No.693230

【真・恋姫†無双if】~死を与えることなかれ~5話

南無さんさん

こちらは真・恋姫†無双の二次創作でございます。
何とか一週間以内に間に合いました~。
台詞がくどいかも知れませんがそこは一つご愛嬌という事で
お願いします。また、少々ご都合気味になっている点も
あると思いますが、そこも大目に見てください(白目)

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2014-06-11 18:37:41 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:8203   閲覧ユーザー数:6450

~一刀視点~

 

決戦直前

 

 

…死期が近いと何もかも新鮮に見えるというのは本当だな。

 

例を挙げるのなら、俺の頭上に必ず君臨している空。

 

今日は雲一つ無い青空だな。この光景を何回見て来たっけ。

 

死と戦が無ければ一眠りでもして、ゆっくりと考えたいものだ。

 

…達観するのは、もう終わり。いよいよ合戦の幕が開くんだ。

 

死の恐れに負けず集中しないと。それに、これから生命を賭した

 

最期の大仕事が残ってるんだ。

 

 

「……ふぅー」

 

 

深呼吸をし昂る気持ちを落ち着かせる。すると、目の前に居る雪蓮と

 

目が合い、演壇に向かう様にと眼で指示を受けた。

 

俺は隣に居た冥琳に肩を貸してもらい、共に演壇に向かう。

 

 

「最期まで迷惑を掛けてごめんな、冥琳…」

 

「…謝るな。病状を知りつつ止めようとしない、言わば私も共犯者だ。

 …いや、知っていて止めないのだから、それ以上の罪人か」

 

「…それが罪というのなら、俺は法その物をぶち壊すよ。

 悪いのは全て俺って、…止めよう。堂々巡りになりそうだ」

 

 

思わず苦笑を漏らしてしまう。

 

 

「…北郷、この号令は今日の戦の命運を握っていると言ってもいい。

 生半可な鼓舞では兵の心は掴めないぞ」

 

「心配要らないさ。今こそ雪蓮が示してくれた力を発揮すれば、

 会心中の会心の号令ができる、それに、俺を誰だと思っているんだ。

 天の御使いだぜ」

 

「…ああ、そうだったな」

 

 

軽口を使い俺は冥琳に大丈夫だと伝える。雪蓮の運命を変えた今、

 

変に力が入らなければ、号令など造作も無い。

 

只、人の心に希望を見出し、勇気を与え、熱き血潮を呼び覚ます。

 

それだけをやればいい。

 

 

そうこう考えている内に演壇に到着した。冥琳は役目を終え

 

演壇を降りようとしたが、俺は他の皆に聞こえぬ様、

 

小声で冥琳に伝える。

 

 

「今までありがとう…冥琳」

 

「……………!!!?」

 

 

前方を向いている為、冥琳がどんな顔をしているのかわからない。

 

怒っているのか、呆れているのか、はたまた悲しんでいてくれるのか。

 

だが、それでも一言、冥琳に感謝を伝えたかった。

 

死が迫っている者の願い、それも、死ぬとわかっていながら、その事を黙り、

 

決して口を割りはしない人知れぬ辛さ。常人であれば決して耐えられないだろう。

 

だから、感謝の念をどうしても伝えたかったんだ。シンプルな一言だけど、

 

この言葉に幾千の想いを込めて。

 

 

「………」

 

 

先ずは風を感じて眼を瞑る。聴こえてくる、ここに集まった兵の声が…

 

 

「俺達は曹操軍に勝てるのか。今や曹操は天の時を得て

 日に日に力を増しているしよぅ」

 

「ああ、それに、いくら孫策様が無双といっても、

 兵数が圧倒的に不利なのは変わらねぇ」

 

「俺達、死んじまうのかな」

 

「馬鹿者!!貴様ら孫呉の兵ならば堂々と立ち向かうという気概を見せんか!!」

 

「…でもよう」

 

 

やっぱり気持ちが一つになってないな、臆病風に吹かれる者、

 

危機を察し気合を注入する者が多々いる。

 

このまま、合戦が始まれば敗戦は必至だ。だが、そうはさせない。

 

 

「聞けい!!孫呉の勇敢な烈兵達よ!!」

 

「お、おい!壇上を見ろ!北郷様が…!!」

 

 

兵の視線が俺に集中しているのを感じる。今こそ、天の御使いを演じる時、

 

俺の生命をぶつければ、必ずや心に届く。曹操、悪いが君を利用させてもらう。

 

暗殺を指示していない事はわかっているが、孫呉の為だ。

 

さて、皆に刮目していただこう。北郷一刀、一世一代、最初で最期の大傾奇だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、知っての通り我等の地、孫呉に曹操が大軍勢を率い直ぐそこに迫っている。

 …思えば、我らが孫呉に居城を移すまで色々な事があった。

 袁術の客将となり毎日辛酸を甞め、独立する機会を窺っていた事。

 そして、捲土重来を期し再び父祖伝来の地を得て歓喜した事。

 今、振り返ったら懐かしくもあり大業を成した、そう思える」

 

「…なんだ、いきなり昔話に花を咲かせて。俺達に最後の手向けってやつか」

 

「…黙って聞きな。孫策様ではなく負傷している北郷様が、

 演説しているんだ。何かある筈だ」

 

「だが、まだ終わりではない。俺達が築く物語は産声を上げたばかりなんだ。

 相手は曹操、苦戦は必至だろう。しかし、必ず俺達が勝てる。

 その理由が三つある。一つは、曹操が孫伯符を恐れている事。

 その証拠に、曹操は卑劣にも孫伯符を暗殺を企て刺客を差し向けた!!

 そして、俺が負傷した理由、それは孫伯符を暗殺から守ったが故に出来た傷だ!!」

 

「お、おい!…今の話!!」

 

「あ、ああ。孫策様が暗殺されていたなんて…!!」

 

「北郷様の負傷は孫策様を守ったのかからだったのか…!!」

 

 

兵は驚きを隠せず騒然となった。それも、その筈。

 

冥琳に頼んで意図的に情報を止めていたんだ。

 

ここぞと言う時に、利用したいと考えていたから。

 

 

「…この傷は名誉の傷だと思っている。

 惚れた女を腕一本で守れたんだ、安いものだろ?」

 

「………くく…はっはっはっは!!」

 

「良いぞ、北郷様ー!!もっと言えーっ!!」

 

 

よし、一部の兵がノッてきた。幾分張り詰めていた雰囲気が柔らかくなった

 

気がする。これで、先程よりも心に響くだろう。

 

 

「ち、ちょっと、こんな所で何言ってんのよ!!」

 

「…落ち着け、雪蓮」

 

「ほほう、北郷の奴やるのう、この様な方法で兵の緊張を解くとは」

 

 

ん?後ろが騒がしい様な気がするが、まぁ、いいか。

 

 

「話が脱線してしまったな。つまり、俺が言いたい事は曹操は暗殺を企てた程、

 俺達を危惧しているんだ。この事がどんなに凄い事かわかるか。

 あの、曹操に余裕がないんだ」

 

「た、確かに、曹操は俺達を恐れているのかも…」

 

「けどよ、いくら恐れているからって。曹操が有利なのは変わらない。

 圧倒的な兵数と天の時がついているんだぜ。

 暗殺を阻止したからって勝ち目は…」

 

 

これだけでは、まだ心を一つに出来ない。その事は想定内だ。

 

…続けて士気を高めよう。

 

 

「さて、二つ目の理由を述べさせて頂こう。曹操は中原の覇者となり、

 その強さから天が曹操を加護し時を得ている。そう考えていると思うが、

 確かにその通りだった」

 

「……………」

 

「しかし、最早、天は曹操に味方をしない。それは何故か、

 暗殺を実行したからだ。天は清廉潔白の士しか微笑まない!

 ましてや、暗殺を企てた不義の士に天は怒り、災いが降りかかるのが

 必然である。更に言えば、もし天が曹操に味方をしていれば孫伯符は

 この世から消え去っていた。しかし、見よ!孫伯符は傷一つ負わず、

 暗殺から免れた。これこそ天が曹操に愛想を尽かした何よりの証拠である!!」

 

「おおおおお!!」

 

 

兵が感嘆し声を上げているな。後、もう一息だ!!

 

 

「天は我らが孫呉に味方をしている。皆、俺を誰だと思っているんだ。

 …我こそは北郷一刀!天の御使いなり!!誰よりも天を知り、

 誰よりも天に愛されし男!!故にこの戦、勝利するのは必定である!!」

 

 

―――――わああああああ!!

 

 

「そうだ、俺達には孫策様だけではなく天の御使い様も居るんだ!!」

 

 

…士気も大分高まってきたな。次は兵数の不利について説くとしよう。

 

 

「三つ目、三つ目の理由だ!!曹操軍の兵数、確かに我らより多軍であり、

 数だけで計算したら苦戦は免れない。だが、それは、数だけである。

 密偵の報によれば、最近、併呑した将との連携、統率がとれていない。

 古参の将と比べると、練度が低く雑兵と言えるだろう。

 我らが孫呉に雑兵に負ける烈士など、存在せぬ!!」

 

「………」

 

「それに俺は知っている、皆が汗水垂らし、極秘裏に陣形を確認していた事、

 守りたいが人の為に、疲れた体に鞭をいれ、深夜に武を鍛えていた事」

 

「……知られてたのか。はは、何か照れるな」

 

「俺は誇りに思う。雪蓮が語った夢の頂きに誰もが向かい慢心などせず、

 日々努力していた勇姿を。こんな素晴らしい『仲間』は何処探したって居やしない」

 

「『仲間』末端の俺達もそう呼んで下さるのか………」

 

「格差なんて関係ない。俺にとって皆は掛け替えの無い仲間であって戦友だ。

 その証拠に……」

 

 

俺は時間が許す限り矢継ぎ早に兵の名を口にしていく。

 

戦場で武が奮えない劣等感から、責めてものと言う思いで兵の名を心に刻んでいた。

 

 

「すまない、呼ばれていない者も居るが時が迫っているからここまでにする。

 …皆、力を貸してくれ。俺は皆を誰よりも信じ、必ずや勝利すると確信している」

 

 

皆、一様に黙り俺の号令に耳を傾けている。

 

…さあ。最後の仕上げだ。

 

 

「天の時を得た今、我らの父祖が見守る伝来の地の利を生かし、

 勇敢なる烈士達の人の和を天下に轟かせる――時である!!」

 

 

―――っつ!!痛みが…だが、倒れたりはしない。

 

いっその事利用させてもらう!!

 

 

「『天地人』即ちこの三才が我らに揃ったんだ。万物、全てが味方してくれる。

 故に曹操を恐れる事なかれ。…勝利は我らの手中にあり!!」

 

 

俺は負傷している方の腕を猛々しく上げた。その勢いで傷口から鮮血が流れ、

 

纏っている衣服を赤く染める。だが、一向に構わない。

 

皆の胸に希望の光を灯せるなれば、これくらいは何でもない。

 

 

「我らが自慢の烈士達よ。忠義の士達よ。今こそ日々鍛え上げた武を奮う時である。

 勇壮なる気概と威武を天下に示し、天佑神助の導きの下、

 志を受け継いだ父祖伝来の地の想いの下、

 これから俺達が作り上げていく孫呉の歴史、……生在る者でしか築けない

 人の和の輝きの下、その全てをぶつけよう!!

 ……そして、そして、最後に皆の帰りを心配して待ってくれる人が居ると思う。

 必ず生き残り安心させて一言、言ってあげよう」

 

 

『…ただいま』って―――――

 

 

一瞬訪れた静寂の後、鬨の声があがった。その勢いは、

 

天を貫かんばかりで、今までで一番、最高の士気状態と言えるだろう。

 

 

「…北郷様の号令、心に響いた!!俺達は絶対に負けねえ!!」

 

「負傷したお身体で、なおかつ衣服を血で赤く染めてまで

 号令してくれたんだ。ここで燃えなきゃ男じゃねえ!!」

 

「北郷様が末端の俺達の名を…。俺はやるぞ!!戦場に出陣できない北郷様の為にも!!」

 

「…ただいま、か。不思議なものだな、さっきまで絶望の淵に立っていた

 筈なのに、今では希望と力が湧いてくる…!!

 俺も全身全霊を賭して戦う!!」

 

 

気勢が兵の頭上に集まっているのがわかる、その中には、それぞれが

 

感じた熱き想いが詰っているだろう。気持ちが一つになった今、

 

曹操に負ける事はない。それにしても、なんて心地が良い光景だろうか。

 

惜しむらくは、この光景が二度と見れない事。

 

けど、今の俺には少々眩しく感じるな…。

 

 

俺は、この光景を目に焼き付け演壇を下りた。下りたと同時に大半の使命を果たした

 

安堵からか、足に力が入らなくなり倒れてしまった。

 

そして、また痛みが襲い掛かる。

 

 

「一刀!!」

 

「北郷!!」

 

「一刀さん!!」

 

「一刀様!!」

 

 

皆が心配して駆け寄ってきた。全く、情けないな。

 

最後に締まらないなんて。俺は手で皆を制止させ、自らの力で起き上がり、

 

片膝を突いた姿勢になり、顔を上げる。

 

 

「…はは、役目を成し遂げたら安心して力が抜けちまった。

 どうだった、俺の号令は…」

 

「見事と言う他無し。素晴らしい鼓舞だったぞ、北郷」

 

「ええ、後は私達に任せて、ゆっくりと休みなさい」

 

「そうか、それは良かった、なら甘えさせて貰うよ、冥琳、雪蓮」

 

「そうじゃぞ。何、北郷が休んでいる間、曹操など軽く捻り潰しておくわい」

 

「…ははは。そいつは頼もしいな、祭さん」

 

「…一刀、いくら孫呉の為とはいえ、頑張りすぎよ。

 だから、そのぶん……休みなさい」

 

「……うん、わかった蓮華」

 

「北郷、護衛の件、準備を万全にしておいた」

 

「そうです。だから、安心して休んで下さい、一刀様」

 

「…その言葉を聞いて安心したよ。思春と明命は気を付けてな」

 

「一刀さん~。今まで無理をしていたんですから、しっかりと休んで下さいよ~」

 

「一刀様の分まで私達が頑張ります。ですから、また、

 元気なお姿を御見せ下さい」

 

「ありがとう、穏、亞莎。後は頼んだよ」

 

「シャオ!!戦の間、一刀を任せたわよ!!」

 

「うん、お姉ちゃん達も気をつけてね!!」

 

 

雪蓮たちは戦場に赴こうとした。だが、伝えたい事がある為

 

出来る限り声を張り上げる。

 

 

「待ってくれ、皆!!…雪蓮、冥琳、祭さん、穏、蓮華、思春、明命、亞莎、小蓮。

 俺の我が儘に付き合ってくれて本当に…ありがとう。――武運を」

 

 

皆、頷いて戦場に出陣していった…。

 

 

「……………」

 

「私たちも行くよ、一刀」

 

「…ああ、迷惑を…かけるな、シャオ」

 

「これくらい妻として当たり前なんだから、それより、

 お姉ちゃんが言ってたとおり、ちゃんと休む事いいわね!!」

 

「りょう…かい。どのみち…もう、動く気力がない…よ」

 

「…一刀!?ち、ちょっと、そこの人!一刀を運ぶのを手伝って!!」

 

「は、はっ!!」

 

 

―――やるだけの事は出来た。これで良かったんだよな。…なぁ。

 

 

『…良くやってくれた、北郷一刀。俺はお前を誇りに思う』

 

 

―――ははは、誇りだって、お前にそんな事言われても嬉しくねーよ。

 

 

気を失いかけつつある最中、孫堅さんの墓の前で聴こえた声が脳に語りかけてくる。

 

この声の正体、俺はわかってしまった。数多の外史の中で必死に駆け抜け、

 

決して諦めずに雪蓮、冥琳生存を夢見た男。そう、その主の名は…

 

 

『…ゆっくりと休め、北郷一刀』

 

 

―――皆と同じ事を言うんじゃねーよ。……北郷一刀。

 

 

 

 

 

 


 
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