No.717760

真・恋姫†無双~比翼の契り~ 一章第三話

九条さん

一章 反董卓連合編

 第三話「汜水関戦前日」

2014-09-15 19:32:01 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1689   閲覧ユーザー数:1503

「はぁ……」

 

 いけないと頭で理解していても溜息がでてくるわね。

 あんなのが私と同じ私塾に通っていたということも、私が次席であったことも。

 全てが頭痛の種になる。

 

 あの作戦を聞いた時を思い出すと、自然と苛立ちが大きくなる。

 皆も気を使ってか、少し離れたところから近寄ろうとはしてこない。

 

 こんなのではダメね。さっさと頭を切り替えましょう。

 

「春蘭」

 

「はっ!」

 

 唯一ずっと側にいた姉妹の一人を呼ぶ。

 呼ばれた方はその声に即応し、しっぽが生えていたら思いっきりぶんぶんと振っているような、そんな笑顔を私に向けた。

 

「そんなに嬉しそうな声で、何を期待したのかしら?」

 

「もちろん全力で汜水関を--」

 

「落とさないわよ」

 

 なんで驚いた顔をしてるのよ。本当にこの子は……。

 

「姉者。先ほど、劉備軍が一計を案じるまでは様子見だと、説明していたではないか」

 

「おお! そうだったな!」

 

「あの諸葛亮とかいう軍師。中々に頭の切れる者かと」

 

 弛緩した空気を感じ取ったのか、様子を見ていた皆が近寄ってきていた。

 

「桂花の言う通りね。だからこそ私達もすぐに動けるようにしておくわよ」

 

 策が成らなければ、責は劉備達が受けることになるでしょう。

 成ったとしたら、それに乗じて私達も攻め立てればいい。

 おそらく、孫策達も同じことを考えているでしょうね。

 

 さて、劉備。

 あなたはこの逆境をどう乗り越えるのかしら……。

 

 

 

 

  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「雪蓮様。挨拶に行くだけだとおっしゃいましたよね?」

 

 劉備の陣営から少し離れたところで、それまで我慢していた玲々が静かに怒った。

 

「劉備がどんな人物なのか見極めるため--とも言ったわよ」

 

「では、一切の相談もなく、一人で、勝手に、口約束とはいえ同盟を組んだのはなぜでしょうか? 納得出来るだけの説明をお願いしたいところですが」

 

 私のささやかな反抗は一瞬にして粉砕された。

 なんでって言われて即座に懇切丁寧に説明出来る人がいたら呼んでみて--なんて思ったけど、冥琳あたりは普通に答えられそう。

 ここはずばっと正直に。

 

「え~っと……あの子は大丈夫だと思ったのよ?」

 

「……つまり、勘、ですか」

 

 あ、その呆れた表情ちょっと傷つく。

 だってそう思ったんだから仕方ないじゃない。

 いきなり来た私達を非難するでもなく受け入れて、その上で『私』の事は信用するなんて。

 なかなかできることじゃないわよ。

 

「あはは……あ、もう着いたみたいだし先に行くわね!」

 

 こういうときはさくっと切り上げるましょう。

 文句はもう聞き飽きました~ってね。

 

「……まぁ私からはいいですよ。どうせ冥琳に--」

 

 さっさと話を切り上げようと走りだしたせいで、玲々の最後の言葉を聞き取れなかった。

 

「では、続きは私が詳しく聞こうか」

 

「あ」

 

 目の前から聞こえた声は、聞き間違えるはずのない、愛しの冥琳の声だった。

 冥琳はそのまま私の耳を掴むと引っ張っていく。

 

「いたっ! 痛いって冥琳!」

 

「そうか、ではもっと強くしてやろう」

 

 あーうん、これは本気で起こってるっぽい。

 言わずとも分かる仲って、こういうときに困るのよね。

 

「玲々殿。後は私にお任せ下さい」

 

「ちょっとキツめで任せるわね」

 

「はっ。ほら、行くわよ雪蓮」

 

「いったー! せめて耳から手を離してー!」

 

 結局、私の願いは聞き遂げられることはなく、冥琳に耳を引っ張られるまま軍議で使っている天幕に連れて行かれた。

 

 

 

 

  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 目の前に立ちはだかるは汜水関。

 聞くところに拠れば、董卓軍の軍勢およそ十万が詰めていると言われていた。

 対して先頭……いや、先鋒の俺達は、袁紹から兵を借りたとはいえ総勢一万にも満たない。

 これで関を突破しろって言うんだから総大将様の無能さが分かるだろうけど、負ければ死が待つ世界だ。無理無茶なんだとしても進むしかない。

 幸運にも江東の小覇王と称される孫策ら呉の軍勢が手を貸してくれるということで、汜水関を取れる可能性が現実的になったと朱里が言っていた。どこまで信用できるか分からないとも言っていたけど。

 個人的にはそういう約束は破らないような人に見えたんだけどな。

 そうそう。白蓮とまだ彼女の客将をやっていた星も手を貸してくれると言ってくれた。

 俺達は一人で戦っているわけじゃない。……きっと大丈夫だ。

 

 夜の帳が下りる。

 戦は明日の朝、日の出とともに始まる。

 言い知れぬ不安を抱えたまま、静かに夜を過ごした。

 

 

 

 

【あとがき】

 

 こんばんわです。

 九条でございます。

 

 また遅くなりました(猛省

 購入したゲームが一段落(周回プレイ3回終了)したので更新再開していきます。

 

 

 今回、連合側の視点を三人称ではなく、それぞれ一人称で書いてみました。

 魏→呉→蜀の順番になりますね。

 三国を呼ぶ時、個人的に魏呉蜀! と呼んでいるのでそれに合わせる形に。

 最後の視点は誰なのか……!?

 

 

 次回もお楽しみに~!


 
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