No.698269

妖世を歩む者 ~序章~

ray-Wさん

これは、妖怪と人間、そして"人妖"の住む世界のお話です。

二次創作としていますが、内容はほとんどオリジナルとなります。
GREEのアプリ、『秘録 妖怪大戦争』より"人妖"の女の子の容姿等を使用していますので、二次創作としています。
※既にこのアプリは閉鎖となっています。

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2014-07-03 17:06:53 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:299   閲覧ユーザー数:299

 

序章 ~迷いつく者~

 

真っ暗な道。不安定な足場。ジメッとした空気…。

 

僕が今いるのは、とある廃校。

この夏取り壊される予定だそうです。

 

なぜそんな所にいるのかって?

 

理由は簡単、"肝試し"です。

もちろん僕1人というわけではありません。

僕達が通う大学の近くにあるこの廃校が取り壊されると聞いて、それなら"肝試し"をやろう、ということになったんです。

 

僕の名前は常磐陽介(ときわようすけ)。大学生2年生です。

成績は中の上、単位取得も問題ないですね。

空手の経験が少しあり、加えて中学、高校では剣道をやっていました。

 

そんな僕が好きなもの。それは"妖怪"。

妖怪に会いたいというわけではありません。

いろんな妖怪について調べるのが好きなんです。

 

人間を助ける妖怪、襲う妖怪。驚かせる妖怪。

山のように大きな妖怪。手のひらに乗る小さな妖怪。

人の発想がどれだけ多彩か、実感させられます。

 

なぜ"妖怪"なのか、と言われれば、祖父の影響でしょう。

祖父が大切にしていた本、"妖怪大百科"。

子供の頃にそれを見つけた僕は、すぐにその魅力に引き込まれていきました。

 

こうして肝試しに参加しているのも、そのせいでしょう。

妖怪に会いたいとは、いえ、違いますね。"会える"とは思ってません。

ただこうして、妖怪が出そうな場所だから興味が沸いたんです。

 

「こっち、でしたっけ?」

 

手には事前に配られた地図。大雑把なのは肝試しが急に決定したからですかね。

もう片方の手には懐中電灯。流石に途中で消えるアクシデントはないでしょう。

今も懐中電灯は、強い光で僕が進む先を照らしています。

 

「違う道に来てしまいましたか…」

 

地図では扉があるはずなのに、目の前には壁。

どこかで道を間違えたようです。

 

引き返すのはいいのですが、いったいどこまで戻ればいいのか。

 

「僕より前に出発した人は、大丈夫だったんでしょうか」

 

同じように間違って引き返したなら、僕と鉢合わせになる可能性もあります。

それがないということは、ここで間違ったのは僕だけなのかもしれません。

 

そのことに少し恥ずかしさを覚えながら、僕は来た道を引き返していきます。

 

「困りましたね…」

 

そこは全く知らない場所でした。

引き返したはずなのに、見覚えのない場所。

流石に不安になってしまいます。

 

長い廊下、ひび割れた壁、床板はギシギシと音をたて、僕をさらに不安にさせます。

 

「人を道に迷わせる妖怪、なんていましたかねぇ」

 

こんな時でも妖怪のことを考えてしまう僕。

それでも不安なままでいるよりは、ずっといいです。

 

長い廊下を歩いて行くと、そこには1つの扉がありました。

他には何もなく、ここで行き止まりのようです。

わざわざ中に入ることもないだろう、と僕が踵を返そうとすると、

 

――― カタッ

 

扉の奥で、何かの音が聞こえた気がしました。

…ネズミでしょうか?

もしかすると、同じように道に迷った参加者が、この部屋で少し休憩しているのかもしれません。

 

可能性は低いですが、中を覗くくらいならたいした手間でもありません。

そう思った僕は、静かに扉を開きました。

 

――― それがすべての始まりになるとは知らず。

 

視界が黒に覆われ、そして白に。

 

気がつくとそこは、林の中でした。

周りを見回しても、廃校なんてありません。

そもそも肝試しは夜に行われたはずなのに、今僕の見上げる先には、太陽が昇っています。

時間を確認しようとしましたが、携帯は壊れていました。かなりショックです。

 

「夢でも見ているのでしょうか」

 

扉を開けた直後、僕は何らかの理由で気絶したのかもしれません。

そう思いほっぺたをつねってみますが、

 

「痛いですね」

 

原始的な確認方法ですが、木々の匂いや太陽の暖かさまで夢だとは思いにくいです。

人はあまりに混乱すると、逆に冷静になるものなのでしょうか。

 

「少し辺りを調べてみましょうかね」

 

見回してみると、林の奥に山が見えました。

山は危険と考えれば、進む方向はその逆。

山を背にして、僕は歩き出しました。

 

――― まだ何も知らない、この"世界"を。

 

「新しいお客さんが、来なさったみたいだニャー」

 

 
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