No.738900

【第26回フリーワンライ】あとのまつり【参加作品】

https://twitter.com/freedom_1write/status/536142106289389568
久々に参加させていただきました(*´∀`*)何でお題がひらがななんだろう?と思っていたら、こんなのが出来上がりましたとさ。

2014-11-22 23:19:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:627   閲覧ユーザー数:626

「あとのまつり」

 

気がついた時には、何もかもが終わっていた。

 

間違っていたのは俺なのか?

訳も分からず意味も無く、男は膝から崩れ落ちる。

 

胸が痛む。

断片的にしかない記憶。

覚えているのは、相手に銃を向けたその瞬間だけ。

 

殺らなければ、殺られてしまう。

その事だけに必死だった。

その事に必死で、自分の置かれた状況、立場を確認する事を怠っていた。

 

その昔、この土地では大きな戦争があった。

男はそこで英雄と呼ばれ、名声を上げる程の腕前だった。

幾多の血を流し、それでも尚、国の為に戦い続けた男だった。

 

しかし、それも今や昔の話。

 

戦争は、とっくの昔に終わっている。

 

だが、それでも未だに夢を見る。

戦場で戦う己の姿。

死屍累々の中で立ち上がり、戦い続ける己の姿。

銃を手に取り、相手を次々と撃ち殺して行く己の姿。

 

そうだ、これは夢だ。

今や世間は平和になった。

戦うべき相手もおらず、銃を手にする理由も無い。

 

その筈だった。

そうしているつもりだった。

その日の出来事も、男はいつもの夢を見ている感覚だった。

胸くそ悪くなる夢を、ずっと見ている感覚だった。

 

街中で見知らぬ男とすれ違った。

一瞬、相手に睨まれたと思った。

殺気を感じる鋭い視線を、男は感じた。

確かに感じたんだ。

 

殺らなければ、殺られてしまう。

 

後はもう、感覚と言うより反射に近かった。

男は護身用の銃を手に取り、何も考えずに引き金を引いた。

 

…………

 

気がついた時には、何もかもが終わっていた。

 

間違っていたのは俺なのか?

訳も分からず意味も無く、男は膝から崩れ落ちる。

 

相手の返り血を浴びて我に返る。

これはいつも見る夢ではない、胸くそ悪い夢ではない!!

俺が起こした事は、全て、今、現実に起きている事……

 

目撃者からの通報を受け、治安部隊が無抵抗の男を捉えるのに大した時間はかからなかった。

手錠をかけられながらも男は叫ぶ。

己の名を、国を救った英雄の名前を。

だが、今の時代では単なる殺戮者でしかない。

見知らぬ通行人を、ただ意味も無く撃ち殺した殺人鬼でしかないのだ。

 

「……あとの、まつり、か……」

 

捉えられた男が力無く呟く。

取り返しのつかない失態。

それを呪った所で、もう、どうしようもない。

 

男は泣く気力さえ失い、放心したまま、壊れたように同じ言葉を繰り返し続けていた。

 

すべては、あとの、まつり…

すべては、あとの、まつり……

すべては、あとの、まつり…

すべては、あとの、まつり…………


 
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