No.764306

Spirit World -06-

たりまさん

前の話がとても短かったので
少し長く書こうと思ったら僕史上一番長くなりました(白目)
最後まで見ていただけるとうれしいです。
コメントもお気軽にどうぞ。

2015-03-14 11:03:54 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:382   閲覧ユーザー数:382

Spirit World -06-

 

 

とても、寒い北風がふく中俺はジャンバーに下ウィンドブレーカーという

おそらく女子にはとてもモテない服装でセンクスを後にした。

今日は、何か違和感のある一日であり。

頭の中が混乱していたせいか、卵を忘れてしまった。

「あ、卵…まぁ、いいか…」

その時だった、寒い中一つ一つの細胞が縮まっているのがわかる。意識できる。

と、頭がおかしくなりそうなほどの寒さの中、コンテナのところで一人の女性を数人の男が

囲っていた。

でも、俺は何もしようとはしなかった。

ひとつに、よく見るからに筋肉がムッキムキしてるやつ(数人)をどう相手するか。

そして、他人を助けられたところで何のメリットがあるのだろうか。

 

――その瞬間。

 

思考を極限に展開させて、今それをやめて帰ろうとしたとき彼女はこちらを見て叫んだ。

「助けてください!」

その声は震えていた。

寒いからではなく恐怖を感じて生物が勝てないと感じたときの震える現象そのものであった。

 

だが、俺は無視をしようとした。

無視をしたかった。

自分も、あの生物たちには勝てないから。

怖いから、恐怖を感じているから。

 

――勝てない勝てない勝てない勝てない勝てない勝てない勝てない。

 

思考はこの言葉一色に染まった。

だが、瞬時にそれは出てきた。

染まりきった恐怖の中に。

埋もれていた中に、出てきたのは。

 

――『それでも、彼女は、彼女だけは助けたい。』

 

俺は、行動に移した。

叫んだ彼女の視線の先をみるように、睨んできていた男たちは

俺がこの思考に至ったことをすぐに理解し迎撃体制へと入った。

俺は、彼らの集団に突っ込んでいった。

戦おうとはせず、彼女に手を伸ばすように。

 

彼女は、泣きながら。

恐怖の涙か、感謝の涙か、俺にはどちらか、わかりかねない涙を流しながら

手を伸ばしてきた。

 

 

「はぁはぁ…」

なんて、清清しいのだろう。

俺は、その場に倒れこんだ。

もう出し切った体力が限界を超えて立ち上がることも出来ない。

しつこすぎる俺を置いて去った男たちは女の子のことも忘れたのか。

そんなことを考えながら、昼間の晴れ晴れとした心と共に太陽が出ている空を見ていた。

 

「あ、あの…」

女の子が俺に話しかけてきた。

頬に、涙の痕を残し話しかけてくる彼女の顔立ちはとてもスッキリしており

少し、釣りあがった目。やや高い鼻。

とても、普通に生活しては出会えないほどの美人であった。

「あ、あ、あはは…こんなボコボコにされちゃったよ。」

俺は、倒れながらも彼女に笑顔で答えた。

残念ながら、ジーパンだ。

「ありがとうございました!私、その関係ないあなたを巻き込んでしまって本当に…」

彼女の肩ぐらいまでの髪は荒ぶると表現していいほどの礼の仕方であった。

「大丈夫だって!ちょっと疲れただけ。」

すると、彼女は俺の額の髪をあげて。

「大変!頭から血が出てます。私の家、すぐ裏なのでそこまでいけますか?」

 

――え。

 

まさかの、思春期男子への家の誘い。

まさかの、美女との出会い。

俺の思考はあっちの方向へとどんどん働いていき、それはどこからか

起き上がれる体力へと変換された。

俺の家もすぐそこなのになぜ言わないかとかは小さいことは気にしないんだ。

なぜならば、彼女の御家にいけるのだから!!

 

 

「ここです。おっと、大丈夫ですか?」

神様、ごめんなさい。わざとです。

「大丈夫…いや、本当たすかったよー」

すると、彼女は頭を大きく横に振って

「それは、私のほうです!ほんっとうに、ありがとうございます!」

そこまで、感謝されると、さすがの俺も照れるというかなんというか。

「つきました!ここです。」

その刹那、俺の脳で何かが(うごめ)いたかのように頭痛が走る。

俺が見たその光景は、ただの古びたアパート。

ただ、そのアパートを見たことがある?

いやそんなはずは、こんなところにアパートなんて。

 

――『なかったはず。』

 

なぜ、こんなところにあるのだろう。

「どうしました?」

でも、ここで彼女を心配させることはこれ以上出来ない。

だから俺は我慢することにした。

 

「ここです、入って下さい。」

外装の古びた感じの割には中はとても綺麗なつくりになっていた。

このごろの、家の壁紙が張られており、日当たりも良くて

とても、いい物件だ。と感じた。

 

「確かここにあったあった!ちょっと、あっち向いて下さい。今消毒して包帯巻きますね」

俺は、内心いやな予感というものを予測していたのだろうか。

アパート前での頭痛はなんだったのであろうか。

この怪我なのかな。いろいろ考えていると

 

「いてっ。」

 

あ、ごめんなさい。とばかりに彼女が微笑んだ。

それに対して俺はむすっとして微笑んだ。

 

「はい、終わりましたよー」

包帯を巻き終わったところで気がついた。

「あれ、すごく軽い。おぬし、ただものではないな。」

彼女は、眉間にしわを寄せて。

「拙者、医者の卵でごわす!」

思わず俺は吹き出してしまった。

 

 

「今日はありがとう。」

俺は、治療してもらったお礼もかねて軽くお辞儀をした。

「いえいえ、こちらこそありがとうございました!あっ、そうだ。もしよかったらお名前とご連絡先とか教えていただいても…」

きた。きたきたきたきたきたきたきたきたきた!

 

『キターーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!』

 

そんな、ことを心で叫んだ俺はこう答えた。

 

「俺、吹雪カナタって言います。連絡先はこうでこうでこうかな」

彼女が必死にメモしている姿を見て。

 

『かわいい。』

 

「そうですか!私は、高薙セナって言います!あとでメール送りますね!」

そういって、笑顔で微笑む彼女は、本当に冗談抜きで可愛いと思った。

 

これが、恋かな…。

 

その、刹那。

セナの後ろに影が見えた。

俺はどこかで身に着けていた。

この恐怖は忘れていない。

 

「セナさん、危ない!」

 

「え?」

 

カナタは、セナを押し倒した。

すると、背後にあった窓ガラスが全て外から割れカナタたちの頭上に降り注ぐ。

そのベランダから現れたのは、夕日で反射するほどの綺麗な白髪の少女が立っていた。

 

 

え?え?え?

頭が混乱する。

俺が俺の記憶で俺の記憶が俺の記憶を交差させた。

この声この顔この白髪なにもかも

 

 

――『見たことがある。』

 

「……カタリナ…?」

 

すると、カタリナはこちらに近づきこう告げる。

 

「よくここまで頑張ったのう、カナタ。私は嬉しいのじゃ。」

 

小さな手で頬を優しく触られたとき俺は全てを思い出した。

「カタリナ…お前…生きてたんだな!」

カタリナは無言で頷きカナタを優しく抱きしめた。

 

 

Spirit World -06- END


 
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