No.758453

IS~歪みの世界の物語~

闇傷さん

14作品目です。
ようやく落ち着いて投稿できました。お久ぶりです!
最近口から赤い液体が出たりしましたが大丈夫です。えぇ、大丈夫ですとも……たぶん。

2015-02-14 21:12:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1170   閲覧ユーザー数:1153

14.歪みの世界の正体

 

「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりで良い感じですね!」

 

 朝。山田先生嬉々として喋り、クラスのみんなが大いに盛り上がる中、空気が読めないのか一夏だけが暗い顔をしていた。

 

「先生、質問です。何で俺がクラス代表になっているんですか?」

「それは、私たち三人が辞退したからですわ!」

 

 セシリアが前の時以上にテンションMAXで立ち上がった。

 ちなみに、俺は何かしら(いい意味で)様子がおかしかったセシリアの部屋に行き、話し合った見事に和解。というより、隼人と戦って何か感じたのだろう。戦う前とは別人なほどに変わっていた。

 ……それと、恋の相談をされたのも驚きだったが。隼人のやつも、隅には置けないな~ぷぷっ。

 

「で、でも強さで言ったら隼人やシグの方が―――」

「だから、だよ。兄さんISはなるべく多く経験を積むのが大切なんだし」

「隼人は俺と同じくらいに始めたんだけど……」

「とはいえ、隼人がお前よりも才能があるのは事実だ。油断や運や偶然が重なったとはいえ、代表候補生に勝ったんだからな。それに、お前を強くしたいっていう隼人の要望もあったんだ。それならクラス代表になったら戦いには事欠かないからな」

「でも、それなら隼人は強くならないんじゃ……」

「心配するな。才能がある隼人は応用を教えてもらうためにセシリアに。一夏は箒の指導の下、ISの基礎と根性を叩きなおしてもらえ」

「根性も⁉」

「あまったるい根性がなかなか抜けなかったから、生身の俺に簡単に負けたんだろうが。隼人は油断せずに俺を追い詰めたぞ」

 

 うっ……と、返す言葉が無くなった一夏。

 それが終了の合図となったのか、クラス代表は一夏に決定した。

 

 

 

 

「待たせたね、シグ」

「いや、大丈夫だ。それほど待っていないからな」

 

 隼人にそう言って、自動販売機で買ったジュースに口をつける。

 最近、様々な飲み物や食べ物を食いまくっている。元の世界には無かった物ばかりなので、心の底からおいしく感じる。もちろん、再現するためのメモも忘れない。

 

「それで、わざわざもう一度防音魔法をかけさせたくらいだから、何か特別な話でもあるのか?」

「ん、まぁね。

――――――神様に、会ったよ」

 

 隼人が他人事のように呟いた言葉を聞き、シグの動きが止まった。

 焦っているのか、隼人自身もうまく事態を呑み込めていないのか、前置きなしにすぐに話は始まる。

 

「元々、ここの世界には『織斑隼人』っていう人間は存在しない。けど、神様が大きく世界を動かしてくれたおかげで、僕はここに存在することができたんだ」

「……世界を大きく……か」

「うん、そう。けど、なるべく出る歪みが少ないように工夫はしてみたんだって。おかげで、なんとか世界は、元々僕が住んでいた、ISの小説通りに事が進んでいた」

「……それで?まさか、自分がいる世界の事を聞かされただけじゃないだろうな?」

「うん。

―――――――シグのせいで、兄さんが死んでしまう」

「…………………………………………………え?」

 

 隼人の言葉に、一瞬思考が停止する。

 ……俺が、一夏を?

 

 すると、シグが呆然としたのを見て慌てて隼人が今の説明に補足をつけ足した。

 

 

 この世界は、隼人が言った通り歪んでいる。

 そして、その世界はパンパンに水を入れた水風船のようにギリギリな存在だった。

 少しでも触れれば、破裂する。つまり、歪みが生じる、そんな崖っぷちの状態。

 その状態を、破裂させたのが俺「シグ・シリオン」という、存在しないはずの人が来たこと。

 

「つまり、偶然とはいえ俺がこの世界に入ってきた事によって、この世界が歪んでしまった……ってことか」

「うん。ちなみに、今シグが元の世界に戻っても意味ないらしいよ。破裂した風船は、もう元には戻らないからね」

「……そっか。けど、なんで俺が一夏を殺すなんて表現をしたんだ?世界が歪んだだけなら

――――――――――まさかっ!」

「………………」

 

 言っている途中に気づいた。それを見た隼人は、気まずそうに目をそらす。

 人間の体は、怪我をしたとき怪我する前の状態に戻そうとする。そのままだと苦しいからだ。

 なら、今のこの世界を人間に例えるなら、どうなる?

 元々、一夏という特殊な人物が一人いるのが正常。そして、隼人というかすり傷のような存在が入り、体が治そうとするかしないかの瀬戸際。

 そこに、さらに怪我の元となる俺が入ってきた。

 それならば、傷ついたこの世界はどうする?傷ついた体は、その原因をそのままにするはずがない。どうやって?

 簡単だ。怪我の元である『三人のうち誰か一人を消せばいい』。

 

 だからこそ、俺たちの命が危ない。なんらかの、世界が生み出す「予期せぬ出来事」が俺たち追い出す。もとい、殺すかもしれない。

 だからこそ。この中で弱い一夏が危険だと判断した。

 俺から見ると、実力的に一夏と隼人は五十歩百歩といったところだけど「命の危険にさらされている」という意識がある隼人はまだ安全だ。

 

「………一応聞くけど、兄さんに言うのは」

「止めておいた方がいいな。俺たちの事を信じてくれることすら怪しいし、余計な混乱を招く」

「だよね……」

 

 それじゃあ、言いたいことは終わったから。と隼人がササッとその場を離れる。

 ちょうど、魔法の効力も切れたし、このまま対策を練ってもいい案が浮かぶとは思わないし。

 

 それにしても、一夏の命が、か……。楯無に言うのは……止めておくか。何があるかはわからないけど、今は俺と隼人だけで守っていこう。

 

「そうなると、訓練の件はありがち間違えでも無かったのかもな」

 

 隼人はセシリアという代表候補生に守ってもらえるし、一夏は俺が眼を光らせる事ができる。それに、いざとなれば箒も何とか……少なくとも時間稼ぎはしてくれるだろう。……恋する乙女は強いからな~。うん、専用機でなくても力を十二分に発揮しそうな気がする。

 

「ふぅ、ご馳走様」

 

 この世界で覚えた通りの言葉を言って、紙コップとお菓子をゴミ箱の中へ捨てる。

 時間も時間だし、結羽と一緒に飯でも………あれ?

 

「お~い、簪さん?」

「…………?」

 

 水色髪の小動物を思わせる小柄な体。予想通り、ISの制作作業を手伝ってくれた女の子だった。

 そういえば、下の名前を教えてくれないのはどうしてだろう?名前を言ってくれた時も

「……簪です」としか言ってくれなかったし……べ、別に親しくなりたいから下の名前で呼びたいな~なんて思ってないんだからね!

 ギャグは置いておき、どうしてここの土地、日本は上が名字なのだろうか?外国……例えばセシリアだったら俺の故郷と同じように後の方が名字なのに。

 

「………シグ君?」

「あ、悪い。昨日まではありがとうな、簪」

「大丈夫。……IS、隼人君にあげたのは予想外だったけど」

「あぁ。ほら、生身でISと戦えるとか言っても信じられるか?」

「………(フルフル)」

 

 即座に首を振ってくれた。

 で、何でこの子は不思議そうに俺の体を揉みはじめるのでしょうか?

 

「……筋肉的に、私たちと変わらないように見えるのに」

「別に、外見の筋肉だけがすべてではないんだけどな。だから――――」

「……?え、キャッ⁉」

 

 片腕のみで簪を持ち上げる。普段から鍛えているし、“拘束魔法”を使わなくてもこれくらいは………ふむ。

 

「簪って、けっこう軽いな。のわりには筋肉とかついているし」

「……………‼」

「(ギュゥゥゥッ!)いたたたた⁉か、簪、太もも抓るなって!」

「お、降ろして………!」

 

 恥ずかしそうに顔を赤めている簪。まぁ、誰かに突然持ち上げられたら驚くよね。

 ………これはこれで可愛いけど。

 

「よし、一緒に食堂に行くか。このまま」

「……………⁉」

 

 簪の顔がさらに赤くなり目に涙が溜まりだす。きつく、恨みを込めるように睨んでいるが……それも良い。代わりに太ももへの痛みが三割増しになった気がするけど。

 

「ほ、本当に行くの……?」

「もちろん!」

「せ、せめて降ろして……!恥ずかしい……」

「…………………」

 

 か、可愛い……!

 けど、さすがにこれ以上やると嫌われそうなので降ろしてやる。……直後に蹴られました。痛い。

 ……あ。そうだ。

 

「なぁ、簪」

「………何?」

「また、今度から一緒にIS関連の物を作らないか?」

「え……?」

 

 警戒するような目から一転。驚くような、嬉しそうな表情で俺を見た。

 

「……今度は何を作るの?」

「ん~。この世界で浮かんだ武器とか、ISももう一機作りたいかな?今度こそ俺ように」

「………『この世界』?」

「何でもない。それよりも、一緒に居てもいいか?迷惑なら」

「―――――め、迷惑じゃない‼」

「……え?」

「だ、だって!武器とかのことたくさん知っているし、駄目な点も細かく教えてくれるし、私には思いつかない事もたくさん……教えてくれたから……」

 

 少しずつ声がしぼんでいく。恥ずかしかったのだろうか?

 ……けど、嬉しかった。

 顔を少し赤めてうつむいている簪の頭に俺の手を乗せた。頭を撫でた。

 

「し、シグ君?」

「ありがとう。簪」

 

 素直にお礼を言った。飾らない言葉で、ストレートに。

 ………簪の顔がさらに赤くなったのは、指摘しない方が良いだろうな。簪は人と関わるのが苦手そうだし、直接お礼を言われたら照れるよな。

 

「それじゃ、食堂行くか。腹も減ったし」

「………(コクンコクン)」

 

 簪は目を合わしてくれなかったけど、小さく頷いてくれた。

 

 

 

 

 途中、結羽と会って三人で一緒に晩御飯を食べたけど……食事になった途端に二人の機嫌が悪くなったのは、気のせい……だよな?

 


 
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