No.758112

真・恋姫†無双 侍臣墜遇、御遣臣相偶~第七席~

ルルさん

『新・恋姫無双・乙女だらけの三国志!!………わぁ乙女(^∀^。)?』 ……と遮侖が喜んでいる余裕もなくなってきていますが。

前回は去年中に!と思ったら若干オーバーしてしまい、年越しの瞬間は投稿ページに向かっていたというw

英雄譚のキャラの口調や、相手の呼び方など、よく分かっておりませんが、なにとぞ。

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2015-02-13 15:24:13 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3193   閲覧ユーザー数:2856

第7席

 

 

3日ほど経った朝である。

「一刀、そろそろいいと思うかい?」

まだ、誰も起き出していない明け方、一刀と張譲は肌寒い庵の外にいた。

「俺に聞かれてもなぁ・・・・・・」

「ああ、分かってる。僕と白湯様の気持ち次第ではあるんだ。ただ、陛下は何太后とともに向こう側についている。陛下はもう先は長くないだろうけど、陛下がお隠れになる直前に白湯様を連れた僕たちが現れなければいけない。残るは・・・・・・」

暗殺。

張譲は低い声でささやいた――。

 

 

「白湯様、そろそろ戻らないと」

張譲はその日、白湯に言った。

自分の肚はまだ決まっていないのだが、仕込みを済ましておかなければスパッと決断をすることが出来ない質であった。これは宦官になる前からである。

「そう?じゃ、早いほうがいいんだもん。お昼食べたら洛陽に戻るんだもん」

一方こっちは決断力はあるほうだから、張譲が劉協を操るなど不可能なのだ。

 

ここには馬も、輿もなかったので、劉協は自らの足で歩かなければならなかったが、彼女にとってこれは逆に好都合だったようで、自ら学んだことについて、廬植に聞いたり、皇甫嵩に問題を出したり、趙忠にお菓子の作り方を聞いたりしていた。

洛陽に入ろうというときに、兵を引き連れた集団に出会った。

「あれは董卓よ」

皇甫嵩が一刀に言った。

彼女は何度か董卓のことを調べていた。

悪い噂はなかったが、これと言って良い噂もなかった。

もちろん斥候の基準が荒れ果てた洛陽であるから、そこで悪い情報が流れるのはよほどの悪か、情報の操作である。

一刀は史実における董卓の評判は承知している。

仮に目の前に現れたのが慈しみのこもった目をした少女であったとしても、偽善者という言葉もある。董卓らにとっては不幸なことに、一刀は外史としての董卓を知らなかった。

 

こちらに心配そうな目を向けてくる董卓にむかって、皇甫嵩が叫んだ。

「いったいどこの軍勢ですか!前を塞ぐとは不敬な!」

もちろん董卓にそのような思いはない。ただ、わずかな人数で荒れ果てた洛陽に入ろうとする一刀らを気にかけていただけである。

「あ、あの、私は西涼の刺史、董卓です。あ、あの~、大丈夫ですか?」

董卓はゆっくりと近づいてきた。

張譲と皇甫嵩が剣の柄を握ると、董卓の後ろに控える呂布と華雄が威圧感をむき出しにした。静かな顔をしているが、張遼も神速の勢いで飛びださんと構えている。

 

「控えろ!董卓!この者どもに危害を加えることは許さん!」

比較的背が高い一刀と皇甫嵩の陰に隠れていた劉協が声を張り上げた。

董卓はその声に立ち止まったが、後ろから来る気迫はさらに強くなり、悪いことには董卓は馬に跨がったままであった。

 

一刀と皇甫嵩の間からゆっくりと姿を現した劉協は、董卓を睨み付けた。

 

「あっ、もしかして、ち、陳留王ですか」

董卓は馬から転げ落ち、酷く背中を打ったが、急いで拝した。

 

その董卓の脇を何も言わず足を進めながら、劉協は一刀たちに、ついてくるよう合図した。

董卓軍は、事態を把握していない呂布は張遼と陳宮に無理矢理頭を下げさせられ、華雄は賈詡に頭を押さえつけられ、動けないでいた。

 

このとき、董卓は白湯を「流石皇族の威光あり」と見ただけであったが、洛陽の内部にも詳しい賈詡は「彼女のほうが今の帝より幾分マシではないか」と考えたのだ。

 

 

結局、一刀たちは張譲の屋敷に戻ることが出来なかった。

何進殺害の犯人であるから、彼女の威を着ていた諸侯たちが何度も捜索に入っている。

劉協が「当たり前のことだもん」といって、彼女の私室の壁をグッと押すと、なぜか回転扉になっていて、その裏の部屋で住むことになった。

表立って動けないのは廬植や皇甫嵩、趙忠も同じである。

彼女らも同じ隠し部屋で寝泊まりしているため、男一人、女三人、去勢済み男一人という、相変わらず複雑な環境となってしまい、夜遅くに寝台から起き出した劉協が、「何かヤっていたらからかってやろう」とコッソリ覗きに来るのは困りものであった。とりあえず、廬植か趙忠が余計なことを吹き込んだのだろうと思っていたら、張譲が劉協に性のあれこれを教えたのだという。性が無いやつが性を教えるとは此れいかに、である。

 

 

一方、劉宏の具合もいよいよ悪くなっていた。

引きこもり生活をしている彼女にとって、唯一の命の源ともいえる趙忠の料理がなくなったからである。

「今日も黄の料理じゃないの?美味しくないの・・・・・・」

と、食べる量が次第に減ってきている。

一度何皇后が自ら厨房に立ったこともあったが、それぞれの料理に箸を一度つけただけで、寝台に入ってしまった。

「ああ、趙忠はもう戻っては来ないのかしら。このまま空丹様が弱り切ってしまわれたら、私は・・・・・・」

新たに都に入った董卓が、偶然の縁から劉協に取り入っている。

今のところ、天子が崩御あらせられると、後継は陳留王、劉協となるので、今の何皇后の立場が董卓に奪われるのは間違いない。

その後、自分がどのような境遇になるのか、考えるだけでも恐ろしい。まして、姉の何進は、先日十常侍に殺害された。しかし、十常侍のうち、10人は殺されたが、張譲と趙忠の二人だけは、姿をくらましたようで、見つけ出すことは出来なかった。

ちょうど2人が姿をくらました際、劉協も謎の失踪をしている。ついでに将軍2人も消えたらしいが、洛陽に戻ってきたときは6人と董卓の軍勢であった。残念ながら、もう一つの天を名乗っている愚か者の、光る服は確認できなかったようだ。

張譲と北郷は服は替えているが、少なくとも張譲の人相はほとんど合っている。

絶対あの中にいたはずだ。

董卓を呼び出して問い詰めてみても、誰一人名乗らなかったため、劉協しか知らないという。嘘をついているようにも思えない。ある日には、張譲とおぼしき人物が街を歩いているという報告があり、すぐに手下の者が捕らえに行ったが、街の人たちは「そんな人は来ていないし、ここ数日見かけていない」と口をそろえて言うのだ。

さらに、張譲と思しき者が買い物をした直後にその店に行って、前の人物の人相を聞き出しても、背丈や髪の色はあっているのだが、残念ながら顔立ちは全然違うようである。

さらにさらに、業を煮やしてその者を捕らえようとしても、待ち伏せしたところ悉く躱され、行き止まりに追い詰めたかと思うと、なぜか姿を消しているのであった。

さらに、劉協にも一度聞いたことがあるが、

「何進と十常侍の争いに巻き込まれたくなかったから廬植の庵に隠れたんだもん。あの人たちは廬植と、皇甫嵩と、給仕をしてくれた人たちだもん」

と純真な顔で答えられたので、深い追求は無意味だと思った。

また、廬植と皇甫嵩の屋敷に行っても、

「何進大将軍の命令で、益州の反乱を鎮めに行っております」

という返事が返ってきた。

姉の何進が殺された今、事実を確認するすべはなく、しかも、ちょうど益州では、大規模な反乱が起こっていて、いくつもの軍が鎮圧に出向いてしまっているので、虱潰しに探す余裕はなかった。

尻尾は掴みかけているのだが、本人を捕らえられず、趙忠の料理が食べられない劉宏の病状はますます悪くなる。

医者は天子の崩御を予測して口にすることなど出来ないため、何皇后の見立てでは、もって2週間、というところであった。

 


 
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