No.699973

リリカルHS 55話

桐生キラさん

こんにちは
ガイア戦を終えたところで、乱入者に狙撃された士希
士希は最後の力を振り絞り…

2014-07-11 17:05:46 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1489   閲覧ユーザー数:1330

 

 

 

 

俺がガイアと握手をしようとした途端、俺は気付いてしまった。

こっちに、明確な殺意と攻撃性の魔力を有した何かが向かって来ていることに。

俺がそのことを頭で理解するより先に、俺の体は既にはやての方へ向かっていた

 

士希「はやてーー!!」

 

俺はせめてもと思い、はやての名を叫び、はやてを突き飛ばした。

あの日、俺をかばって死んでいったあいつのように…

 

 

パシュン

 

 

背後から肩に何かが貫通した。それを頭で理解すると、直後に激痛が走る。

まるで、千匹の蜂に一斉に刺されたかのような、鋭い痛みだ

 

ザフィーラ「クソッ!」

 

ザフィーラは悪態をつきながら、既にはやてをカバーしていた。

見れば、他のヴォルケンリッターも戦闘態勢に入っている

 

ガイア「アルテミスゥゥゥ!!!」

 

ガイアが叫んでいた。

アルテミス…神器か。まさか、一日に二人も相手にしなきゃいけないとはな

 

ヴィータ「ちくしょう!あたしの目の前で!どこだ!?」

 

ヴィータちゃんは分かりやすいほどの怒りと殺気を滲み出している

 

シグナム「クッ!迎え討つぞ!ザフィーラは主はやてをお護りしろ!

シャマル!お前は士希の治療だ!」

 

シャマル「わかったわ!」

 

シグナムが指示を飛ばすと、シャマルさんがこっちへ急いでやって来た。

そして肩に手をやり、温かい魔力が俺の肩を覆った

 

はやて「………」

 

ただ一人、はやてだけは状況を理解出来ていなかった。無理もない。

目の前に肩に穴開けた男がいるんだ。余程ショッキングなものだったんだろう

 

士希「……ッ!?」

 

俺も迎え討つ為立ち上がろうとするが、上手く力が入らない。

おそらく、ガイアとの戦いで力を使い過ぎたのだろう。

魔力は有り余っているが、血を多く流し過ぎた事もあって体力がない

 

はやて「し、士希?」

 

はやては信じられないと言った様子で俺の名を呟いた。

まずいな。返事をしてあげたいのに、上手く言葉が出ない。

俺ははやてのこんな不安に満ちた表情、見たくないのになぁ…

 

ガイア「チッ!おいお前ら!ここは退くべきだ!今の状況じゃ、あたしらに勝ち目はない!」

 

ヴィータ「テメェ!何言ってやがる!?士希が、テメェのマスターがやられたんだぞ!?

やり返さねぇといけねぇだろうが!!」

 

ガイア「わかってる!あたしだってムカついてるさ!だけどな!

ここはもうあいつの狩場なんだよ!なんの準備も無しに奴とは戦えない!

現に、お前らの誰か、あいつの場所特定してんのか!?」

 

ヴィータ「そ、それは…」

 

シグナム「おいレーゲン、お前ですらわからないのか?」

 

レーゲン「ダメです!遠過ぎて追えません!」

 

アルテミスか。なかなか厄介な奴らしいな

 

シャマル「!?士希さん、何するつもりですか!?」

 

慌てるシャマルさんを押し退け、俺は魔法陣を展開させていった。

俺が危機に瀕した時に設定しておいた、緊急離脱用転移だ

 

ザフィーラ「これは…」

 

リイン「士希さん!?」

 

ヴィータ「おい!何してる!?」

 

シグナム「やめろ士希!」

 

レーゲン「無茶です、しきさん!」

 

ガイア「チッ!悪い、士希…」

 

ガイア以外には全員に反対されたか。

別にこれは、逃げるわけじゃない。勝つための、必要な撤退だ

 

士希「………」

 

俺ははやてのそばに来た。もうほとんど力も入らないし、声も出ない。

だから俺は、何とか笑顔を作り、彼女を抱きしめた

 

 

転移

 

 

俺は魔法を発動させ、意識を闇に預けた

 

 

 

 

 

はやて視点

 

 

 

私はこの状況について行けてへんだ。

私が士希に突き飛ばされると、ザフィーラが私は抱き留め、シールドを展開させていった。

シグナム、ヴィータ、ガイアも凄い剣幕で武器を構えていた。

リインとレーゲンは何かを必死に探しとる様やった。

シャマルは、士希に駆け寄り治療魔法を使っていた

 

はやて「し、士希?」

 

私は士希の名を呼ぶ。

士希の肩にはポッカリと穴が開いており、そこから大量の血が流れている。

心なしか、顔色も良くない

 

いったい、何が起こっとる?

 

なんで士希、こんなにも血を流してんのや?

 

なんで士希、そんなにも弱々しくなってんのや?

 

なんで士希、苦しいくせして私のこと心配しとるような表情なんや?

 

多分、私の頭が理解を拒んどる。

今目の前に広がっとる光景を、現実と認識しようとしていなかった

 

直後に、士希を中心に魔法陣が展開されていく。

黒色の魔法陣。これは士希の魔力光や。って事は、士希の魔法…

 

士希は魔法陣を展開させながら、ゆっくりとこちらにやって来た。

士希は力なく微笑み、私を抱きしめる。そして魔力光が、私らを包んだ

 

 

 

気が付くと、私らは何処かの家の敷地内にやって来ていた。

この光景は、何処かで見覚えがある。ここは確か、士希の実家や

 

はやて「!?士希!士希!!」

 

私は力なくもたれかかってくる士希を揺さぶる。だけど反応がなかった

 

はやて「そ、そんな…士希!目ぇ覚ましてよ!なぁ!」

 

この瞬間、私は理解してしまった。あの時、士希は私をかばって傷を負った。

理解したくなかった。夢であって欲しかった。

せやけど、体に着いた士希の血が、これを現実だと認識させた

 

はやて「しゃ、シャマル!士希が、士希が!!」

 

シャマル「はやてちゃん!治療を始めます!リインちゃん、手伝って!」

 

リイン「はいです!」

 

リインはシャマルとユニゾンし、士希の治療を始めた。

私もそれを手伝う。せやけど、なかなか傷が塞がらんだ

 

はやて「どうしよう!?シャマル!血が、士希の血が止まらん!」

 

シャマル「はやてちゃん、落ち着いて!今はとにかく集中しないと!」

 

シャマルはそう言うけど、私は半ばパニックになっていた。

さっきから、最悪のイメージが頭をよぎって来るからや

 

「あぁん?騒がしいと思ったら、なんだテメェら?どっからやって来た?

つか、なんだテメェらのその格好。コスプレってやつですかー?」

 

家の中から、女性がやって来た。とても凛々しい、目付きの鋭い女性。

そしてどこか、士希に似た風貌…

 

「あぁ?おい士希、テメェ何してんだぁ、こんなところで?

つか、何肩に穴開けちゃってんの?耳に穴開けるならともかく、肩に穴はねぇだろ!」

 

この人は血を流す士希を見て笑っていた

 

はやて「なんやねんあんた!?見てわからんのか!今士希死にそうなんやぞ!?」

 

私は思わず怒鳴ってしまった。この人の態度が気に食わん。

目の前で弱っとる人を笑うなんて…

 

「待て待て、落ち着けお前。こいつがこの程度でくたばるわけねぇだろ。

ったく、ちょっと待ってろ。医者呼んで来てやる。今日はちょうど華佗さんが来てたからなぁ」

 

そう言って、あの人は何処かへ行ってしまった。

ほんま、なんやねんあの人。こっちは必死や言うのに…

 

シグナム「あいつ、本当に人間なのか?」

 

ヴィータ「あの雰囲気はやべぇな」

 

シグナムとヴィータ、そして声には出さんけどザフィーラとガイアも警戒していた。

それほど、あの人は異常らしい

 

あの人が何処かへ行って程なくして、赤毛の男の人がバタバタとやって来た。

この人が、医者?

 

「士希!クソッ!出血が激しい!すぐに手術する!君たちは下がっているんだ!」

 

赤毛の男の人は、士希を抱えて立ち上がった

 

はやて「あの!士希、助かりますか?」

 

華佗「あぁ!俺は華佗!五斗米道の名において、必ず士希を救ってみせる!」

 

華佗さんは家の中に入り、治療を始めた。

シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、ガイアには周辺警戒をお願いした。

そして、手術が始まるんやけど…

 

「クッ…病魔め!これでどう…グワッ!?クソッ!なんて手強いんだ!」

 

手術中は立ち入り禁止との事やから、中の様子はわからんけど、

中からはおおよそ手術とは思えへん声が聞こえてきた

 

リイン「あの、大丈夫なんですか?」

 

レーゲン「うーん…華佗さん、腕は良いらしいけど…」

 

ほんまかいな…

 

「心配しなくても、華佗なら絶対救ってくれるわよ」

 

私らが手術してる部屋の前で祈ってると、眼鏡を掛けたグラマラスな女性が声をかけてきた

 

はやて「あの、あなたは?」

 

詠「僕は詠よ。士希の義理の姉。あんた達、士希の友達よね?」

 

詠さんと名乗った女性が聞いてきた。友達どころか…

 

はやて「私は士希の…士希君の恋人です」

 

詠「え!?あの士希に恋人!?」

 

めっちゃ驚かれた。そういや、ルネちゃんも驚いてたなぁ

 

詠「へぇ、あんたがねぇ。士希もやるわね。こんな可愛い子と一緒になるなんて…」

 

詠さんは見定めるように私を観察してきた。普段の私なら、照れてたかもしれへん。

せやけど、状況が状況なだけに、喜べへん

 

シャマル「あの、ここは何処なんですか?士希さんのご実家なのはわかるんですが…」

 

シャマルはさっきから、ここの位置情報を特定しようと解析していたが、

思うように上手くいってないようやった

 

詠「ここは許昌よ。あー…あんた達の世界的に言うのであれば、中国、だったかしら?」

 

中国?ここが?

 

「そこからはあたしが説明するうわぁぁん!」

 

はやて・シャマル・リイン「ヒィ!」

 

詠「げっ…なんであんたがいんのよ、貂蟬」

 

私らの目の前に、突然得体の知れない変態が舞い降りた。

筋骨隆々という、気持ち悪いほど無駄にガタイのいい体のくせに、

ピンクの女物のビキニという異様なファッション。

なんやこいつ!生理的に受け付けへんタイプのバケモンやぞ!

 

貂蟬「はじめまして!あたしは貂蟬よん!以後、よろしくね!」

 

バチコーンという効果音が聞こえるようなウィンクをされてしまった

 

貂蟬「あらん?なーんでこの子達固まっちゃってるのかしら?」

 

詠「それはあんた、初めてあんたを見る人なら誰だって固まるわよ」

 

詠さんは慣れたんですか!?

 

貂蟬「あら!もしかして、あたしの美貌にドキんちょしちゃってぇ、

声が出ないと言ったところかしらん?」

 

んなわけあるかぁ!?

 

詠「はぁ…あんた達、こいつ、見た目はこんなんだけど、悪いやつじゃないから。

ただ、かなり気持ち悪いだけよ」

 

貂蟬「あらやだ!詠ちゃんったら酷いわぁもう!

こんな見目麗しい漢女捕まえておいて気持ち悪いだなんて!」

 

いえ、直視したくないほど気持ち悪いです…

 

貂蟬「まぁいいわぁん!あなた達、ちょっと大事はお話があるから、少しいいかしら?」

 

急に雰囲気が変わった。それに触発されて、私は少し身構える

 

詠「僕は席を外した方がいいのかしら?」

 

貂蟬「ごめんなさい、詠ちゃん。これはこっち側の問題だから」

 

詠「ふーん、わかったわ。士希には僕が付いててあげるから、あんた達は行きなさい」

 

私らが立ち上がると、それに入れ替わるように詠さんが部屋の前に座った。

正直、離れたくなかったけど、なんもせんのは悪手やと思う。せやけど…

 

はやて「えっと、詠さん…一緒について来ては…」

 

詠「ごめんなさい…」

 

詠さんは視線を逸らした。正直、この怪物と一緒におりたないんやけど…

 

 

 

 

ヴィータ「なんだこのバケモンは!?」

 

シグナム「クソッ!なんなんだここは!?」

 

シグナム、ヴィータは貂蟬と出会うと警戒心をあらわにした

 

貂蟬「だーれが、開けてビックリさぁ大変!

郊外にある恐怖の洋館に出てくるバケモンですってー!?」

 

ヴィータ「そこまで言ってねぇよ!?」

 

シグナムとヴィータはギャーギャー騒いでいたが、ザフィーラとレーゲン、ガイアは静かだった

 

ザフィーラ「良く鍛えられた、良い肉体だと思いますが…」

 

ガイア「ま、別にいいんじゃねぇの?こういう趣味の人もいるって」

 

レーゲン「僕はまぁ、慣れました…」

 

レーゲンだけが、悟ったかのような瞳やった

 

貂蟬「さぁて。早速だけどぉ、あなた達は何者なのかしらぁ?」

 

私ら全員が揃うと、貂蟬はいきなりそんな事を言い出した

 

はやて「私らは、みんな士希の友人で、私は士希の恋人や」

 

貂蟬「あら!あの士希ちゃんに恋人が!?それは良い事ねぇい!」

 

貂蟬はクネクネとしていた。ほんま、きもちわるっ

 

貂蟬「でぇもー、あの士希ちゃんがぁ、なんの理由もなくあなた達を呼ぶかしらぁ?

それも士希ちゃん、負傷してるようだし」

 

シグナム「何が言いたい?」

 

シグナムは苛立っているのか、殺気を隠そうともしてない

 

貂蟬「ふぅん、率直に言うわぁ。あなた達、時空管理局よねぇい?」

 

!?時空管理局を知っている?

 

はやて「なんでわかったんですか?」

 

貂蟬「漢女の勘よ!……と言いたいところなんだけどぉ、

こちらのカックイイ女騎士様が、許してくれないみたいねい」

 

シグナムは剣を構えていた。見ればヴィータも、すぐにアイゼンを出せるように構えている

 

貂蟬「そうねー。詳しく話せば長くなるんだけどぉ、

簡単に言えば、私達管理者とあなた達管理局はぁ、昔からお友達だったからよ。

もう百年近い付き合いねん!」

 

ひゃ、百年?この人なにもんやねん。

それに管理者?そう言えば確か、ガイアは士希の世界を…

 

はやて「ここは外史なんですか?」

 

外史。特定の人物のみが想像し、創造できると言われる、

私らの世界と類似しているようで違うもう一つの世界。

せやけど、創造主な滅多に生まれる事はない、ほとんど伝説に近い世界や

 

貂蟬「正解よ。ここは外史。そして舞台は、あなた達の世界から見て1800年前の中国よ」

 

はやて「1800年前の中国…それってつまり…」

 

ここは、三国志の世界や…ってことは、士希も三国志にゆかりのある…

 

貂蟬「話を戻すわぁ。今回は状況が状況だけに、あなた達の入国を許可したけどぉ、

本来ならば排除しなければいけないのよ」

 

シグナム・ヴィータ「ッ!?」

 

シグナムとヴィータが私を護るように前に立った

 

貂蟬「勘違いしないで。排除と言っても、何も殺すわけではないわぁ。

単にあなた達の世界へ強制的に送るだけよ。

こんなところで、時空管理局との関係をこじらせたくないし」

 

シグナム「なら貴様は、我らを強制転移させに来ただけと、そういう事か?」

 

貂蟬「ざぁんねん!それは違うわぁ。実は、あなた達がこの世界にやって来てすぐに、

あなた達とはまた違う誰かがこの世界に入った。おそらく、あなた達を追って。

心当たりはあるわよね?」

 

ガイア「アルテミスか…あいつ、あの一発にマーカーでも植え付けていたか…」

 

アルテミス…士希を傷付けた敵…

 

貂蟬「もうわかるわよね?あなた達には、あれの対処をしてもらうわ。

あなた達の問題はあなた達が処理しなさい。この世界を巻き込まないこと。いいわね?」

 

はやて「もとよりそのつもりや。迷惑はかけへんよ」

 

この借り、きっちり落とし前つけたる

 

貂蟬「そう、それは頼もしいわぁ。流石士希ちゃんの彼女!

なら私から、あなた達にプレゼントを贈るわ」

 

貂蟬は突然、どこからかアタッシュケースを取り出した。

そして中を開くと、そこには指輪が入っていた。この指輪、見覚えが…

 

貂蟬「これはこの世界の入国許可証のようなものよ。

士希ちゃんの恋人と友達みたいだし、特別にあげちゃうわ!」

 

この人の意図が見えへん。この人の話や、以前士希に聞いた話通りなら、

この世界は外部の人間の侵入には厳しいはずや。やのに、それを許す?

 

はやて「何が狙いや?」

 

私は聞いてみる。すると貂蟬はニッと笑って答えた

 

貂蟬「そうねぇ、せめてもの罪滅ぼしかしら。

私達は士希ちゃん、引いては東の人に厳しいから。

ま、詳しくは士希ちゃんに聞いてちょうだい!それじゃ、私はこの辺で!ばいびー!」

 

貂蟬は大ジャンプして何処かへ行ってしまった。罪滅ぼし?ますますわからんへん

 

はやて「いや、今はええ。とりあえず、私らの敵を迎え討つのが先や。

みんな、手伝ってくれるな?」

 

『は!』

 

今は、いらんこと考えたらアカン。

ただ敵を、士希を傷付けたやつを倒す事だけを考えやな

 

 

 


 
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