No.675728

九番目の熾天使・外伝 運命の獅子

第六話 獅子の体育祭。そして襲撃

2014-04-02 21:51:54 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2501   閲覧ユーザー数:2319

ウルはあの後、決勝戦でクラスメイトの古菲と激突

しかし生涯のほぼ全てをかけ研鑽された功夫に惜敗

今は全体イベントの開始を明日菜、美空、ココネ、古菲、そして高音と共に待っているところである

 

「あ、あたたたた…」

「だ、大丈夫アルかウル?」

「白熱してたもんねー」

「15分過ぎても決着が付かなかったから、結局投票で決まったしね」

「ウルさんは魔法を使えば勝てたと思うのですが…」

「だって…古菲さんは魔法使いじゃないじゃないですか。だったら純粋に体術の仕上がりを確認したかったんです。…負けちゃいましたけどね。我流じゃ駄目みたいですねー…」

 

雑談をしていると体育祭の実行委員が寄ってきて、折りたたまれた紙を渡してくる

 

「すいませーん!あなた達は全体イベントの参加者ですか?」

「え、ええ、そうですけど」

「じゃあこれを渡します。イベントが始まってから開いてくださいねー!」

 

実行委員はまた次の参加者に紙を渡しにいくようだ

 

「…なんでしょう?これ」

「紙でしょ?」

「そんな事は見ればわかりますわ!」

「何か書いてあるみたいだけど?」

 

パン!パパパパン!とイベント開始の合図の花火が上がる

紙を渡されたメンバーは全員が一斉に紙を開く

 

「…えーっと」

「何これ?」

 

その紙には『今年の全体イベントは『借り物競争』です!借りたい物を書いて、それを借りてきてください!』と書かれていたのだ

 

「要するに、好きな物を書いて借りて来りゃいいんでしょ?らくしょーらくしょー」

「待ってください美空さん、なんか注釈が書いてありますよ」

「んー?どれどれ?」

 

隅っこの方に小ぃ~さく『注1.常識的に考えておかしい物は自動的に却下となります 注2.今年は教師だけでなく生徒も借り物の対象となります』と書かれていた

 

「つまり…どういうことよ!?」

「つまり、例年は借り物の対象は先生方だけでしたが、今年は生徒も借り物の対象、と言うことらしいですね」

 

よく分かっていない明日菜に高音が噛み砕いて説明をする

と、ここでヴォン!と言う音と共に空中に巨大な和美と白銀のストレートヘアの少女―相坂さよが浮かび上がる

どうやらホログラムのようだ

 

『さあさあ始まりました、本年度体育祭学園全体イベント!『教師も生徒も突撃☆スーパー借り物競争』ぉ~ッ!!』

「ネーミングセンスが酷いッ!?」

『毎回教師に対する無理難題な借り物要求が好評の当イベント!今年は規模を拡大して生徒も借り物要求の対象となります!ここでスペシャルボーナスの発表です!』

 

空中のさよと朝倉がそれそれ『WANTED!』と書かれたネギとウルの写真を広げる

 

『ボーナスターゲットは麻帆良中学3-A組担任ネギ先生と、同じく麻帆良中学3-A組生徒のウルティムス・F・L・マクダウェルくん!話題の子供先生&女子中唯一の男子生徒からの借り物に成功した団体はなんとぉ…!?』

 

ここで和美は一度たっぷりためてから話を続ける

 

『なんとッ!ポイントが100倍!!ちなみにクラスメイト以外に借りられるとペナあるからねー』

「なんですかその今までの競技の意味が問われる制度はッ!?…ハッ!?」

 

ふと周囲を見渡してみれば、銃器で武装した高校生&大学生、果ては戦車や戦闘ヘリまで動員されて完全に包囲されてしまっている

 

『優先目標、唯一の男子を発見!繰り返す、唯一の男子を発見!これより捕獲作戦を開始する!子供先生に比べれば楽には違いないが、それでも注意しろ!』

「っえー…。規格外すぎないですかこの学校…」

「それが麻帆良ですから」

 

呆れるウルに高音が冷静なツッコミを返す

 

「えーっと…とりあえず皆さんは転移させますね。巻き込むのもいやですし」

「うむ、頼んだアルよ」

「むしろ、ここでウルさんを捕獲した方が良いのでは…?」

 

古菲が素直に受けるのにたいし、高音は競技のためにはウルと一緒にいたほうが良いのでは?とぶつぶつと考え込む

 

 

『聞こえるかいウル君!こちらは全学園軍事&サバゲー関連サークル体育祭混成部隊。君は完全に包囲されている!大人しく我々の借り物要求に従ってくれ!と、いうか―』

 

 

 

『―皆の物かかれー!』

「了解」「ラジャー!」「サーイエッサー!」「イエス・マイロード!」

 

指揮官の号令と共に歩兵は銃を、戦車は砲を、ヘリはミサイルを放ってくる

ウルが張った障壁にそれらが着弾し、白煙を巻き上げたところで

 

「…ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト」

 

ウルは転移魔法を発動し、明日菜たちを安全な場所へ避難させる

そして自身を身体強化魔法で強化、そのまま建物屋根から屋根へと飛び移って逃走する

 

「と、跳んだッ!?」

「た、隊長、今情報が入りました!あの少年、今年度ウルティマホラの準優勝者です!しかもあの古菲と事実上引き分けてます!」

「なんだとぉ!?」

 

後ろからそのような声が聞こえてくるがどうでも良い

ウルは今はとにかく誰かと合流しなくてはと、屋根の上を疾走する

出来ればフェイトやタカミチがベター。ベストは同じくスペシャルターゲットのネギだろう

 

ふと空を見上げると、空中を杖に乗って飛行するネギが見えた

放たれるミサイルを軽やかな機動で全て回避している

 

しかし、どこかから誘導追尾弾が発射される

ネギも必死で回避するが、かわしきれずに二発だけ当たってしまう

 

「ネギさん大丈夫かな…?」

 

ウルはネギの様子を見るために少しだけスピードを上げる

―が、しかし

 

「え、うわぁっ!?」

 

何の因果かネギがかわした追尾弾がウルを狙っていたのだ

位置関係を見てみるとネギと弾の直線状にウルが走っていったためだろう

そしてウルもネギと同じく、弾を一発喰らってしまった

 

「っう、嘘!?ま、魔力が抜けてく…!?」

 

シュウゥ…と弾が当たった所から白煙の形を取ってウルの魔力が抜けていく

まあ、ウルには気もあるためそこまで問題ではないだろうが、使い慣れた技術を使えないのは痛い

 

「いたぞ!ウルくんだ!」

「ま、不味い!逃げないと!」

 

ウルは気を駆使して瞬動術で逃げる

ある程度移動し喧騒が遠くに聞こえる程度まで逃げられた為、気での身体強化を解除する

 

「こ、ここならある程度隠れられそうかな…。うーん、やっぱり魔力が消えてる…なんで?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう。貴様は今魔法が使えないのか。これは好都合だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

突然、ウルに向けられた殺気

身構えながら謎の声に向かって問いかける

 

「貴方は誰ですか!…ここの魔法関係者ではなさそうですね。感じたことの無い魔力だ」

「それはそうだ。私はメガロメセンブリア元老院に雇われた、ただの傭兵なのだからな」

 

謎の人物が建物の影から姿を現す

顔を覆面で覆い隠し、ローブを纏っているため顔はおろか性別すら分からない

 

「(メガロの元老院…雇われた?)…へえ、傭兵ですか。では傭兵さんにお聞きします。何故僕を狙うんですか」

「―完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)によって製作された人造人間、アーウェルンクスの破壊」

「ッ…」

「不思議な事ではないだろう?何時の世も、為政者は不安要素を排除しようとする物だ。それも人造人間などと言う化け物なぞ、殺す理由こそあれ生かす理由など無い」

「ッ…麻帆良の学園長や、タカミチさんは知ってるんですか?」

「いいや、これは完全に元老院の独断と聞いている。ああ、時間を稼いで援護を待っても無駄だぞ?結界を張らせて貰ったからな」

 

さて、と傭兵が杖を構える

 

「だがあまり時間をかけてられないのも事実だ。貴様の魔力が何時戻るか分からんからな。ドラクル・ヴラド・ドラクリヤ…」

 

傭兵が魔法始動キーを唱える

それと同時にウルは気による身体強化を発動、傭兵へと突撃する

そのままのスピードを維持し、体重がたっぷり乗った飛び蹴りで傭兵の腹部を狙う

 

「残念だったな、詠唱は囮さ。解放(エーミッタム)氷槍弾雨(ヤクラーティオー・グランディニス)』」

 

飛び蹴りの体勢に入った直後、傭兵が右手をウルに翳して遅延呪文を解放

無数の氷槍がウルを襲う

 

 

しかし、ウルに当たりかけた氷の槍が次々と霧散し魔力に還っていく

 

「僕の能力までは知らなかったようです、ね!」

「ガ、アァッ!?」

 

ウルの飛び蹴りが傭兵の腹部に直撃する

傭兵はそれで内臓を痛めたらしく吐血する

 

「な、何故だ…何故魔法が…?!」

「教えるわけ無いでしょう!」

 

―ここで読者の皆様に、なぜウルを狙った魔法が霧散したのか?その理由を教えよう

ウルは神楽坂明日菜の遺伝子を組み込まれて作成された人造人間、最後のアーウェルンクスシリーズ

もしも魔法世界の崩壊までに神楽坂明日菜を確保できなかった場合のスペアとして作成されたのだ

 

 

 

神楽坂明日菜が持つ異能『完全魔法無効化能力(マジックキャンセル)』を完全に再現した状態で

 

 

 

「(でも魔法が使えないのは痛い…!これじゃ決め手にかける…!)」

「くそッ!ドラクル・ヴラド・ドラクリヤ!来たれ氷精爆ぜよ風精!弾けよ凍れる息吹!『氷爆(ニウィス・カースス)』!!」

「わぷっ!寒ッ!?」

 

傭兵が発生させた凍気と爆風によってウルは視界を閉ざされる

魔法自体は無効化出来ても、それによって発生した結果を消し去る事は出来ないようだ

 

「はああぁっ!」

「ッ(仕込み杖!)」

 

傭兵は杖を抜き、中に仕込まれた剣で切りかかる

ウルは気を放出して無理やり体を動かして回避する

 

「ッ」

「おおおおっ!!」

 

傭兵はウルの頭に向かって剣を振り下ろす

が、ウルはそれを気によって強化された腕をクロスさせて剣を受け止める

 

「うっぐ、ぅ…!うあぁああ!!」

「無茶をする!」

 

腕を切り落とす勢いで振られた剣は、気によって強化されていたからか左腕の骨で止まった

ウルは左腕に食い込んだ刀を、左腕を思いっきり振ることで投げ飛ばす

しかしすぐに処置をしなければ出血多量によって命を落とすだろうことは明白だ

 

「ッ(魔力が戻ってきた!)ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト!来たれ氷精(ウェニアント・スピリトゥス・グラキアーレス) 闇の精(オブスクランテース)! 闇を従え(クム・オブスクラティオーニ) 吹雪け(フレット・テンペスタース) 常夜の氷雪(ニウァーリス)!!」

「何ッ、魔法を使えるようになったか!させん!ドラクル・ヴラド・ドラクリヤ『装剣(メー・アルメット)』!」

 

傭兵は魔法で剣を呼び寄せて装備、そのままウルに袈裟懸けで切りかかる

だが剣がウルに触れて切り裂く前に、ウルの呪文は完成していた

 

「『闇の吹雪(二ウィス・テンペスタース・オブスクランス)』!!」

 

闇を纏った強力な吹雪が、傭兵の体を飲み込んでいった

 

 

 

 

術者を倒した影響か周囲に張られていた結界が解かれる

それと同時に今まで全く人がいなかった通りに溢れるほどの人が入ってくる

 

「くはっ、はあっ…はあっ…」

 

ウルは壁に体重を預け、荒い息を整える

 

「はあ…はあ…ヴィシュ・タル…リ・シュタル…ヴァンゲイト…『治癒(クーラ)』」

 

応急処置程度の治癒魔法を発動して、左腕を治療する

パァっと光に包まれた左腕は光が収まると、元通りに治っていた

 

「ウル殿!」

「あ、…楓…さん…?」

 

意識が闇に包まれる前にウルの視界に飛び込んできたのは

珍しく目を見開いてこちらを見やる、忍者のクラスメイトだった

 

 

 

こうしてウルの体育祭は、保健室のベッドで終わった

 

急展開&なんちゃってシリアスごめんなさーい!


 
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