No.756845

なのはExtreme  番外編 

Blazさん

久しぶりになのはですが、今回は番外編。
時代的にはStrikers編から二年ほど前の話です。
メインは彼女。ちょっとした過去話となります。

2015-02-07 19:32:12 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:970   閲覧ユーザー数:931

番外編 「キオク ~ Type : Fate ~ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、今でも鮮明に覚えている記憶。

生涯忘れる事の無いだろう、辛い過去のキオク・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一番鮮明に覚えている痛みは今でも「コレだ」と絶対に言える。

身体の全体に至るまで一瞬でその激痛が走り、グチャグチャにかき回されたかのように揺れ動いた身体は重く、私は口からどろりとした液体を吐き出した。

 

 

 

鮮血をあそこまではっきりと吐き出した感覚を感じたのも、あれが最初だろう。

 

 

 

その前にも何度か吐いた事はあったが、別のことを考えていたので血を吐いているとわかったのは吐いて数分経ってから。

しかし、その時は違った。

たった一心の思いが、その痛みと共に消え去っていったからだ。

何も考えられず、何も思う事も出来ない。

どす黒い何かを腹の中に抱えていたが、その黒い何かは全身の痛みによってかき消された。

 

 

全身の痛みが身体中をかき回し、私は咳き込む。

その咳にも少量ながら赤い鮮血が混じっており、口の中にもぬめりのような物が所々についていた。

 

まるで小石か木の葉を飛ばすかのように飛ばされた私の身体は、たった一撃でここまでのダメージを負ったのだ。

 

・・・いや、違う。その前に何度も何度も攻撃を喰らい、私の身体は既にボロボロだったのだ。

何度も何度も、無意味だと分かっているのに、勝てないと分かっているのに。

愚かだった私は激情に身を任せ暴れるかのように鎌を振るった。

 

だが、ただの一度さえも攻撃は通じず、私はアッサリと攻撃する側ではなくされる側に変わってしまったのだ。

 

 

 

 

 

「ごほっ・・・ごほっがはっ!!」

 

 

 

「おーおーまだ頑張るかー健気だねぇ」

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

 

 

 

痛みだ。身体中に痛みが走り、それが銃爪で私は更に鮮血を吐き出す。

口からだけではない。腕から、足から、背中から、頬から。

あらゆる場所から血を流し、私は倒れかけていた。

 

だが、倒れる事は許されない。

誰に言われた事でもない自分が自分に言い聞かせ、課した事。

倒れるより立て。止まるより走れ。

自身の身体に鞭を打ち、立つ事でさえも出来ない悲鳴を上げた身体を私は持ち上げた。

 

 

 

 

 

「ま。その目だけは褒めてやるぜ。俺はそう言うの好きだからよ」

 

「・・・・・・五月蝿い・・・!」

 

「ヒヒヒヒヒ・・・まだ喋れる元気もあったのかよ。そこの赤チビといいお前といい・・・ホント区別がはっきりとするな、お前ら(魔導師)はよ」

 

「・・・・・・。」

 

「そこで寝てる白餓鬼と夜だか闇だかを統べるとかほざいてる餓鬼はサンドバックにもならなかったが・・・お前等はいいサンドバックだな、オイ。お陰で力加減ってのを調整したり、色々と面白いモン見られたからなぁ・・・!」

 

「黙れ・・・・・・」

 

「それにだ。あの腐れ脳みそ共が一体なにしようとしていたのか・・・それもハッキリしたし・・・今日はいい事ずくめだなぁ!ヒハハハハハ!」

 

「黙れよ・・・このクソが・・・!!」

 

 

「・・・まだヤルってか?そこまでぼろ糞の雑巾みてーになってんのに?」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・ま。後はデクの棒みたいに突っ立っているだけが精一杯だもんなぁ・・・さてどうすっかなぁ・・・」

 

 

正面に立つ男。その男が私をここまで傷つけた張本人。

だが、そんな事は関係ない。私は奴を倒す。そう決めたのだ。

なのに、私の力では届かず、それどころか傷一つでさえも負わせられない。

これほどの絶望感が今まであっただろうかと聞かれれば、一度も無いだろう。

 

 

男はどこまでも余裕の表情だった。不敵の笑みを浮かべ、ちゃらちゃらとした動きを見せるその姿に、その時はもう何も思える事はなかった。

負の感情の嵐が吹く私の心の中は余裕を持つ事も出来ずただ殺意と怒りだけがあったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・何処まで私は愚かなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・実験ついでに、テメェの魔力をいただくとするか」

 

 

「ッ・・・!!」

 

 

刹那。私の周りに突如深緑の『何か』が姿を見せ、私の身体へと巻きつく。いや、纏わりついたのか。生き物かどうかも分からない何かはまるで蛇の様に私の身体に纏わりつき、触れる感覚もないまま私の身体を深緑の色に塗りつぶした。

暖かい感覚も冷たい感覚もない。触れている事さえも怪しいその感覚を肌に感じ私の身体は身動き一つ取れなくなってしまった。

幸い、頭部だけはまだ動かす事は出来たが、恐らくそれは故意で頭だけを残したのだろう。

用心深くも無い奴の事だ。行動の一つ一つを楽しむかのように、正に勝ち誇った様子でいる。

 

「さてと。んじゃお前の魔力をいただくと・・・」

 

「・・・りか?」

 

「・・・あ?」

 

「・・・ったつも・・・か?」

 

「んだよ、懺悔ならハッキリといえってんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・勝ったつもりかって言ってるんだ!!!」

 

 

「・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉の直後。私と奴の上空から黄色く光る一閃の光が降り注いだ。

何処からともなく現れたその一閃の雷は私達を容赦なく光に曝し、自らが放つ稲妻で傷つける。

稲妻の光は容赦をしない。迅雷の如く敵を捕らえ、その身で焼ききり切り裂くのだ。

 

 

「なっ!?」

 

 

「うっ・・・ぐっ・・・!!」

 

 

降り注いだ雷の光が消え去ると、奴は数歩後ろに下がり突然の事に白くなっていた思考を再起動させる。思った以上に耐性があったのか。だが、突然の雷には驚いた様子で私に纏わりついていた何かも奴と共に引いていく。

 

「つっ・・・テメェアホか!!くそっ・・・死なばもろともなんざあり得ねえってのに!!」

 

「っ・・・っ・・・っ・・・・・・」

 

「決死の覚悟の攻撃ご苦労なこった。だがなぁ!そんなんでやられる俺じゃねえんだよ!」

 

「・・・だろうなぁ・・・」

 

「っ・・・まだ喋れるか。流石はプロジェクト・Fの遺産・・・あのクソババアがやりそうなこった・・・!」

 

「・・・!!」

 

「だが。もうテメェの身体も限界のはずだ。大人しく死んどけや!!」

 

 

解放された私はもう動く事でさえも辛い状態だった。

微動をするだけで身体に痛みが走る。この状態だと無理矢理にでも身体を動かせば激痛に襲われるのは間違いないだろう。

だが、立たねばならない。激痛の走るこの身体に鞭を、茨を打ち鳴らし身体を持ち上げ、剣を持たなくては。使命感ではない絶対的な何かに駆り立てられ、私は自分の身体の崩壊を省みず危険な行動に出る。

 

 

 

 

「カートリッジ・・・!!」

 

 

「ッ!?」

 

 

 

《 カシュッカシュッカシュッ!! 》

 

 

 

 

「ッ!!!!うっ・・・ぐああっ!!??」

 

心臓が痛い。胸が熱い。

まるでその烈火に身体を焼き尽くされ、胸の辺りに穴が開きそうな熱さと痛さが襲い掛かる。

血管の中の血が煮えたぎり沸騰して血管をはじけ出ようとする。

身体の至る所が暴れだし、もう自分の身体を意地出来るかでさえも分からない。

 

「ッ!?テメッ・・・カートリッジの魔力で無理矢理ホネや筋肉を補強しやがったな!」

 

「・・・・・・。」

 

「だがよ、んな事しても身体が動くわけが・・・」

 

 

 

 

 

「・・・私を誰だと思っている」

 

 

 

 

「・・・!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう何もかもどうでもいい。この身体が崩壊しようとも、心臓が破裂しようとも。

この身体が動き、武器を持ち、戦えるのなら・・・

 

私は本能に従い、奴を殺そう。

 

 

 

 

 

「フッ・・・・・・フハハハハハ・・・アハハハハハハ・・・!」

 

「・・・ぶっ壊れたか。しかもマジで立ち上がりやがった」

 

「・・・・・・。」

 

「おー随分スッキリした顔になったじゃねぇか。殺意だけを考えで動く人形・・・それがお前の(次元接触用素体)だからな。原始回帰っつーの?コレ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

「マジで人形みてーになっちまったなぁ・・・あーつまんね。テメェの苦痛に歪んで、憎しみと怒りに満ちた顔。アレが一番よかったんだけどなぁ・・・」

 

「・・・・・・・・・。」

 

「・・・聞けやしねぇか。もうタダの獣だからな」

 

そう。私はもうタダの獣だった。獲物を狙い、喰いかかろうとする肉食の獣。

その時のことは余り覚えていないが、私が狂声と共に奴へと切りかかったのは覚えている。

そして。

 

 

 

 

 

 

 

「アアアアアアアアアアアアああああああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

私が殺戮を楽しみたい一心で奴へと斬りかかった事も。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

 

誰かが私を呼んでいる。

暗く何も感じられない世界の中、誰かが私を呼んでいる・・・気がする。

声が届かないのだ。ただ誰かが声を発して呼んでいると言う事だけは確かだが、一体誰がどこからまでは分からない。

 

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 

一体誰なのだろう。声の分からない誰かの呼び声を耳に私は無気力なまま聞き続けていた。

 

誰とも分からない声に、私は僅かな温もりを感じた。

優しい声なのだろうか。ほんのりと温もりが肌に感じられて、気持ちが良い。

 

 

 

「・・・・・・ト」

 

 

「・・・誰?」

 

 

「・・・イト」

 

 

 

「・・・アレ・・・この声・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーいフェイト!おきろって!」

 

 

「ふにゃっ・・・リョウ?」

 

 

目が覚めると、私の視界に一人の男の声。そして男が座っていた。

不知火霊太。私はリョウを呼んでいる。

 

「酔っ払いじゃねぇんだぞったく・・・自棄酒で寝る奴なんて始めてみたぞ」

 

「・・・おしゃけ?」

 

「呂律回ってねぇし・・・つか、状況覚えているのか?」

 

「・・・・・・。」

 

酒。思い出した。

私ことフェイト=T=ハラオウンは彼と酒を酌み交わしていたのだ。

場所はミッドチルダのはずれにある裏路地の小さなバー。

彼がよく行く場所だというので私が付いて来た。そして、日ごろのストレスなどを忘れる為に・・・

 

「・・・むにゃっ・・・//」

 

「ひぃふうみぃよぉ・・・お前そんなに飲む奴だったか?」

 

「飲むよぉ、いーっぱい飲むんだぁ///」

 

「どうみても飲まねぇよな。つか酔ってるよな!?」

 

「酔ってらいよぉ・・・ぶうっ」

 

「・・・・・・駄目だコリャ・・・はやての奴はそこそこ飲めるが、まさかお前あんま飲めないとはなぁ」

 

「飲むってぇ!いっぱい飲むのぉ!!」

 

呂律が回らず、気分がすっかり出来上がっていた私は赤らめた顔で目の前で呆れ顔のリョウに言い訳する。どう見ても酔っているのだが、その時の私はとてもその事を受け入れるような状態では・・・なかったのだ。

 

 

「ったく・・・どうすっかなぁ。このままだとコイツ潰れるのは目に見えてるし・・・」

 

「んぐっんぐっんぐっ・・・」

 

「ってまだ飲むか!?」

 

「ぷっはぁ!!」

 

「・・・・・・。お前、オフだと結構はっちゃけるよな」

 

「ふえぇ?」

 

「・・・駄目か。もう酔っ払い女だ・・・」

 

「ふえへへへへへ・・・まだまだのむのらぁ・・・♪////」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・当然のことながら、これが私の限界点であったらしく、その後。私はテーブルの上に勢い良く倒れたのだと、彼は言った。

一瞬だけだったが、意識がハッキリとした時で彼が「やっとか・・・」と呟いたのを何故か頭が覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・う・・・ううんっ・・・」

 

それからまたどれだけ経ったのだろう。酒の匂いが香るバーとは違う。

冷たい風が頬を撫でて火照る肌を冷やしていく。

『あの時』とは違う。優しい夜風が私の身体を冷ましてくれたのだ。

 

「おっ起きたか。酒飲み姫」

 

「・・・アレ、リョウ・・・・・・?」

 

「勘定したから。安心して寝とけ。まだ頭痛いだろ?」

 

「・・・・・・ふえ?」

 

頭が痛い。なら、どうして私はこうも正常に歩けているのだろうか。

いや、そもそも歩いているのか?足を動かしている感覚も私服の為に穿いたニーソックスに肌が当たる感触も無い。

下半身が動いてないのだ。

そして、私の視界には何か黒い物体が三分の一を占めている。

目の機能が戻ってきたのか、段々と周りの状況が理解できてくる。

黒い髪。暗闇に曝された首。そして『彼が着ていた』グレーのシャツ。

何より、鼻には汗が混じった鉄の匂いがする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・えっ?」

 

「・・・?」

 

「・・・えっ・・・リョウ。今・私・・・」

 

「・・・おぶってるがそれがどうか「ふんッ!!!」アバカム!?」

 

 

鉄拳一発ッ!!

迂闊だった。何が迂闊だったかはさておくが、現状私は彼におぶって貰っているのだ。

野郎の汗臭さを鼻に嗅がせ、出来上がった筋肉のある背中にもたれる私は、友人のはやて曰く『デカイ』と言う何かを当てながら、彼におぶって貰っていたのだ!

 

「な、なにをするだぁ!?」

 

「五月蝿い五月蝿い五月蝿いッ!!!」

 

「あだだだだだ!?」

 

彼の髪を引っ張る私はもうまともに考える事は出来ない。

恥ずかしさの余りに無茶苦茶な行動に出てしまい、彼の頭を引っ張り叩き引っぱたいていたのだ。

赤面となった私の顔を見えていないのが幸いだったのか、私は彼に一方的な攻撃を加え自分を離すように攻撃で伝える。

 

「フェイト、下!したみろ!?」

 

「下・・・・・・ッ!?」

 

しかし、彼の言うとおり下を見た瞬間。私は動きを止めた。

彼が歩く道は道ではなかったのだ。

いや、確かに道と言うべき地面なのだろう。だが、コンクリートで固められた道は纏まった姿をしておらず、所々が崩壊。今彼が足をつけている鉄の道も虫食いの状態でその食われた個所は酷いものだ。

本来人や車両が通るべき道であった鉄橋。崩壊したが辛うじて姿を保っている状態だった。

 

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

「な?だから大人しく・・・」

 

「なんでこんな所通ってるの!?」

 

「なんか異様に表通りが騒がしくてさぁ・・・んで人目を避けて進んでいたら近道がてらココに・・・」

 

「・・・でも、こんな橋が街中にあったなんて・・・」

 

「ここいらは元々地上のテリトリーだったらしいが、地上の幹部を殺るって為に本局が派手にやったようだな」

 

「・・・ッ!」

 

その事件には覚えがあった。数ヶ月ほど前に起きた事件だ。

この鉄橋を渡っていた車両が謎の爆破によって巻き込まれ乗っていた運転手一人と地上本部幹部、そしてその幹部の秘書官が死亡したという謎の爆破事件。

ニュースでは車のエンジントラブルと言ういい加減な事で始末されたが、どう考えてもそれだけで出来る爆破の痕ではなかった。

大方、爆薬か何かを仕掛けで時限式か何かで爆破したのだろう。

 

身内の何人かはニュースを聞き流していたが、私はその幹部とは何度か話をしたことがある人物だったので他人事にすることは出来なかった。

 

「・・・調べたの?」

 

「108の連中とな。ついでにマサキも。夜遅くに下の川から爆薬の破片とか探すの・・・マジでめんどくさかったぜ・・・思い出しただけでも欠伸が出ちまう」

 

「じゃあ・・・」

 

「けど、あの後に「実は爆破されました」なんて言っても、世論が信じると思うか?」

 

「・・・・・・。」

 

「本局寄りの世間が、地上の話を聞かずに馬鹿やったのだって少なくもない筈だ。それを・・・お前が一番よく知ってるはずだろ?」

 

「・・・・・・うん」

 

 

そうだ。今の世の中は『まだ』本局よりの状況が続いている。

世の中が大きく変化しようとしているこの時世。混沌とした時代の中、それでもまだ弱者達は象徴(イコン)に縋り付いていたのだ。

 

最大の友。それが今の時代のイコンなのだから。

 

 

「・・・・・・。」

 

 

「嫌な世の中になっちまったモンだ・・・お前も気をつけろよ、フェイト」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・フェイト?」

 

「・・・リョウ」

 

「・・・?」

 

 

 

「・・・もう・・・何処にも行かないよね」

 

「・・・なに言って・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・みんな別々の方向に・・・自分が信じた道を歩こうとしている。けど・・・それでみんなが何処かに行って・・・ニ度と会えなくなるかもって・・・昔思ってさ」

 

「・・・まぁ。実際俺たち、テンでバラバラな方角見てたモンな。はやて然り。アリサの奴然り・・・お前然り」

 

「うん。みんながみんな、自分の信じた道や目標に向かっている。それは私も嬉しいと思う・・・けど・・・」

 

「何時かは対立するかも・・・か?」

 

「・・・・・・。」

 

無言の肯定に彼は深く息を吐いた。

虫食いの足場に気を使いながらも、余裕ともいえるため息には私も驚きを感じた。

夜間での飛行魔法は使用禁止。なので普通なら徒歩か車か。だが、今回私達は両方とも歩きなので自宅までの帰り道。それを彼は私をおぶって、しかも危険な鉄橋を渡っている。

彼がどれだけ危険な事に慣れているのか。それが、私には直ぐに分かった。

 

こんな事でも危険と感じない彼は少し異常だ。

自分や普通の人間ならまだ少し怖がる筈。

 

「・・・・・・。」

 

小さな違いではあるが、それでも『違い』であるのには変わりない。

これを喜ぶべきか。そうでないか。深く考えれば考えるほどそう思えてしまう。

 

「対立が怖いって考えもある。けど・・・」

 

「なのはの事か」

 

「・・・うん。みんなを自分と同じ方向に向かせようとする。それぞれがそれぞれの方向に向かう事を是としない」

 

「・・・お前の同じだな」

 

「・・・・・・!」

 

「・・・フェイト、独りになるのが怖いんだろ?」

 

「・・・・・・ッ。」

 

誰とも対立したくない。誰とも別れたくない。

独りになりたくない。

 

私の考えは彼の言葉通りだ。

 

「独りになりたくない。誰かと一緒に居て貰いたい」

 

なのはの考えはそれを悪化させたものだ。

独りになりたくない。魔法しか出来ることがないから、その繋がりを失ってしまえばまた自分は独りになってしまう。

それが彼女の本心だ。

だから自分の引いたレールを走らせる様に強制する。自分と同じ方向、わかる方向に向かわせて自分が見える範囲に私達を置く。

 

昔の彼女ならそれを是としただろうか。

 

今ではそれを聞くことも出来ない。

 

「母親に半ば見捨てられ最後の繋がりだと言う事でそれでも必死に従った。そして。お前は自由となった。多くの繋がりを持てた。けど・・・」

 

「・・・。」

 

「・・・俺たちは皆同じ方向。同じ場所には向かわない。必ずどこかに分岐点がある。それを無くす事も、壊すことも出来ない。出来たら・・・それはそれで終わりだ」

 

「・・・・・・。」

 

「誰だって独りになる。独りになってしまう時がある。それが現在なだけだ」

 

「だと・・・いいな」

 

「・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ねぇリョウ」

 

「あんだ?」

 

「リョウは・・・一緒に居てくれるよね」

 

「・・・話聞いてたか?いや・・・」

 

「・・・うん。けどさ。違う方向に向いていても・・・何時かまた離れることになっても・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在は・・・一緒に居てくれるよね?」

 

「・・・・・・。」

 

甘い匂いだ。彼の鼻に、酒とは違う甘い香りが漂う。

アルコールの匂いも混じっているのだろうが、それでも私の匂いというのは甘いものなんだろう。

その甘い匂いを鼻で大きく吸い込み、体内に溜まっていたガスを吐き出す。

大きくため息をついた時と同じだ。

 

 

「当たり前だろ」

 

「・・・!」

 

「お前、一人だとドンくさいからな」

 

「・・・・・・。」

 

期待した私が馬鹿だった。

悪意がないのは分かっているが、幾らなんでも言いすぎなのではないかと思いたくなるその台詞に私は彼の首周りに置いてい腕を少し締めた。

 

しかし、その次に出てきた言葉に私の腕の力は直ぐに緩んだのだ。

 

「それに。お前といた方が・・・なんか面白いからよ」

 

「・・・え?」

 

「なんでだろうなぁ・・・なんか、フェイトと居た方が飽きが来ないっつーの。なんつーか・・・」

 

「・・・たの、しい?」

 

「・・・そうかもな」

 

「・・・・・・。」

 

 

 

嬉しい。その感情で私の胸は一杯だった。

これほど嬉しいと思ったのは何時以来だろう。

それぐらいの嬉しさと幸福が私の中に溢れ、鼓動は速くなっていく。

思えば思う程。感じれば感じるほど、心臓の鼓動は速く熱くなっていく。

その熱に身を任せるかの様に、私は・・・

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・あ、あのさリョウ・・・」

 

「ん?なん・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さな音を鳴らし、口付けをしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けど・・・その後、何故か私の意識は途切れ、次に目覚めたときには・・・

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

 

 

彼の家で。しかも・・・裸体で寝ていました・・・

 

 

 

「・・・・・・何で!?」

 

 

 

 

 

 


 
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