参之六 『 狐と猫と猫好きと 』
その日の朝は想像以上に騒がしかった。というのも昨夜は雪蓮と一晩過ごしたのだが(厳密には人和もだが)今朝になってそれを知った祭さんには茶化され、蓮華と思春にはどやされての朝になった。まあ、その辺は雪蓮が説明しておくとは言ってたから任すとして。
「狐燐さん居ますか?」
「どうぞ」
どうやら来たらしい。部屋を訪ねて入ってきたのは明命だった。今回、人和の話していた彼女達の舞台。そこで使われている術を調べる為に協力してもらう事になった。といっても本人の知らない所で決まった事だが。(参之五 参照)
「えっと、それで私は何をすればいいんですか?」
「それは道中に説明するよ。その前にちょっとこれに着替えてくれる?僕は外に出とくから」
「はあ…」
そう言って明命に黒い服を手渡して部屋を出る。
明命は釈然としないながらも手渡された服を広げてみるが、
「こっ…これは…」
すこしして明命が部屋から出てきた。
「あのぅ、一応着替えましたけど、ちょっと恥ずかしいです///」
出てきた明命の姿は首から下をぴっちりと覆うような黒いレオタードのような姿だった。すっぽりでは無くぴっちりである。(キャッツ○イ的な)
「あ~、先に言えばよかったかな?別にその上から普通に服着ても良か「着てきます!」うん…」
相当恥ずかしかったらしい。といっても、別に僕も遊びでそんなものを着てもらった訳ではない。明命に渡したのは趙三姉妹の『ミステリアスヴェール』というもので弱い宝貝や術を跳ね除ける衣服であり、術に抵抗の無い明命には今回はどうしても必要なのだ。
「おまたせしました」
「うん、じゃあ行こっか」
「でも、何処に行くんですか?」
「先ずは僕の師匠を呼びに、かな」
それから、明命をおぶって空から目的の場所の近くまで移動した。その間、というか明命が慣れるまで度々首を絞められて大変だったけど。
「此処に狐燐さんのお師匠様が居るんですか?」
「うん。正確にはこの山の中だけどね」
暫く山中を歩き、ようやく目的の場所へとたどり着く。そこはすこし開けた場所で小さな庵が一つ建っているだけの場所だった。そして庵に近づいた時だった。
「ご主人様ー」
「あっ、タマ。久しぶり」
箒を手にした少女が声を上げ、手を振りながら近づいて来た。
「タマ?何かお猫様みたいな名前ですね」
「猫じゃないです!私は
「彼女は周泰だよ。明命、こっちは
「「どもども」」
互いに頭を下げて挨拶を交わす。タマこと玉麒麟。本来の姿はその名の通り煌く鱗と
「タマ、斑様は?」
「多分まだ寝てるんじゃないでしょうか。何かあったんですか?」
「ちょっとね。あれでも術に関しては仙界屈指だし力を借りようと思ってね」
軽く説明して庵の戸を開ける。
中は無数の本の山に
「ちょっと誇りっぽいですね」
「私が来てからお掃除はしてるんですけどね…」
「斑様~居ますか~?」
居るのは分かっているが一応呼んでみる。すると
「――うにゅう~zzz」
炬燵の中からそんな間の抜けた声がした。
「はあ…。斑様、起きて下さい。ちょっと話があるんですけど」
「う~ん、後気分zzz」
「どんだけ寝るつもりですか!?」
まったくこの人は。
「マタタビ酒持ってきましたけど?」
「早う寄越せ!」
炬燵をひっくり返して中から少女…というか幼女が飛び出した。その姿は丈の短い袴に袖の長い衣を纏っている。そしてもっとも特徴的なのは――。
「お、お猫様ー!」
「うにゃー!」
明命が突然飛びつく。そう、明命が猫と称した様に猫耳と二本の尻尾が生えており、白い毛並みに黒と茶の水玉模様といった三毛猫よろしくな感じである。
「お猫様お猫様お猫様ー!」
「にゃー!わっちのほっぺがまさちゅーせちゅぶぶぶぶ…」
「明命、そろそろやめたげて。そろそろ斑様のほっぺから火が点きそうだから」
流石に遭われ(笑)な斑様の姿を見かねて静止を促してみるが、明命が満足して斑様を手放したのは小一時間程経った後だった。
「ふにゃ~、
「いや、流石に僕も明命がこんなに猫好きとは知らなかったですし」
「お猫様。次はこれで遊びましょう!」
どっから取り出したのやら明命は猫じゃらしなんて物を持ち出して斑様のまで振り始める。
「ええ~い!わっちはそもそも齢150の大妖で(チラッ)あって(チラッ)その辺の野良猫等と(ウズウズ)一緒に…。うにゃー!(ぴしぴしぴし)」
言い終わる前に結局猫じゃらしに釣られてしまった。
「ご主人様…。私、ここまで威厳の無い…というか元々無いですけど、こんな斑様見るの初めてです…」
「うん…僕も驚いてるよ。特に明命に。明命、話進まないからその辺にしといて」
「はっ、申し訳ありません。私ったらつい…」
「ふに~…。やっと開放された。弟子よ、うぬの来た目的はとうに知っておる。あの眼鏡っ娘等の使うている術についてぢゃろ?」
「はい」
疲れ気味でも、さっきまで全く威厳が無くても、やはりこの辺りは仙人、南華老仙なのだと実感する。
「その術もよく似た物を知っておる」
「それは、なんですか?」
「『太平要術』ぢゃ」
その場に座り直して斑様はその名を口にした。
「では、それに対する対抗策は?」
「もちろん知っておる。ぢゃが、恐らくは別物ぢゃ。故に対抗策も同じとはいかんぢゃろうて」
「どうしてそう言えるのですか?」
「ふむ。なぜならば『太平要術の書』は
なるほど、だから別物と言った訳か。でも、だとしたら人和の言っていた、今、地和の使っている術は何なのだろう…。
「さて、では行くかえ?」
「何処にです?」
「決まっておろう。眼鏡っ娘共の舞台とやらぢゃ。そのつもりでわっちの所に来たのであろう?」
分かっているなら、起きててくれればいいものを…。まぁ、時間の大半は明命によって浪費したわけだが。
「ところで、うぬの名を聞いておらんかったの」
「ええっと彼女は周t「明命とお呼び下さい!お猫様!」」
「うっ、うむ。なればうぬもわっちの事は斑と呼ぶがよい」
「いいんですか!?」
「よいよい。そもそもわっちは世間での南華『老』仙という呼び名は好きでない。わっちはまだぴちぴちの153ぢゃからの!」
これで、ぴちぴちと言い張れるのだから、世の中理不尽に思える事がある。
「分かりました!お猫様!」
そして、恐らく明命は斑様をその名で呼ぶ事は無いだろうと確信した。
あとがき
ツナ「やっと新キャラですよ…」
太白「こうして呉はどんどん人外魔境になっていくわけッスね」
ツナ「そんな事にはなりません!私がさせません!」
太白「でも、三人(?)居たら十分だと思うッス」
ツナ「まあね。それについては理解しているさ」
太白「で、これでやっとコラボも投稿できると…」
ツナ「そういう事になります。まだ書き終わってないけど…」
太白「さっさと書けッス!」
ツナ「分かったから『波朱太亜雷降』向けないでっ!?」
太白「ではまた次回ッス!」
ツナ「台詞取らないで!?」
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明命にはご褒美です
注:オリ主作品です。やや?チート気味