No.758617

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第六十七話


 
 お待たせしました!

 それでは前回の続きからです。

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2015-02-15 14:35:18 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:4488   閲覧ユーザー数:3256

「それで?その于吉とやらは一体益州で何をしようとしているんだ?」

 

「ズバリ言うと『世界の破壊』になるのよねぇん」

 

 世界の破壊…?何だそりゃ?あまりにも荒唐無稽過ぎる貂蝉のその言葉に俺の頭の上に

 

 は完全に『?』マークが浮かんでいたりする。

 

「何だか良く分かっていないって顔ねぇん…仕方ない事とはいえ、寂しい限りだわねぇん」

 

 貂蝉はそう言いながらまたもや腰をクネクネし始める。

 

「おい、貂蝉…ちゃんと話をしろ。いきなり『世界の破壊』だなどと言われて誰が信じる

 

 んだ?もしそれが本当だと言うのなら、お前は…いや、お前達は神だとでも言うのか?」

 

「神では無いわぁん。私達は『管理者』って呼ばれる存在なのよぉん」

 

 管理者…何だそりゃ?俺の頭の上にはますます『?』マークが浮かぶ。

 

「確かにいきなり管理者なんて言われても理解出来ないわよねぇん。でも、こっちにも事

 

 情があって何でも話せるってわけでも無いのよぉん」

 

「話せないんじゃなくて話す気が無いの間違いじゃないのか?」

 

「ひどい…ひどいわぁん!此処のご主人様ってば何でこんなに冷たいのぉん!?前の時の

 

 ご主人様はあんなに優しかったのにぃぃ!うっうっう…ブビィィィィィィ!!」

 

 貂蝉はそう言いながら褌の中から取り出したハンカチのような物で涙を拭いたかと思う

 

 とそれで盛大に鼻をかむ…何だか見ているだけで体中に発疹が出来そうな光景だ。ちな

 

 みに燐里と英美の二人は既に失神しているので、貂蝉の話し相手を変わってもらうわけ

 

 にもいかなかったりする。

 

 

 

「もう良い…とりあえず話せる所だけでも話してくれ。このままじゃ話が全然先に進まな

 

 いし」

 

「そうねぇん…私としてはもう少しご主人様とお話してたかったけど『そのご主人様って

 

 いうのはやめてくれ。あんたとそういう関係になった覚えは無い』…本当に此処の北郷

 

 一刀は冷たい人ねぇん」

 

 貂蝉は渋々ながらも話をし始める。

 

「最初にあなたがこの世界に来た時に色々違和感を感じなかったかしらぁん?」

 

「違和感…?もしかして三国志の武将のほとんどが女性だったりする事とかか?」

 

「そうねぇん、それもその一つねぇん。そもそもこの世界は正史…あなたの世界の歴史を

 

 元にして出来た世界なのよぉん。私達はそれを『外史』って呼んでいるわぁん」

 

「ほぅ…元にしてというのは誰かが造ったという事か?」

 

「造ったというよりは正史の人間の想念が集まって出来た世界という方が合っているかし

 

 らねぇん」

 

 何とまぁ…この世界が誰かの想いで造られたとは驚きだな。

 

「そして外史は人の想いの分だけ生みだされる物でもあるのよぉん。場合によってはその

 

 想いが強すぎてとんでもない方向に行ってしまったりする位にねぇん。私達はそれぞれ

 

 の外史がちゃんと進むように常に見ている存在なのよぉん」

 

「ほぅ、だから『管理者』と名乗っているのだな?」

 

「そう、でもねぇん…人が大勢いればそれだけ多くの想念が生まれる、そうすればそこに

 

 多くの外史が生まれるという事になるのよねぇん。それはそれで良いんだけどぉん…」

 

 

 

「良いのに何か問題でもあるのか?」

 

「それだけ多くの外史が出来るとそれだけ管理する私達の負担も増えるという事なのよぉ

 

 ん。しかもそれは少なからず正史に影響を与えてしまう位にねぇん。多くの管理者はそ

 

 れでも構わないと思っているのだけどぉん、一部の管理者の中には『管理者の立場とし

 

 て多すぎる外史をこのまま存在させておいて正史に影響を及ぼす事を看過する事は出来

 

 ない。だからこそ管理者の力を以ていくつかの外史を消してしまうべきだ』って言いだ

 

 す者達が出て来てしまっているのよねぇん。私達はそれを『否定派』って呼んでいるわ

 

 ぁん」

 

「つまりその于吉というのはその否定派とやらの一人という事なのか?」

 

 俺の質問に貂蝉は頷く。

 

「その通りよぉん。私達は否定派の連中がこの外史に入って来れないようにずっと見張っ

 

 て来たわぁん。でも、あいつらは私達が『この外史はもう大丈夫』と少しだけ気を抜い

 

 てしまったその隙を衝いて入り込んで来たってわけ」

 

「大丈夫というのはどういう意味だ?」

 

「この外史は正史におけるあなたが後漢王朝と呼んでいる国のとある皇帝の『再び強い漢

 

 を取り戻したい』っていう想念から誕生した世界。そしてそれは大陸の中の動乱を鎮め

 

 五胡との戦いに勝利した事によって達成された。世界を生みだした者の想念が達成され

 

 ればその外史はもう正史とは違う物となる。そうなればもう否定派の連中もあえて消し

 

 にかからないと…間違いなく今まではずっとそうだったからねぇん。でも…」

 

 

 

「今回はあえてそのタブーを破ってきたという事か?」

 

「そういう事になるわねぇん」

 

「しかし、それが何故益州での騒ぎになるんだ?普通に考えるなら洛陽でそれをやった方

 

 がより確実に成功するんじゃないのか?」

 

「奴らの狙いは人の心の隙間に入り込んでそこから破壊の道を造る事。おそらくその隙間

 

 があったのが益州…というより劉璋ちゃんだったって事になるのかしらねぇん」

 

 鈴音の心の隙間って…まさか?

 

「あなたが考えている通り、劉焉が死んだ事ねぇん。表面上はそれを受け入れていたとし

 

 ても、父親が死んだ事に何も考えないわけは無いわよねぇん」

 

 確かに鈴音は劉焉が死んだ事を聞いた時には少なからずショックを受けてはいたけど…

 

 心の中まで聞かなかった俺のミスか。

 

「間違いなく于吉はそこにつけこんで劉璋ちゃんを術にかけたんだと思うけど…」

 

「けど?」

 

「本来なら操るのが目的だったはず。だけど眠るだけっていう事は、まだ術は不完全って

 

 事よねぇん」

 

「それじゃ…」

 

「ええ、今ならまだ間に合うはずよぉん。あなたならきっと劉璋ちゃんを悪しき呪縛から

 

 解き放つ事が出来るわぁん」

 

 よし、そういう事なら…あれ?

 

「でも、そういうのって鈴音に会ってすぐ解けるものなのか?」

 

「少なくともあなたが益州に行けば何かしらの効果はあるはずだから大丈夫よぉん」

 

「分かった、ならば…」

 

 

 

 そして三日後、俺は益州へ向かっていた。とは言っても鈴音の身に起きている事や貂蝉

 

 から聞いた事をそのまま皆に告げた所で誰も信用しないだろうという事で…。

 

「いや~、一音の顔を見るのが楽しみだなぁ」

 

 という少々白々しい理由での旅路である。(命は少々面白くない顔をしていたが)

 

 ちなみにそれに同道しているのは燐里・李厳さん(二人は一応連絡役の交代で帰るとい

 

 う名目)・輝里(半ば強引に付いてきた)・沙矢(俺の護衛として)、そして及川の五

 

 人(及川は益州の調査の為に諜報部隊を引き連れての同道)である。貂蝉はあの見た目

 

 で堂々と付いて来られても色々困るので別行動で益州に入ってもらう事になっている。

 

「それにしても…何でこんなに兵まで連れていかなきゃならないんだ?」

 

「一刀さん、あなたは衛将軍なのですから道中で何かあったら一大事なのです。これでも

 

 少数精鋭という事で大分減らして二千にまでしているんですからね。陛下からは『八千

 

 は連れて行け』って言われていた位なのですから」

 

 八千って…何処かへ戦でも仕掛けるわけでもあるまいに。しかも武装もしていけってい

 

 うので、両腕には手甲・両脚には鉄製の脚絆を装着していたりする…偉くなるってのは

 

 本当に面倒な事が多くなるよねぇ。

 

 俺がそんな事をぼんやり考えていたその時、前の方から何やら兵達の騒ぐ声が聞こえて

 

 くる。

 

「どうしました!何があったのです!?」

 

「も、申し上げます!前方で道を塞ぐ怪しい男が北郷様を出せと…しかもそれを取り押さ

 

 えようとした兵を叩きのめし…今は龐徳様が抑えていますが、押され気味に…って北郷

 

 様、お待ちを!龐徳様からは絶対に来てはダメだと…」

 

 兵士の止める声も聞かずに俺は馬を前方に走らせていた。

 

 

 

 そしてその前方にて。

 

「ふん、外史の傀儡にしてはなかなかやるな。でも、もう終わりだな」

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…くっ、まさかこんなに強い者がまだいるとは…しかし、此処

 

 は絶対に通しません!例えこの命と引き換えになろうとも!!」

 

 息も絶え絶えの沙矢の前で半ば余裕の笑みで立っていたのは、少年と見紛うばかりの幼

 

 い顔立ちの男であった。しかし、この場にいる誰しもが男がただ者では無い事を既に理

 

 解していた。それもそのはず、沙矢と男の周りには既に百人近い兵士が倒れていたから

 

 である。

 

「命と引き換えに、か…忠誠心にあふれていて結構な事だ。ならばその言葉の通りお前の

 

 命を貰った後で北郷一刀の所に行くとしようか」

 

 男はそう言って拳を構える。沙矢はその攻撃を受ければもはや自分もただでは済まない

 

 事を自覚しながらも槍を構える。

 

「待て、俺なら此処にいる!その娘には手を出すな!!」

 

「なっ、一刀様…何故です、何故此処に来たんですか!?」

 

 しかし、そこに一刀が駆け付けると沙矢は嬉しさ半分・非難半分の声をあげる。

 

「悪いな沙矢…本当なら君を見捨てて全速力で洛陽へ帰るべきだったのだろうけど…俺に

 

 はそんな事は出来ない。甘い考えなのは重々承知だ」

 

「ふん、やはり来たか。北郷一刀ならば来るだろうとは思っていたが…反吐が出る位に相

 

 も変わらずの甘ちゃんぶりだな」

 

 

 

「…どういう事だ?少なくともお前とは初対面のはずだよな?」

 

「ああ『お前』とはな…だが、俺はお前と同じ名で良く似た考えの甘い男を知っているだ

 

 けだ」

 

 ほぅ…俺と同じ名ねぇ。すると貂蝉が言っていた他の外史とやらにも北郷一刀がいると

 

 いう事のようだな。

 

「それで?少なくとも俺とは初対面なら、何故こんな乱暴なやり方をしてまで俺に会おう

 

 とするんだ…于吉?」

 

 俺はこいつが于吉かと思いそう問いかけたのだが、その瞬間そいつの口からまるで火で

 

 も噴くかと思う位の怒気と共に言葉が発せられる。

 

「誰が于吉だ!!あんな奴と一緒にするな!!」

 

「おや、そうなのか?俺は貂蝉から于吉の名しか聞いていなかったものでね」

 

「俺の名前は左慈だ!死ぬ前に良く覚えておけ!!」

 

 左慈ねぇ…その名も三国志で聞いた事があるな。ああいう怪しげなのはここらじゃ一緒

 

 くたに登場するのか?

 

「そうか…とりあえず名前は覚えた。でも、死ぬつもりも殺されるつもりもないけどね…

 

 左吉さん?」

 

「名前を間違えるな!!」

 

「悪い、悪い。于慈さんでしたね」

 

「左慈だ、さ・じ!!お前、わざとやってるだろう!!」

 

「いやいや申し訳ない、どうにも昔から人の名前を覚えるのは苦手なものでね…勘弁して

 

 チョンマゲ」

 

 

 

 俺がそう答えると左慈はますます怒りをこみ上げらせてくる。

 

「貴様…俺を愚弄するか!」

 

「いえいえ、愚弄なんてしてませんけど?ほんの少しおちょくってみただけで」

 

「もういい!お前は此処で死ね!!」

 

 左慈は忌々しげにそう叫ぶや否や俺との距離を詰めると同時に右足で蹴りを放ってくる

 

 が、俺はそれを一歩下がって避ける。

 

「ふん、どうやら本当に少しはやるようだな…だが、これは避けられるか!?」

 

 そして今度は蹴りと拳で連続攻撃を放ってくるが…こいつは本当にこれで本気なんだろ

 

 うか?正直言って、じいちゃんの攻撃に比べたら四分の一程度にしか感じないのだが。

 

「くっ、ならばこれでどうだ!」

 

 俺に全ての攻撃を避けられた左慈は連続蹴りを放ってくるこれは二連脚…いや、三連脚

 

 だな。ならば…。

 

 俺は左腕にはめた手甲でその初撃を逸らすと、一気にこっちから距離を詰めて左慈の腹

 

 に正拳突きを喰らわす。

 

「ぐはっ!?…バカな」

 

 さすがにその一撃が効いたのか、左慈は腹を抑えて数歩後ずさる。

 

「どうした左慈、もう終わりか?ならば次はこちらからだ」

 

 俺は刀を抜いて構えると連続攻撃をかける。その攻撃の幾つかは左慈に捌かれたものの

 

 確実に脇腹への一回は手応えがあった。実際、左慈はその場所を抑えて膝をついている。

 

 

 

「くそっ、バカな…この俺が一撃を入れられずにこんな…」

 

「いや、そんな事無いぞ。ほら、俺の右頬のこの辺りに一瞬かすってるだろ?」

 

 俺は血がにじんでいるその場所を指差して教える。いや~敵に丁寧に教えてあげるなん

 

 て、我ながら親切だなぁ。

 

 俺のその言葉を聞いた左慈はますます激昂する。

 

「おのれ…北郷一刀のくせにどこまでも俺を愚弄するか!」

 

「北郷一刀がお前にとってどの辺の存在なのかは知らないけど…そこまで上から目線で言

 

 われると少しばかり腹が立つ」

 

「俺は外史を管理する者、外史に入り込んだ異分子は全て排除すべきゴミだ!!」

 

「そうかい…それじゃ、お前はそのゴミにやられろ」

 

 俺はそう言って水平に刀を構えて突きを繰り出す。

 

「そんなみえみえの攻撃が当たるか!」

 

 左慈はそれを横跳びに躱すがそんなのは想定の範囲内、俺は突き出した刀を横薙ぎに変

 

 化して左慈の胴を切り裂く…ちっ、少し浅かったか。でも今までのダメージと加えれば

 

 左慈にとって決してそれは小さな物では無い。その証拠に左慈は完全に膝をついた状態

 

 で身動きが取れなくなっている。

 

「く、くそっ…この俺が此処まで」

 

「当然だ。そもそもそんな手負いの身体で俺とやろうなんて事自体が間違っている話だか

 

 らな。左肩の骨、誰にやられたかは知らないがようやく骨が繋がった位だろう?」

 

 

 

 俺がそう指摘すると、左慈の顔に驚愕の色が走る。

 

「くそっ、知っていたのか…」

 

「お前の動きが何だか鈍いんでね。しかも俺がそこに攻撃しようとした時のかばい方が少

 

 しばかり大げさに見えたしな」

 

 俺がそう言うと左慈の顔が苦渋に歪む。

 

「さて、まだやるか?」

 

「ちっ、これ以上は無理か…この場はこれで見逃してやる。次会った時こそお前を始末し

 

 てやるからな!」

 

 左慈がそう悪役のような捨て台詞を言うや否や、その姿は霧に包まれたようになって見

 

 えなくなる。

 

「ふぅ…とりあえずは凌いだか。沙矢、大丈夫か?」

 

「申し訳ありません、一刀様…本来ならば私が一刀様をお守りしなければならないのに」

 

「気にするな…というわけにもいかないかもしれないけど、あいつは少々特殊な存在な奴

 

 のようだからな」

 

「特殊な存在…ならば何故一刀様は戦えたのですか?」

 

「それは…『一刀さん、沙矢!無事でしたか!?』…ああ、大丈夫だ」

 

 そこに輝里達が合流する。

 

「かずピー、すまん!かずピーの後を追おうとしたら何な変な白装束の集団が現れて邪魔

 

 をして来たんで、それを排除するのに時間がかかってしもうた」

 

「そうだったのか。それはいい、とりあえずは怪我人を!それと及川、これを」

 

 

 

「何やこれ…もしかして?」

 

「ああ、襲って来た奴…左慈と名乗っていたが、そいつの身体に印を付けておいた。奴は

 

 何か術のような物で逃げたが、これで後を追う事が出来るはずだ。奴はおそらく于吉の

 

 いる所に逃げたはず…場所を見つけたらすぐに知らせてくれ。但し、あまり近寄るなよ」

 

「分かった、そういう事なら任しとき。お前ら、此処は皆に任せてワイらはワイらの仕事

 

 をするで!!」

 

 及川は部下を招集するとその場を離れる。

 

「俺達は怪我人の処置が終わり次第、成都に向かう!この先も奴らの仲間の妨害がある可

 

 能性もあるから気を抜かないように!」

 

 ・・・・・・・

 

 そして次の日、俺達は無事に成都に到着していた。

 

「一刀様、ご無事で!途中で不逞の輩に襲われたと聞いた時には肝を冷やしましたぞ!!」

 

「摩利さんもお変わりなく…っていうわけでも無さそうだね」

 

 久しぶりに見る摩利さんの顔は少々やつれ気味であった。

 

「お気遣い申し訳無い…今は鈴音様の身に起きた事を民達に知られるわけにもいきません

 

 もので」

 

 成程…鈴音の分まで摩利さんがカバーしていたという事か。それは疲れも倍増だろうな。

 

「かずピー、ええか?」

 

「及川…それじゃ」

 

「ああ、発見したで」

 

 

 

「発見って何をです?」

 

「鈴音をああいう風にした犯人の居場所をだ」

 

「何と!?やはりあれはただの病では無かったのですね?」

 

「ああ、実は…」

 

 ・・・説明中・・・

 

「くそっ、そのような術者の侵入を許してしまうとは…我が身の不徳とはいえ、何と忌々

 

 しき輩だ」

 

「とりあえず俺達はそいつの居場所に向かう。どうやらそいつはただ鈴音を眠らせる事が

 

 目的というわけでは無いようだからな」

 

「ならば私も『いや、摩利さんは此処で皆を守っていてくれ。行動が大きくなると奴らに

 

 気付かれる可能性がある』…分かりました」

 

 摩利さんは引き下がってくれたが、その顔には悔しさが滲んでいた。

 

 ・・・・・・・

 

 ~???~

 

「おや、左慈。随分と痛めつけられたようですね?だから言ったではないですか、此処の

 

 北郷一刀は手練れだと」

 

 于吉は戻って来た左慈の姿を見るなり他人事のような顔でそう言葉をかける。

 

「うるさい、黙れ!くそっ…身体さえ万全だったら遅れを取る事など」

 

「その肩の傷ですか?此処に来たばかりの時に戦った相手に負わされたというのは。左慈

 

 にそこまでの傷を負わせるなど、外史の人間にしてはなかなか強い者もいるのですね」

 

「ちっ、あの斬馬刀女め…今度会った時は絶対に引導を渡してやる」

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、あまりそんな事ばかり言ってると負けてばっかりの悪の組織の幹部みたいに

 

 なってしまいますよ」

 

「うるさい、お前こそどうなんだ!何時になったらその術は完成するんだ!?」

 

「もう少しなのですけどね…どうにも最後の一歩がまだ」

 

「さっさとしろ!もう北郷一刀が益州に入っているのだぞ!」

 

「そうは言われましても『そうか、まだ完成していないのなら好都合だな』…誰です!?」

 

 突然割って入って来た声に于吉は驚きと共に辺りを見回す。それもそのはず、于吉のい

 

 るこの場所には当然の事ながら結界が張ってあり、もし場所が分かったとしてもさらに

 

 張り巡らせた奇門遁甲の術で相手の意識が此処に向かないようにしてあったからである。

 

「誰です!姿を見せなさい!!」

 

「此処にいるとも…お前が于吉だな?」

 

 そしてそこに現れたのは…。

 

「…北郷一刀。まさか…何故?」

 

 一刀の登場に于吉と左慈の顔は驚愕と苦渋に歪んでいたのであった。

 

 

                                      続く。

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 ようやく此処まで書けましたので、中途半端な所で

 

 申し訳ないですが、お話をお送りします。

 

 一刀が何故于吉の居場所を見つける事が出来たのか

 

 などは次回にお送りさせていただきます。話の中で

 

 左慈に印をつけたというくだりがその答えなのでは

 

 ありますが、細かい事は次回にという事になります。

 

 とりあえず次回はこの続きから、拠点における于吉

 

 や左慈との戦いの終焉をお送りします。あくまでも

 

 拠点におけるという事ですが。

 

 

 それでは次回、第六十八話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 左慈に傷をつけた『斬馬刀女』は行方不明のあの

 

    お方です。正式な出番はまたその内に。

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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