No.766562

温泉泉士 ゲンセンジャー 第一話(7)

某おんせん県で源泉を狙う悪?の組織と戦う戦隊ヒーローのお話です。

2015-03-24 00:33:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:256   閲覧ユーザー数:256

憩いの場のはずの露天風呂はまたたくまに戦場となった。

 

レッドが美女と対峙し、グリーンが犬と戦い、というか説得している。

「今日こそ、話を聞いてくれ!僕は君と戦いたくない。君は戦いをする人?ではないはずだ!僕達に必要なのは戦うことじゃない!モフりあ……いや、愛し合うことなんだ!」

……犬相手になにやっとんじゃ、あいつは。あーほら、容赦なく噛まれてやがる。犬好きってどうしてああ犬に夢を見がちなんだろう。

 

イエローはというと長身を相手にパンパンと何故か見事な張り手合戦をしている。結構な体格差だというのに完全にイエローの方が押しているようだ。あの胸筋は伊達ではないらしい。

しかし、その戦いの隙をついてぽっちゃりがこちらへと向かおうとしているのが見え、げ、と俺は背後の風呂桶と姫を見た。風呂桶の縁を掴んではらはらとした顔で戦いを見つつ、時折、いけーそこじゃ、ちちまわせー!と意味不明の言葉で応援をしている。

「ちちまわせ?は、乳、廻す……?ぶ、ぶるんぶるん?」

なんかすごいことを言っているが、こう見ているとごく普通の可愛い女の子にしか見えない。このさい、素っ裸で風呂桶に入っているという姿は置いとくとして。

 

くっそーここは俺が守るべきなのか?

しかし、どうすりゃいいんだ?いくら仲間だのゲンセンジャーだのって言われたって俺には何の力もない。焦りの為に心臓が痛いくらいに鼓動を打ち始める。

だが、ぽっちゃりは幸いこちらに辿り着くことは出来なかった。さっきの科白通り、長身の鼻っぱしらに張手を決めてよろめかせたイエローが次の瞬間、動物じみた速さでぽっちゃりに追いつき「どすこーい!」という掛け声とともに見事に奴の背中にドロップキックを決めたのである。

 

「や、やった!すげえ、イエロー!本当に一人で二人止めた!」

両手を握りこみ俺はイエローを称えた。これでひとまず安心、と顔を伏せて息を吐くが視界に影を感じ慌てて顔を上げる。

「ふふっ」

目の前には見事な揺れるおっぱい、いや美女が立っていた。口元が妖艶な弧を描いている。こいつがここに来ているという事は……。

「レッド!」

先程戦っていた方向へと目を向ければレッドがぐったりとした様子でうつぶせに倒れている。表情は見えないが頭の下から湯とともに赤い色が流れ出していた。

 

「そんな、おい、レッド……葵……」

やられちまったのか?あんなに血が流れているってことはひどい怪我をしているんじゃあ……。

「よそ見してていいのかしら?ねえ、姫神?」

俺がレッドの姿にショックを受けている隙に女が地を蹴るのが見えた。

「姫!」

気づけば体の方が勝手に動いていた。風呂桶と女の間に両腕を広げて飛び込んだ。レッドが負けた相手に俺が叶うわけはないのはわかっている。だが――ほっとけるわけがない!

 思わず目をつぶったその時。

「――変身じゃ!ゲンセンブルーー!」

「あっちー―!」

頭上から熱い湯が降ってきた。これは、さっきあいつらが浴びたのと同じ……?

 

俺の体から光が発され始め、体が見事に奴らと同じデザインの、しかし色は鮮やかなコバルトブルーのスーツに包まれていく。

「ち、四人目か?!」

女が警戒したのか、動きを止めたあと、背後へと距離を取った。

「そう、彼こそが四人目の泉士、ゲンセンブルーじゃ!」

姫が高らかに宣言し期待に満ちた目で俺を見た。え、あれ、俺どうすりゃいいの。

「ゲ、ゲンセンブルー」

とりあえずポーズを取ってみたが姫の目の温度が一瞬で下がった。

やっぱり『命』は古かったか……?

「ま、まあいい、行け!ゲンセンブルー、四天王を倒すのじゃ!」

だから、どうすればいいんだよ!

「俺、戦闘スキルなんか持ってないぞ?!は、もしやこのスーツを着れば自動的に戦闘力がアップするのか?プリキ●ア的に!」

「なにをぐだぐだ話している!」

頬に風を感じたと思った途端、横腹に衝撃を感じる。

「がはっ」

腹を抱えて座りこむ。息がつまって苦しい。女は俺を蹴った体勢のまま動きを止めていた。体幹がしっかりしているらしい。

 

「ブルー、なにをしておる!大丈夫か?!」

姫が湯船からせいいっぱい身を乗り出して叫んでいる。

「立て、立つんだ、ブルー!」

あ、それ言っちゃうんだ。

なんだか頭がくらくらとして考えがまとまらない。このままじゃやられる。

「来るぞ、ブルー、立て!戦え!ちちまわせ!」

だから、ちちまわせってなんだよ!さっきから頭のなかですごい文字に変換されるんだけど!

 

とにかく俺は立ち上がった。目の前に女が迫ってくる。こんな時だというのに真っ先に視界に入ってくるのはやはりぶるぶると揺れる胸元で……。

「坊や、そのまま、じっとしていれば良かったのに」

「負けるな、ちちまわせ!ブルー!」

 

 

――ぷつん、と俺の頭のなかで何かが切れた

 


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