No.766202

フワモコモフモフパラダイス

さん

フワフワモコモコしたモノが大好きな鬼灯と、彼女に愛でられる生き物に嫉妬する白澤の話。

2015-03-22 12:07:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1535   閲覧ユーザー数:1535

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クツクツと、薬草を煮る音がする。すぐ傍では桃太郎が別の薬を煎じている。鬼灯とは先程散々言い合いをしたので今は静かだ。店員の兎さんをモフモフしている。兎に向ける鬼灯の瞳は穏やかだ。白澤に向けるモノとは180度違う。彼はそんな彼女を密かに見詰めている。その目が「羨ましい」と語っているのを、桃太郎は気付いていた。『目は口ほどに物を言う』とはまさにこの事だ。寧ろ口より正直のように思える。

不意に、鬼灯が顔を上げた。

「白澤さん、何ですか?」

白澤からの視線が気になったらしい。

「いや、前から思ってたんだけど…」

薬草を煮込み終わったのか、白澤は火を消して鬼灯に向き直った。

「お前、僕の店に来るといつも兎さん達を撫でてるじゃない。もしかして動物好きなの?」

「…いけませんか?」

馬鹿にされるとでも思ったのか、鬼灯の声には険がある。しかし、白澤は彼女の答えに「ふ~ん」と言ったきりで他には何の反応も示さなかった。放っておけば良いものを、鬼灯は眉を顰(しか)め腕を組み非難の声をあげる。

「煮え切らないですね。言いたい事があるなら遠慮せず言えば良いでしょう!」

鬼灯は喧嘩腰だが、白澤は渋面を作るだけ。言いたいけれど言えないといった風だ。更に鬼灯が何か言おうと口を開くが、その直後に店の扉が開く。

「白澤、邪魔するぞ」

言いながら入ってきたのは、白澤の旧友・麒麟だ。後ろに鳳凰もいる。

「お二人共、いらっしゃい」

桃太郎が笑顔で対応する。

「お二人と鬼灯さんの来店が重なるなんて珍しいですね」

確かに、この三人は近くで顔を合わせる事が極端に少ない。鬼灯はじっと麒麟と鳳凰を見詰める。

〔白澤、いつもの薬を頼む〕

旧友達が声を揃えて注文した。それ程に常連なのだ。

「…ちょっと待ってろ」

白澤は何か言おうとして止め、薬を取りに向かった。ソレを見もせず二人は鬼灯に視線を寄越す。

「補佐官殿は、どんな用事で?」

「毎年頼んでいた薬を受け取りに。それよりも…」

鬼灯は珍しく期待に満ちた瞳を見せた。

「機会があればお願いしようと思っていたんです。麒麟さんをモフモフさせてくれませんか?」

シン、と店内が静かになった。白澤は目を見開き彼女を凝視し、彼の弟子と旧友はポカン、と呆けた顔で彼女を見る。最初に我に返ったのは桃太郎だった。

「鬼灯さんは動物が好きらしいんですよ」

「モフモフは癒しですから」

皆に話す鬼灯は、とても良い顔をしていた。具体的に言うと、頬は仄かに赤く口は笑みを作り、とても可愛かった。

麒麟は鬼灯の顔を見、白澤を見、熟考の末に獣に変じ伏せた。彼女は目を輝かせ麒麟に抱き付き、胴体を撫でる。白澤の顔が羨望と嫉妬で歪むのを、鬼灯以外の全員が見た。

「おい常闇鬼神!薬の用意出来たぞ!」

「癒しの時間を邪魔するなんて良い度胸ですね、白豚」

麒麟とは全く違う態度に、白澤はグッと息を詰める。乱暴な仕草で二人に近寄り、鬼灯の肩に手を置く。

「おい!鬼灯!」

「あぁ!?」

予想外に触れられ、名を呼ばれた事に驚き、鬼灯は体ごと振り返る。白澤は素早く彼女を抱き締めた。鬼灯は驚愕と困惑で固まってしまった。

「狡いじゃないか!」

叫ぶのと同時に、白澤の姿が歪む。人の姿が崩れ、獣の姿になる。しかも、何故か元の姿よりも小さい、小型の成犬並の大きさだ。

「僕には笑顔を見せてくれないのに、僕には抱き付いてくれないのに!なのにシロちゃんも兎さんも麒麟も狡い!」

まるで子供だ。内心呆れたが、しかしこんな小さなフワモコに冷たくする事も出来なかった。腕を上げ、小さな白澤を緩く抱き締める。彼は「キュウ」と甘えるような可愛らしい声を出した。

「やっと素直になる気になったかな」

「まったく面倒な奴じゃ」

鳳凰と麒麟はやれやれといった風に言う。

「さて、邪魔物は暫(しばら)く外に出とるかの」

「そうだね」

言うないなや、神獣二人は扉を開け店から出た。それに桃太郎も続き、店内にいるのは小さい白澤と彼を抱く鬼灯、そして遠巻きにしている兎だけだった。

 

 

立っているのも疲れるので、椅子に座り白澤を撫でる。彼は気持ち良さそうに目を細め、ソレを見た鬼灯は穏やかに笑った。

動物は可愛い。柔らかい毛並みを撫でるのは気持ち良い。撫でて気持ち良さそうにしてくれるのが嬉しい。だから鬼灯は微笑む。

白澤はずっと見たかった鬼灯の笑顔を見て、胸が甘く疼き出した。

「やっと見れた」

優しくて綺麗な表情だ。

「でも貴男、これでは誰が見ても飼い主とペットですよ」

こんな関係が貴男の望みなのですか?…そう訊けば、白澤は即座に「否」と答えた。

「僕は、お前の隣が欲しい。お前の笑顔が欲しい。独り占めしたい」

凄い事を言われたような気がして、鬼灯は撫でる手を止めて白澤を凝視する。

「僕は鬼灯が好きだから、お前を独り占めしたい」

見上げる顔は獣なので表情は分からないが、声は怖い位に真剣だった。あまりに予想外で、鬼灯の目は泳ぐ。

「私の事、嫌いなんじゃないですか?」

「素直になれなくてごめん。もう意地張るの止める。鬼灯が好き」

「何人の女性に同じ事を言ったのですか?私は貴男の遊び相手になどなりません」

「僕は、お前にだけは『遊んで』なんて言わない。本気で好きになった子に、言える筈ないだろ」

鬼灯の非難や反論に白澤が反撃する度、彼女は落ち着かなくなる。信じるのは怖いのに、信用したくなる。

「すぐに答えを出さなくて良いよ」

黙ってしまった鬼灯を見上げ、優しく話す。

「悪いのは僕だから。これから変わるから。だからせめて、獣の姿の時は傍にいて、たくさん撫でてよ」

お前に撫でられるのは気持ち良いね。…そう言って鬼灯の腹に頬擦りした。

彼女は何も言わず、黙って白澤を撫で続けた。


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