No.767948

九番目の熾天使・外伝~マーセナリーズ・クリード~番外編 サイドアームズ

okakaさん

後編その3です。

2015-03-31 07:30:42 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:469   閲覧ユーザー数:421

番外編【サイドアームズ】1 ~獅子と聖剣~ 後編3

 

 

 

目の前で崩れ落ちる様に倒れこむグラディエーター。それと同時にフォールドクォーツから伝わる痛みが消えていく、まるでもう、痛みすら感じることができないと事実を突き付けるように。ディアはこの感覚の意味を理解した。理解してしまった。目の前の【死】を理解してしまったのだ。

 

 

「そん・・・な・・・また・・・守れなかった・・・僕の・・・目の前で・・・うっ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

ディアは叫んだ。守れなかった悔しさに、そして自身の無力さに。

 

 

『フェフェフェフェフェフェ!!まずは一機・・・安心せい、貴様らもすぐに同じ場所に送ってやるぞい!』

 

 

その光景を見て気分を良くしたカレラは意気揚々と機銃を放つ、まるでディアをあざ笑うかのように機銃を振り回し、グラディエーター達に砲弾を浴びせる。

グラディエーター達はそれを避けるように逃げ惑い、一機、また一機と追い詰められていく。一人の死が子供達に忘れていた【恐怖】を思い出させたのだ。

 

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

『いや!こないで!』

 

『やだよ!死にたくないよ!』

 

『きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!』

 

『怖いよ!助けてよ!』

 

 

子供達の叫びがレオのコックピットに響き渡る。その声にディアの頭は冷えていく、助けなければという使命感、そして、守れなかった悔しさはカレラの非道に対する怒りへと変わっていく。

 

(なぜこんなことになった?なぜ死んでしまった?なぜあの子達が怯える?なぜ?アイツのせいだ。アイツの、カレラ・セトメのせいだ。だったらどうする?アイツを・・・カレラを殺す。誰が?・・・・・・僕だ、僕が・・・)

 

「アイツを・・・・・・殺す!」

 

 

ディアの心は完全に怒りに染まった。

 

 

『カレラァァァァァァァァァァァァァッ!!』

 

 

MVSを抜き放ち、エナジーウィングを開く、もうエナジー残量など知ったことではない。ここでカレラを殺す。絶対に殺す。怒りに飲まれたディアは二振りのMVSを構え、最高速度で一直線にカレラへと突っ込んでいく。

 

 

『フェフェフェ!良い殺気じゃ!それでこそ兵器にうってつけじゃて!』

 

 

カレラは高笑いと共に二丁の機銃をレオへと向け放つ。だが、レオは回避しようとしない。被弾を気にせず、こちらへ一直線に突っ込んでくる。砲弾が当たり、装甲が弾け飛ぶ。それでもまるで獰猛な獣の様に襲い掛かってくる。

 

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

獣のような咆哮を放ちながらディアはレオを突撃させる。刀型のMVSにありったけの怒りと殺意を乗せて大型グラディエーターを襲った。

 

 

『むぅっ!・・・・・・・・・・・・』

 

 

二振りの刀がカレラを守るフィールドに突き刺さる。刀身の超振動がフィールドに喰らいつき、少しずつ食い込んでいく。

 

 

「おまえは・・・おまえだけはァァァァァァァァァァッ!!」

 

 

ディアの叫びと共にMVSが押し込まれてゆく。大型グラディエーターの背面に展開していたアンテナが発光を強め、MVSを押し返す。どうやらそこがフィールド発振器らしい。それを見たディアは左手のMVSの切っ先を大型グラディエーターの背後へと強引に変えた。

 

 

『ぐぅっ!させぬわ!』

 

 

切っ先の向きから狙いを察したカレラが機銃を振り上げた。先端の銃剣がMVSを弾き、更にレオの左腕に食い込んだ。

 

 

「舐めるなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

ディアの咆哮と共に破損した左腕が銃剣を掴んだ。それを見たカレラは慌ててフィールド内へ機銃を引きずり込む。だが、それが決定打となった。

 

 

「貰ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

銃剣に引きずられ、フィールド内部に到達したレオが下腕部に装備された電磁投射型アンカー【スラッシュハーケン】を射出、ジェネレーターに直撃させた。

 

 

『ぐおっ!!こやつ!!』

 

 

ジェネレーターが損傷し、フィールドが消える。それと同時に破損していたレオの左腕下部が爆発、フィールドに突き立てていた右手のMVSが負荷に耐え切れず砕け散った。

 

 

「・・・許さない・・・絶対に・・・おまえだけはぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

丸裸になった大型グラディエーターにレオが飛びかかろうとした瞬間、突然動きを止めてしまった。

 

 

「!?」

 

 

ディアが異常に気付いたのと同時にコックピット内が真っ暗に染まる。微かな非常灯が点灯し、警報が鳴っていた。ディアが慌ててコンソールに目を向けると、そこにはEMPTYの表示が、あと少しの所でエナジーが付きてしまったのだ。

 

 

『フェフェフェ!どうやら電池切れのようじゃな!惜しかったのう!』

 

 

エナジー切れに気付いたカレラがレオに機銃を向けた。ディアは咄嗟に【人形遣い】の魔術での強制駆動を試みるが不慣れなせいで一瞬完全な無防備になってしまう。その一瞬がカレラに反撃の隙を与えてしまったのだ。無慈悲に降り注ぐ砲弾、意識だけが加速し、スローモーションの様に今まさに自身を食い破ろうと襲いかかる無数の砲弾がはっきりと見える。駄目だ、かわせない。ディアが自身の敗北を認めようとした刹那、眼前に灰色の壁が立ちはだかった。

 

 

『ダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!』

 

 

一機のグラディエーターが射線に飛び込み、無数の砲弾を浴びて自身を庇った事にディアが気付いたのは膝をついたグラディエーターを見た直後だった。

 

 

『お兄ちゃん・・・・・・とう』

 

 

その言葉を最後にグラディエーターが沈黙する。そしてまた、ディアはつながっていたはずの心が一つ消えていくのを感じた。

 

 

「そん・・・な・・・」

 

『ちっ・・・こしゃくな真似を・・・まぁ良いわい、今度こそ終わりじゃて』

 

 

放心して動きを止めてしまったレオを今度こそ破壊しようとカレラが照準をレオに合わせた瞬間、残る全てのグラディエーター達がカレラに飛び掛かった。

 

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁっ!』

 

『止めろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』

 

『こいつめぇっ!』

 

『お兄ちゃんをいじめるなぁっ!』

 

 

それぞれが銃剣を構え、カレラに襲いかかる。

 

 

『なんじゃと!?』

 

 

戦意喪失し、無力だと思っていた子供達の突然の反撃に驚いたカレラは慌てて機銃を向けようとするが、もう遅い。大型グラディエーターに取り付いた子供達が機体に銃剣を突き立て、羽交い絞めにして、拳を振るう。何度掴みかかっても、何度引き剥がそうとしても、それでも子供達はカレラから離れない。

 

 

『この・・・小僧どもがぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

 

激昂したカレラが防衛火器を操作して子供達に無数の矢を叩き込む。それでも子供達は離れようとせず、カレラにしがみついたまま何度も銃剣を叩きつける。

 

 

『今だよお兄ちゃん!』

 

『僕達が押さえてるから!』

 

『コイツをやっつけて!』

 

『早く!お兄ちゃん!』

 

「はっ!・・・でも武器が・・・」

 

 

子供達の声に我に返ったディアはトドメを刺そうとするも、エナジー切れで武装が使えない事に気付いた。だったらせめて拳で、とレオを走らせ始めた瞬間、背後の壁が吹き飛んだ。

 

 

『武器ならあるぜ?』

 

 

そして飛び込んできたここに来るはずのない機体、耐ビームリアクティブ塗装の白いボディーに黒とスカイブルーのラインが入ったカラーリング、そして尾翼と左肩に描かれたアサシン教団のマークの中央にホルスの眼のエンブレム。

 

 

『ダイナミックお邪魔しますってな!』

 

「okakaさん!?」

 

 

バトロイド形態に変形したYF-29デュランダルがおそらくはその拳、【ピンポイントバリアパンチ】で壁を破壊し、突入してきたのだ。

 

 

『使えディア!』

 

 

okakaはシールド内部に格納されたアサルトナイフを抜き放つとレオに投擲して渡した。

 

 

「はい!」

 

 

レオがグリップを掴んだ瞬間、内臓電源により刀身にピンポイントバリアが展開。それを確認したディアは大型グラディエーターに突進した。

 

 

「喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 

 

コックピットと思われる場所にナイフが突き立つ。凄まじい火花が散り、レオの黒い装甲を赤く照らす。

 

 

『ついでだ、とっとけ!』

 

 

更に追撃と言わんばかりにデュランダルがガンポッドの短刀型銃剣を取り外し、直上からパワーダイブと共に突き刺した。

凄まじい衝撃が地面にまで伝わるのと同時に大型グラディエーターが完全に沈黙した―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

まぁ、まだ続くんですけどね。今回はここで一旦切らせていただきます。次回、開幕からクライマックスの予定です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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