No.740015

恋姫OROCHI(仮) 弐章・弐ノ壱ノ壱 ~新しい駿府へ~

DTKさん

どうも、DTKです。
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、36本目です。

今回から駿河編が始まります。
この直前の駿府屋形様子は、こちら↓

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2014-11-27 23:26:27 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3978   閲覧ユーザー数:3395

 

 

 

いつものように白い光に包まれ、時を越えた剣丞たち。

剣丞が目を開けると、そこは駿府屋形の主殿だった。

 

「あれ、剣丞さま?」

 

声に振り返ると、よく見知った顔、ひよがいた。

 

「何か忘れ物ですか?…ってあれ?鞠ちゃんに……え?雫ちゃんに幽さん?え、え、なんで?どうして!?あっ!知らない人もいる!?」

 

ころころと変わる表情に、思わず笑みがこぼれる。

 

「ひよ、どうかしたのですか?ずいぶんと騒がしいようですが…」

 

ひよの声を聞きつけてか、詩乃まで顔を出す。

 

「詩乃っ!」

「え?」

 

詩乃の顔を見るなり、雫が詩乃に抱きつく。

 

「詩乃…詩乃…無事でよかったです……」

「え…な……し、雫!?どうしてここに…」

 

ここにいるはずのない雫に突然抱きつかれ、さすがの詩乃も面を食らう。

 

「はっはっは、うら若き乙女が絡み合う様子は、見ていてこそばゆいですなぁ」

「んもう!幽、感動の再会なの!」

「俺は眼福だけどね」

「その声は、鞠さんに幽さん、剣丞さままで!?これは一体どういうことですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

駿府屋形の上段の間に、主だった者が集まる。

明命と翠の二人は、畳が珍しい様子だ。

上段には駿河の主・鞠と、その夫として剣丞が座る。

形式上仕方ないとはいえ、剣丞はどうにも座り心地が悪そうだ。

そして剣丞から見て左に、詩乃・ひよ・森一家の留守居・各務。

右には、幽・雫・翠・明命と並んでいる。

話を切り出したのは詩乃だった。

 

「……さて。では剣丞さま、ご説明いただけますか?」

「あぁ…」

 

剣丞は要点をかいつまんで説明する。

この世界は三国志の時代と戦国時代が合わさった世界であること。

自分たちは過去と未来を行き来し、仲間を助けて回っていること。

そしてこの後、この駿府が何者かに攻め滅ぼされることを告げた。

 

「…とまぁ、こんな事情なわけなんだ」

「はぅ~~……なにがなんやら……」

 

ひよは話に全くついていけず、頭の周りに星を飛ばしている。

 

「ふむ……」

 

詩乃は顎に手を当て、頭の中で情報を吟味しているようだ。

 

「まだ信じられない、詩乃?」

「…いえ。確かに信じ難い話ではありますが、剣丞さまの前例もありますし…何より、幽さんまでもが真面目な顔をしていれば、嫌でも信じざるを得ないでしょう」

「やれやれ。それがしの顔は嘘発見器ではないのですがな」

 

ははは、と乾いた声で笑う幽。

 

「冗談はさておき、それで剣丞さま。この後、この駿府に何が起きるのですか?」

「それは…」

 

横目で鞠を見る。

 

「よく分からないの。鞠が来たときには、駿府屋形が何日か前に陥ちたみたいに、ボロボロになってただけだから…」

「そうですか…」

「鞠さん!お嬢…お嬢はっ!?」

 

普段(戦場以外で)は落ち着いている各務が声を荒げ、森一家の現棟梁である小夜叉の身を案じる。

 

「…………」

 

鞠は首を横に振った。

タンポポに頼み込み、駿府屋形陥落を確認した後も駿府中を探してもらったのだが、駿府屋形にいた面子も、外に出ていたころと小夜叉の姿も、確認できなかった。

しかも、この探索で時間をとられてしまったせいもあり、二人は洛陽の陥落も目の当たりにすることになる。

 

「まあまあ、各務さん落ち着いて。俺たちはみんなを助けるために、ここが何者かに襲われる『前』に来たんだ!とびきりの援軍を連れてね!」

 

剣丞は詩乃たちに対し、見てくれとばかりに右腕を大きく広げる。

 

「その時にはいなかった、駿府のお屋形にして鹿島新当流の使い手、鞠。智勇兼備の将、幽。今龐統、雫。そして…」

「そちらの方々が、先ほど仰っていた?」

 

詩乃が合いの手を入れる。

 

「そう!俺の姉ちゃんにして三国志の英傑。馬超さんと周泰さんです!」

 

剣丞の紹介に居住まいを正す二人。

剣丞に促され、翠のほうから口を開いた。

 

「あたしの名は馬孟起!真名は翠だ。みんなは剣丞の仲間で背中を預けて戦うんだ。あたしのことは翠って呼んでくれ!」

「私の名は周幼平。字は泰。真名は明命です。私の真名も、皆さまにお預けします!」

 

真名の意味の違いを説明し、駿府組も改めて個々人の自己紹介を交わす。

 

「しかし、あの涼州の馬超殿や、孫仲謀を護りし周泰殿にお目にかかれようとは…」

 

詩乃は胸に手を当てて感動しているようだ。

各務さんも似たような反応をしている。

ピンときていないのは、ひよだけだ。

 

「やっぱり、そういう反応になるんだ」

 

剣丞は雫の反応を思い出す。

 

「それは当然です!三国志といえば、曹孟徳の軍略や、諸葛孔明と周公瑾の息詰まるやりとりなどに、どれだけ胸躍らせたか!」

 

熱く語る詩乃。

 

「恥ずかしながら、私も曹孟徳の陶謙討伐には心躍りましたわ」

 

私もあの場に居たかったです、と頬を赤らめながら語る各務。

ちなみに、曹操の陶謙討伐といえば、凄惨な大虐殺で有名だ。

と、雫が隣の翠たちに説明する。

 

「こっちじゃ華琳の奴、そんなことしたことになってんのか?」

「…はい」

「私たちの知ってる華琳さまは、そんな方ではないです。お胸も小さい良い人です」

 

胸は関係ないけど、いい人であることは間違いない。

 

「ひよは、さっきから黙ってるけど…」

 

喧騒をよそに、ほとんど口を開いていないひよを剣丞は心配する。

 

「その…私は農民の出なので、本とかほとんど読んだ事ないものですから…」

「あぁ、なるほど…」

 

詩乃も各務もれっきとした武士で、書に触れる機会もあった。

が、農家出身のひよが三国志など読んだことがあるわけがなかった。

 

「あ、でも孔明さんとか、呂布さんくらいは聞いたことがあります!」

 

知力が凄い、武力が凄い、などの例えに使われているので、凄い人だという認識はひよにもあった。

 

「ま、その三国志の凄い人たちがいるわけだから、鞠が見た過去とは既に変わってるんだ。その時と比べて戦力が上。その上、何かが起こることは分かってるんだから、いくらでもありようはあるよね?」

「お任せ下さい」

「もちろんです」

 

自信たっぷりに詩乃と雫が言い放つ。

 

「まずは、今後何が起こるか分からない以上、ころと小夜叉さんにはこちらに戻ってきてもらうのがよろしいかと」

「そうですね。ではまず…」

 

剣丞隊の二大頭脳が揃った今、戦術戦略面において、隙はなくなった。

ここにおいて、駿河での逆襲劇が始まろうとしていた。

 

 

 


 
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