No.770531

義輝記 星霜の章 その三十五

いたさん

義輝記の続編です。

2015-04-12 13:15:40 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1574   閲覧ユーザー数:1442

【 久秀からの鎮魂歌? の件 】

 

〖 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて 〗

 

護衛兵が……白装束の兵に蹴散らされた後、仮面の将が近付く!

 

颯馬「うぐぅッ! ひ、久秀殿…………!?」

 

光秀「────久秀ッ!!」

 

般若の面を付けて、しなりしなりと……歩いて近付く小柄の人物は、途中で止まる。 そして、颯馬たちの様子を眺めると、口に手を軽く添え……コロコロと笑う。 

 

仮面を被っているので、素顔が分からないが……声は……間違いなくアノ人物のもの。 特徴的な紫色の長い髪を震わせて……それはそれは……おかしそうに。

 

久秀「ふふふふふっ……大分つらそうなようねぇ? うふふふっ! 策士自らを犠牲にした策、実に見事だったわよ? だけどねぇ……余りにも、自分の身体を蔑ろ(ないがしろ)にし過ぎじゃなぁい? ……颯馬ぁ~あ?」

 

その言葉に直ぐに反応した凪、愛紗は、颯馬たちの前に出て、近付く者たちの行く手を阻む! 

 

颯馬の……命を懸けて行った奇策を……! 

 

散々自分に刃向かった、愛紗をも救う為に実行した策謀を!! 

 

侮辱する言葉に────二人は怒りを露わにする!!!

 

凪「黙れぇえええッ! 貴様が、貴様たちがッ! 天城さまに、災いを齎した張本人だろうがぁああッ!! この私が居る限り、貴様たちに指一本たりとも……天城さまへ触れさせる事───まかり通さんッ!!」

 

愛紗「………この方に……大きな借りを作ってしまった私だ! 松永久秀とやら! 天城さまを……害する考え未だ捨てぬのなら、容赦なく──我が青龍偃月刀で、貴様の欲望ともに叩き斬ってやるッ!!」

 

凪と愛紗が、それぞれが武器を構え……久秀と思われる将に対峙! 

 

颯馬に近づけば、ただでは済まさない気概を見せつけた!!

 

光秀「お二人共、気を付けて! 久秀の謀略は、颯馬に匹敵する相手! 無闇に行動すると罠に嵌まる恐れがッ!?」

 

久秀「フッ! 颯馬の策に頼りっぱなしの薄情な女共は、黙っていなさい! 自分たちの無知をさらけ出し、久秀に八つ当たりするなんて……大人げなさすぎるわ。 でも、そんなアンタたちの顔も、これで見ないで済むわよ!」 

 

『───────!?』

 

般若面の者は、そう言って片手を上げながら、ある童謡を歌いだす。

 

久秀『♪かぁこめ~かぁこめ~! かごの中の鳥は、何時何時出遣る! 夜明けの晩にぃ……♪』

 

日ノ本の童謡───『かごめかごめの歌』を─────

 

★☆☆

 

──────ザザザザッ!

 

白い布を被る異様な姿をした傀儡兵が、久秀の歌に反応して──素早く展開!

 

傀儡兵は一部を除き散開し……颯馬たちを取り囲む包囲網を結成! 

 

颯馬たちに、逃走されないようとの動きか? それとも、包囲した後、一斉に攻撃する気なのか? その意図は……久秀のみが知る!

 

ーーー

 

颯馬「ひ……久秀……どの! その歌は……グホッ!!」

 

光秀「そ、颯馬! 颯馬ッ! しっかりして下さい!!」

 

ーー

 

凪「天城様ッ! 今しばらくッ! 今しばらく……耐えて下さい!!」

 

愛紗「貴様らッ! ───そこを退けぇ!!」

 

ーーー

 

徐々に顔が青ざめる颯馬に、光秀は必死に叫び──手を握りしめて抱きかかえる。 凪や愛紗は、その様子を見て──危惧や焦りを感じとる!

 

しかし、傀儡兵は、それぞれの持ち場に着くと、手に持つ刃渡り三尺(約70㌢)の剣を煌めかせ、挑発するように……ユラリユラリと……動かす。 

 

まるで、颯馬を気遣う将たちの様子を、敢えて逆撫でするかの如く!!

 

そして、般若面の前には、数人の傀儡兵が集まり、防御にも攻撃にも取れるように陣を敷いている! 

 

その者は、余程の重要人物だと……ハッキリ示していた!!

 

ーーー

 

久秀「クスクスッ! 『♪籠の中の鳥はぁ、何時何時~出遣るぅ?♪ 夜明けの晩に、鶴と亀が滑った♬』 ………この意味が分かる? 聡明な光秀なら、解けると思うけど~なぁ? これが、貴女たちの結末……!」

 

光秀「………私が包囲網から逃れる術は無い。 すなわち、夜明けの晩……この世に存在しない刻限! 鶴と亀……吉兆の象徴が転ぶと云うのは、即ち死を表す! この包囲網の脱出する事なく、全員……殺されるワケですか!?」 

 

『────────!』

 

久秀「流石ね……! でも……颯馬だけは……意味が違うの!」

 

光秀「────どういう事ですかッ!?」 

 

久秀「鶴と亀の意味は合っているわ。 だけど『夜明けの晩』……それはね……『颯馬と久秀の死に場所』よ!」

 

光秀「───────!?」

 

久秀「久秀の命数も……あと少しで尽きるの。 だからぁ久秀が、颯馬だけを別の場所に連れて行くわ。 貴女たちは、この場で傀儡兵どもに無様に殺されなさい! 颯馬を同じ場所で死なすなど、久秀の美意識が許さない!!」

 

光秀「な、何を勝手な──ッ!?」 

 

久秀「……于吉が話す『暗く冷たい星の海の世界』という場所。 そこは、夜が明けても暗いまま。 天空に輝く夜空の中で、二人とも……誰にも邪魔されずに、永久にその姿を留めて一緒に居るの。 ───素敵だと思わない?」

 

光秀「久秀ッ! 貴女に何の権利があって、そのような真似をするのですかッ!? そもそも颯馬は──私を選び共に生きるとッ!!」

 

久秀「ふんッ! 久秀の方が、早く颯馬と関係を持ったのよ! 言い掛かりなんて──片腹痛いわ! 颯馬は、久秀と共に死ぬの。 もう……二度と離れる事なんか無いのよ! 邪魔なおなご共の手の届かない場所で!!」

 

光秀「────そんな事! 誰がぁあああッ!!」

 

久秀「───誰が決めたのかって? それは──久秀が決めたの!」 

 

光秀「───────!」

 

久秀「あの日、颯馬が久秀の下より離れた時からッ! もう二度と───離さないって! 絶対に……颯馬を離したくないのよッッッ!!!」 

 

ーー

 

凪「────き、貴様ぁ!!」ザッ!

 

愛紗「行くなぁ! 迂闊に攻め掛かっては──ッ!!」ガシッ!

 

凪「何をするッ! 早く手を離せぇえええッ!!」ブンッ!

 

ーーー

 

凪が、久秀の言上に苛立ち、向かわんとすれば、愛紗が止めに入り攻撃を止めさせる! しかし、容態が悪化する颯馬の様子に、凪は焦り──荒々しく、止める愛紗の手を振り払う!

 

ーーー

 

愛紗「頼むッ! 私と同じ──過ちを犯さないでくれぇ!! あの兵は神出鬼没、何処から現れるか分からん! 私たちが離れれば、天城様や光秀殿の命が危ないんだーッ!!!」

 

凪「───ハッ!? くぅううう………おのれぇ──ッ!!」

 

ーー

 

久秀「ふん……つまんない。 義輝に遊ばれたこと、思い出しちゃたのかな? 二人で単純に……久秀へ近付いてくれればねぇ。 光秀を容易く討ち取れて、颯馬も奪えたのにぃ……残念~!」パチンッ! 

 

─────ムクッ! ムクッムクッ!

 

??は指を鳴らすと……二人の傍より……二体の傀儡兵が地面より浮かび上がり、攻撃を仕掛ける! 

 

ーーー

 

傀儡兵「──────!」ブン!

 

凪「ハァァァ───ッ!」ドゴッ!

 

傀儡兵「ーーーーーーー!」シュッ!

 

愛紗「でぇりゃぁあああ───ッ!!」ズバッ!

 

ーーー

 

二人は、互いに近付いた傀儡兵を撃破!

 

愛紗の予見が正しかった事を……示したのだ!

 

ーーー

 

久秀「───ウグゥ! ハァッ、ハァッ………! お遊びは……どうやら……ここまでのようね? 于吉の術で強化された傀儡兵が暴れまくっているけど……どこまで持つか分からないし。 これで、終わりにしてあげる!!」

 

般若面の人物は………一緒……苦悶の言葉を挙げるが、身体は平気らしく、足早々に数歩前へ出る! 同じように周りの傀儡兵も、包囲網を縮めさせた! 

 

凪「────諦めないッ! 絶対ッ!!」

 

愛紗「ご主人様……先に……逝く事、お許し下さい! ですが……悔いはありません! 私は自分の義に従い、最後まで戦い抜きますッ!!」

 

光秀「────颯馬!!」ギュッ!

 

凪は前方で構え、愛紗が後方を守り、光秀が颯馬を抱きしめながら、刀を抜いて抵抗する様子をみせる……! 颯馬を守るため、三人は覚悟を固めた! 

 

 

◆◇◆

 

【 危機を知らせる乙女心 の件 】

 

〖 同上 龍驤軍陣内 にて 〗

 

一存「コ、コイツらぁ! 急に歯応えが出てきやがったかぜぇ! 姉さん! そっちは大丈夫かい?」

 

長慶「あぁ──心配するな! これしきの事で、音を上げていたら……颯馬に笑われてしまう! それに、私は生きて戻れれば──叱ってやらねば! 姉や兄に心配なぞ掛けるなと………な、なんだぁ一存ッ! その顔は──ッ!?」

 

一存「い───やぁ、何でも無い! 何でも無いよッ!! さっきまで暗かった顔が……魅力的な笑顔になったなぁと思ってね! (姉さんも……バレバレ何だから……颯馬に早く伝えればいいのに………!!)」

 

長慶「な、何を馬鹿な事!? 一存こそ、愛紗が逆に……颯馬へ手を貸していたと聞いて、ホッとしているのだろう!」  

 

一存「当然! いや、そんな事するような愛紗じゃねぇって、確信していたぜぇ☆!」

 

長慶「───フッ、どうだかぁ! それより一存! どちらにしても、この勝負勝たなければ、喜ぶ事も叱る事も出来ん! 更に奮戦するぞ!!」

 

一存「了解だ、姉さん!!」

 

ーーー

 

三好姉弟は、最右翼《龍驤軍(戦極姫軍勢)》を担い、鳥丸兵を追い散らした後、傀儡兵からの攻撃を阻み続けている。  

 

当初は、颯馬が久秀側の策謀により……愛紗の手に掛かったと聞き及び、涙を流し悲憤慷慨! 『久秀に組する者たち許すまじ!』とばかり、弔い合戦の様子を見せていた三好姉弟。

 

後になり……颯馬が現れ、愛紗に刺されたのは策の一環! 敵を罠に嵌める為の偽計だったと聞き及び、歓喜の涙を流して……力を奮っていた!!

 

ーーー

 

義輝「長慶! 一存! しばし、此処の守りを頼むぞ!!」

 

長慶「義輝公!? ──どうかなされましたッ? 何事か御座いましたか!?」 

 

義輝「うむっ……あの馬鹿者を、叱り付けてこようと思っての! わらわが想いを告げたと云うに、あのような策を立ておって!! ま、まぁ……颯馬の様子も……ついでに尋ねて来るつもりじゃ!!」

 

一存「あっ! 俺が行きましょう! 義輝公が行くほどの事じゃ───!」

 

義輝「…………鈍い奴じゃの………」

 

長慶「…………申し訳なく………」

 

ーーー

 

一存「ちょっ! どういう意味だ──『はっ! 簡単な事だ!』──!?」

 

信長「主が……『おなご』の乙女心を意に介さぬからだ……一存!」

 

一存「の、信長!? お前まで言うのかぁ!? っていうか、お前まで言われたくねぇ!! 第一……お前こそ分かるのかよッ!?」

 

信長「当然だ! 私も恋する乙女だぞ? 颯馬を心配するなら、私も同じ事を考える! あの光秀が居るから安心なのだが……万が一もあるからな! 私も義輝に付いて行くぞぉう! お前たちに────後は任せた!!」

 

一存「お、おいっ! 何を勝手な事を!?」

 

ーーー

 

義輝「………長慶! すまんが……此処を頼む!」

 

長慶「………心得ました。 されど、我々も長くは保ちません。 お戻りは……なるべく早めに! どうか───弟を、宜しくお願いします!」

 

義輝「ふふふっ……後の義姉上殿に頼まれてしまったか! 委細承知! 吉報を待っておれ!!」

 

信長「そうかッ! 颯馬と婚礼を挙げると、一存は義兄上になるのか! これは───クククククッ! いやぁ~楽しみではないか! 義兄上殿!?」

 

一存「お、おいっ! 冗談じゃないぜぇ! タダでさえ、姉さんに頭が上がらない身の上の俺が……義妹達に公方様と信長までか~!? か、勘弁してくれよぉ!!」

 

義輝「───ムッ! いかん! 気配がより高まった! 後を頼むッ!」ダッ!

 

信長「────それではなッ!」ダッ!

 

一存「公方様─────って……行っちゃったか。 まぁ……しょうがねぇなッ! 鬼十河の力、改めて味あわせてやるぜッ! 見てろよ、颯馬! お前の策──絶対に無駄なんかさせねぇからなッ!!」

 

長慶「────颯馬ッ! 無事必ず……生きて戻って来いッ!!」

 

 

◆◇◆

 

【 順慶 最後の願い の件 】

 

〖 同上 曹操軍陣営 天幕 にて 〗

 

この中に……筒井順慶が、縄と鎖で捕縛されて、寝かされている。

 

数々の怪力を見せ付けた将の為、捕縛に使う物は、特に頑丈な物を吟味して用意されいた。 しかし、今度の戦いは……天下分け目の戦ゆえ、絶対に邪魔されないように───念の入った方法を採られていたのだ!

 

順慶「…………う、うぅぅうぅぐぅぅ─────ッ!!」

 

??「順慶殿! 順慶殿ぉ!!」

 

順慶は、自分に声を掛ける声に反応して、目を覚ます。

 

味方が居るハズの無い天幕で、自分に『敬称』を付けて、呼び掛ける者など普通は居ない! 于吉たちとも、別行動をして……それぞれの役割を果たすと、決別を済ました身の上、助けに来る事など無いのだ!

 

しかし、現に自分を呼び掛ける人物が居る! 

 

順慶は、頭を少し左右に動かしてハッキリさせ、相手の顔を見た。

 

順慶「ぐぅ………はっ! だ、誰ぇ──!? さ、左近! な、何で………貴女が………!?」

 

そこには、自分を心配そうに見ている──島左近が正座して座っていた。

 

左近「曹孟徳殿より、順慶殿の見張りを依頼されたんだ! 順慶殿のような得体の知れない将は、天の御遣いに見張り役を任せたいと。 毒を制するには毒を使うというワケで、私が役目を受けたのだ!」

 

順慶「…………そう。 ぅぐぅぅぅ───ぐぅ…ッ!!」

 

左近より、納得のいく説明を受けたが……同時に身体の異変をも感じる! 今まで睡眠状態のため、体内の身体機能が最小限の生命維持をしていた。 

 

しかし、身体が完全に目覚めた為、新陳代謝が活発化して、負担が重くのし掛かる!! つまり、身体の氣が───急激に減る! 氣の発生が間に合わない程に!! その事は───順慶の死を意味するッ!!

 

左近「順慶殿ぉ!?  そ、その顔は───ッ!?」

 

順慶「み、見ないでぇ! わ、私の身体の氣が……尽きようとしてる──ッ! 寿命が……氣の力、生命力が尽きようと! だからぁ──ゼェゼェ……ダカら……身体ガ……干からビテいくのよ………!」

 

左近が、順慶の顔を見れば……顔の半分が数十年分、一挙に老けたように思われるほど、皺だらけになる! 

 

顔を隠そうと動かす順慶だが……両手両足が捕縛された身の上に、無理な話。

 

左近が、驚きの顔を示して……順慶に問い掛ける!

 

左近「………それが……あの魔神の如き……力の代償!」

 

順慶「この力の代償ハ……自分の命。 自分の命ヲ氣に変換させテ……力を倍増させル方法。 だから……力を使い過ぎレバ……命が亡くナル!」

 

左近「………馬鹿な事を! 颯馬が知れば……悲しみますぞ!!」

 

一度は、洛陽で戦い……左近は順慶に殺されそうになった経験がある。 

 

しかし、戦の勝敗は時の運! 命があれば儲け物! 左近ほどの戦上手は、そう考えて、恨み辛みを以降の場面に持ち込まない! それは、戦いを侮辱する行為だと考えていたからだった!!

 

順慶「ふふふ………ざ、残念だけド……颯馬さまには、醜い姿を見られているから……! それに、颯馬さまは……既に……この世には……居ない。 く、悔いは無い……『颯馬は──生きていますッ!』───えッ!?」

 

順慶は───既に死を受けて入れていた。 

 

自分は颯馬共に生き、颯馬と共に死す。 愛紗に刺殺された様子を、久秀と共に目撃したのだ。 そうなれば、この世に未練など無い! 『自分も早く、あの世に向かい、颯馬を探さなくては!』 そう考えていた!!

 

それが───左近の口から───不定されたのだ!

 

左近「颯馬の、颯馬の死は………偽装! 北郷一刀の命を救う為、アイツは自分の死を欺き……生きて指揮を取っている! だから、順慶殿が向かっても、アイツには───逢えないッ!!」

 

順慶「そ、そんなぁあああッ! 颯馬……さぁマァァッ! た、確かめタイ! 死ぬ前に……一度……お逢いして……確かめタイッ!! だ、だけど……この顔では………お逢いデキ……ないッッッ!!!」

 

左近「………………………」

 

左近は、そんな順慶を見て……思案にくれるのだった。

 

 

◆◇◆

 

【 後ろの正面は……誰? の件 】

 

〖 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて 〗

 

 

白装束……傀儡兵は包囲網を縮めながら……散発的に攻める。

 

久秀「───人はねぇ……図星の事を指摘される腹が立つものなの! お前たちのように、力で物事を解決しようとする愚か者共が……私の傀儡兵を遮れると思うの!?」

 

しかも、波状攻撃で三人、四人と数を変えて、攻撃方法も上下左右とパターンを変化! 光秀たちに出血を強いる!

 

ーーー

 

凪「はあぁぁ───ッ!!」

 

────ドオォォォン!!

 

──────ザシュッ! キンッ! 

 

─────クルッ! ドドドドドドッ!!

 

愛紗「───クッ! まだだぁ! まだまだぁあああッ!!」

 

光秀「はぁーっ! はぁーっ!」

 

凪「だ、大丈夫ですかぁ!?」

 

光秀「わ、私は………まだ大丈夫!! だけど……颯馬が!!?」

 

颯馬「……………………」

 

愛紗「天城様!! しっかりして下さいッ!!」

 

ーーー

 

凪、愛紗は……生粋の武人ゆえ、このくらいの攻撃には耐えられる。 しかし、光秀は文武両道の名将と云われるが、鉄砲の名人であるがゆえに称される。 

 

つまり、接近戦においては不慣れ! しかも……颯馬を守り抜き、尚且つ心配しながらでは、披露の蓄積等……二人より遥かに大きい!!

 

その颯馬も……既に意識を失っていた!

 

久秀「くっ! ──あ、貴女たち、馬鹿なの? 颯馬を……自分たちの自己満足で、苦しみを長引かせる気なの? 全く……口で言う割には、久秀と……変わり無いじゃない! サッサッと諦めて───颯馬を渡しなさいッ!!」

 

久秀の声は、少し前に比べて精彩を欠く。  

 

『命数が尽きようとする』と言う言葉通り、命が尽きようとしているのか?

 

しかし、仮面の将は……精力的に指揮を繰り返し、まるで死が近い人物とは思えない! 久秀の策の可能性もあり、三人は困惑するッ!

 

久秀「い、いい加減に───しなさい! 颯馬の命数が、久秀の命数が尽きれば、予定が狂ってしまうわ! 仕方ないわね……こうなれば、久秀自身が引導を直接渡して上げる!!」

 

だが、焦る気持ちは……相手も同じか?

 

久秀の焦る声が響くと……白装束の傀儡兵たちと仮面の将が、同時に接近してきた。 剣を片手で持ち上げ、強烈な殺意を振り撒きながら!!

 

ーーー

 

凪「────勝機ッ! 三連猛虎蹴撃!!」

 

傀儡兵「───────ッ!!」

 

愛紗「どけぇえええッ!!!」

 

傀儡兵『ーーーーーー!!!』

 

ーーー

 

凪は、仮面の将の周りに居る傀儡兵たちを、猛虎蹴撃の三連発で瞬時に弾き飛ばし、その目の前に降り立つ!

 

愛紗も、颯馬の周りに近付く傀儡兵を、手早く一掃して、凪を追い掛ける!

 

久秀と目される将は、そんな中でも泰然として、剣を頭上高くに上げ、凪に振り被るが───凪の戦闘方法は、接近戦こそに真価が発揮される!

 

凪「でぇえええぃいいいッ!!!」

 

凪が、颯馬から教授された『天地陰陽の構え』を取ると、両手を挙げる!

 

仮面の将の剣は、凪の拳に当たるが、凪の武器『閻王』に当たり、弾き返される! そして、凪の左手が……掌となり、将の胸に軽く当たった!

 

凪「天城様直伝『仙人殺し』!!」

 

その将に、当てた左手を右手で重ね合わせるように、叩き込んだ!!

 

??『グワァアアアッ!!』

 

凪「──────!?」

 

仮面の将は、奇声を上げて退く! そして、愛紗が追撃を掛けたッ!!

 

愛紗「天城様に仇なす者よッ! この世から消えろッッ!!」

 

凪「────ま、待てぇッッ!」

 

──────ザシュッ!!

 

愛紗も青龍偃月刀で、将を一閃!!

 

そして………仮面が真っ二つになり………落ちて顔が露わになった! 

 

★☆☆

 

凪「────あ、貴方は!!」

 

愛紗「────ちょ、張譲さまぁ!!」

 

般若の面より現れた顔は、醜く歪んだ笑顔を見せる! 生前と変わらず、皺だらけの顔を愛紗たちに見せ付けた後、叫んだ!!

 

ーーー

 

張譲「グフッ! グフッグフッ! グフフフフッ!! 久秀サマァ! 今デスゾォオオオッ!!」

 

『───縛ッッ!!!』

 

凪「─────しまったッ!?」

 

愛紗「───────何ぃ!?!?」

 

二人は、金縛りの術に掛けられて、首から下が自由に動く事が出来ない! 

 

張譲「久々ノ激痛ゥウウウッ!! キタコレッッッ!!!」

 

仮面の将……元十常侍『張譲』が、青ざめた顔で御満悦の表情を浮かべる! 

 

凪「た、確か……先の反董卓連合の混乱で……亡くなったと……」

 

愛紗「ま、まさかっ! あの虎牢関攻めの将たちと……同じ方法で!!」

 

張譲「応エル必要ナド無イナ! オ前タチハ……策ニ引ッカカッタ愚カ者共ニ久秀サマノ術ヲ理解デキマイ! ソシテ……見ヨ! 久秀サマハ───其処ニイラッシャルノダ!!」

 

ーーー

 

張譲の指を示す方向は───光秀と颯馬が居る場所!

 

一人の傀儡兵が、光秀の後ろに立つ!

 

ーーー

 

??「『後ろの正面───誰?』 普段の光秀なら、簡単に解ける謎だけど、颯馬に気を取られている……今の光秀に解るかな~? クスクスクスッ!」

 

光秀「────ひ、久秀ぇッッ!!」

 

久秀「そう、久秀よ! ───松永久秀! 颯馬を最も愛憎する……日ノ本の梟雄! そして……最も必要とする戦乙女!!」

 

光秀が抵抗しようにも、術が掛かり……身動きが取れない!

 

光秀「行かせませんッ! 颯馬は───私と共に生きるんですッ!!」

 

久秀「明智光秀! お前さえ……お前さえ居なければ! 颯馬はね、久秀のモノになっていたのよ! ───邪魔よ! そこを退きなさいッ!!」グイッ!

 

光秀「────くっ!? そ、颯馬ぁあああッ!!」バタッ!

 

ーーー

 

そんな光秀を、久秀は憎々しげに視線を送り、乱暴に颯馬から離して突き飛ばすッ!!  身動きが取れない光秀は、抵抗できずに地面に伏す……!

 

久秀「颯馬ぁ……待たせたわねぇ! 光秀の位置は──颯馬の横に相応しいのは久秀! この久秀なのよ! 今度こそ……貴方を、久秀の手で確実に仕留めてあげる! そして……颯馬と共に……ずっと───!」

 

颯馬が──うっすらと目を開けて、嗤う久秀、嘆く光秀を見て……状況を瞬時に把握した! 

 

ーーー

 

颯馬「み、光秀………に、逃げろぉ!」

 

光秀「そ、颯馬ぁあああッ!!」

 

ーーー

 

愛し愛し合う二人は、互いに互いを気に掛けて───呼び合う!

 

だが───それが久秀の感情を破裂させた!!

 

久秀は、懐より取り出した短刀を持ち、頭上に持ち上げる! いづぞやの自分の死を偽装した短刀と同じ柄だが……中身は、しっかりとした造りの名刀!

 

急所を刺せば───必ず死ぬ!!

 

ーーー

 

久秀「き、聞きたくないッ!! 他のおなごの名を呼ぶな! 天城颯馬ぁあああ! 貴方は、久秀と共に逝くの! 一緒に逝くのよぉおおおッ!!!」

 

愛紗「止めろぉおおおッ! 止めてくれぇえええッ!!」

 

凪「天城さまぁ────ッ!!」

 

光秀「颯馬ぁ─────ッ!!」

 

張譲「クーッハハハハハハッ!!」

 

ーーー

 

制止の声が多数響き渡るが───久秀は意に介さず!

 

颯馬の横に、ペタンと座った久秀は、地面に仰向けで寝る颯馬の……心臓部分に───それを落と──────!

 

───────ガシッ!!!

 

ーーー

 

??「間に合いましたね~! ケホッケホッ!」

 

??「久秀……貴女ニモ問ウワ! 後ロノ正面……誰ダガ解ル……?」

 

久秀「──────お、お前はッ!? 何で、この場所に! 久秀を、久秀を止める事が出来るのよぉおおおッ!!」

 

??「『久秀』ハ……久秀ヲ止メニ来タノ! 今度コソ、止メルタメニ!!」

 

『─────!?!?』

 

ーーー

 

振り落とす直前に、久秀の腕を掴む者が現れ、一緒に佇む人物『竹中半兵衛』がホッとした様子で、○○に声を掛けた!

 

そこには───久秀と同じ服装、姿をした『松永久秀』が───涙を流しながら……久秀を睨みつけていたのだった!

 

 

ーーーーーー

ーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

そろそろ、話も完結にしたいのですが………どうも話を長くする傾向が多くて、なかなか終わりません。

 

次回は、いつになるのかな? 出来れば5月に出したいな……と考えていますが……。 

 

その時は、宜しくお願いします。


 
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