No.739024

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第378話

2014-11-23 17:00:31 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2239   閲覧ユーザー数:1996

 

 

 

 

~鳳翼館・露天風呂~

 

「さっき俺を元気付けた時といい、以前の休息日でビリヤードを教えてくれた時といい、何だか姉と接しているみたいに感じましたから……まあ、姉がいない俺が言っても説得力はないと思いますけど……ハハ…………」

「…………………………フフ、リィンさんには本当に驚かされますね。まさか私に弟が”いた”事を言い当てられるなんて。」

苦笑するリィンの様子を見た後複雑そうな表情で黙り込んでいたクレア大尉はやがて静かな笑みを浮かべて呟いた。

「え……”いた”って事は………………」

クレア大尉の答えを聞いたリィンはある事を察して不安そうな表情をした。

「……………………リィンさんは私のファミリーネームに聞き覚えはありませんか?」

「クレア大尉のファミリーネーム―――――”リーヴェルト”にですか?………………――――あ。もしかして、エレボニア帝国の音楽楽器の大手メーカーの……!と言う事はまさかクレア大尉はアリサと同じ……!?」

クレア大尉に問いかけられたリィンは考え込んだ後ある事を察し、驚きの表情でクレア大尉を見つめ

「――はい。一応リーヴェルト社の会長の娘に当たります。ですが私はアリサさんと違い、妾腹の子なので私にとっては継母に当たるリーヴェルト社の会長とは血が繋がっていません。」

「っ!」

クレア大尉の口から出た予想外の答えを聞いて息を呑んだ。そしてクレア大尉は過去を話し始めた。

 

「――――物心が着いた頃から母はいませんでした。家族は2歳下の弟と、父と……そして父の正妻の家族でした。父は母を愛していたらしく、母が亡くなった際にまだ幼い私達を引き取ったとの事です。

 

妾腹の子である私達は正妻を始めとした正妻の子供や親戚達から厳しい目で見られていましたが、父は私達を大切にしてくれました。父が手配した様々な分野の家庭教師から乗馬や礼儀作法等、貴族の子女や子息のように様々な分野を学び、習得しました。

 

弟と共に屋敷の離れに住まわされ、また日曜学校に行く事も許されず、ほとんど軟禁のような生活でしたが当時の私にとっては苦ではありませんでした。大切な弟と、時間ができた際は必ず顔を出してくれて一緒に遊んでくれる父…………不自由ではありましたが、毎日を家族と過ごす生活は幸せでした。

 

しかしそんな生活が10年前に父が亡くなった事で崩れ去りました。――――流行病(はやりやまい)だったそうです。私達を庇っていた父が亡くなった事で、正妻や正妻の家族たちは私と弟を父の葬儀に参列する事も許さず、屋敷から追い出しました。

 

実家に追い出された私達は七耀教会を頼りました。教会は私達の事情を聞くと同情してくれ、帝都内にある教会の福音施設に私達を入れてくれました。屋敷にいた頃と比べると質素な生活ではありましたが、衣食住には困りませんでした。

 

貴族の子女のような言葉遣いをし、愛想もなかった私は同じ福音施設に住む子供達からも敬遠され、友人もできませんでしたが、人なつっこい性格をしている弟は私とは逆に多くの友人ができました。ここが私達の安住の地になる……―――そう思った矢先に弟が父がかかった流行病にかかってしまいました。その頃のその流行病の治療法はゼムリア大陸ではまだ見つかっていなかったそうです。

 

唯一の治療法は異世界の癒しを専門とした宗教――――”癒しの女神(イーリュン)”教の”癒しの聖女”を始めとした”癒しの女神(イーリュン)”教の高位司祭による治癒魔術か”癒しの女神(イーリュン)”教のみに伝わる秘薬――――”イーリュンの息吹”という秘薬のみだったそうですが…………リィンさんも学院の授業等で習い、知っていらっしゃるとは思いますが”癒しの聖女”を始めとした”癒しの女神(イーリュン)”教の高位司祭達は”癒しの女神(イーリュン)”教の治癒魔術の使い手を必要とする場所―――――病院等近くに医療施設がない場所を回っています。その為巨大な病院があり、七耀教会の大聖堂もある帝都には”癒しの女神(イーリュン)”教の規模はそれほど大きくない為高位司祭も常駐しておらず、当然秘薬もその教会には置いておらず……弟は逝きました。

 

後は……以前お話した通り、宰相閣下に拾ってもらい、閣下より”居場所”を与えてもらい、今に到るんです。」

 

 

「…………………そんな事が。その……クレア大尉は”癒しの女神(イーリュン)”教に関しては思う事はないのですか?」

「フフ、あの子の死が”癒しの女神(イーリュン)”教の責任ではない事くらいわかっていますから彼らの事は恨んで等いません。それどころか無償で私の頼みを聞いて秘薬や高位司祭の手配の努力をしてくれた上、弟が死んだ時も葬儀に参列してまるで自分の家族が亡くなったかのように悲しんでくれましたから、今でも彼らには感謝しています。弟が死んだ理由は私が無力だった……―――ただそれだけです。」

過去を聞き終えたリィンに尋ねられたクレア大尉は苦笑した後静かな表情になり

「……今でもたまに思うんです…………私はあの子の姉としてあの子の短い生涯を幸せにできたのか、と。」

やがて辛そうな表情で呟いた。

 

「…………あくまで俺の推測ですが、弟さんは幸せだったと思います。」

静かな表情で黙り込んでいたリィンはクレア大尉を見て呟き

「え……な、何故ですか?」

リィンの答えを聞いたクレア大尉は戸惑いの表情で尋ねた。

 

「以前にも答えましたがクレア大尉はとても優しい方ですから。しかもクレア大尉は今でもとても美人な方ですから、子供の頃からとても可愛い女の子だったと思います。」

「か、可愛……っ!?」

リィンの言葉を聞いたクレア大尉は顔を真っ赤にして若干混乱し

(うふふ、その調子よ、ご主人様♪そこで一気にたたみかければ、その娘も落ちるわ♪)

(ふふふ、どうやら”4度目”になる確率が非常に高くなってきましたね。)

(リ、リィン様……どうしてそう、女性がその時に求めている言葉をすぐに思いついた上、躊躇う事なく口に出せるのですか……?)

その様子を見守っていたベルフェゴールとリザイラは興味ありげな表情をし、メサイアは冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。

 

「そんなクレア大尉が自分のお姉さんなのですから、弟さんも誇らしかったと思います。もし俺がクレア大尉の弟でしたら、きっとクレア大尉の事を誇らしく思っていたでしょう。」

「そう……でしょうか……?結局何もしてあげられなかったのに…………」

「――クレア大尉。辛い事を思い出させるようで大変申し訳ないのですが、クレア大尉は弟さんを看取る事はできたのですか?」

「え?はい。」

リィンの問いかけに不思議そうな表情をしたクレア大尉は頷き

「…………弟さんの死に顔はどのような表情だったんですか?」

「え…………―――あ……………………」

リィンに尋ねられたクレア大尉はかつての哀しい出来事――――自分の弟が死ぬ際、弟は安らかな笑顔をクレア大尉自身に向けていた事を思い出した。

 

「笑って……いました……あの子……安らかな笑顔を浮かべ……て…………私の、事…………”最高の姉さんがいて幸せだった”、と……言って………………どう、して…………今まで思い出せなかったの、でしょう……?………」

かつての出来事を思い出したクレア大尉は涙を流し始めて身体を震わせ

「クレア大尉。」

「あ…………」

涙を流すクレア大尉をリィンは自分の胸に引き寄せた。

 

「頼りない俺の胸でよければ、いつでもお貸しします。」

「リィン、さん…………う……く………あ、ああっ、ああああああ………ッ!」

そしてクレア大尉はリィンの胸の中で泣き始め

(うふふ、ここは空気を読んで結界を張っておきましょ♪)

(ふふふ、一体”どちらの意味”で結界を張ったのやら。)

(さ、さすがにここからすぐに肉体関係の間柄には発展しないと思うのですが……)

その様子を見て結界を張るベルフェゴールの様子をリザイラは静かな笑みを浮かべて見守り、メサイアは冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。

 

 

 

クレア大尉の過去とか今後の軌跡シリーズで判明して全然違うじゃねえか!?というクレームは止めてくださいね。あくまで私が考えたオリジナルの設定にしてありますので。まあそれはそれとして……次回はクレアファンお待ちかね(?)の展開です、ハイ(遠い目)そしてその時に皆さん、リィンに対して強烈な殺意が湧く事になるでしょうね!!私もその一人ですが!(大激怒)


 
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