ただ、それだけの事よ。 ならば、次こそ──勝負に勝たせて貰う! 今度は、この曹孟徳の知謀──とくと思い知らせてあげるわッ!! 覚悟なさい! 鳳翔────ッ!!」

 

鳳翔「ならば───次で、勝負を決めますッ!」

 

ーーー

ーーー

ーー★

 

青葉「皆さん……大変長らくお待ちどう様でした! 双方、準備が出来ましたので、お集まり下さい~!! それから、一回戦の勝負は、曹孟徳側より有効判定の申し出がありましたので、このまま継続しますぅ!!」

 

『うわぁあああ────ッ!!』

 

霧島「……流石に『非常の人、超世の傑』と評された曹孟徳ですね。 如何なる負けをも……負けと認める潔い人柄です!」

 

青葉「ジィ─────」

 

霧島「コ、コホン! あ、あれは司令が教えて下さった事を、少し勘違いしていただけです! わ、私が言わなくても……勝敗は既に鳳翔さんに傾いていましたから! 本当ですよ!?」

 

青葉「………では、二回戦に移りたいと思います! お題は『彫刻』……彫って頂くのは、何でも構いません! 動物、植物、人物……公共性や品位を損なわないモノでお願いします! まぁ……お二人ですから大丈夫ですよね?」

 

華琳「フッ! この私が……そのような低俗なモノ、作製するとでも?」

 

鳳翔「────料理人は、場所、立場、時刻を弁えます(わきまえます)!」

 

青葉「お二人共、宣言ありがとうございます!」

 

霧島「何となく──金剛お姉さまを思い出しますね!」

 

青葉「材料は、此方で用意してありま……」

 

華琳「不要よ───孫子兵法、虚実編に曰わく! 『善く戦う者は、人を致して人に致されず』……私が先に提案して、何も用意して居なかったと思う?」

 

青葉「えっ? で、では……既に材料を持ち込んでぇ!?」

 

華琳「既に準備はしてあるわよ。 それに、規則は定めてあるけど、私たちが来た時点で決定したもの。 この行為……当然有効よね、鳳翔?」

 

青葉「鳳翔さん! そこのとこ、どうなんですか!?」

 

鳳翔「───私も異論ありません!」

 

『おぉおおおお────ッ!!』

 

青葉「おぉおおおっと、鳳翔が受けて立ったぁあああ────ッ!! こ、これは、果たしてどうなるか、全く予想がつきませぇえええん!!」

 

ーーー

 

霧島「真っ正面から、才で勝負する曹孟徳! かたや……劣勢を機転で覆す鳳翔さん! ふふっ! ふふふっ……滾るわ! 私の熱き血潮! あの日、あの場所で撃ちあった至高の戦い! 私も是非ぃ『ガシィ!』───えッ!?」

 

北上「はいはい……あんまり熱くなると、皆に迷惑だからねぇ~? 大井っち、反対側から霧島さんを運ぶよぉ~!!」

 

大井「北上さんが、他の女に触れるのは嫌だけど……しょうがないわね。 早く終わらせて、北上さんと二人っきりになりたいから……」

 

霧島「ちょ、ちょっと!? これからが面白くなるのに! 放して、放してぇ、放せぇえええッッッ!!」

 

北上「やかましいねぇ~! 大井っち、酸素魚雷ある? 霧島さんに突っ込んでおいてよぉ~。 あれぇ……何を恥ずかしがってるのぉ?」

 

ーーー

ーー

ーーー

 

青葉「えぇ~と、急遽ですが……霧島さんが用事が出来て、退室されたため、新たな解説者になります! どぉぞ! この方ですぅ!!」

 

天津風「陽炎型 9番艦 駆逐艦 天津風よ! し、失礼ねッ! 私は、加賀や赤城たちと同じ……○○鎮守府から避難した古参艦なんだから! 出番が少なくて、忘れてたですってぇ!? 全く信じらんないッ! ねぇ、連装砲君!!」

 

青葉「えぇ~と……恐縮ですが天津風さん。 連装砲君が可愛いのは理解できますが、前の戦いについてぇ、解説して貰えませんか~?」

 

天津風「な、何よ! 私から連装砲君を狙っているの! 誰がアンタなんかに渡すもんですかぁ───ッ!!」

 

青葉「そうじゃないんですよ~! 勝負の解説をお願いしたいんです! 観客の皆さんが、こぉんなにぃい、勝負が始まるのを待っているんですよぉ!?」

 

天津風「えっ? え~と……な、何なのぉこの人数ぅ! 聞いてた数より多いじゃない! も、もう早く言いなさいよ! 髪の吹き流しの位置が、曲がったままなのにッ! 早く直さなきゃ───!!」

 

青葉「天津風さぁ───んッッッ!!!」

 

天津風「うっさい!! 島風みたいに近付くなぁ! しつこい奴は大嫌いよ!!!」プンッ!

 

『ガヤガヤ──ガヤガヤ────』

 

青葉「ああぁぁもぅ……武蔵さ~ん! 勝負を始めちゃて下さい! お二人の集中力が萎えちゃいますし、観客の目がぁ怖いんですよぉおおおッ!!」

 

ーーー

ーーー

ーー★

 

武蔵「うむっ……心得た。 双方、準備は良いか? 今回の戦いは長丁場の一刻(約二時間)だ。 途中の退席があれば、この武蔵に申せばいい。 それと、不正は……するなよ? 敵味方無しに容赦などせんからな?」

 

華琳「私には秘策の───この『材料』がある! 負ける気はしない!」

 

鳳翔「………………………始めて下さい!」

 

武蔵「…………よし! それでは、第二戦目───始めぇ!!!」

 

 

◆◇◆

 

【 if話……あり の件 】

 

〖 洛陽 居酒屋 鳳翔 店外 にて 〗

 

カンカン! コッコッコッ! カーンカーンカーン!

 

木槌を叩く音が外にまで聞こえる。 

 

ある時は高く響き、ある時は低く……と高低様々。

 

勿論、木槌だけでは無く……別の器具の音も響き渡る。

 

そんな中……遠征に出ていた艦隊が戻ってきた。

 

ーーー

 

那珂「はぁーい! 艦隊のアイドル那珂ちゃんだよ!! 地方巡業しゅーりょーしたから帰ってきましたぁ! 皆ぁー! おつかれさまッ!!」

 

菊月「………むっ? 何時もと同じ満員御礼のようだが──」

 

如月「そうねぇ……だけど、何時も以上の熱気を感じるわ?」

 

ーーー

 

那珂を旗艦とする艦隊が、長い遠征の末に『居酒屋 鳳翔』に帰投する。

 

無事に遠征も済み、必要な情報も集まり……報告が終われば、鳳翔さんの料理による慰労会がある。 

 

順風満帆……そんな言葉が合う任務だった。

 

いや、疲労が濃い中でも、笑顔を忘れない那珂が居たからこそ、順風満帆だったと言えるかも知れない。 

 

しかし、居酒屋に近付いて那珂が───急変した!

 

★☆☆

 

カーンカーン! キーコ、キーコ! カンカン!

 

那珂「───ハッ!?」

 

急に響き渡る音に、入りの引き戸に伸ばした手が───止まる!

 

コキコキッ……カーンカーン! カンカン!!

 

那珂「あ、あぁあああ……! やだぁ! やだぁあああ……この音! 耐えられない───ッ!」 

 

頭を抱え蹲る(うずくまる)那珂に、二人が驚く!

 

菊月「───お、おいっ!?」

 

如月「な、那珂ちゃん!?」

 

那珂「か、解体されちゃう!? 解体されちゃうッ!! ごめんねッ………い、今から、長めのオフいただきまぁーす!! 後、宜しくねぇ~!!!」ダッ!

 

如月「那珂ちゃん! まだ任務中───!?」

 

菊月「─────捕まえるぞ!!」

 

那珂が急にそんな事を言い出して、逃走を図るため、二人はすぐに捕まえた!

 

────ガッ! 

 

如月「どうしたのよッ!?」

 

菊月「────しっかりしろッ!!」

 

那珂「─────やだやだやだやだぁあああッ!!」ブンブンッ!

 

しかし、悲しいかな……軽巡洋艦と駆逐艦では、馬力の差が著しい!

 

★ーーーーー★

 

《参考》

 

那珂……9万馬力 

 

如月、菊月二隻合わせて……約7万7千馬力

 

★ーーー★

 

菊月「────くっ!」

 

如月「あ~んッ! だめぇ──耐え切れなぁ~い!!」

 

───ガラガラァ────

 

吹雪「あっ! お帰りなさ~『舞台裏は見ちゃダメぇ───!!』へっ? ────ど、どうしたんですか!?」

 

如月「あぁ───吹雪さん! 手伝って頂戴ッ!!」

 

菊月「は、早くしてくれぇ!! 駆逐艦の私たちでは───抑えきれん!」

 

那珂「────助けてぇッ!! 那珂ちゃんの飛躍の時を奪わないでぇ!!」

 

外で物音がしたため、様子を見に来た吹雪が参戦、那珂を抑えにかかる! 意見とは多数派に流れるもの。 

 

それに、同じ駆逐艦であれば、そちらに肩入れもしたくなる。

 

吹雪「わ、分かりました! 今、手伝いますッ!!」

 

那珂「きゃあっ、顔を抑えるのはやめてぇ───ッ!!!」

 

ーーー

ーーー

 

この後、吹雪の話で納得して収まり、那珂たちの艦隊は無事に帰投。

 

地下の鎮守府で補給後、上の居酒屋を手伝う事になったそうだ。

 

 

◆◇◆

 

【 華琳側 結果の件 】

 

〖 洛陽 居酒屋 鳳翔 店内 にて 〗

 

武蔵「よしっ! 刻限だ──!! 手を止めろッ!!」

 

武蔵が叫ぶと──華琳、鳳翔が手を止めた。

 

ーーー

 

華琳「久しぶりに、彫ってみたけど……こんな物でしょう!」

 

鳳翔「………………………」

 

ーーー

 

奥座敷のそれぞれの卓には、完成した彫刻が置いてある。

 

まずは、自信満々である華琳へと、取材に乗り出す青葉!

 

ーーー

 

青葉「ども! 早速ですが、お聞かせ下さい! これは──見事な花の彫り物ですね!? もしかして───『牡丹』ですか!?」

 

華琳「そうよ……別名『百花王』『花神』『花の王』とも云われる、私に相応しい花。 それを彫ってみたのよ!」

 

青葉「うわぁ~! すごぉい自信!! だけど……それに見合う実力もありますからね! あ……天津風さん! 是非、解説者として、コメントお願いします!」

 

天津風「ふ、ふん! いいわ……この彫り出した物を、批評すればいいのね? 此処からじゃ判断できないから、其処まで行くわよ……」 

 

ーーー

 

天津風が、座っていた席を離れて近付くと──空間に漂う香りに気付く。

 

ーーー

 

天津風「…………あ、あれ? 良い香りがするじゃない! 調理した料理の香りと別種類の、なんて言うか………もっと上品な………」

 

華琳「……………ニヤッ」

 

天津風「何だろう? 風に漂って……馨しい(かぐわしい)香り………」

 

青葉「そう言えば、そうですねぇ~? 防虫剤って云うか……お線香みたいな香りです………あっ! ああぁ────ッ! こ、この牡丹の花から、漂ってきますよ!? な、何でですか!? 普通の木彫りの置物なのに!!!」

 

ーーー

 

青葉の言葉で、華琳の彫り物に近付く天津風。 

 

香りの原因を確認するため、彫り物に顔を近付け───感嘆の声を上げた!

 

ーーー

 

天津風「クン………クンクンッ……この甘い香り! 貴女……この彫り物の材料、『白檀』を使用して彫り出したんでしょうッ!?」

 

華琳「御名答……西涼を越えた国で採集される香木よ。 たまたま私の国へ行商人が訪れて、献上して行ったの。 向こうで取れる『香りを発する木』で、彫刻にも適用される品だと聞いていたわ!」

 

青葉「そ、それで────!」

 

華琳「そう……今回の勝負で、使用する為に用意したのよ。 華麗な彫刻から雅な香りが発すれば、余計際だって見えるでしょう? 普通の彫刻は、見た目で楽しむ物だけど、この私の彫刻は──その考えを上回る!!」

 

天津風「人の五感の内、視覚と嗅覚に刺激するよう……彫ったワケね。 一方だけでは、それしか伝わらない。 だけど、二つ以上の方法で引き寄せれば、人は興味を抱き、新しい行為を賞賛する! なかなか……やるじゃない!」

 

『──────────!!?』

 

ーーー

 

白檀……線香や仏像等に使用される香木。

 

この漢王朝にも、幾つか入ってきているが、全て高価な品物。 置物として使用する事が殆どで、それを彫り物に使用する事など、皆無。

 

失敗すれば、取り返しがきかないし、そんな事を許可する持ち主も居ない。

 

だが、持ち主と彫り主が一緒であるために、完成出来た希有な作品!

 

観客は───初めて見る───超高級品の彫り物に唖然とするしかなかった!

 

偶然、手に入れた材料とはいえ……如何に効果的なイベントで観客を魅了させるかは、為政者の重要な腕前。 

 

それを、難なく成し遂げた華琳は、流石に覇王を名乗る資格があると言えようッ!

 

ーーー

 

青葉「こ、今度はぁ───曹孟徳の名作品が、鳳翔に襲いかかったぁあああッ! す、素晴らしい機転、斬新な考え! 鳳翔は、この行動に──対抗出来るかぁあああッ!!? 越える作品を完成出来たのかぁあああッ!!?」

 

『うおぉおおおお──────ッ!!!』

 

華琳「───この香木は、大陸には存在しない。 例え、行商人が訪れても、とても高価で店の女将が購入できる品物では無いわ! この勝負、今度こそ──勝たせて貰うわよ!!」

 

鳳翔「………………………」

 

ーーー

 

華琳は、口角を上げて──鳳翔に向けて指を差す!

 

鳳翔は、微動だにせず────しっかり受け止めるのだった!

 

後編へと続く……

 


 
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