No.763584

リリカル龍騎 -深淵と紅狼ー

竜神丸さん

第9話:スコープ

2015-03-10 23:20:54 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5722   閲覧ユーザー数:1745

深夜11時、人気の無い道…

 

 

 

 

 

 

 

-ガンッ!!-

 

「ぐ…!?」

 

仕事帰りだったサラリーマンの男性に、後ろから一人の暴漢が襲い掛かった。鉄パイプで後頭部を殴られた男性はその場に倒れ、暴漢は彼が持っているカバンや服のポケットを弄り、見つけた財布の中身を確認する。

 

「よし……結構な額だな…」

 

暴漢は黒い帽子にサングラス、それにマスクも付けている為に素顔は見えない。彼は周囲を見渡して誰も見ていないのを確認してから、奪った財布を懐に収め、倒れている男性を放置してすぐに姿を消す。その時…

 

 

 

 

 

 

-キィィィン…キィィィン…-

 

 

 

 

 

 

『キシシシシシ…!!』

 

近くのカーブミラーに、あのデモンポイズナーの姿が映っていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、喫茶店“翠屋”…

 

 

 

 

 

 

 

「二宮君! 苺のチョコケーキ、頼んでも良いかな?」

 

「分かりました。苺のチョコケーキですね」

 

喫茶店、翠屋。その厨房では高町夫婦、そして二宮の三人がエプロンを着た状態で、スイーツの調理作業に追われている真っ最中だった。士郎の指示を受けた二宮はチョコケーキの生地を作るべく卵の卵黄に砂糖、溶かしたバターに牛乳をボウルに入れてから泡立て器で一気に混ぜ始める。混ぜ終えた後は生地を型に移してからオーブンに入れて温め、その間にチョコクリームの制作に取りかかる。普通ならそんなすぐに慣れるような仕事ではない筈のパティシエ仕事に対し、二宮はあり得ないような早さで仕事に順応していっていた。これには士郎も感心の声を上げる。

 

「へぇ、随分と手際が良いね。前の世界で、パティシエでもやってたのかい?」

 

「前の世界では一人暮らしだったので。料理の方も別に、プロって言うほどの腕前でもありませんよ」

 

「それにしては適応するのが早いね。君が手伝ってくれてるおかげで、こっちは大助かりだよ」

 

「やれる仕事はこなします。接客もお菓子作りも何なりと」

 

「ははは、頼もしいね。頼りにしてるよ」

 

士郎と会話をしている間に、チョコクリームの制作もあっさりと完了してみせた二宮。焼き上がった生地をオーブンから取り出した彼は生地を三枚にスライスし、その上にョコクリームを丁寧に塗っていく。そこに切った苺をいくつか乗せてから二枚目の生地で挟み、更にまたチョコクリームを塗りつけ、苺を乗せてまた生地で挟み、更にチョコクリームを塗っては苺を盛り付けるなど、早いスピードで作業を続けて行く。数分後には見るからに美味しそうな苺のチョコケーキが完成し、二宮はこれを何等分かに切り分けてから皿に乗せていく。

 

「苺のチョコケーキ、上がりました」

 

「ありがとう。美由希、運んでくれるかい?」

 

「はいはーい」

 

苺のチョコケーキを受け取った美由希はそれをお盆に乗せ、更に注文されていたドリンクも一緒に乗せてから客の下まで運んでいく。そこに桃子が入れ替わる形で注文を伝えに来る。

 

「あなた、苺パイ2つにコーヒーを二杯お願い!」

 

「ん、了解! それじゃあ二宮君、切り分けたケーキはショーケースに並べておいてくれ」

 

「分かりました」

 

二宮は残りの切り分けたケーキを、販売用のショーケースの所に順番に並べて行く。そこには既に二宮が作り上げたいくつものスイーツが並べられており、どれもこれもが客の目を引き付けるほど綺麗に出来上がっている。

 

「…ふぅ。バニングスの奴、面倒な事をさせてくれる」

 

 

 

 

 

 

何故、二宮は翠屋でこんな事をしているのか?

 

 

 

 

 

 

それは、昨日の出来事である―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで働いてみる気は無いかい?」

 

「…はい?」

 

ミラーワールドにてモンスターを退治した後、すぐに翠屋まで戻って来たアリサと二宮。そこに士郎が翠屋で働く事を二宮に提案し、それに対して二宮は思わず呆気に取られていた。

 

「今の時期は客の出入りが多くてね、ちょうど人手が欲しいと思ってたんだ。仕事のやり方も丁寧に教えるし、どうだい?」

 

「ですが…」

 

「良かったじゃない。せっかくだし、ここで働きなさいよ」

 

「いや待てバニングス、何故お前がそれを決める?」

 

「さて、そうと決まれば早速準備に取りかからないとな。桃子、彼が着るエプロンを用意してあげてくれ」

 

「はいは~い♪」

 

「え、いや、あの、俺はまだ何も…」

 

「美由希、店内の掃除はもう終わってるね?」

 

「うん、さっきやり終えたばかりだよ!」

 

「いや、だから…」

 

「さて二宮君、早速で済まないけど準備をしてくれ。何、仕事はやり続けてれば次第に慣れていくさ」

 

「聞けよ人の話ッ!!!」

 

二宮がテーブルをバンと叩いて怒鳴っても、高町一家は既に彼が働く事を前提に準備を始めていた。これには二宮も苛立ちを隠さず、アリサはその横で面白そうに眺める。

 

「まぁそういう事よ二宮。働かざる者食うべからず、諦めなさい」

 

「お前……いや、もう良い」

 

「…えっと、ドンマイ? です」

 

「言うな月村。空しくなるだけだ」

 

もはや怒る事すら面倒に思えたのか、二宮は席に座って溜め息をつく。今の彼には、すずかの励ましすらも悲しいくらいに空しく感じてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……面倒臭ぇ…」

 

そんなこんなで、今に至る訳である。当然、モンスターが出た場合はすぐにそちらに向かって構わないと士郎達から許可は得ているので問題は無い。流れるように仕事が決まったのも別に構わない。それでも自分の意志に関係なく勝手に決められる羽目になったのが今の彼にとっては何処か癪に触っていた。

 

(あのライダーの事も、色々と調べなきゃならないってのに…)

 

昨日のミラーワールドでの戦闘中、自身が目撃した仮面ライダースコープ。自分やアリサと同じようにモンスターと戦っていたスコープの存在が、今の二宮にとっては最大の疑問となっていた。

 

(何故俺やバニングス以外にもライダーが……そもそも、どういった経緯でカードデッキを手にした? バニングスのカードデッキも、元は月村の屋敷に置かれていた物だ……誰かが何らかの経緯で、この世界の人間にカードデッキを配布している…? いや、まさかな……だが仮にそうだとすれば、一体何が目的で…)

 

二宮がショーケースにケーキを並べ終えたその時…

 

「士郎さん、材料の買い出し終わりました!」

 

店内に、材料の入ったビニール袋を持った少年が入って来た。

 

「お、歩君か。ご苦労様。材料は冷蔵庫に入れておいてくれるかい?」

 

「は、はい! 分かりました!」

 

買い出しから戻って来た少年―――文月歩(ふみづきあゆむ)は士郎の指示で厨房に入って行く。そんな彼の姿に気付き、二宮が士郎に問いかける。

 

「バイトの学生さんですか…?」

 

「ん? あぁ、そういえばまだ紹介していなかったね。彼は文月歩君。少し前にバイトで雇ってから、店の手伝いをして貰っている学生さんだ」

 

「学生さん……年代的には大学生ですかね?」

 

「その通りだよ。ただ彼の場合、人付き合いが少し苦手みたいだけどね……さて。歩君も買い出しから戻って来た事だし、二宮君には接客を任せても良いかな?」

 

「お安い御用で」

 

厨房での仕事から今度は接客の仕事に変わり、二宮は調理で汚れた両手を洗ってから頭の三角頭巾を取り、接客の準備に取りかかるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数時間後…

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、やっと終わったか…」

 

閉店時間になり、ようやくこの日の仕事が完了した。二宮が椅子に座って一休みしている中、士郎は歩にこの日のバイト代が入った封筒を渡していた。

 

「ご苦労様。はい歩君、今日のバイト代だよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「それから二宮君、これが君の分だ」

 

「ん、俺のもですか?」

 

「それはそうさ。せっかく仕事を手伝ってくれたんだから、タダ働きで済ませる訳にもいかないだろう?」

 

「…ありがたく頂きます」

 

二宮は士郎から封筒を頂き、それを懐にしまう。するとそこにアリサがやって来た。

 

「頑張って仕事したみたいね」

 

「バニングス……また面倒な事をさせてくれたな」

 

「文句言わないの。何もしないまま、屋敷で退屈な時間を過ごすより断然マシでしょ?」

 

「お前なぁ…」

 

「あれ、アリサさん…?」

 

「ん?」

 

声のした方にアリサが振り向くと、そこには驚いた表情をしている歩の姿があった。

 

「あら、歩じゃない! どうしてこんなところに?」

 

「そ、そっちこそ、どうしてこんな時間に? それに、その人と知り合いみたいだし…」

 

アリサも歩がこの翠屋にいる事は想定外だったらしく、歩の姿を見て驚きの表情を見せる。そんな彼女の為に士郎が説明する。

 

「彼は少し前にバイトで雇ったんだ。アリサちゃん、もしかして知り合いかい?」

 

「あ、はい。私とすずかの友達です。同じ大学に通っています」

 

「へぇ、友達同士だったのか! それは驚いた」

 

「はい。でも驚いた、歩までこの店で働いてたなんて」

 

「う、うん。僕も一人暮らしだから、自分で働かなきゃどうしようもないんだ…」

 

「その割にはまだ人見知りが直ってないのね。少しは自分でも直そうって思わないのかしら?」

 

「うっ……そ、そんな事言われたって…僕だって分かってるんだけど…」

 

アリサに指摘されて図星だからか、歩は何かを言いたげにするも上手く言葉を出せない。そんな彼は近くで缶コーヒーを飲んでいる二宮に気付く。

 

「あのぅ、アリサさん。この人は…」

 

「露骨に話を逸らしたわね……まぁ良いわ。そこでコーヒー飲んでる馬鹿は二宮鋭介。訳あって、今は私の屋敷に居候してるの」

 

「いきなり人を馬鹿呼ばわりとは失敬だな。そもそも、昨日お前が勝手に決めなきゃ俺だってこんな事には…」

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

「し、仕事中、自己紹介出来なかったから……えっと…文月歩、です……お、同じバイト仲間…だから……よ、よろしくお願いします…!」

 

「二宮鋭介だ……どうでも良いがお前、今ので胸ポケットから封筒が落ちたぞ」

 

「え……あ、あぁ!? す、すみません、すみません…!」

 

「いや、別に謝る事じゃないだろうに」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい!」

 

「お、おい、だから俺は別に…」

 

歩は慌てて床に落ちた封筒を拾い上げ、二宮に向かって何度も頭を下げて謝罪する。流石の二宮も、これにはどう返答してやれば良いのか分からず困ってしまうほどだ。

 

「あぁもう、アンタはまたすぐそうやって何度も謝るんだから……それがアンタの悪い癖なんだから、いい加減早く直しなさいよ」

 

「うぅ……そんな簡単に直せたら、僕だって苦労は…」

 

「はいそこ、口答えしない!!」

 

「は、はいぃっ!!」

 

「…難儀な奴だな」

 

アリサに注意されて背筋をビシッと伸ばす歩を見て、二宮は歩に対して何処か同情に近い感情を抱いていた。自分やすずか以外にも、アリサによって色々振り回されている人間を見つけたからだろうか。

 

「アリサちゃん、歩君。話すのは良いけど、そろそろ時間が時間だ。今日はもうこの辺で帰りなさい」

 

「あ、す、すみません士郎さん!」

 

「謝らなくても良いよ。明日また、手伝って貰っても良いかな?」

 

「は、はい、もちろんです! 今日は、これで失礼します!」

 

「うん。歩君もアリサちゃん達も、気を付けて帰るんだよ」

 

「はい。失礼しました」

 

歩は士郎にペコリと頭を下げた後、アリサや二宮達に対しても深々と頭を下げてから翠屋を後にした。その後、アリサと二宮も同じように店を後にし、鮫島の運転するリムジンへと乗る。

 

「…んで、今日もまた迎えを寄越したんだな」

 

「当たり前でしょ? 最近はまた物騒な事件が多いんだから。アンタ、今日のニュース見てないの?」

 

「ニュース? 何のだ」

 

「暴行事件ですよ」

 

二宮の疑問に、運転中の鮫島が答える。

 

「ここ数日、海鳴市では暴漢による傷害事件が多発しております。今のところ死亡者はまだ一人も出ていませんが、一連の事件が一人の人間による犯行なのか、それともそれぞれが別の人間による犯行なのか、警察もまだ捜査を続けている最中です」

 

「なるほどな……で、お前はその傷害事件に巻き込まれるのが嫌って事か?」

 

「あのねぇ、私はこれでもお嬢様よ。過去に誘拐されそうになった事だって何度かあったわ。それに今の私はもう19歳の大学生、下手すれば暴漢に無理やり犯されるなんて事も―――」

 

「…はん」

 

「…ちょっと、何がおかしいのよ?」

 

「別に? お前のような奴をわざわざ攫おうとする物好きなんて、この世にいたんだなって思っただけだ」

 

「それ、どういう意味かしら?」

 

「誘拐するほどの女の価値が、お前にはとてもあるようには思えんのさ」

 

「アンタ本気で殴るわよ?」

 

「上等だ、殴ってみろ。殴れるものならな」

 

「よ~し分かった、帰ったらマジで覚悟しなさい。変身してから殴ってやるわ」

 

「残念だったな、その時は俺も変身するだけだ」

 

アリサは黒いオーラを放ちながら右手拳を握り締めるも、二宮はこれといって恐れる様子も無い。流石に一度は本気で殴っておこうかなとアリサが考え始めたその時…

 

 

 

 

 

 

-キィィィン…キィィィン…-

 

 

 

 

 

 

「「!!」」

 

突如、二人の脳内に耳鳴りが聞こえて来た。

 

「鮫島、ちょっと止めて!!」

 

リムジンが止まり、二宮とアリサはすぐさま降りてカードデッキを取り出す。

 

「こんな時にモンスターとは、本当に面倒だな」

 

「本当、人の通りが少ない道で助かったわ」

 

「アリサお嬢様…」

 

「大丈夫よ鮫島。二宮も一緒なんだし、すぐに戻るわ」

 

心配そうにする鮫島にアリサがそう告げてから、彼女と二宮は手に持ったカードデッキをリムジンのウィンドウに向け、出現したVバックルを腰に装着する。

 

「「変身!!」」

 

二宮はアビス、アリサはウォルフに変身してから、すぐさまリムジンのウィンドウへと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、別の場所でも…

 

 

 

 

 

「…!」

 

とある人物が、モンスターの出現を察知していた。その口が小さく笑みを浮かべる。

 

「来たか……これで三匹目だ」

 

その人物は服のポケットに手を突っ込む。そこから手を出すと、そこにはあの蠍の紋章が描かれたカードデッキが握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キシャァァァァァァァァッ!!」

 

「きゃあ!?」

 

「チッ!!」

 

ライドシューターから降りたウォルフとアビスに、トカゲ型ミラーモンスター―――ギルリザーダーが素早いスピードで飛びかかって来た。ギルリザーダーの体当たりでウォルフが転倒し、アビスは素早く回避してから再び飛びかかって来たギルリザーダーを蹴り飛ばす。

 

「シャッ!?」

 

「たく、面倒な手間をかけさせるな」

 

アビスは左腕に装備されたアビスバイザーの口部分を開き、ギルリザーダー目掛けて水の衝撃波を連射。しかしギルリザーダーはそれを走り回る事で全て回避し、建物の壁を蹴って大きくジャンプし、アビスの肩の上を踏みつけてから更に高くジャンプする。

 

「ぐ!? チィ、この―――」

 

「私に任せて!!」

 

≪SWORD VENT≫

 

「どぉりゃ!!」

 

「キシャアッ!?」

 

ウォルフは召喚したハウルブレードを、あちこち飛び回っているギルリザーダーに向かってすかさず投擲。ハウルブレードはギルリザーダーの背中に命中し、ギルリザーダーは空中でのバランスを崩して地面に落下し、ウォルフは落ちたハウルブレードを素早く拾い上げてからギルリザーダーに斬りかかる。

 

「グガ、ギシャッ!?」

 

「いちいち面倒な事、させんじゃないわよ!!」

 

「それは同意だ」

 

「シャァァァァァァッ!?」

 

ウォルフに蹴り飛ばされた挙句、アビスのアビスバイザーで狙撃までされるギルリザーダー。壁に叩きつけられたギルリザーダーにトドメを刺すべく、二人はすぐさまファイナルベントのカードを取り出そうとする。

 

「ギシャアッ!?」

 

「!? 何…どぁっ!!」

 

「二宮!?」

 

「シャッ!!」

 

「あいたっ!?」

 

その直後、別方向から同じトカゲ型ミラーモンスター―――ガルリザーダーがアビスに向かって突進して来た。想定外の乱入にアビスが吹き飛ばされ、ウォルフがそれに驚いた隙にギルリザーダーも起き上がり、ウォルフに両足蹴りを叩き込む。

 

「いったぁ……こんの、トカゲの分際でぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

「ギギャアッ!?」

 

ウォルフは怒りに身を任せてギルリザーダーを真下から斬り飛ばし、ギルリザーダーはまたも吹き飛ばされる。そしてウォルフがすぐに後を追おうとした……その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ゴォォォォォォォォォォォ…-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある方向から、ライドシューターの音が聞こえて来たのは。

 

「! な、何…?」

 

その音に気付いたウォルフが振り向くと同時に、彼女の横に一台のライドシューターが止まる。ライドシューターのキャノピーが開き、そこから一人の戦士が降りて来た。

 

「嘘……仮面ライダー…?」

 

「……」

 

降りて来たのは仮面ライダースコープだった。スコープの姿を見たウォルフが驚きで唖然とする中、スコープは一度ウォルフの方を見てから、すぐにギルリザーダーの方へと視線を向ける。

 

「…三匹目の獲物か」

 

「ググ……ガギャッ!?」

 

スコープは何処からか取り出したデモンバイザーを構え、そのトリガーを引いて矢を放出。数発の矢がギルリザーダーに命中し、ギルリザーダーはまたも地面に倒れる。

 

「さぁ、大人しく狩られろ…」

 

「ッ…ギシャシャアッ!!」

 

「!」

 

「んな、キャアッ!?」

 

ギルリザーダーは口から火炎弾を放ち、スコープとウォルフのいる足元を攻撃する。爆発して二人が怯んだ隙にギルリザーダーは大きくジャンプして逃げ出し、二人が気付いた頃にはギルリザーダーは完全に姿を消してしまった後だった。

 

「…逃げられたか」

 

スコープは残念そうに呟いた後、改めてウォルフの方へと視線を向け、一歩ずつ彼女に近付いて行く。

 

「ね、ねぇ。もしかして、アンタも仮面ライダーなの?」

 

「……」

 

「ちょっと、返事くらいしなさいよ! アンタも私と同じ仮面ラ―――」

 

 

 

 

-ズバァッ!!-

 

 

 

 

「うぁっ!?」

 

ウォルフが言いかけた直後、スコープは彼女に返事を返してみせた。デモンバイザーに付いた刃で、ウォルフのボディを斬りつける形で。

 

「あ、ぐ……ちょっと!! いきなり何す…」

 

「ふん!!」

 

「きゃあっ!?」

 

ウォルフの言葉も無視したまま、スコープはデモンバイザーで斬りつけてから回し蹴りを繰り出し、ウォルフを思いきり壁に叩きつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪SWORD VENT≫

 

「もう一体いたとはな。実に面倒なモンスターだ」

 

「ギシャァァァァァァァァ…!!」

 

少し離れた位置では、アビスがガルリザーダーと対峙している真っ最中だった。ガルリザーダーは唸り声を上げながらアビスを睨みつけ、アビスも構えているアビスセイバーの先端をガルリザーダーに向ける。

 

(バニングスと離れちまったな。急いで合流した方が良いか…)

 

「ギシャアッ!!」

 

「…まぁ良い、まずはお前を倒す!!」

 

ガルリザーダーが駆け出すと共に、アビスも同じようにその場から駆け出して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がはっ!? ぐ、げほ…!!」

 

そしてウォルフは、スコープによって路地裏まで追い詰められていた。ボディから煙の上がっているウォルフが壁に寄り添う形で何とか立ち上がろうとしている中、スコープはカードデッキから抜き取った一枚のカードをデモンバイザーに装填する。

 

≪SPEAR VENT≫

 

「さて…」

 

上空からデモンスピアーが飛来し、スコープの右手に収まる。それを両手で構えたまま、ゆっくりとウォルフに接近していく。

 

「悪いが、お前には消えて貰う。俺の報酬の為にもな」

 

「ッ……報酬…? それ、どういう事よ…!!」

 

「話す義理は無い……ふん!!」

 

「ま、待ちなさ……うぁあっ!?」

 

スコープのデモンスピアーがウォルフを斜めに斬りつけ、ウォルフのボディから火花が飛び散る。ウォルフは反撃するべくカードデッキからカードを抜こうとするも、そうはさせまいとスコープが彼女を連続で攻撃する。

 

「せやぁっ!!」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

そしてデモンスピアーの強力な一撃が、ウォルフを容赦なく吹き飛ばすのだった。

 


 
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