No.730432

義輝記 星霜の章 その二十七

いたさん

義輝記の続編です。 宜しければ読んで下さい。

2014-10-16 16:23:07 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:997   閲覧ユーザー数:932

【 悲しむ二人 の件 】

 

〖 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて 〗

 

順慶「───────颯馬様!!!!!!!!」ダッ!

 

左慈「近付くな、順慶!!」

 

順慶「嫌ぁ! 嫌ぁぁ!! 颯馬様ぁ! 颯馬様あぁぁ!!!」

 

ーーー

 

ふらふらと颯馬にユックリと近付く久秀。

 

久秀「───颯馬? 嘘でしょ? 嘘……何でしょう!? 颯馬?」

 

その様子を確認した于吉が、珍しく渋い顔をして傀儡兵に命じる!

 

于吉「…………勝手な真似は許しませんよ! 傀儡兵! 久秀を取り押さえなさい!! 久秀殿を野放しにすると、天城の遺体が粉々にされるかもしれません! それでは、こちらが困りますのでね!!」

 

傀儡兵「………………」ガシィ!

 

傀儡兵「………………」ガシィ!

 

久秀「────なさい」

 

傀儡兵「………………?」

 

傀儡兵「………………?!」

 

久秀が何か………呟く。 

 

傀儡兵が顔を見合わせ、不思議がるが───!

 

久秀「その……汚い手を離しなさい!! 誰の身体を掴んでいるのよ!?」

 

久秀が……傀儡兵を片手で振りほどき、一人を投げ飛ばす!!

 

 

傀儡兵「───────!?」ブゥ──ン!! ドッカァン!!

 

 

于吉「傀儡兵よ! 数人掛かりで囲め! 天城颯馬の遺体より離れさせなさい!!」

 

傀儡兵「────────!」

 

傀儡兵「────────!」

 

久秀「離しなさい! 離せぇぇぇ!!  颯馬は──私の玩具よぉ! 誰が、誰が勝手に死んで良いって!! 誰がぁ───! 誰が云ったのよぉ!! 応えなさい! 応えてみせなさいよぉ 颯馬ぁぁぁ────!!!」

 

順慶と久秀が………狂ったように泣き叫ぶ!!

 

二人は……天城颯馬を愛していた。 他の姫武将やこの世界の将と同じ、もしくは……それ以上……想っていたのかも知れない。

 

ーーー

 

左慈は、颯馬の遺体に近付こうとする順慶を抑え、于吉は、傀儡兵を使い久秀の足を止めた。 

 

于吉「くくくっ! こうも……上手く策が成るとは、思いもしませんでしたよ! いやぁ~、人の良い男で良かった! ははははっ!」 

 

一刀「なんでぇ! なんだよぉ!! ………貴方が死んで、俺が生き残ったって……事態が好転するのか? 応えてくれよ! 天城様!!」

 

于吉「────そうそう、北郷一刀を無傷で返す約束でしたね? お前達……解放して差し上げなさい!」

 

傀儡兵は縛られていた一刀を解き放つ。 

 

一刀「………俺には殺す価値も無い訳か!」

 

于吉「いえいえ……管理者と直接殺せないだけですよ。 それに、ご心配は無用。 貴方の仲間達と一緒に、ちゃんと天城颯馬の下へ旅立たせてあげますから。 安心して『その者達』の裁きを受けなさい!」

 

一刀「────────!」クルッ! ダッ!

 

ーーー

 

一刀の走る去る後ろ姿を見つめながら、左慈は于吉に問う。 順慶が泣き叫んで暴れるため、経絡秘孔を突いて気絶させてから、傀儡兵に任せてきた。

 

左慈「くそぉぉっ! 隙だらけの背を向けられ、直接手が下せんとは!! しかし、これだけのお膳立ては済んだのだ! 必ず………残り二つを!!」

 

于吉「えぇ! 最後の仕上げと掛かりましょう! 傀儡兵よ! 天城の死体は後で使用します。 持ち運ばれないように注意なさい!」

 

 

◆◇◆

 

【 一刀の帰還 の件 】

 

〖 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて 〗

 

 

傀儡兵に拘束されていた一刀は、解き放たれ華琳達が集結しているの陣へと向かう。

 

その先頭では、華琳が……待っていた。

 

何時もの……自信溢れる姿ではなく、何か我慢しているしているかのように、顔を真っ赤にして、一刀を見つめている。 

 

一刀は、華琳の云いたい事が予想できた。 

 

『俺よりも……遥かに優れた天城颯馬が、俺の為に討たれた! しかも、愛紗を名指して!! 俺の軽はずみな行動の為に──! 皆に迷惑が!!』

 

華琳に向かい……弱々しく……一刀は……謝罪をした。

 

一刀「華琳………詫びる言葉も無い………! 俺が代わりに死ねば……『パシィーン!』 ────か、華琳!?」

 

華琳は……謝る一刀に、平手打ちを浴びせる!

 

華琳「────何を腑抜けているの、一刀!! 貴方は……颯馬の死を何だと思っているの!? 颯馬は、自分を犠牲にし、愛紗に無理を強いながらも貴方を助けた! 私達に返してくれたのよ! ………それを! それなのに!」

 

華琳は、一刀に取り縋り泣きついた!

 

華琳「馬鹿ぁ! 本当にぃ……心配したんだから! 心配したんだからぁ! 生きて帰ってくれて……本当に………良かったぁぁ!!! 」

 

他の将兵をみても……自分の帰還を喜んでくれる者ばかりだった。

 

しかし、軍勢の大半は……天城颯馬の死に寄る悲痛、戸惑い、懸念等が占める。 

 

ーーー

 

雪蓮「颯馬──! 貴方、一刀を助ける為に自分を犠牲にしたの!? どうして! どうしてよぉ! 貴方が居なくて───誰が晋軍に勝てると云うのよ!? 颯馬! 颯馬ぁぁ────!!!」

 

ーーー

 

月「……………………」ギュッ!

 

詠「月ぇ………! 辛かったら泣いても、泣いても良いのよ! ───もう、アイツの活躍が見えないなんて! ボクの目標が……永遠に越えれない……」

 

ーーー

 

白菊「…………さて、きな臭くなってきたじゃねえかぁ! 殺気がどんどん濃くなってきやがる! 陛下達だけでも……逃がさねぇとな!!」

 

ーーー

 

金糸「天仲介朕存在……何故……此事象。 天朕臣一同、人界全……放棄故是……!?」

 

(天の代行者たる私が居るのに……何故……このような事が。 天は、私達や将兵、民も世界さえ……見捨てるおつもりなのか………!?)

 

ーーー

 

北郷一刀は……華琳達の下に戻ってきた。

 

しかし、その代償は余りにも大きい! 

 

天の御遣いの中心的存在あり、洛陽軍の董仲穎の懐刀的存在だった天城颯馬が……曹操軍の関羽に殺される! 

 

晋軍に対抗できる、唯一無二の存在と目されていた颯馬が、于吉の策により亡き者にされたのだ。 

 

それと同時に……この事は、曹操軍にとっては最悪な状態。 颯馬殺害の間接的直接的の原因が二人も居るのだ! これでは、陳留での雪蓮との会話した状態に移行してしまう!! 

 

もし、双方が戦闘になれば、利と損がある。

 

洛陽軍には天の御遣いが多数居るが……兵が少なく、陛下と云う弱点もある!

 

曹操軍は、兵数も多く配下の将兵も優秀! 必ず負ける戦でない。 だが、勝ったとしても朝敵の汚名を再度賜う事は確実。

 

だが……どちらが勝とうとも、晋軍の圧倒的な軍勢に寄る包囲網を抜けて、国に戻る事は至難だった! 即ち……于吉の思うツボである。   

 

★☆☆

 

于吉「ふふふっ! 私達の邪魔をしようとした異世界の英傑も、要さえ失えば、この世界の将兵と何ら変わりもありません! この包囲網と云う檻の中で殺しあえばいいのですよぉぉぉ!!」

 

左慈「………俺は、いつ動けばいい!?」

 

于吉「焦らなくても大丈夫です。 董卓の持つ銅鏡を早く破壊したいのも分かりますが、まだ邪魔者が大勢いますからね。 戦闘が開始されれば、必ず隙が出来るはず! そこを狙って下さい!」

 

左慈「ふんっ! 承知してやる!!」

 

于吉「何時も……このように素直ですと、私も助かるのですがね……」

 

◆◇◆

 

【 洛陽軍の対応 の件 】

 

〖 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて 〗

 

愛紗は………恐怖に陥っていた。

 

今まで、何百、何千人の『人』を斬ってきた! 貫いてきた! 殺してきた!

 

しかし、今回だけは……勝手が違う。

 

颯馬に刃を押し当てた時、全身に鳥肌が総立ちした! 

 

我慢して……更に推し進めると、皮膚を切り裂く感触と肉を貫く弾力が生々しく感じられる! 今まで感じた事が無い、『人』を斬るという罪悪感に対して、反応する自分の身体に戸惑っていた!!

 

愛紗「…………どうして! 人を斬る行為に恐れを抱かなければ──!?」

 

『………簡単な事じゃ。 英傑を殺害したからこそ……その感触を味わったまで! お主の斬ってきた者達は、全て英傑に値しない者達ばかりだと、告白しても同然ぞ! ────愛紗よ!!』

 

愛紗が……恐る恐る顔を上げると………鶏洛山に籠もる洛陽軍──義輝率いる竜驤軍が……姿を見せた! 

 

全軍に、言い知れぬ悲しみと怒りが混じりながら……!!

 

★☆☆

 

一存「馬鹿……野郎がぁ──!! 兄貴より早く逝く奴が……あるかぁ!!」

 

長慶「人には必ず……『死』という別れがある。 だけどな……余りにも早いではないか! 姉の私に──挨拶も無しで消えるのか! お前は!?」

 

信長「………たわけがぁ! 大たわけがぁぁ!! あれほど云ったのに!! 何か策があるかと……信じていたものを!! 馬鹿颯馬がぁぁぁ───!!」

 

左近「………お前らしい死に方だが……何でだろうな。 何故か納得いかねぇんだ! 何で……こんなに心が苦しいんだろう………?」

 

鹿介「あ、天城殿────!」

 

ーーー

 

小太郎「────────!」ダッ!

 

口々に颯馬を失った喪失感の為、混乱する竜驤軍の中より小太郎が飛び出し、目を血走りながら……愛紗の首を掻き切ろうと迫る!

 

小太郎「颯馬様の仇ぃ────!!」

 

愛紗「─────あっ!」

 

今までの愛紗なら、何とか遮れる斬撃。 しかし、緊張の糸が切れていた事、今までに受けた事が無い手応えで、気付くのが遅れ防御が間に合わない!!

 

────────!

 

愛紗「!!」

 

殺される!………と感じた。 

 

しかし、疾風の斬撃は……届かない。

 

愛紗「…………?  ────!!」

 

 

──────グググッ!

 

そこには、義輝と鹿介が……佩刀で小太郎の斬撃を防ぐ姿が────!!

 

ーーー

 

義輝「何をするかぁ! この馬鹿者が!!」バッ!

 

鹿介「止めなさい! 小太郎殿!!」

 

小太郎「と、止めないで下さい! 颯馬様を殺した関羽を!! 私の手で───仇を取るんです!!」

 

義輝「それは無用! 刃を収めよ!」

 

小太郎「どうしてぇ! どうしてぇ───!?」

 

義輝「愛紗の持つ短刀を見よ! あれこそは、わらわが颯馬に与えし短刀ぞ! わらわの窮地を救い、颯馬に災いが被らないように祈りつつ、手ずから与えたし守護刀よ!!」

 

小太郎「そ、そんな事───分かっています!!」

 

義輝「いや、お主は分かっておらぬ! だが、颯馬が肌身離さず、あの短刀を大事にしていた事は存じているはず!! それが、愛紗に手渡されたのは、『信に足る者である証拠』と同時に『愛紗を討つな!』との謎掛けだ!!」

 

小太郎「ですが───!!」

 

義輝「主一人が哀しい訳では無い! 颯馬はな……自分自身で最良と思える選択をしたのだぞ! それを殺害しようなど──思い上がりも甚だしい!! 大体、颯馬は愛紗を憎んでいたか? 愛紗の幸せを心配していただろうが!!」

 

鹿介「某とて───悔しい!! 心が張り裂けそうだ!! ……だが、天城殿の顔を見よ! 愛紗に刺され、笑顔で天に召された天城殿の顔を! 小太郎殿は……そんな天城殿の想いを───無に帰すおつもりなのか!?」

 

小太郎「そ、颯馬様あぁ~!! うわぁ──────っ!!」

 

小太郎は………そのまま座り込むと……顔を伏せ号泣した。

 

ーーー

 

秋蘭「華琳様………此処からが問題かと! 皆の意見によれば、洛陽軍が愛紗を罰し……原因になった一刀の引き渡しを要求すると予想されますが……華琳様、如何致しますか!? 私達は、全員……華琳様の命令に従います!!」

 

華琳「私は……………一刀を、洛陽軍に引き渡す!」

 

『──────────!』

 

春蘭「か、華琳様! それでは────!?」

 

華琳「そして、私も一緒に行き……釈明を嘆願するわ!」

 

桂花「それでは──! 華琳様の御身が!!」

 

華琳「一刀を奪い去られたのは、私の落ち度でもある! 私の総指揮が行き届かなかったばかりに、一刀が暴走を作る原因になったのよ。 だから……私も行くわ……。 どのような罪でも……甘んじて……」

   

 

 

    「────待って下さい!」

 

 

 

『──────────!?』

 

その場に、董仲穎が一人……ゆっくり近付いていた。

 

目に涙を溜めていたが……口調はハッキリして澄んだ声を、曹操軍全体に響き渡らせる!!

 

月「私達は、貴女達や北郷一刀を罰する気など……毛頭もありません!」

 

華琳達は驚き、顔を見合わせる! 

 

華琳と一刀は、急いで月に近付くと理由を問う!

 

華琳「どうしてですか!? 一刀を奪われたのは……我々の責任! 颯馬が

殺害された罪を償う事……肝要かと!!」

 

月「…………ならば、天城様は三つ目の選択をなされ、北郷一刀の罪を申し上げていたでしょう! それは出来なかったのは、天城様が必要無いと云う意思表示。 ならば、従うのが……私達残された者の役目です!!」

 

一刀「……ですが! 足利様達の意思は、どうなるのですか!? 天城様が天の国に存在する時からの仲間である……あの方々は、納得されますのでしょうか? もし、董相国との仲違いの原因になるなら……どうか私に処罰を!!」

 

一刀は、月に頭を下げると……横より義輝が駆け寄り、意見を述べる。

 

義輝「わらわ達にも……異論は無い! 小太郎のように納得しない輩も居るが、颯馬の意思を尊重したいのじゃ! ………それにな、主も『鍵』の一人じゃろう? 処罰と称して処刑すれば……喜ぶ奴は決まる……!!」

 

月「………はい。 おば様が私に伝えた言葉。 天城様と北郷一刀の二人の命、そして私が大事に持つ銅鏡! この三つが破壊されし時、この世界が崩壊すると。 だから、幾ら悲憤に駆られても……まずは、あの道士達を!!」

 

華琳は……月に跪き……誓いを述べた。

 

華琳「承知しました! その分、曹操軍は死力を尽くし攻めかかりましょう! それが……私達の謝罪と感謝の意思表示とお受け取り下さい!!!」

 

 

◆◇◆

 

【 于吉の搦め手 の件 】

 

〖 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて 〗

 

左慈「………于吉! お前の予想通りに成らなかったな? 天城は確かに死んだ……。 しかし、奴らの結束を更に強くする結果になったぞ! お前の狙った仲間割れも無理じゃないか……」

 

于吉「いえいえ……私のシナリオ通りです! 傀儡兵よ! 久秀より離れなさい! 速やかに離れなければ……と、もう遅いですか………」

 

久秀を囲んでいた傀儡兵が……何人も吹き飛ばされて消滅していく。

 

久秀「ふふふっ………非道いわよね? 久秀達を……うふふっ! また見捨てて、更に遠くに行ったのよ……。 颯馬はね……ふふふっ!」

 

久秀は、目から涙を流しつつ、異様な迫力を出しながら嗤い続ける! 

 

久秀「くすっ……だけどね、一番非道いのは……颯馬の代わりに生き残っている北郷一刀なのよ! ふふっ! どうして……代わりに死ないのかしら!?」

 

そんな久秀の横に、左慈の経絡秘孔を破った順慶が立ち同意する。

 

順慶「そうですわ! 何故生きているのですかぁ! 納得がいきません!! ……私達の寿命さえも……あと僅かなのに! まぁ……どのみち世界の滅亡に巻き込まれるのですから、ここで皆殺しにしてあげましょう!!」

 

久秀「順慶にしては……良い考えね? じゃあ、皆殺しにしましょうか!! 颯馬が死んで、北郷一刀が生きているなんて間違えているわ!!! 傀儡兵達よ! 全軍で────この者達を抹殺なさい!!!」

 

順慶は嗤いながら、全身を青白い炎で纏い、洛陽軍を中心とした連合軍に近付き、一刀の命を狙う!! 久秀も最後の戦いと決めて──自分の残された命を削り、于吉の傀儡兵百万を操り、包囲網を狭めに掛かる!!

 

されど……洛陽軍を中心とした連合軍も、最後まで諦める者は居なかった!

 

★☆☆

 

雪蓮「御免ね……颯馬。 貴方の為に曹操軍と戦いたいけど……私も孫呉の王。 それに……華琳も大事な友達であり、事情も知り抜いているの。 だから、今回だけ味方させて! 全部終わったら……二人で謝るから!!」

 

冥琳「颯馬……。 お前程の男でも……この窮地が破れなかったのに、私が勝とうと考えるのは無謀だろう! しかし、お前の死で松永達に動揺が走っている!! この隙を生かし、意地でも覆して見せようじゃないか!」

 

祭「何故かの……。 儂の方に迎えが来ず、若い者ばかりが先に逝く。 ………じゃあがな! 今……この時、この場所こそ……我が死地と定まりし! 存分に我が弓、馳走してくれるわぁ!!!」

 

蓮華「………貴方は、何時も笑顔で接してくれた。 あんなに意地っ張りな私の為に、色々な事を見せて……覚悟を示してくれた。 私は……意地っ張りだから、今は泣きたくないの! あの者達を討ち果たすまでは!!」

 

小蓮「成美が良く話してくれたんだ。 優しくて大らかで、すっごく安心出来る暖かい人だって。 シャオ……今なら分かる。 颯馬がどんな人かって! だから──もの凄く怒ってるんだよ!!  本当、怒ってるんだよぉ!!!」

 

ーーーーー

 

華琳「………皆、覚悟は良い!?」 

 

秋蘭「愚問です、華琳様! 私は……もう我慢がなりません! 私達に力を貸してくれた御遣い達の軍師が……あのような最後を遂げたのです! どうか! 我々に命じて下さい! あの者達を────倒せと!!」

 

春蘭「華琳様───!!」

 

星「華琳様! 今こそ私に、先陣を申し付け下さい!!」

 

ーーー

 

一刀「俺も戦わせてくれ! このままじゃ! このままじゃ!!」

 

華琳「一刀! 貴方が死ねば……どうなるか分かっているの!? この大陸の崩壊が早まるのよ! それに、私は……貴方を死なせたくない!!」

 

麗羽「華琳さん……わたくしからもお願いします。 我が君を戦わせていただきませんか? 勿論! わたくしや斗詩さん、猪々子さんで守りますので!」

 

華琳「────理由は?」

 

一刀「……を守る為だよ。 華琳!」

 

華琳「───? 聞こえなかったわよ?」

 

一刀「寂しがり屋の好きな女の子を守る為だよ!」

 

華琳「────えっ!?」

 

一刀「こんな……恥ずかしい台詞を二度も云わせるな! 華琳!!」

 

麗羽「はいはいっ! ノロケが非常に羨ましいのですが、一刻を争いますわ! 華琳さん!! 早急に決断してくださいな!!」

 

華琳「わ、分かったわよ! それじゃ……許可するわ! 一刀! 無理は絶対に死なないで!! そして……お願いね、麗羽!! 必ず、必ず一刀を守って!!」

 

麗羽「当たり前ですわ! では、我が君!」

 

一刀「あぁ! 行こう!!」

 

ーーーーー

 

月「詠ちゃん! 霞さん! 恋さん! ねねちゃん! そして、御遣いの皆さん!! 私や陛下……いえ! 私達の守らなければならない者達の為に、どうか! 力を貸して下さい!!」

 

詠「元よりそのつもりよ! いい!? 他の軍勢と一緒に呼応して戦うわよ! 付いて来れない奴は、置いて行くんだから!!」

 

霞「へっ! 上等や! 神速を極めんとす……ウチを舐めるな! それにな? 下手な手なんぞ打ったら、あの世で軍師に笑われるわい!!」

 

恋「……許さない!! 全力で行く!!!」

 

ねね「恋殿! ねねの指示通りに動いてもらえば、大丈夫ですぞ! 必ず勝ちましょう!!!」

 

ーーー

 

白菊「陛下! 一触即発の瞬間、敵味方をぶっ飛ばして血路を開く! そうしたら、すぐ洛陽に逃げてくれ! 洛陽に逃れれば、再起は果たされる! 晋軍も直ぐに攻めれないさ! その間に態勢を立て直してくれや!!」 

 

蒲公英「叔母様はどうするの?」

 

白菊「蒲公英! お前達は陛下の護衛で付けぇ! アタシは、この一戦に殉じようじゃないか! 翠!! 最後のアタシの戦振り! よぉーく見ておきな!

これが───馬寿成の本気だと、天下に轟かせてやるからよぉ!!」

 

翠「あ、あたしも行く……!」

 

白菊「ばぁーか! ションベン臭い小娘が出る幕じゃないんだよ! ……少し経ったら、蒲公英の後を追うんだよ! そこまで、耐え抜いてやらぁ!!」 

 

ーーー

 

義輝「皆! わらわ達は生き残れるか……全く分からん! しかし、一つだけ言わせて貰う! 絶対に敵味方から、後ろ指を指される振る舞いは止めよ! わらわ達だけでなく、月様まで貶められるからの!!」

 

『はい!!』

 

義輝「それにな! ……あの世で颯馬に会えた時、わらわが恥ずかしくて、顔向けができん。 よいか! 頼んだぞ!!!」

 

ーーー

 

それぞれの悲壮な覚悟と燃え上がる闘志が、晋軍に向かい……それぞれが構える! 百三十万の軍勢と万夫不当の将がいる晋軍! それぞれの目的が一致した大陸最後の希望の洛陽軍!!

 

この戦いで────大陸の行く末が決まる!!

 

◆◇◆

 

【 反撃の謀 の件 】

 

〖 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて 〗

 

光秀「颯馬……………」

 

短刀で刺された颯馬の傍に居たのは、倒れて泣く愛紗、地面をかきむしる小太郎。 ────そして、立ち続ける光秀。

 

 

だが……光秀の顔には絶望の表情は浮かばない。 寧ろ(むしろ)緊迫感に包み込まれていた。 

 

周囲には傀儡兵が多数蠢いているが、颯馬の遺体に寄り添うまでは反応を示さない様子。 光秀は心の中でホッと安堵する。 

 

今からやる事には、細心に注意を施しつつ、大胆に行わなければならない!

 

再度……辺りを睨みつけて、何も気付かれていないと確認後、大声で叫んだ!

 

 

光秀「─────機が熟しました! 合図を!! 」

 

ーーー

 

凪「はいっ! はあぁぁぁ──────!!!」

 

全員出てきた筈の無人の砦から凪が立ち上がる!

 

実は……凪が一人だけ残り、機会を窺っていたのだ。

 

光秀より合図を受け、氣で輝く拳を天に向け突き上げる! 

 

凪「『昇竜闘氣弾』!!」

 

凪の拳より、竜の形をした氣弾が天高く昇り、誰もが見える位置で弾けた!

 

★☆☆

 

〖 司州 河南尹 鶏洛山付近 山頂 にて〗

 

忠勝「おぉ!? 合図で御座るよ!」

 

稟「────私の出番ですね! この大役! 必ず果たしてみせます!!」 

 

力む稟に向かい、風が心配そうに声を掛ける。

 

風「………あんまり気負い過ぎますと……失敗しちゃいますよー?」

 

稟「べ、別に!! 気負っても緊張もしていません!!!」

 

風「大丈夫ですよー! 稟ちゃん一人じゃないんですから! 風も華雄さんも忠勝さんも居るんです! 全員巻き込んで連帯責任にしちゃいますよー!」

 

その発言に反応する二人。 

 

ーーー

 

華雄「お、おいっ! 風!! 稟に、これ以上の負担を掛けてどうする!」

 

忠勝「拙者……軍師のように頭の良い訳では無いでござるが?」

 

ーーー

 

稟「はぁ~!」

 

稟は、盛大に溜め息を吐いた。 

 

自分の責任にもなるかもしれないのに、稟の体調を心配する返事に、『連帯責任』と云う言葉を分かっていないんじゃないかと怪しむ返事。 

 

多分……二人とも意味は分かっている。 しかし、自分の心配より稟の事を案じているのだ。 責任は一緒に取ってやるから、気楽に行えと!

 

稟は、自分が悩んでいた事を捨て去った。 

 

(私が出来る最大限の事を実行しよう! 危ない事になりそうだったら、友人に頼る! よく分からない考えの持ち主だが、私の苦手な部分を補ってくれる優秀な軍師だ!!)

 

そう思い直し、開口一番に皆に礼を述べた!

 

稟「……風! 華雄殿! 忠勝殿! ありがとうございます!! ここまで来て、失敗なんかしてしまえば、天城殿に愛想を尽かされますよ! 私の出来る事を果たして、難しくなったら、風達に相談して任せますから!」

 

風「それでこそ、稟ちゃんですよ──! でも、風でも難しいと思いましたら、丸投げしちゃいますからねー!! この策の提案者の軍師さんにー!!」

 

華雄「悩まなくていいからな! 私達は……何時も稟を応援している!」

 

忠勝「拙者で良ければ、出来る限り引き受けるで御座るよ!!」

 

稟「お心遣い感謝します! しかし、天城殿に、これ以上の負担は掛けれません! 風! 急いで旗を準備して下さい! これからが、真の勝負です!!」

 

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

何とか……用件が終わりましたので投稿の再開を。

 

疲れで、身体が本調子じゃないため、ゆっくり投稿したいと思いますので、宜しくお願いします。

 


 
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