No.692996

九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑫~

竜神丸さん

幽霊騒動その14

2014-06-10 16:05:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2965   閲覧ユーザー数:1349

「鮮血の、魔法使い…」

 

「クリムゾン…?」

 

突如、助太刀に入るかのようにウォーロック達の前に姿を現した仮面ライダークリムゾン。彼はローブを華麗に靡かせながら、ウォーロック達の方を振り向く。

 

「あなた方、何やら急いでいるようですね。ここは一つ、奴等の相手は私に任せてみてはどうです?」

 

「え、しかし…」

 

「心配ありません。あの程度のレベル、私だけでもどうにかなります……あ、それから」

 

クリムゾンは右手の指輪をドライバーに翳す。

 

≪ドゥレイション・ナウ≫

 

「「「「!」」」」

 

すると赤く輝いた光がウォーロック達に降りかかり、その全身を包み込んでいく。最初は首を傾げるウォーロック達だったが、ここでウィザードが変化に気付く。

 

「おぉ!? 疲れが一気に取れたぞ!!」

 

「うわ、本当だ……全然疲れを感じない…!!」

 

「な、え!? どうなってんだこれ!?」

 

「うはぁ、こりゃ凄いねぇ」

 

「先を急いでいるのであれば、早く向かった方がよろしいでしょう。一応あなた方の傷や疲れは全て回復させましたが、持続時間は5分間のみなのでご注意下さい」

 

「えっと、ありがとうございます!! クリムゾン…さん!」

 

「お気になさらず。さ、早く行って下さい」

 

「誰かは知らないけどサンキュー!! よし皆、早く先に進もうぜ!!」

 

「「「おー!!」」」

 

『ち、ちょっと待て!!』

 

『おい、貴様等だけで話を進めるな!!』

 

無視されているガラガランダ達が叫ぶ中、ウォーロック一行はこの場をクリムゾンに任せ、一足先に“鍵”の下まで向かって行く。

 

『おのれ、行かせんぞ!!』

 

「おっと」

 

≪ランス・ナウ≫

 

『『『グルッ!?』』』

 

『『『『『イィーッ!?』』』』』

 

ウォーロック達の行く手を阻もうとしたイカデビル達の足元から、血の塊で出来たかのような大型の槍が複数突き出し、怪人達にダメージを与える。

 

「あぁ言ってしまった以上、この場は何が何でも阻止しないと恰好が付きませんのでね。あなた方はここで始末させて貰います」

 

『ぐぅ、魔法使い如きがこんなマネをしおって……生かしては帰さん!!』

 

「―――何を勘違いしてやがんだ、テメェ等」

 

『『『『『!?』』』』』

 

≪ドール・ナウ≫

 

ドスの利いた低い声を放ったクリムゾンの真横に、近衛兵を模したかのような血染めの戦士“ブラッディードール”が出現。そこから更に分裂し、ブラッディードールが最大6人まで増加する。

 

「生かしては帰さんだぁ? そいつは違うだろうがよ……生きて帰れねぇのはテメェ等の方なんだよこのボケクズ共がよぉっ!!!」

 

『な、何だ…!?』

 

『こ、こいつ、急に雰囲気が…!!』

 

「テメェ等如きに、ジェネラルなんざ使うまでもねぇ」

 

『『『『『ッ…!?』』』』』

 

クリムゾンの手に握られていた銃剣クリムゾンガンが、ソード形態へと変形する。

 

「今この場で全員、ぐっしゃぐしゃのボロ雑巾に変えてやっから……テメェ等、ちょっとばかし覚悟ってもんを決めやがれよなゴラァッ!!!!!」

 

「「「「「オォッ!!!」」」」」

 

クリムゾンがそう言い放つと同時にブラッディードール達も掛け声を上げて一斉に動き出し、イカデビルやガラガランダ達と正面からぶつかり合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ドリル・ナウ≫

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『『『ギャァァァァァッ!?』』』

 

一方、クリムゾンのおかげで先に進む事が出来たウォーロック達は、道を塞いでいる怪人や亡霊達を全力全開で薙ぎ倒し続けていた。クリムゾンの魔法の影響なのか、彼等は先程からどれだけ派手に暴れても全く疲れというものを感じてはいなかった。

 

「ところでウル、さっきの奴は結局誰なんだ? 一応は俺達の味方をしてくれたみたいだけど…」

 

「僕達にも分かりません。でも彼のおかげでこうして進めたんです、今は本来の目的を果たす事を優先しましょう」

 

「あのクリームちゃんのおかげで体力も回復したんだ、一気に進もうじゃないのよ!!」

 

「はい!! …ところでハルトさん、クリームじゃなくてクリムゾンですよ」

 

「あり、そうなの?」

 

そんな漫才は置いておこう。とにかく彼等は“鍵”の下まで辿り着くべく、怪人や亡霊達を次々と倒しながら先へと進んで行く……が、そんな簡単に進める程ほど甘くはなかった。

 

『フンッ!!』

 

「な…がぁっ!?」

 

「「「「ウルッ!?」」」」

 

そんなウォーロックを、ジャーク将軍の剣が容赦なく斬りつけた。クリムゾンの魔法のおかげでダメージ自体は無かったが、剣がドライバーに命中した所為かウォーロックは変身が解けてディアーリーズの姿に戻ってしまった。

 

『鍵の下へは行かせんぞ、小僧共!!』

 

『『『『『イィーッ!!』』』』』

 

『『『グルァァァァァァァァァァァッ!!』』』

 

「く、コイツ等…!!」

 

ジャーク将軍率いる怪人軍団によって、再び阻まれてしまった行く手。ディアーリーズはそんな妨害から思わず苛立って右手に電撃を纏い始める。すると…

 

≪ADVENT≫

 

『グォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!』

 

『『『『『イーッ!?』』』』』

 

『『『グガァッ!?』』』

 

『!? 何だと…ムゥッ!?』

 

上空から舞い降りたドラグレッダーが、怪人達に火炎弾を連続で発射。それによって怪人達が怯み、ジャーク将軍の鎧は龍騎がドラグセイバーで斬りつける。

 

「真司さん!?」

 

「ウル!! 皆!! 先に行ってくれ、コイツの相手は俺が引き受ける!!」

 

『な、この…!?』

 

「ッ…すみません真司さん、お願いします!!」

 

「頼むぜ城戸ちゃん!!」

 

「お願いしまーす!!」

 

『おのれ、亡霊風情がぁ!!』

 

「うぉわっと!?」

 

龍騎がジャーク将軍を足止めし、その隙にウォーロック達はショッカー戦闘員達を蹴散らし強行突破。簡単に突破された怒りのあまりジャーク将軍は龍騎を思いきり斬りつけ、龍騎は思わず転倒する。

 

『同じ亡霊の癖して、何故奴等の味方をする!? 貴様はこちら側の存在だろう!!』

 

「んなの……勝手に、決めてんじゃねぇよ…!!」

 

よろよろと龍騎が立ち上がる。

 

「俺は人間を守りたいと、本気でそう思ったんだ……戦えない人も、同じライダーも…」

 

『何ぃ…!?』

 

「だからこそ、今の俺は戦いをやめる訳にいかない…!! お前等みたいな奴等に、この街を好きなようには絶対にさせない!!!」

 

ジャーク将軍達に向かってそう言い放った龍騎は、カードデッキから一枚のカードを抜き取り、それをジャーク将軍に見えるように裏返す。

 

『!? それは…!!』

 

龍騎が手にしたカード、それは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-SURVIVE 烈火-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍騎をもう一段階パワーアップさせる、最強の一枚だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、海鳴市の遥か上空にて…

 

 

 

 

 

 

 

「スカーイフライング…ソーサァーッ!!!」

 

『『『ギシャァァァァァッ!?』』』

 

上空を飛び回っていたスカイライダーが、後方から追いかけて来たレイドラグーン達を纏めて撃墜。爆風の中から飛び出したスカイライダーはそのまま“鍵”の浮遊してる方向へと飛ぶが、今度は巨大サイズのウブメがスカイライダーに襲い掛かろうとする。

 

「くそ、キリが無いな…!!」

 

≪SLASH≫

 

「ウェェェェェェェェェェイッ!!」

 

『ギュァァァァァ…!?』

 

そんなウブメの首を、支配人の変身したブレイド・ジャックフォームが切断。ウブメの首と胴体が真下へと落下していく。

 

「その声、支配人か」

 

「さてげんぶ、今の時点でどれだけ倒した?」

 

「さぁな……50体目を倒してから、全く数えてない」

 

「俺もだ。さっきから何体も倒してるってのに、全く数が減っちゃいねぇ」

 

怪人や亡霊達を止めるには、やはり“鍵”その物を破壊するしかないのだろう。そう思った二人は“鍵”の浮遊する方向まで一気に飛ぼうとするが…

 

『キュォォォォォォォォォンッ!!』

 

「な…ぐぉわっ!?」

 

「げんぶ!?」

 

物凄いスピードで滑空して来たケツァルコアトルス・ドーパントが、スカイライダーを嘴で捕獲。そのまま何処かに連れ去ってしまう。

 

「げんぶ!!」

 

「俺の事なら問題ない、お前は先に行け!!」

 

それだけ叫んでから、あっという間にケツァルコアトルス・ドーパントはブレイドのいる位置から遠く離れて行ってしまった。それから数秒後、ブレイドの前にユイの変身したサイガが飛来する。

 

「兄さん…!」

 

「げんぶにあぁ言われた以上、ここで立ち止まる訳にもいかねぇ……先に進むぞ!!」

 

ブレイドの言葉にサイガも無言のままコクリと頷き、二人は“鍵”まで一気に飛び去ろうとするも…

 

 

 

 

-ドゴォォォォォンッ!!-

 

 

 

 

「がはぁっ!?」

 

「!? 兄さん…!!」

 

何処からか飛んで来た砲弾が、そのままブレイドに命中。ブレイドはジャックフォームの形態が強制的に解除され、通常形態のまま真下に落下してしまう。

 

『『『ブブブブブブブブ…!!』』』

 

「ッ…邪魔を、するな!!」

 

ブレイドを助けようとしたサイガだったが、させないと言わんばかりにレイドラグーン達が妨害。上手く進めない事に苛立ちながらも、サイガはこの邪魔な蟲共を殲滅していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どわっと!?」

 

謎の砲撃で落下したブレイドはとあるテニスコートに落下し、支配人の姿に戻ってしまった。しかしそれほどダメージは少なかったので起き上がろうとする支配人だったが……目の前にいた亡霊を見て言葉を失った。

 

「くそ、さっきの砲撃は…ッ!?」

 

『アハハ♪ マタ会エタネ、レイィ~…♪』

 

クレアだ。先程まで暗い雰囲気だった彼女は、支配人の姿を見た途端に楽しそうな雰囲気になる。

 

『ネェ、レイ……一緒ニ遊ボウ…? 遊ンデ…遊ンデヨォ…!!』

 

「ッ……クレア…!!」

 

≪READY≫

 

クレアの全身から放たれる黒いオーラが強まっていき、支配人もオーガストランザーを構えてから彼女と対峙するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キュォォォォォォォォォォォォォンッ!!』

 

「ぐ、離せ!! この…!!」

 

ケツァルコアトルス・ドーパントの嘴に捕縛されたまま、何処かに連れ去られようとするスカイライダー。流石にこのままではマズいと、スカイライダーはケツァルコアトルス・ドーパントの嘴を力ずくで押し開く事で脱出しようとする。

 

「後少し…!!」

 

その時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪Full Charge≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある電子音声が聞こえてきたのは。

 

「ハッハァァァァァァァァァァッ!!」

 

「な、ZERO…うぉわだ!?」

 

『キュォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!?』

 

ZEROの変身するガオウが、ビルの屋上からガオウガッシャーのオーラソードを発射。その鋭利な刃がケツァルコアトルス・ドーパントの右目を斬り裂き、その拍子にスカイライダーも嘴の中から脱出する。

 

「テメェも喰わせろよ、鳥もどき野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』

 

「本当に相変わらずだな…てか、何でまた新しいのに変身してんだよアイツ…!?」

 

ZEROがガオウに変身している事に疑問を感じるスカイライダーだったが、まずはケツァルコアトルス・ドーパントの撃破が最優先だ。スカイライダーは一度ビルの屋上に着地すると同時に大きく飛び上がり、前方に何度も回転してからキックの構えに突入する。

 

「大回転…スカイ、キィィィィィィィィィィィィィィィィック!!!」

 

『キュォォォォォォォォォォォンッ!!?』

 

「何ぃ…!?」

 

スカイライダーの放った一撃が、ケツァルコアトルス・ドーパントの胴体を貫く。流石のケツァルコアトルス・ドーパントもこれには耐えられず爆散し、ガオウがスカイライダーを睨みつける。

 

「げんぶ……お前、俺の食事の邪魔をしやがったな…!!」

 

「生憎、お前の悪食っぷりに構ってられるような暇は無いんだよ。じゃあな」

 

ガオウを無視したまま、スカイライダーは再びセイリングジャンプで“鍵”の方まで飛び去って行く。

 

「…アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

ガオウは数秒間だけ怒りに震えてから、街全体に響き渡るほどの咆哮を上げる。しかしこの時点で、彼の咆哮をまともに聞き入れている人物はほとんどいないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、街の外れでは…

 

 

 

 

 

-ズドドドドォンッ!!-

 

『『『オォォォォォォォ…!?』』』

 

「皆、こっちです!! 早く!!」

 

「はぁ、はぁ…ひぃ!?」

 

「だぁくそ、寄るな化け物!!」

 

「も、もう嫌だぁ!! これは夢だ、これは夢だ、これは夢だ、これは夢だ、これは夢なんだ、僕は今夢を見てるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「喋らずに走れ!! 死にたくなかったらな!!」

 

ユウナ達は現在、怪人達に追いかけられる形で走り続けていた。先程まで安全だった筈の街の外れにも亡霊や怪人達が出現し始めた為、一カ所に留まっているのは危険だと判断したのである。後方から追いかけて来る怪人達はスノーズがPSI能力を使って足止めし、その隙にユウナが教え子達を連れて走っているという状況だ。

 

「全員、怪我はありませんか!?」

 

「こっちは問題ないぜ先生!! ていうか雅也は何叫んでんだよ、真面目にやれ!!」

 

「じ、冗談じゃないぞ!! 何で僕までバットなんか振るわされなきゃならないんだ、僕にこんな物騒なマネさせないでくれ!!」

 

「生きるか死ぬかの状況なんだ、グチグチ言ってんじゃねぇ!!」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ優馬君まで鬼畜だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「い、市崎君、ほどほどにね」

 

ショッカー戦闘員にすら怯えている雅也を、優馬が強引な形で引っ張って行く。しかしここで静香がある事に気付く。

 

「あ、あれ…!?」

 

「三川さん、どうしました?」

 

「せ、先生!! 刀奈さんがいません、何処にも…!!」

 

「湯島さんが!?」

 

「はぁ!? アイツ、勝手に何処行きやがったんだよ!!」

 

何と、いつの間にか刀奈の姿が見当たらなくなっていたのだ。先程までは一緒だった筈なのに、一体何処へ行ってしまったのか。

 

「あ!? まさか彼女、弟君を探しに行ったんじゃ…」

 

「弟?」

 

「刀奈さん、この海鳴市では弟と一緒に住んでるんだ!! 多分、その弟を探しに一人で向かっちゃったのかも知れない!!」

 

「くそ、こんな時に面倒な…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぞ、キリヤ!!」

 

「おう、兄さん!!」

 

街の中央では、ロキとソラの二人が怪人達を蹴散らしながら突き進んでいた。ロキはユーズから取り寄せた二本の双剣で二刀流を繰り出し、ソラは己の拳だけで迫って来る怪人を片っ端から殴り倒している。

 

「懐かしいな、こうして兄さんと組んだのって何時ぶりだっけ?」

 

「お前が17の時だ。だから組むのは久しぶりになる」

 

「もうそんなに経ったのか! はは、じゃあ兄さんの前で恥を掻けないな! 何も成長出来てないなんて思われたら殺されちまう!!」

 

「覚悟しておけ! お前が成長出来ているかどうか、この戦いでキッチリ確かめさせて貰うからな!!」

 

「あいあい、了解だよっとぉ!!」

 

『『『『『グルッ!!』』』』』

 

「「邪魔だ退けぇっ!!!」」

 

『『『『『グギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』』』』』

 

ロキとソラが同時に繰り出したキックで、一気に大量の怪人達が撃破される。しかし、彼等の快進撃はここで一旦ストップする事となる。

 

-ブゥゥゥン…-

 

「!? な、何だ―――」

 

「な、キリヤ…!?」

 

突如、ロキの姿がその場から一瞬で消えてしまった。ソラが立ち止まって周囲を見渡すも、周囲にはロキの姿が何処にも見当たらない。

 

「今のは一体…チッ!? 邪魔をしてくれる…!!」

 

『グガァッ!?』

 

ロキの行方を知りたいソラだったが、怪人達がその行く手を阻む。仕方なく彼は思考を切り替え、怪人達の駆逐に専念する。

 

「間違っても、くたばるようなマネはしてくれるなよ……キリヤ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――うぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

そのロキはというと、転移させられた先で市民プールに落とされる羽目になっていた。しかしすぐさまプールの水面から飛び出した彼は市民プールから外に出て、遠い位置に“鍵”が浮遊しているのを確認する。

 

「うげぇ、だいぶ距離が離れちまったな……何だったんだ? 今の空間転移は…」

 

一体誰が、自分をこんな場所まで転移させたのか。そういった疑問に尽きないロキだったが、何時までも立ち止まっている訳にはいかない為、すぐに移動を開始する。

 

「早く戻んねぇと、兄さんにどやされちまうな……まずは正確な位置を把握して…」

 

その時…

 

『ロキ君、聞こえるかい!?』

 

「!」

 

ロキの脳内に、スノーズからのテレパシーが送られてきた。

 

「スノーズか? どうした急に」

 

『刀奈ちゃんを探して欲しい!! さっきまで一緒だったのに、気付いたらいなくなってて…!!』

 

「はぁっ!? おいおい、いきなり何でそんな状況に!?」

 

『聞いた話じゃ、彼女は弟を探しに行った可能性が高いんだ…!! 僕も早く探しに行きたいところなんだけど、亡霊や怪物達が邪魔で動けそうにない…!!』

 

「分かった、刀奈ちゃんの方は俺で何とかする!! そっちはユウナや他の餓鬼共を守ってくれ!!」

 

早速、“鍵”を破壊するという目的から刀奈を捜索するという目的に変更させられてしまったロキ。思わぬ展開からロキは苛立ちながら街中を捜索していく。

 

「だぁもう……何で一人で勝手に動こうとするんだよ、あの娘は…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、噴水広場から少し離れた地点…

 

 

 

 

 

 

 

魔弾(タスラム)!!」

 

『ギュルルルル…!?』

 

「ふ、はぁっ!!」

 

『グギャギャギャギャギャギャギャ!?』

 

魔力の込められた棒手裏剣がみゆきの手から放たれ、また一体のサナギ体が撃破される。その後方では、パンチホッパーの繰り出す連続パンチでムスカ・ゾディアーツが一方的に攻撃されている。

 

「みゆき。お前は今、どれだけ疲れている?」

 

「え? あ、えぇっと…まだ大丈夫、です! まだ戦えます!」

 

「そうか。それなら良いのだが、あまり無理をし過ぎてもいかんぞ。もし君の身に何かあったら、ディアーリーズ君が悲しむだろうからな」

 

「は、はい!」

 

パンチホッパーの激励を受けながらも、みゆきは愛する少年との合流を果たす為、怪人達と戦い続ける。

 

「やれやれ、お二方もご苦労な事で」

 

そんな二人のやり取りにも、一切の興味を持とうとしないキックホッパー。彼は途中から怪人達の退治も面倒に思えてきたのか、数分前からあまりやる気の無さそうな感じで怪人達を蹴り倒し続けている。

 

『ガァッ!?』

 

「ふぅ、さて……む?」

 

そんな低いテンションのままオルカロードを蹴り飛ばすキックホッパーだったが、ある方向を見た途端に仮面の下で笑みを浮かべ出す。

 

「ほほう……これはこれは…」

 

キックホッパーの視線の先では…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――うぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『『『ガァァァァァァァッ!?』』』

 

クリムゾンの振るうクリムゾンガンで、ザンジオーなど怪人達が圧倒されている光景だった。その周囲ではクリムゾンの召喚したブラッディードールがシアゴースト達を次々と駆逐しており、その数を確実に減らしていっている。

 

『お、おのれ……何故だ!? 何故赤の他人である貴様が、我々の邪魔をする!?』

 

「知るかよ。良いか? 俺はな、人間って生き物が大嫌いなんだ」

 

『!?』

 

「だがそれ以上に、人間の持つ可能性って奴にも興味がある……だから、その可能性を潰して回ってるテメェ等を俺は許す訳にゃいかねぇんだよ!!」

 

『な、何だと…!?』

 

≪≪≪≪≪イエス・シューティングストライク! アンダースタン?≫≫≫≫≫

 

「「「「「ハァッ!!」」」」」

 

『『『『『ヴェゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…!?』』』』』

 

思わず圧倒されるガラガランダとイカデビルを他所に、ブラッディードール達が一斉にクリムゾンガンから何発もの黒いエネルギー弾を発射。大量にいた筈のシアゴースト達を一気に全滅させる。

 

『ば、馬鹿な!? こんなにアッサリと…!!』

 

「次はテメェ等だ」

 

≪インフェルノ・ナウ≫

 

『『グォワァァァァァァァッ!?』』

 

クリムゾンが右手を翳すと、イカデビルとガラガランダの足元に魔法陣が出現。その魔法陣からいきなり大爆発が発生し、二人に致命傷を与えた上で吹っ飛ばす。

 

「さぁ、そろそろシメの時だ」

 

≪イエス・スラッシュストライク! アンダースタン?≫

 

音声が鳴ると共に、ブラッディードール達が一斉に赤黒い血液へと還り始めた。その血液がそのままクリムゾンの構えるクリムゾンガン・ソードモードの刃先へと吸収され、そこから赤い稲妻が走る。

 

『ま、待て、やめてく―――』

 

「断る」

 

『れ…ガァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』

 

『お、おのれ…仮面ライダァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』

 

『『『ガァァァァァァァァァッ!!?』』』

 

イカデビル達の言葉を最後まで聞く事も無いまま、クリムゾンは振るったクリムゾンガンから赤黒い巨大な斬撃を放出。それがザンジオーやバッファローロード、ビートルファンガイアをも巻き込んだ上でイカデビルとガラガランダを一刀両断し、そのまま大爆発させるのだった。

 

「…ざまぁ見やがれってんだ」

 

クリムゾンは鼻で笑ってから、ローブを靡かせその場から立ち去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、海鳴市のとある一点…

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらエリアD!! 怪人達が包囲網を突破、至急応援を!!」

 

『こちらエリアG!! 了解、すぐ応援を寄越す!!』

 

「うわぁ、また来たぞ!?」

 

「守りを強化しろ!! ネズミ一匹、ここを通すなぁ!!」

 

現在、海鳴市のあちこちでライオトルーパー部隊やゼクトルーパー部隊が陣営を張り、怪人や亡霊達の侵攻を食い止めているところだった。しかし彼等の想像していた以上に敵は数を増やしていき、少しずつ押され始めている。

 

「よいしょおっ!!」

 

『『『シャァァァァァッ!?』』』

 

「フィアレス隊長!!」

 

「戦える者は負傷者を守って!! アイツ等は私が食い止める!!」

 

何が何でも、包囲網を突破されてはならない。フィアレスは周囲に複数の魔剣を出現させ、それらを怪人達に向かって一斉に放つ。しかしそれでも怪人達の侵攻は止まらない。

 

「あぁもう、数が多過ぎるよ…!!」

 

その時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「荒れ狂え、疾風よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天より舞いし、全てを斬り裂け」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「風神(ふうじん)聖王天翔斬(せいおうてんしょうざん)!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…うわたぁっ!?」

 

『『『『『グギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!??』』』』』

 

フィアレスがその場に伏せると同時に、彼女の頭上を風の斬撃が通過。風の斬撃は怪人達を一閃し、跡形も無く消滅させてしまった。

 

「い、今のは…」

 

「すまない、待たせてしまった」

 

「ふむ、無駄に数の多い屑共じゃのう…」

 

「ユ、ユリス!! それにフレイアも!?」

 

立ち上がったフィアレスの前に、サングラスをかけた茶髪の青年―――ユリスと、カラー眼鏡をかけた長い金髪の女性―――フレイア二人が姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に、別の場所でも…

 

 

 

 

 

 

『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!』

 

『ガァ、ゴ!? オガ、ァ…グォッ!? アガ、ァ…ブガ、ゴォッ!?』

 

藍色の髪をポニーテールに結んだ少女の背後から出現させた“ナニカ”が、エレファントオルフェノクを一方的に殴り倒していた。その後方では…

 

「さあ…殺戮のショーを始めましょう!! 来なさい“草薙之太刀(クサナギ)”!!」

 

『ギシャァァァァァァァァッ!?』

 

金髪碧眼の女性が、手に持った一本の刀でアノマリカリス・ドーパントの固い装甲を容易く斬り裂いてしまっていた。

 

そこにディアーリーズ一行が駆け付ける。

 

「え…あれ、響さん!? アンジェさん!?」

 

「ん? あ、ウルがいたぞ~!」

 

「オォ、ウルさん! やっと会えたで~ス♪」

 

「ちょ…おぶぅっ!?」

 

藍色の髪をポニーテールに結んだ少女―――響と金髪碧眼の女性―――アンジェは、二人同時にディアーリーズに飛びついて来た。

 

「な、何でここに二人が…!?」

 

「エヴァンジェリンさんに頼まれたのでース! ウルさんの手伝いをしてやってくれっテ!」

 

「だからここまで転移して貰って、ここに来たんだ! 久しぶりにウルに会えて、私も嬉しいぞ~!」

 

「ちょ、二人共、今は抱き付いてる場合じゃ…おぷぷっ!?」

 

「「「あれ、何この状況」」」

 

ディアーリーズは二人に抱き締められ続け、後から駆け付けたウィザード、オーズ、アスナは思わず口を揃えて呟いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

商店街近くの公園でも…

 

 

 

 

 

 

 

 

『ギャォォォォォォォォォォン!!』

 

『ギシャァァァァァァッ!!』

 

「ぬぉ、ちょ…うぉわ!?」

 

「くそ、マジで面倒臭ぇなコイツ等!!」

 

エラスモテリウムオルフェノク、オトシブミヤミーを同時に相手取っていたガルム一行。Unknown、蒼崎、アキの三人がエラスモテリウムオルフェノクを引きつけ、朱音、ガルム、ルカはオトシブミヤミーを上手く引きつけ二体を分断して戦っている。しかし…

 

「ちょっと、アンタもこっち手伝いなさいよ!? 何自分だけ楽しようとしてんのよ!!」

 

「あ~も~うるさいですねぇ、いちいち文句垂らさないと気が済まないんですか? 全く、これだから女というのは面倒な生き物なんですよ」

 

「ちょ、お願いデルタさんマジで手伝って…ギャァァァァァァァァァァッ!?」

 

「ギャー!? 蒼崎が踏み潰されたー!?」

 

「あらよっとぉ!!」

 

「ちょ、ガルムさん!? こっちにまで弾幕張らないで…アァァァァァァァァァァッ!?」

 

デルタだけは巨大な怪物達とは戦おうとせず、そこらにいるショッカー戦闘員のような戦闘が楽そうな雑魚だけを相手取っていたのだ。そんな彼に応援を求めようとした蒼崎がエラスモテリウムオルフェノクの前足で踏み潰されたり、ガルムの放った流れ弾がルカに命中しそうになったりと状況は非常にカオスだ。

 

その中で…

 

「「…チラリ」」

 

Blazとkaitoは何故か二人して、公衆便所の物陰に隠れていた。

 

(分かってるなkaito。俺は幽霊から逃げる為、お前は仕事を増やさない為、この場からこっそり立ち去るだけだ。裏切ったりすんじゃねぇぞ…!!)

 

(はいはい、分かってるって。自分もあんまり、戦闘という面倒な仕事はやりたくないし)

 

二人は小声で話しながら、この場から逃げる算段をつけていたのだ。Blazは幽霊が怖い為、kaitoは戦いたくない為と、その理由も非常にシンプルである。

 

しかし、そう上手くはいかないのが世の中の現状である。

 

「おい」

 

「「ギクッ」」

 

いつの間にか真後ろにいたmiriが、逃げようとした二人の首根っこを掴み持ち上げる。

 

「お前等、こんな非常事態に何処行く気だ? まさか、逃げるつもりじゃあるまいな?」

 

「い、いやぁ……ちょっと、トイレに……ね?」

 

「そ、そうそう! トイレだよ、トイレ…うん」

 

「ならここの公衆便所使えば良いだろうが。そっちの方向に行く理由は無い筈だが?」

 

「「う…」」

 

「…どうせ逃げるのなら、もっとマシな嘘をつきやがれアホ共が!!」

 

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ幽霊嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「あーれー」

 

結局、miriによって二人は戦場まで引き摺られる事となった。その時…

 

『ギシャアッ!!』

 

「! おっと」

 

「「え…ギャァァァァァァァァァァァァッ!?」」

 

オトシブミヤミーの放ったエネルギー弾をmiriは回避し、Blazとkaitoはものの見事に命中してしまった。その影響でBlazは頭を打って気絶し、kaitoは何故かアフロヘアーとなる。

 

「キュゥゥゥゥゥ…」

 

「ぷはぁ、いやぁ~危なかった」

 

「で、何でお前はアフロになってんだよ…っと!」

 

ひとまずkaitoを放置し、miriは他のメンバーと共にエラスモテリウムオルフェノクやオトシブミヤミーとの戦闘に集中する。

 

「全く、面倒ったらありゃしないですね」

 

そんな彼等の戦闘を適当に眺めながら、デルタは迫って来たショッカー戦闘員の手首を掴んだまま関節技へと移行し、そのまま戦闘員の関節をへし折る。

 

(早いところ、誰かがこの状況を終わらせてくれると助かるのですが…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“鍵”の浮遊する、真下のビル屋上…

 

 

 

 

 

 

『ム、鍵の力が弱まってイルな……少シばかり、亡霊共ヲ狩りに行かねバならないようダ…』

 

“鍵”に更なるエネルギーを与える為に、その場から動き出そうとするアザゼル。そんな彼の前に…

 

「おう、ちょっと待てや」

 

『!』

 

赤い魔法陣と共に、クリムゾンが炎に包まれながら姿を現した。

 

『…ホウ、招かれざル客が来タようだナ』

 

「うっせぇ。テメェも覚悟して貰おうか、鎧野郎が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いは、更に激化していく。

 


 
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