No.720022

快傑ネコシエーター8

五沙彌堂さん

36、美猫奮戦す
37、卑劣漢
38、プールに行こう
39、少佐日和
40、反魂

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2014-09-21 02:31:51 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:592   閲覧ユーザー数:592

36、美猫奮戦す

 

エカチェリーナ・キャラダイン少佐ことエリカは細かい仕事が苦手だった。

雅から連絡を受けて黒魔術使いのデミバンパイアの眷属のブラウンジェンキンの

役割を知り、その殲滅が必要なことが分かったが殲滅できずに何匹か逃がしてしまい、

黒魔術使いのデミバンパイアのネットワークを破壊できず、より手ごわくなった

黒魔術使いのデミバンパイアと戦う悪循環に陥っていた。

雅からの報告では魔弾10発を耐える黒魔術使いのデミバンパイアも実際にいて

日輪の十字架で止めを刺したそうだった。

実際28発の魔弾で漸く仕留めることが出来た黒魔術使いのデミバンパイアに苦戦

したこともあり、黒魔術使いのデミバンパイアのネットワークの破壊は直ぐにも実行

しなければならなかった。

エリカは雅にアシスタントの美猫の安全を保障するからを

しばらく貸して欲しいと要請してきた。

美猫の役目はブラウンジェンキンの殲滅で黒魔術使いのデミバンパイアの

ネットワークの破壊が必須だったからだ。

美猫は魔剣を装備して素早くブラウンジェンキンを討ち漏らすことなく全て狩りつくした。

さらに魔剣の威力も大きく手負いの黒魔術使いのデミバンパイアに

止めを刺すのに有効だった。

魔剣は魔術武器の中ではあまり使われることの少ない武器で

黒魔術使いのデミバンパイアのネットワークに情報が伝わっていない様だった。

そのため、対抗手段が無いため現在において最強の武器であった。

魔剣はいわゆる細身の両刃の剣でレイピアと呼ばれるもので黒魔術使いの

デミバンパイアの身に着けた護符を無力化する能力を備えていた。

エリカも魔剣の威力に注目し魔剣を2本手に入れ

黒魔術使いのデミバンパイア退治に積極的に使うことにした。

エリカは元々私用の武器として聖別された銀と鋼のサーベルを使っていたので

魔剣も同じように使いこなした。

 

「魔剣で護符を無効化してから魔弾を使えば効率よく黒魔術使いのデミバンパイアを

倒せるんじゃないかな。」

美猫はふと思いついたことをエリカに告げた。

エリカは美猫のアイデアに、

「おまえ、本当に冴えているなあ、あの護符は魔弾に対して強い防御の力を持っている

が魔剣で切り裂いて裸にすれば魔弾本来の力が発揮出来る。」

「早速実戦で使ってみよう、ありがとう美猫。」

 

エリカは魔剣で黒魔術使いのデミバンパイアを浅く切り付け胸の心臓付近の護符を

無効化してから至近距離から魔弾を1発撃ちこむと黒魔術使いのデミバンパイアの

動きが止まり指先から塵に変わっていった。

美猫は魔剣で眷属のブラウンジェンキンを全て狩りつくした。

このやり方を取り入れてから滅殺機関の今までの苦戦が嘘のように快進撃を続けスコアを

伸ばしていった。

 

やがて、美猫が雅の下に戻る日が来た。

エリカは美猫の華奢な手を優しく握って、

「ありがとう、美猫、おかげで部隊の士気も実績も上がり雅にあわせる顔もできた。」

「いや~、あたし大したことしてないよ、せいぜいブラウンジェンキン退治ぐらいかな。」

美猫は照れ臭そうに言った。

「任務に余裕が出来て休暇が取れる様になったら、居酒屋銀猫にでもあそびにおいでよ、

みんな、たまにはエリカさんに会いたいって言っていたから。」

「そうだな、銀さんや雅にもしばらく会っていないからなあ。」

 

滅殺機関から帰ってきた美猫を雅、大和警部補他警視庁保安局亜人対策課のメンバが

暖かく労った

「ネコ、ご苦労様、他の現場は勝手が違って大変だったろう。」

「ブラウンジェンキンを狩るコツを滅殺機関に伝授してきたから

黒魔術使いのデミバンパイアが急に手ごわくなったりしない様になるよ。」

さらに魔剣で護符を無効化してから魔弾を使う方法を雅に伝えた。

「ネコ、流石だな、この方法なら貴重な魔弾を無駄に使わなくて済む。」

早速、魔剣をさらに2本導入し、雅と大和警部補も装備することになった。

 

鉄は滅殺機関の快進撃に伴って亜人にターゲットを切り替えてきた黒魔術使いの

デミバンパイアが亜人街の南西部のゴーストタウンの点在する地域に流入してきた

という情報を聞きつけ彼らの寝床を特定する作業を進めていた。

滅殺機関ほど警視庁保安局亜人対策課を脅威とは思っていないらしく警戒が甘く

数か所の候補地が挙がったので雅たちに連絡した。

 

直ぐに第一の候補地に雅たちは急行した。

ゴーストタウンの一画の古い洋館で図面は鉄より入手済みだった。

あまりにも警戒心が薄く足跡もデミバンパイアとブラウンジェンキン、ゾンビの

ものが多数残っていた。

「余程、僕たちを舐めているのかそれとも罠なのか。」

雅はあまりにも今までの相手と違うため用心深くなっていた。

「ゾンビを盾にされるとやっかいだなあ。」

大和警部補は昼間の内に決着しないで夜になった時

どさくさまぎれに逃げられることを懸念した。

「これで爆破して相手の出方を見ようよ。」

美猫は滅殺機関から借りてきた大口径の無音ロケット砲を持ってきた。

「ネコ、すごいなあ、早速木端微塵にするか。」

徹甲弾、炸裂弾、焼夷弾の順に古い洋館に打ち込んだ。

文字通り木端微塵になって火柱の上がった洋館から逃げ出してきた、

昼間の日光に晒された黒衣のデミバンパイア達を

雅は魔剣で胸を切り付け魔弾を撃つ作業を人数分繰り返した。

その度に動きが止まり指先から塵に変わっていった。

やがて、黒魔術使いのデミバンパイアが逃げ切れないと思って襲いかかってきた。

雅は魔剣を黒魔術使いのデミバンパイアの全身に切り付け

護符を無効にして魔弾を撃ちこんだ。

直ぐに動きが止まり指先から塵に変わっていった。

大和警部補は特注の中銃身の357マグナム用の魔弾で

ブラウンジェンキンを次々と射殺した。

美猫は注意深く残り全てのブラウンジェンキンを魔剣で切り捨てた。

他に使役されていたゾンビは黒衣の魔術師が滅びると同時に土に還った。

 

この調子で鉄より情報提供のあった黒魔術使いのデミバンパイアはすべて殲滅した。

黒魔術使いのデミバンパイア達は自分たちのネットワークが機能しなくなり、どうして

仲間たちが次々と連絡を絶つのかがわからず疑心暗鬼になって活動全体が鈍くなった。

しかし、寝床に潜んでいてもこれまでの足跡から襲撃を受け、さらに黒魔術に毒されて

いない地元のデミバンパイアからは余所者として当局へ密告されることもあった。

それ故に目に見えて日に日に仲間を減らしていった。

それでも完全撤退できないのはデミバンパイアの持つプライド、選民意識のためであった。

 

やがて、黒魔術使いのデミバンパイアの目立った犯罪行為は影を潜め、以前の落ち着きが

亜人街に戻ってきた。

 

37、卑劣漢

 

富岡平作と植村郷太郎は亜人街の最悪のダニだった。

一応ライカンスロープの一種の狒々で文字通りの狒々だった。

デミヒューマンの若い女性を誘拐して自分の欲望のままに乱暴して飽きると

娼婦として売り飛ばしたり、デミバンパイアの下働きをしてそのおこぼれに

預かったり、人目のない所ではデミヒューマンの子供を誘拐して引き裂いて食べたり、

やりたい放題の悪事を働いていた。

当然、塗仏の鉄の耳にも奴らの悪行三昧が入ってきたが上手に証拠を残さず中々警察

を動かすことが出来なかった。

大和警部補も立件するにしても微罪ではすぐに街に舞い戻りまた悪行を繰り返すので

何か大きな犯罪で立件することを考えていた。

しかし、奴らは居酒屋銀猫の近辺には絶対に近づかなかった。

滅殺機関や警視庁保安局亜人対策課の関係者が多数出入りしておりうかつに手を出せない

ことぐらいは理解できたようだった。

さらに以前奴らには山井一夫というライカンスロープの仲間がいたが居酒屋銀猫の隣の

パークサイドパレスマンションの一階のコンビニエンスストアに強盗に入ってなぜか

肉体が雑巾のように絞られて精神に強いダメージを受けたうえ、警察に逮捕され余罪を

全て明らかにされ、即日鼻と耳を切り落とされて斬首刑にされていたので、奴らに

とってもここいらは鬼門だと恐れ避けているのである。

奴らはおつむの少し弱い金持ちの息子を巧妙に脅して小遣い稼ぎをしていたがそれが

警察の知れるところとなり身柄を拘束される恐れが出たのでしばらく身を隠すことに

したのだった。

もし捕まれば余罪を追及され山井一夫同様即日鼻削ぎ耳削ぎ斬首刑は確実だった。

 

亜人街の南西部のゴーストタウンの点在する寂れた廃娼街に奴らは身を潜めていた。

「畜生あの阿呆餓鬼の奴警察なんぞにチクリやがって、ほとぼりがされたら、2度と

こんな真似の出来ないようにしてやる。」

「あの阿呆餓鬼にそんな知恵なんかあるわけねえ、入れ知恵した奴が絶対いるはずだ。」

「そいつを二度とこんな真似の出来ないようにしてやらないと気がおさまらねえ。」

「きぃ、きぃ。」

奴らの後ろをネズミのようなそれにしては少し大きい生き物が走っていった。

「なんで、ネズミか、脅かしやがって。」

「いや、ネズミにしては大きくなかったか。」

「たぶん、いいもん食って大きくなったんじゃねえのか。」

「それより、これからどうすんだよ。」

「こんな湿っぽい所にずっといたらカビだらけになっちまうぜ。」

「とにかく昼間は人の目がある、夜にならねえと移動できねえ。」

「なんか生臭くないか。」

「そうか。」

ぎしっ

「な、何の音だ。」

「そんな、びくつくなよ、ただの家鳴りだろ。」

ぎしっ、ぎしっ

「なんか下の方から聞こえないか。」

「何言ってんだよ、家鳴りなら天井の方から聞こえるんじゃないのか。」

「なんか気味が悪いぜ、とにかくここを出ようぜ。」

富岡平作は入り口のドアを開けて外へ出ようとした。

ぎーぎー

「畜生どうなってんだ、ドアが開かねえよ。」

「そんなバカなことがあるか貸してみろ。」

ぎーぎー

植村郷太郎がやってもドアは開かなかった。

「おい、獣化してやってみろ。」

ぎーぎー

やはり、ドアは全く開かなかった。

「おまえ、ふざけているのか、俺が獣化して開けてやる。」

富岡平作は獣化してドアを開けようとした。

ぎーぎー

やはりドアは開かなかった。

「こうなったらやけだ、体当たりしてぶち破ってやる。」

ばん、ばん。

ドアはびくともしなかった。

「お前も手伝え。」

「おう。」

ばすん、ばすん。

「いい加減にしたまえ。」

後ろから2人以外の声が聞こえた

 

2人が振り向くといつの間にか黒いターバンを巻き黒いマントの

黒衣の魔術師が立っていた。

「我が安息所に押し入っただけでも罪深いものを我が安眠を妨げるとは

なんと無礼な猿の分際が。」

「なんだ、てめえはなにもんだ。」

「貴様に名乗る名などないわ。」

富岡平作は獣化したまま殴りかかろうとした。

しかし無様に転んだ、そして自分の足首を万力の様に締め付けるものがあった。

やがて床から生えてくるように灰色の物体があらわれた。

それも同じようなものが3体生えてきた。

「ゾンビ共、餌の時間だ。ゆっくり味わって食らうがいい。」

「ぎゃーいてぇいてぇぎゃぎゃっ」

富岡平作はゾンビに生きながら食い殺されていった。

植村郷太郎は腰を抜かし失禁していた。

やがて植村郷太郎の足元に何かが転がって来た。

よく見るとゾンビに齧られ所々脳味噌が見えている富岡平作の頭だった。

金壺眼の小さな目を目いっぱい見開いた苦悶の顔であった。

植村郷太郎は必死になって、黒衣の魔術師に命乞いを始めた。

「みんなこいつが悪いんです、こいつがあなた様がお休みになっている

とも知らずにガタガタと騒いだ上、御無礼を働いたんです。」

「私は何も知らなかったのです、本当です是非お慈悲をお慈悲をお願い致します。」

「そうか、お前は死にたくないのだな。」

「はい、あなた様がこの命を助けて頂けるなら何でも致します。」

黒衣の魔術師は少し考えた後、

「貴様は、ライカンスロープだな、では我に忠誠を誓え。」

黒衣の魔術師は魔眼を植村郷太郎に掛け完全に支配下に置いた。

 

黒衣の魔術師は実は追い詰められここにひそんでいたのだった。

この地域にきてまだ一度も儀式殺人を犯していなかった。

自分の弟子は別の黒衣の魔術師に応援に使わしていて全員が戦死してしまい

一人で眷属のブラウンジェンキンとゾンビと共に潜んでいた。

ゾンビと比べて使い勝手がいいライカンスロープが手に入ったのは願ったり

叶ったりだった。

早速、黒衣の魔術師は植村郷太郎に生贄の調達を命令した。

 

植村郷太郎が亜人街の中心近くまで姿を現したという情報は直ぐに塗仏の鉄の

情報網に引っかかった。

今度は大和警部補も逮捕目的で網を張っていた。

しかし、今度捕まれば死刑確定にしては大胆で様子がおかしいので雅と美猫を

呼び、様子を見てみた。

雅は奴の目がどうやら魔眼に掛かっているようだと思い、

「やっさん、どうやらあいつ魔眼それもデミバンパイアにあやつられていますね。」

「何とか芋づる式にデミバンパイアのところまで行けるといいが。」

「多分、あいつは生贄を連れてくるように命令されていますね。」

「朝まであいつが生贄を捕まえないように邪魔してやればいずれ主人のデミバンパイア

の下に戻りますからそれまで注意して被害者を出さないようにしないと。」

3人はそれとなく朝まで邪魔をしてデミバンパイアの下へ戻るように仕向けた。

 

植村郷太郎は亜人街の南西部のゴーストタウンの点在する寂れた廃娼街に戻っていた。

デミバンパイアがいると思われる廃屋を突き止め、魔術兵器を準備して襲撃に備えた。

鉄から廃屋の図面と支配下にあると思われる富岡平作と植村郷太郎の情報手に入れ作戦

を練った。

「ライカンスロープそれも卑怯で卑劣な奴か油断は禁物だな。」

「さらに支配下を離れても狂暴で凶悪な奴だからすぐに処断しないとなあ。」

大和警部補は支配下のライカンスロープに対して心配していた。

「眷属のブラウンジェンキン、支配下のゾンビの数がやけに少ないのが気になる。」

雅はいつもと比べて警戒感が薄いような気がしていた。

「デミバンパイア自体の数が少ないんじゃない、例えば弟子クラスのがいないとか

だからわざわざ目立つような指名手配犯罪者なんかを支配下にして使っているんじゃない、

それなら納得いくと思うな。」

美猫は敵の内情を予想して言った。

大和警部補も雅も美猫の意見に賛成して作戦を立てることにした。

 

美猫と大和警部補がいきなり廃屋のドアを破って侵入した。

美猫はブラウンジェンキンを切り捨てた。

大和警部補はゾンビ4体に特注の中銃身の357マグナム用の魔弾を撃ちこみ土に還した。

やはり黒魔術使いのデミバンパイアは1体だけだった。

配下はライカンスロープ1体だけだった

大和警部補はライカンスロープの両足を魔弾で撃ちぬき動けないようにした。

美猫は大和警部補に合図を送ると黒魔術使いのデミバンパイアの足元に照明弾を投げつけた。

照明弾が炸裂し部屋全体を照らした、2人は屋外に退避した。

代わって雅が廃屋に入って魔剣で黒魔術使いのデミバンパイア胸の護符を破壊し、

44口径改造自動拳銃で魔弾を胸に撃ちこんだ。

直ぐに動きが止まり指先から塵に変わっていった。

植村郷太郎は魔眼が解け完全に支配下から解放された。

両足を撃ちぬかれながらも下半身を引きずって屋外に出てきた。

大和警部補は植村郷太郎に話しかけた。

「ところで富岡平作はどうしたんだ。」

「それが旦那あいつ、デミバンパイアに逆らってゾンビに食われちまったんでさ。」

「じゃお前はなんで生きているんだ。」

「ライカンスロープはデミバンパイアの魔眼には勝てませんから。」

「お前自らデミバンパイアの支配下にはいったライカンスロープは

どうなるか知っているか。」

大和警部補は魔剣で植村郷太郎の両耳を削ぎ落とした。

「ぎぃー、ぎぃー」

さらに魔剣で植村郷太郎の鼻を削ぎ落とした。

「ふぎぃー」

「お前、富岡平作を見殺しにしたのか。」

「助けて下さい、仕方なかったんです、こうでもしないと生き延びられなかったんです。」

「お前もう一度聞くが、自らデミバンパイアの支配下にはいったライカンスロープは

どうなるか知っているか。」

「知りません、助けてください。」

「じゃ教えてやろう、斬首だ。」

ザン、

魔剣一閃、植村郷太郎の首が落ちた。

「地獄で富岡平作に詫びるんだな。」

大和警部補は冷たい声で言った。

 

38、プールに行こう

 

高田春樹が温水プールの招待券を7枚持ってきた。

実は11枚もらったのだが4枚はじぶん、奥さんと娘2人で行ってきたのであった。

「みやちゃん、だれかガールフレンドを誘って行って来たらどう。」

雅が振り還ると美猫と紀美が何か落ち着かない様子でチラチラと雅の顔を窺がっていた。

「なあネコ、誰を誘おうか残り5枚もあるけど。」

雅は自分の家族のような調子で美猫に相談を持ちかけた。

すると紀美が咳払いをしてジト目で見ていた。

「え、あの、紀美さんもどうですか。」

「はい、ぜひ参加いたします。」

紀美は満面の笑みで答えた。

「残り4枚、銀ねぇ、さつき、妖子ちゃんあと1人かぁ。」

「難しいなあってみんな女の子ばっかりじゃないか。」

雅は美猫の人選につっこんだ。

「そうだ、エリカさんも呼ぼうよ、これでちょうど5人だし」

美猫の人選がさらに混迷していたがそれはそれで面白そうなので雅は反対しなかった。

 

「いいんですか、私まで呼んでもらって。」

逆神妖子が不安そうに雅に尋ねた。

妖子は競泳用のシンプルな水着を着ていた。

「人選は美猫なんで問題ないですよ。」

竜造寺美猫は抵抗のないスレンダーな体形で泳ぎまくっていた。

美猫は胸に大きなリボンのついたワンピースの水着を着ていた

稲原紀美とエカチェリーナ・キャラダインことエリカが険悪なムードで牽制し合っていた。

紀美は青のアダルトな比較的落ち着いたビキニ、

エリカは白のセパレートタイプの水着を着ていた。

安達原さつきが何とかやっと平泳ぎで泳いでいた。

さつきはピンクのセパレートタイプの水着にパレオをつけて着ていた。

白猫銀はプールサイドでそのダイナマイトボディを晒していた。

銀は黒の目のやり場に困るようなビキニを着ていた。

温水プールは平日の昼間の所為か貸し切り状態だった。

美猫がプールから上がり少々休憩を取っていた。

さつきは一応泳げるもののどちらかと言えば苦手な方でグロッキー状態だった。

代わって、銀が見事な美しい泳ぎを見せていた。

次に妖子が美猫に引けを取らぬ泳ぎを見せていた。

2人が休憩を取るためプールから上がると

紀美とエリカが飛び込んで泳ごうとしたが2人とも浮かんでこなかった。

少し間をおいて溺れている2人の姿があった。

一同唖然として次にとるべき行動がわからなかった。

漸く美猫と銀が2人を救助した。

「2人共泳げないなら初めから泳げないっていいなよ、危ない所だったんだから。」

美猫はエリカと紀美に小1時間ほど説教をして水の事故の怖さを語っていた。

さつきがふらふらしながら、

「狐族はわかるけどなんで猫族があんなに泳ぎが得意なの意外だよ。」

「猫族にとって泳げる泳げないは命に関わりますから小さいころから泳ぎを

学んでいるんですよ。」

銀が雅のそばに来て美猫が怒っている理由を説明した。

いつの間にか妖子も雅のそばに来て、

「狐族も小さい時から泳ぎを教えられるんで泳ぐのは得意な方です。」

「結局人間族が一番泳ぎが下手なんだなあ。」

雅は一応泳げたがさつきよりはマシな程度で決して得意な方ではなかった。

銀はポンッと手を打って、

「泳ぎの苦手な皆さんに泳ぎのコツをご教授いたしましょう。」

とりあえず泳げる雅とさつきは妖子が上手に泳ぐコツを教えることになり。

全く泳げない紀美とエリカは銀と美猫がなんとか泳げるようにすることになった。

紀美はとりあえず水に浮く練習から始めた。

紀美な息継ぎが全く出来ないので背泳ぎを教え少しずつ上達していった。

エリカは全身筋肉で比重が重くうまく水に浮けないようなので力技で泳ぐ練習を始めた。

最終的にはみんななんとか泳げるようになり、それぞれ泳ぎを楽しんでいた。

 

「さて、今日の水泳大会のフィナーレ水着コンテスト審査委員長四方野井雅さんどうぞ。」

いきなり銀が雅に無茶振りをした。

「えっ、僕が選ぶの、そんな危険な役割はいやだよ。」

「逃げるんですか、雅さん。」

「だってネコの水着を選んだのは僕だから審査できないよ。」

「美猫あんた水着まで雅さんに選んでもらっているの。」

「いやぁん、恥ずかしい。」

「あんた、せっかくの企画が全部ぶち壊しじゃないの。」

「じゃ、あたしの個人的な好みで妖子ちゃん優勝でいいんじゃない。」

「私なんかが優勝なんて、恥ずかしいです。」

「妖子ちゃんならだれも文句言う人はいないから。」

最後まで美猫のペースでプール大会水着で勝負は決着した。

実のところ美猫、銀、妖子以外疲労困憊でつっこむ元気が無かったのだ。

 

翌日、雅は全身疲労と筋肉痛で起きるのがやっとだった。

よっぽど事務所を休もうと思ったが美猫に叩き起こされ、朝御飯を作り、

やっと事務所に行く決心をした。

1階のコンビニを覗くと根性で何とかレジを勤めているさつきと目があった。

マンションを出ると隣の居酒屋銀猫では銀も妖子もいそいそと普段通りに働いていた。

元気いっぱいの美猫に引きずられるように事務所に行くと

殆ど瀕死の紀美が根性だけで仕事していた。

春樹がニコニコしながら

「昨日は楽しかったかい。」

「はいっ。」

美猫だけが元気に返事をした。

39、少佐日和

 

エカチェリーナ・キャラダイン少佐ことエリカは今までに経験したことが無い、

全身疲労と筋肉痛に苦しんでいた。

これは尋常なことではないと、痛む体を引きずるように居酒屋銀猫に向かった。

途中、雅の事務所に寄ると雅と紀美が机に突っ伏してダウンしていた。

美猫は元気一杯なので事務所の惨状に暇を持て余していた。

エリカが雅に声を掛けると

「ネコを頼む」。

と一言言ってダウンした。

普段のエリカなら弛んでいるぞと檄を飛ばすところだが自分の体も

やっと動いている状態なので、ひとこと、

「わかった。」

とだけ答えた。

エリカは元気が有り余っている美猫を連れて居酒屋銀猫へ行った。途中マンション1階

のコンビニを覗くとさつきが脂汗を流しながらぎこちない動きでレジを勤めていた。

居酒屋銀猫につくと妖子は鼻歌を歌いながら料理の下ごしらえをしていた。

「エリカさんどうしたのですか動きがぎこちないですよ。」

いきなり銀が後ろから肩を軽くポンと叩いた。

「いだっ。」

エリカは思わず倒れ込みそうになった。

「あら、ごめんなさい、大丈夫。」

エリカは正直に全身疲労と筋肉痛でダウン寸前であることを白状した。

「銀さん、なんともないんですか。」

「ええ、美猫と妖子ちゃんも大丈夫みたいですよ。」

「普段どうやって体を鍛えたらそこまで強靭な体を作れるのですか。」

「まあ、ライカンスロープの肉体の長所の一つで肉体の状態を自由自在に調節

出来る事かしら。」

「何も外見だけじゃなくて内部の状態を常にいい状態に保つことができるの。」

「当然、その分多くの栄養を取る必要があるけど。」

目の前で美猫がチキンライス玉葱抜きを大盛りで食べていた。

「美猫はそのようだけど銀さんと妖子ちゃんが大食いしている姿は想像できないです。」

「そんなことはないですよ。」

と銀は食用油の一斗缶から油を飲み干していた。

妖子は稲荷寿司を山盛りにしたものを食べていた。

「では、まず筋肉を揉み解してみましょう。」

銀はエリカを俯せに寝かせると器用に揉み解していった。

「いやぁーとても気持ちいいです。」

あまり銀のマッサージが気持ちいいのでいつの間にかエリカは熟睡していた。

 

「おねぇちゃん、待ってよぉ。」

2人の金髪の天使のような男の子が一生懸命後を付いて来る。

そばかすだらけのやせっぽちの金髪の女の子にとって宝物のような弟たちだった。

少女は孤児だった。

本当の両親の顔を全く知らない。

心優しい親切な牧師に育てられ清く健全な心を持った少女だった。

やがて、養父母は双子の男の子を授かった。

でも養女の彼女と実子の彼らを分け隔てなく育んでいった。

弟たちは彼女に懐きとても愛していた、彼女も弟たちをとても愛していた。

血の繋がりなど関係のない本当の姉弟であった。

彼女は本当に優しい女の子だった12歳の時のあの事件までは。

「大変だぁ、バンパイアハーフのマルクス・エルメキウスが母親を手に掛けたうえ

めちゃくちゃに暴れていて手の付けようがない、とにかく巻き込まれないように避難

したほうがいいぞ。」

「たいへんだぁ、小さい金髪の男の子が2人・・・」

少女は血相を変え、小さい金髪の男の子の遺体を確認した。

少女はその場に倒れ、涙が止まらず大声で嘆き悲しんだ。

少女の憔悴振りは実子を失った養父母以上であった。

「ミハエルとラファエルのことは天命だと思って諦めなければいけないよ。」

「私たちには2人の愛したエリカがいることだけでも救われているのだから。」

養父母の悲しみと諦めに彼女は自分にできることを考えた。

彼女は養父母が味わった悲劇が起こらないようにするためには自分自身が強くなって

弱い人々を理不尽な暴力から守らなければならないと考えた。

彼女はエクスタミネーターになるべく体と精神を極限まで鍛え、養成所に入った。

 

エリカはいつの間にか眠っていた、そして見たくない一番悲しい夢を見てしまった。

顔が涙でくしゃくしゃになっていた。

ふと気が付くと銀がエリカの様子を心配そうに見ていた。

「どうしました、何か嫌な夢でもみたのですか。」

銀は優しく話し掛けた。

「えぇ、とっても嫌な悲しい夢でした。」

エリカは正直に答えた。

「あれ、体の痛みが完全にとれている、体が軽い。」

「銀さんありがとうございます。」

「痛みや疲れは取れても栄養分が不足しているはずだから何か食べていったらどう。」

「ではお言葉に甘えて豚の角煮定食大盛り4人前をお願いします。」

 

復活したエリカの食欲はすさまじかった。

あっという間に豚の角煮定食大盛り4人前を平らげ、さらに銀が肉屋で買ってきた

牛肉15kgをステーキにしてあっという間に平らげ完全に復活した。

 

遠くからよたよたと雅がなんとか家までたどり着こうとゆっくりと歩いてきた。

すっかり元気になったエリカは弛んでいるぞと雅に檄を飛ばした。

 

40、反魂

 

斬首された植村郷太郎にはよく似た性格の弟がいた。

当然兄ほどではないが評判は悪かった。

実際には兄の陰に隠れ目立たなかっただけであった。

警察より粗末な骨壺に入って植村郷太郎が帰ってきたが

特に供養もせずほったらかしにしていた。

「何も化けて出るわけでもねえし。」

「出たら出たで言いたい文句が山ほどあるし。」

デミバンパイアの支配下に自ら入った腰抜けと

ライカンスロープ仲間からの評判は最低だった

当然弟の哲也を見る目も丸でごみを見るようであった。

朝から酒を煽り、憂さを晴らしていた。

 

亜人街の中心にいても仕方がないと南西部の寂れたところに身を隠した。

この辺りは人が住んでいるのかいないのかわからない位閑散としていた。

自分の身の回りの物を適当に持ってきたのだがなぜか植村郷太郎の入っている

粗末な骨壺も持って来てしまった。

哲也はむしゃくしゃして壁に叩き付けた。

骨壺は粉々になって遺骨が辺りに散らばった。

それでも気が治まらなかったのか唾を吐きかけ悪態をついた。

その夜哲也は夢を見た、命乞いをし両耳を削がれ鼻を削がれ斬首された

惨めな植村郷太郎が哲也に自分の復讐を乞う夢だった。

目を覚ました哲也は胸糞悪いと植村郷太郎の遺骨に唾を吐きかけた。

次の夜も同じ夢だった。

その次の夜も同じだった。

そうして毎晩同じ夢を見るようになり段々とおかしくなってきた。

いつも哲也の頭の中に郷太郎がいるようになり、自分が哲也だか

郷太郎だかわからなくなっていった。

そして、哲也は郷太郎に乗っ取られるようになった。

しかし郷太郎は誰に復讐すればいいのかわからなかった。

郷太郎に乗っ取られた哲也は、亜人街に戻り、手当たり次第に郷太郎を腰抜け

呼ばわりしたライカンスロープに掴み掛り殴り殺した。

哲也は数体のライカンスロープを殴り殺した処で警官隊に射殺された。

 

現場検証に現れた大和警部補は射殺されたのが植村郷太郎の弟だと聞いて

悪寒を感じるほど不快な気持ちになった。

植村哲也の射殺体は文字通りハチの巣にされ顔の判別もつかない状態だった。

「こんな奴でも化けて出られたら胸糞悪いから丁寧に弔ってやりな。」

このあたりの住人の代表に弔いの費用を幾らか包んで渡した。

 


 
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