No.719629

義輝記 星霜の章 その二十

いたさん

義輝記の続編です。 宜しければ読んで下さい。

2014-09-20 10:48:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:891   閲覧ユーザー数:799

【 忠勝と恋の物語 にて 】

 

〖 洛陽 洛陽街 猫屋敷 にて 〗

 

忠勝「はぁ~平和で御座るなぁ……………」

 

『ニィ~ニィ~』 『ニァウゥー!』 

 

忠勝「お主たちは可愛くて羨ましいで御座るよ! 拙者も、もう少し小さくて、力が弱ければ……天城殿に可愛がったて貰えたかも………」ナデナデ

 

とある屋敷で、木の幹に背を預け……足を伸ばし、身体を擦り寄せてくれる猫達を撫でながら……羨ましげに撫でる『本多忠勝』が……そこに居た。

 

洛陽の猫屋敷。 元張譲の屋敷であったが……島津義弘が捨て猫を集め、恋と一緒に飼い出した洛陽の名物屋敷。 事前に申し込めば、見学、お触りも可の遊技館である。 勿論、恋の仲間の犬や馬などの動物もいる。

 

忠勝「はぁ~~『ペロペロッ!』ひゃ、ひゃあぁぁぁ!!!」

 

溜め息をついている所を、生暖かい物が頬を舐める為……ついつい情けない声を挙げてしまう! 幾ら弛緩しているからといっても、油断はしていない! 

 

それが、無造作に舐められた! 動物にだって隙を見せる事など───!?

 

ーーーーー

 

セキト『ワンッ!』

 

恋「…………………………」

 

忠勝「セキト!『ワフッ!』うわぁあ! と………れ、恋殿!?」

 

忠勝に懐くセキトを抱き寄せて、忠勝の横に座る。

 

恋「月達、帰ってきた! ……無事に帰ってきた!!」

 

忠勝「…………良かったで御座るな!」

 

恋「コクッ!」

 

ーーーーー

 

恋は、忠勝の横で……天を眺める。 

 

雲一つ見えない……晴天の空! 二人は座ったまま……何も語らない。 そんな沈黙が続いた後、忠勝が口を開けた。 ちょっとした……疑問を述べたのだが………。

 

忠勝「恋殿、どうしてここに………?」

 

恋「みんなに御飯! …………忠勝にも!」

 

忠勝「拙者……も?」

 

恋「コクッ!」

 

恋が……すぐ傍に置いてある『竹で編んだ箱』を持ちあげて、忠勝に渡す。

 

忠勝「これが……!」

 

恋が早く開けるように急かすので、中を開けると……『おにぎり』が八個、箱一杯に入っている。 無論、誰かさん作のおにぎりではない。 

 

颯馬達より聞いた話を再現した、料理人さんの調理した物だった。 

 

忠勝「……では、一つ頂戴して。 ムグムグッ……おぉ! 美味いで御座る! 美味いで御座るよ!! 恋殿!!」

 

忠勝は、一口食べると破顔一笑して、恋に賞賛を投げた。

 

恋「………それ」

 

忠勝「へっ!?」

 

恋「……好きな人、好む仕草……笑顔!」ニコッ

 

忠勝「えっ!? 拙者……の? せっ、拙者は恋殿に比べれば……遥かに見劣り………『 ムゥ! 』……に、睨まないで下されぇ!!」

 

恋「………恋より……可愛いのに……」

 

忠勝「な、何か……申したで御座るかぁ………恋殿?」

 

恋「………知らない!」プィ!

 

 

◆◇◆

 

【 回顧 の件 】

 

〖 徐州 下邳 晋軍陣営付近 にて 〗

 

韓馥の軍勢は、三方からの包囲戦により、徐々に勢いが失われていった。 

 

ーーー

 

〖 曹操軍 〗

 

道雪「敵の備えが崩れてきましたぁ!! 他の隊からの援軍、本隊からの攻撃も始まっています! 最後まで力を抜かないように!!!」

 

立花勢『 エイトウ! エイトウゥ!! 』

 

ーーー

 

麗羽「敵の本営まで後少し! 援護を頼みましたわぁ! 秋蘭!!」

 

秋蘭「うむ! 任しておけっ!」

 

ーーー

 

星「邪魔する者は─────容赦などせんっ!」

 

春蘭「どけぇ!! 七星餓狼の刃の下で果てるがいいぃぃ!!」

 

華琳「お前達のような雑魚など失せなさい! 伝令! 島津勢は立花勢を救援をするように! 大友勢は麗羽達の救援を!!」

 

義久「はぁ~い!」

 

紹運「心得た!!」

 

★☆☆

 

〖 晋軍陣営内 〗

 

晋兵「で、で、伝令! 敵が本『ザシュッ!!』グギャアアァァァ!!」

 

韓馥「そんな……報告なんぞ……聞き飽きたわぁ!」

 

血染めの韓馥本営。 次々に来る劣勢の報告に韓馥は嫌気を差し、伝えに来る伝令兵を………その都度、斬り殺していた。

 

そこへ、メイド服姿の麗羽が駆け込みが……辺りの惨劇に言葉を失う!

 

麗羽「────此処が本陣で──これはぁ!?」

 

韓馥「…………ホッホッホォ! 久しいな麗羽よ~? 儂を忘れたかやぁ! 幼きお前達を可愛がってやった………韓馥じゃわいぃ!」

 

麗羽「えっ!? あ、貴方が韓馥!? ───そ、そんな! あの頃より遥かに若返っている!? それに……司馬懿に殺されたのではなくて!?」

 

韓馥「ホホホホホッ! 儂は主より使えると云う事で……監禁されておっただけじゃ!! 麗羽や斗詩に比べればなぁな!!!」

 

麗羽「…………貴方の悪行の為、斗詩さんやわたくしが───どれほど傷付いたか分かりますかぁ!?」

 

韓馥「ふんっ! 儂の斬新な髪型が、世に受け入れられるのは……まだ先だったじゃ! 異民族の風貌から思い付いた最大のデキだった物を!!」

 

ーーーーー

 

麗羽達が昔、一時的だが……冀州太守韓馥の身に匿われた事がある。

 

当時、異民族の髪型を素晴らしいと、思って真似していた韓馥は、麗羽達にも強引に勧めていた。 

 

韓馥作の髪型……麗羽と斗詩の髪を双方編み込んでのツイン、巨大な団子状のツイン等。 幼き頃の斗詩が、背中まで髪を伸ばしていた為できた事。

 

前の結い方で、二人で一つの三つ編みをしたので、自ずから行動に制限が付く。 幾ら主徒だろが……一日オハヨウからオヤスミで一つに居るのは、ハッキリいって、気疲れする。

 

もう一つは、余りの大きさの為、斗詩が泣き出した程。 自分の顔と同じぐらいの団子状の纏まりが二つ付いているのは……幾ら何でもやり過ぎだ。

 

そんな前衛的な髪型ばかりさせるので、斗詩はお気に入りの髪を短く切ってしまったのだ。 麗羽は、例のクルクルにする予定が近づいていたので、切れずに弄ばれてしまったが…………。 

 

斗詩の髪が短いのは、韓馥の斬新で爆発的な理容のせいである!

 

猪々子は、当時も同じ髪型であった事、どんな髪型にしても当人が気にせず外に出るため、やっても無駄と悟り諦めた。

 

ーーーーー

 

麗羽「だから……斗詩さんの仇、囚われた我が君の情報を得る事、貴方のふざけた行いで迷惑を掛けた方々へ償わせるた為、貴方を半殺しにしてから捕獲して差し上げますわ! ─────覚悟は宜しくて!?」

 

韓馥「……何を云うか思えば……たったそれだけの事でか? 笑わせてくれるのぉ!! 全ては、この韓馥の、韓馥による、韓馥のためだけの政道を貫いただけの事! 早い話が『削り滓』に過ぎん者を、何故省みる必要がある!?」

 

麗羽「────貴方には『良心』は無いですの!?」

 

韓馥「………ぐふふふっ! 生憎『片親』だけでのぉ!! 儂は前太守の妾の子息よ! 儂の受けた苦しみに比べれば、まだ軽い方じゃぁぁぁ!」

 

秋蘭「どけぇ! 麗羽!!」

 

秋蘭が麗羽の後方より、韓馥の顔に向けて、一瞬で三矢を射る! 

 

韓馥「ホホホッ! 冷静に見えて意外と短気な女だの! じゃが、これしきの児戯、本気にもなれぬわ!!」

 

韓馥は、さも可笑しそうに笑うと───両手で矢を捉える! 

 

韓馥「かの夏侯妙才の神弓が……このような児戯とは! 噂も当てに成らぬものじゃわぁぁいぃ!! ホホホホホッ!」

 

秋蘭「フッ! 児戯と神弓の違いは、四矢目で判断して貰いたいがな!」

 

韓馥「───ホホッ!?」

 

その言葉に、少し真顔になった韓馥が耳を澄ますと、『シューン!』と頭上より風切り音が聞こえてくる!!

 

急いで上を見上げると…………天から頭上へと矢が落ちてくるではないか!?

 

韓馥「ホ───────ッ!?」ドシュ!

 

韓馥の上向いた顔に、秋蘭の矢が吸い込まれるように落ちた!

 

秋蘭「我が妙技、特と思い知ったか!」

 

秋蘭は満足げな笑顔で、まだ立った状態の韓馥に声を掛けた………。

 

 

◆◇◆

 

【 稟と風と蒲公英 の件 】

 

〖 洛陽 宮廷内 稟私室 にて 〗

 

稟「風! 準備はいいのですかぁ!?」

 

風「だいたいの物は揃えましたよー! 旗の準備も終わりましたしー!」

 

稟「………後は、出陣の機会を待つだけですね! 月様と皇帝陛下方は共同で出陣! 続く将が董卓軍の武の象徴『呂奉先』殿、神速『張文遠』殿、天の御遣い最強『本多忠勝』殿、 至誠一貫で名高い『華雄』殿!」

 

風「皇帝陛下側も凄いですよー! 西涼の狼『馬寿成』、錦馬超『馬孟起』、神出鬼没ここにいるぞぉ!の『馬岱』ですからー!」

 

稟「…………最後は、よく分かりませんが………」

 

風「有名なんですー! どこに居ても噂を出すと現れるってー!」

 

稟「そんな馬鹿な!?」

 

風「じゃあ! 稟ちゃん試してみますぅ? 『私を倒せる者は居るかぁ!』と、叫んで貰えばいいんですよー!」

 

稟「では……私を倒せる者は居るかぁ!!」

 

蒲公英「ここにぃーいるうぅぞおぉぉぉ!!」

 

『キャアアァァァァ──────!!』

 

稟の背中側から聞こえし大音声の為、余りにも驚き過ぎて……部屋の机に当たり、飾っていた花瓶も頭から落ちて──────!

 

ガラガラッ! ゴロゴロ──!

 

バッシャン!!

 

ーーーーー

 

稟「………で、訳を聞かせて貰いましょうか?」ポタッ…ポタッ…

 

余りにも驚き過ぎた稟は、机の上に乗っていた花瓶を頭から被り、びしょ濡れに濡れまくっていた。 服が濡れたまま、腕を組み片足をトントンと一定の拍子を取りながら、床を叩いている。 

 

風「ぐぅ~!」

 

蒲公英「ふ、風さん! 寝ちゃ駄目だよぉ! 起きてぇよぉー!!」

 

稟「謝罪と説明は………?」

 

蒲公英「───あわわわっ! ごめんなさい! ごめんなさいっ!! 元々の企みはね? 風さん何だよ!? 風さんが、稟さんを驚かすから背後より脅かしてくれって、頼まれたからなんだよぉ!?」ユサユサ ユサユサ

 

風「風は寝てましたから……知りません…ぐぅ」

 

稟「風ぅぅ!! もし、この切羽詰まった時期に、出陣命令が来たらどうするんですかぁぁ!!! もし、今日でなくても明日、明日でなければなら明後日と先を読むのが軍師です!! それを、こんな事をしてぇぇぇ!!!」

 

風「明日以降なんて………そんな先は分からないさ……ぐぅ~」

 

稟「風ぅぅぅぅ!!!」

 

董兵「で、伝令! 皇帝陛下より出陣命令が発令されました! 準備を整えるよう、董相国よりお呼びが掛かっております!」

 

稟「──────!?」

 

風「稟ちゃん! 明日って言うのは……今なんですよぉ~!!」ダッ!

 

稟「ま、待ちなさいっ! 風ぅ!! 訳の分からない事を言って、人を煙に巻いても、貴女のやった事はコレで済んだ訳じゃありません!!! コラァ! 待ちなさいぃぃぃ!!!」ダダッ!

 

蒲公英「……へぇっ! さっすがぁ──風さん! そこに痺れる憧れるぅ!」

 

一連のやり取りを見て、風に憧れの眼差しを送る蒲公英の姿があったとさ。

 

◆◇◆

 

【 最終決戦に向けて…… の件 】

 

〖 徐州 下邳 晋軍陣営内 にて 〗

 

麗羽「ちょっ! 殺してしまっては───!!」

 

秋蘭「華琳様より伝令があって、晋側の将を多数保護したそうだ。 だから、この毒虫をこの場で『 儂を……毒虫呼ばわりとは……恐れいる 』──!」

 

麗羽「えっ!?」

 

秋蘭「なっ!?」

 

韓馥「ぐふふふっ!! こんな不味い物を喰わせるとは……ペッ!!」

 

韓馥は、口で咥えていた秋蘭の矢を吐き出した。 

 

ーーー

 

わかり辛いゆえ説明すると……

 

① 秋蘭が、三矢を瞬時に射て韓馥に放ち、韓馥が両手で受け止める。

 

② 韓馥が受け止めた隙に、四矢目を天に向かい放ち、放物線を描きながら韓  馥の頭上に向かう。

 

③ 韓馥は、それに遅れて気付くが、標的を自分の口に移動させ、歯で噛んで鏃の進行を止めた。

 

ーーー

 

韓馥「なかなかの大道芸、大儀である! 次は儂から……」

 

春蘭「させるかぁ────!!」

 

星「フッ────!」

 

韓馥「うぬっ!?」

 

大剣と槍の同時攻撃で、退かざるえない韓馥! 

 

紹運「でえぇやぁぁ!!」

 

宗茂「そこっ!!」

 

韓馥「グッ!?」

 

避けた先でも攻撃されて二度、三度場所を移動する! 横、横、左、左、右と動き廻り……気が付けば………包囲網を築かれていた。

 

華琳「貴方の兵や鳥丸の騎兵隊は、全て居なくなった! 余程……貴方が理不尽に可愛がったようね? 貴方が危ないと分かると逃走する者、投降する者だらけで……誰一人として、身命を賭して救おうと云う者は居なかったわ!」

 

韓馥「おのれぇぇぇ~!! 恩知らず共がぁぁぁ!!!」

 

歳久「………貴方に恨みに思う者は、川で普通の石を拾うように居ますが、恩義を感じる者は、砂金を探すような物で、簡単には見付かりませんよ?」

 

家久「みんな! 気を緩めちゃ駄目だからね!! まだ、アイツ! 切り札を持っているぽっいから!!」

 

その言葉を聞いて……韓馥は……ニヤリと醜悪な笑顔をみせた。

 

★☆☆

 

韓馥「ぐふっぐふふっ! よくぞ気付いたな! これは、お前達の陣営で捨て置いてあった強力な人体強化薬だぁあ! 驚いたろうぅ!? お前達が間抜け顔して必死に探している間に、儂が手に入れたのだぁぁぁ!!!」

 

韓馥が声高々と説明して曹操陣営の将に見せた物。 

 

それは──意外! 『義久の手作りおにぎり』だった!

 

ーーー

 

義久「あぁぁ! わた『よしねぇ! 黙って!!』───ムグムグ!!」

 

華琳「それが───どうしたぁ! そんな物で『か、華琳! アレが春蘭が暴走した原因!』──えぇっ!? な、なんでぇ、そんな物がアイツの手許にあるのよぉ!? 義弘! 応え次第では、只ではおかないわよぉぉ!!!」

 

春蘭「ま、まさかっ……あの『おにぎり』!? 敵ながら美食家めぇ!!」

 

家久「わぁあ………初めて聞いたよ………そんな台詞………」

 

星「駄目かぁ! 我が奥義の射程圏外だ! 他の奥義を使おうにも……これ以上メンマを失ってしまえば、私がぁぁ───!!」

 

ーーー

 

『……………………………』

 

事情が分からない将も何人か居たが………。

 

韓馥「わ、儂はぁ『人間』をやめるのだぁぁ!! 麗羽ぁぁぁ!!」

 

麗羽「な、何を!?」

 

急に呼びかけられ、意識を韓馥に向ける麗羽!

 

そこには………一気におにぎりを貪り喰らう韓馥の姿!

 

ガブガブッ! ングッングッ! ガブガブッ! 

 

─────ゴクンッ!!

 

義弘「あぁ! 食べられちゃった!!」

 

宗茂「空腹は敵ですからね……」

 

家久「どうしよう!? ねぇ~どうしよう!?」

 

歳久「こ、こんな事は初めてです! よしねぇの料理自身が牙を向くのでは無く、食べた者が襲い掛かって来るかもしれないなんてぇ!!」

 

華琳「食べ物一つで………危機に陥る……? なんて馬鹿げた展開!!」

 

麗羽「…………? いったい……何の話ですの?」

 

韓馥が食べ終わると………動きが止まった。

 

包囲網を少し狭め、もしかの事態に対象出来るように動いた。 

 

韓馥「………………うっ!」ドックン!

 

『ビクッ!』

 

韓馥「………………うぅ!!」ドックン!ドックン!

 

『ビクッビクッ!』

 

韓馥「ウオオオォォォ───────!!!!!!」

 

『バッ!! ダ───ッ!』

 

一斉に取り抑える為、向かった将達!!!

 

 

韓馥「ギモヂワルイィィィ─────!!」ゲェー

 

『キャアアアアァァァァァァ───!!』

 

韓馥は………その場で吐いたと云う。 

 

ーーー

 

麗羽「我が君からの賜り物のメイド服がぁ! ふふふっ………いい度胸ですわね。 そこに直りなさい! 直接、冥土に送って差し上げますわぁぁ!」

 

義久「お姉ちゃんの料理を吐くなんてぇ酷~い!!」

 

華琳「待ちなさい! この者は大事な情報を持っているのよ! 殺すのは許可出来ないわ! ………しかし、半死半生なら許しましょう!」

 

ーーー

 

無論……半殺しの憂き目に合わされ……別の場所に移された。

 

★★☆

 

〖 徐州 下邳 現曹操軍(旧晋軍)陣営内 にて 〗

 

《 決戦後の夜 》

 

韓馥「馬鹿なぁ!! 何故、何故ぇ!! 儂は正気を保っている!? 何故、あの女のように、圧倒的武が体現出来ないのだぁぁぁ!!!」ウップッ!

 

縄でグルグル巻きに縛られ、監視を交代しながら様子を観察中。

 

桂花「うるさぁい!! アンタ! よりによって、私に向かって吐こうとしたわね!? この中二病寄りのロクデナシがぁぁ!!」 ゲシゲシッ!

 

韓馥「グギャアアアアァァァァァァ!!」

 

ーーー

 

華琳「義久殿の料理ねぇ………確か虎牢関戦で春蘭が避けて、劉岱に命中した罠の中身?」

 

歳久「そうです! もし……春蘭が中身を食べて暴れば……洛陽側は勝ったにしても、被害が酷かったでしょう! 考えたくないですが…………」

 

星「義久殿に……メンマを調理して貰えば……わ、私の武力が上がるかもしれないだとぉ!? ……いやっ! 大事なメンマを……愛紗のように消し炭にされるもしれん! くっ! ……悩む、悩むぞぉ!!」

 

ーーー

ーー

 

戦の戦後処理のため、大半の将が出払いつつも、韓馥の監視役には将を配置させねばならなかった! 韓馥の武に対抗出来る程で、手が空いている者に任せた! その将ては、勿論……………。

 

春蘭「さぁ! 吐けぇ!! 北郷は無事なのかぁ!? 奴らの目的は何だぁ! 言えぇ!! 吐き出せぇ!!!」

 

韓馥「ジィ──────ッ」

 

春蘭「な、何だぁ! 私をジックリ見ても、何も出もしないし助けてやる事もしないぞぉ!?」

 

韓馥「いったい………何が悪かったのじゃ! 儂のような強靭な肉体的てあれば、あの秘薬に充分耐えられはずだった物がぁ!!」

 

韓馥が独り言を呟くと………対話する『声』が不意に加わった!

 

??「簡単な事ですわ。 あれは、偶々できた『潜在能力を引き出す』物でしたから! 私も認めたくないないのですが、この将の潜在能力は……かなり眠った状態なんでしょうね………」

 

春蘭「────お、お前は!?」

 

春蘭も韓馥も驚き、その方向に目を向ければ……筒井順慶が……立っていた。

 

かなり……衰弱した様子で…………。

 

順慶「………あらあらっ! この世界の英雄の一人『盲夏侯』でしたかしら!? 是非、一戦交えたいのですが………私の力も……」

 

韓馥「じゅ、順慶様! こ、ここじゃ! 儂は此処におる!!」

 

春蘭「そうか………! 貴様が……華琳様達を傷つけ……左校や大洪達を死に追いやった者かぁ!!!」

 

二人の将が……それぞれ声を掛けたが、応じたのは春蘭の質問だけだった。

 

ーーー

 

順慶「………その通りですわ! 颯馬様と私を離そうとする、愚かな人達が居れば排除するのが……当然。 人の恋路を邪魔する者は、死を賜るのは必然的な事です。 …………そうは思いませんか? 『盲夏侯』?」

 

春蘭「貴様……さっきから……人を牛のように『モゥモゥ』付けるが、どういう意味だ!! も、もしかして、お前も私の胸が大きいから……牛とでも言いたいのか!? こんなモノ、無い方が早く動けるのにぃぃ!!!」

 

順慶「………あら? 此方ではその呼び方は、定着してないようで……失言でしたか。 …………ごめん遊ばせ、夏侯元譲サマ」

 

春蘭「ふんっ! そんな事はどうでもいい!! 私は……貴様と出会った事、嬉しく思うぞ! アイツ等に墓前で……約束したのだ……! 必ず仇を討つとな!!!」

 

順慶「それはそれは……! だけど……おあいにく様。 ………私の用事は貴女ではなく、そこの強欲まみれの堕落者に、引導を渡しに来たのよ………!」

 

ーーー

 

韓馥「なっ!? わ、儂が何を……! 于吉や順慶様の命じられるように動くも、武運拙く(つたなく)捕らわれた身! 誉められてこそ、罵られる覚えは───『黙りなさい!!』──ふぐぅぅ」

 

順慶「韓馥……お前は私を甘く見た。 タダの武力だけの軽いオナゴとでも、思っていたでしょうが……生憎、天の国では一国の太守を務め上げた事もあるし、何より颯馬様のお手伝いも何度もしたのよ? 謀略とかもねぇぇ?」

 

春蘭「……………………!」グッ!

 

順慶「だから、私が間者の真似事が出来ても……可笑しくないの!!」

 

韓馥「ま、まさか………」

 

順慶「気付かれないように入るのは、簡単だったわ! 十常侍の張譲が使った秘伝の隠密術『竹箱隠れ』を使えば……気付く物は皆無よ!!」

 

韓馥「────────!」

 

順慶「だから……お前に……コレをあげる。 私からの餞別と思いなさい!」

 

順慶は懐から石を取り出し、韓馥に向かって投げた!

 

★★★

 

春蘭「くそぉ──『 止めろ! 春蘭!! 』───星ぃ!?」

 

何時でも動けるようにしていた春蘭が、正に飛びかかろうとした時、星の制止を発する声が聞こえて───止まるッ!!

 

 

────────ドスッ!

 

韓馥の腹に石が当たる………。 軽く当たり、直ぐに地面に落ちた……!

 

 

星「嫌な気配が漂ってきたので、急いでくれば……また御主か! そんなに私に執心していると……颯馬殿から嫌われるぞ?」

 

順慶「……無問題ですわ! 颯馬様と私の絆は易々と切れませんもの!!」

 

 

韓馥「こ、ここここっこれはななななんじゃゃゃ!!」

 

 

不意に韓馥から悲鳴地味た叫び声が上がり、順慶達が注目した!

 

春蘭「なっ!? 何だぁ────ッ!」

 

星「これは…………!?」

 

白い煙が吹き出し、韓馥の身体から水蒸気が上がる! 

 

韓馥の顔が、身体が……どんどん瑞々しさが失われていく!!

 

順慶「………私の気を凝縮して宿した石ですわ。 本来なら……趙雲にぶつけるつもりでしたが……見抜かれましたしね……。 だから、韓馥にあげますわ! 再生の気を存分に味わいなさい!!」

 

韓馥「ががががっ────ぐはぁぁはぁぁあぁぁ!!!」

 

韓馥の身体がガタガタと震え、大口を開けて何か叫ぶが聞き取れない!!

 

再生活動の急激な促進のため、細胞が全部熱暴走を起こし、『水』が全部蒸発していく! そして……残ったモノは………。

 

韓馥「カッハァ………! カッハァ………!」

 

身体が干し物にように干からびた……韓馥が、息も絶えそうになりながら、倒れていた。

 

星「…………私が受けた物より、更に凶悪になっていたか!」

 

順慶「……折角、命を削って作成した物が、無駄にされても嫌ですもの!」

 

春蘭「………ぐ、ぐぅぅぅぅ!!!」

 

順慶「………私の命も……あと少し。 趙雲、貴女を打倒する事は結局出来ませんでしたけど……颯馬様を奪い返す目的は……必ず果たさせて貰いますわ! 北郷一刀の命を楯に取れば……颯馬様は必ず動くと………!!」スッ!

 

星「待てぇ! 颯馬殿と主に何をする気だっ!? ───ちぃ!! 逃げられたかぁぁ!!!」

 

韓馥「…………カッハァー………う、于吉はな……この世界……破滅させるが……ゴハァ……目的! 我々の……命……など………塵芥にも感じぬ……わ」

 

春蘭「ど、どういう事だ!? 分かるように教えろ!!」

 

韓馥「…………あ……あの世で………貴様等が……来るのを……ガバッ!」

 

春蘭「おいっ! おいっ!!」ユサユサ ユサユサ

 

華琳「………無駄よ。 既に息絶えているわ、春蘭」 

 

 

───ザッザッザッザッザッ!

 

華琳が桂花を供にして、この場に現れる!

 

春蘭「………申し訳ありません! 華琳様!! 私は、私は……アイツ等との約束を果たせてやれなかった………! 

 

仇を必ず討ってやると───誓ったのに!! 

 

それが……星に止められなければ……二の舞に成るところでした!!」

 

華琳「…………春蘭」

 

桂花「春蘭程の武を持ってしても……」

 

春蘭「くそぉう! 大言壮語した私自身が……物凄く憎らしい! くそぉう! くそぉう!! くそぉぉ────『春蘭!』……はいっ!」

 

華琳「貴女は何を勘違いしているの! 左校や大洪達が仇を討つ事を望んでいたと思うの!! あの者達の望みは一刀の無事! それに、貴女が死んだら……残された私達……どうすればいいのよ!?」

 

春蘭「し、しかし……私は約束を守れなかった………」

 

華琳「個人の武で負けたとしても、貴女は……こうして生きている! それに筒井も松永もまだ健在! 敵の思惑を阻止し、一刀を取り戻す事をすれば、充分仇を取れるわ! 私達の力も使い……勝ちなさい! 春蘭!!」

 

春蘭「─────か、華琳様ぁ!!!」

 

ーーー

 

星は、皆と少し離れたところで、月に向かい……杯を掲げていた。

 

今日も一日中晴天だった。 火計を行うに雨天時であれば威力は弱まる! 戦においても、有利不利になる要件の一つだ。

 

だが……今日もまた、月がハッキリと見える程の晴天だった。

 

そんな月に向かい、星が呟く。

 

星「………この戦での勝利を得たが……次は、世界の破滅が待ち受けているか……。 いやはや、貴方と居ると……日々楽しみですな、主よ!」

 

杯を一杯、クイッと呑むと……次の酒を注ぎこんで杯を掲げ、月に向かい……宣言する! 

 

星「──しかし、御安心召されよ! 必ず……この趙子龍! 主を御助けしつつ、かの者達のふざけた野望、阻止してみせますぞ!!」

 

その後、持っていた徳利を……地面に叩きつけた!

 

──────ガッチャン!

 

星「月よ! 我が願い聞き届けたまえ! 主の救出! 世界の救済! その大願成就を果たすまで、今この時より───私は酒を禁じる! 我が真名『星』にかけて誓おう!! だから……頼む! 私に力を貸してくれぇぇ!!!」

 

星は、涙を流し……誓いを立てる! 

 

敵は追い詰められ、更なる協力な力、得体の知れない術を使ってくるだろう!

 

そんな自分の最後に出来ることは、己の力を信じる事。 

 

そして、何かを禁じて神頼みするしかなかったのだ!

 

…………………

 

必死に祈る星の頭上には、月が煌々と輝きを増すばかりであった。

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

韓馥戦………やっと終わりました。

 

次回より、最終決戦に入りますので、よろしくお願いします。


 
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