No.67534

真・恋姫無双 これもまた一つの外史!戦鬼に従う堕陣営の乱世生活!①~新らたな戦い前夜の会合~

kyouhei0117さん

初投稿になります・・・自分の好きな武将を無理やり真・恋姫の中に組み入れました;場面は蜀ルート恋達が降伏した直後でシーンは深夜になっております、一応自分なりにシリアスを目指してみました。シリーズにするつもりで、かなりオリジナルな展開にもって行きます!受け入れられない方もおられるでしょうが其れが少ない事を願います。それでは最後にまだまだ未熟者で駄作しか書けませんが、最後までご覧頂き願わくはコメントもいただければ幸いです!

2009-04-07 18:17:51 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:7045   閲覧ユーザー数:5335

 

「─────…………」

 

何処までも続く更けきった夜空に散らばり広がる満天の星、自らを優しい光で照らす満月を彭城の城壁に設けられた物見櫓の屋根の上、ひざを曲げて据わり両脇に手をおき、ぼんやりとした表情で見上げる若干あどけなさが残る赤髪の少女。

 

姓を呂 名を布 字を奉先 真名を恋と言い“戦国乱世最強”であり“武の頂を見出し立った者”であり“戦場を蹂躙する鬼“であり”動物(特に犬)好きの女の子“でありそして────先の戦で劉備・北郷軍に降伏した”敗戦の将“でもある。

 

一見しただけでは、もとい注視しても彼女を良く知らなければ何を考えているか分からない表情を変えず、曲げていた足をゆっくりと伸ばし同じに後頭部に両手を添えて上半身を寝そべらせる。表情はやはり変わらない。

 

「お休みになられませんか……?恋様……?」

 

「……零夢(れいむ)……」

 

唐突に聞こえた声にも大した驚いた様子も無く自分が位置する正反対の屋根から姿を現した、結い上げながらも腰まで伸びている藍色の長い髪、光の抜けた虚ろな翡翠色の瞳が特徴的な少女に視線を向け預けられた真名を返す。よっこらせと恋の隣に腰を下ろした“堕陣営”の異名を持つ少女、“高順”は穏やかな微笑を浮かべながら小首を傾げた。

 

「……やはりまだお気に留まりますか……?」

 

「…………恋は」

 

初めて変わる表情、肯定を意味するように静かに目を瞑り、落胆を含んだ小さな其れこそ吐息とも思えるほどに小さな嘆息を漏らしながら呟かれる。零夢は其処から急かすわけで促すわけでもなく相変わらず優しい表情のまま主人の横顔を見据え続きを待つ。

 

「……………………………………………………………間違えた?」

 

若干の間を置いて言い淀んだ上での一言に零夢は少しだけ困ったよう笑う、眼前にいる己の愛しき主は口数が多くないが故に人並み外れた武力は多くの人に畏怖を持たれ、其れが羨みとなり其処から妬みと悪い方面へ向上し、果ては蔑みと形を変え彼女を知らない、知ろうとしない輩(主に文官)達から一方的な悪意を向けられ半ば強引無理やりに蚊帳の外へと追い出されていた

 

この言葉も常人ならば降伏に対する反省もしくは後悔の類程度にしかとらないだろうが零夢は知っている。“飛将軍呂布”配下最古参の一人であり“恋”の幼馴染として彼女は知っている、これは─それだけではない─と言う事に。此度の“終わりの戦”のみならず“始まりの戦”にまで遡っているであろう事に。

 

「…………質問に質問で返しますが、何故そのように思われるのです?」

 

何処までも優しい問いかけに再び上半身を起こしひざを曲げ、両手でそのひざを抱え其処に軽く顔をうずめる恋、その瞳には横顔からでも分かるほどに悲しみと後悔の念にあふれていた。

 

「……………恋………戦っても逃げてばかり」

 

虎牢関の戦より以前から始まっていた自分たちの逃避行、再び漏らされる其れは最初のものとは異なりはっきりと聞こえる重い嘆息、それまでに自分の胸中に押さえ込んできた悲壮感も兼ねており。

 

「…………最初に…………あの時に…………恋が皆を守るって言ったのに」

 

その最初を知る主だった将は霞、自分の下を去った三人の娘と今傍らにいる少女そして既に他界したその少女の部下だった男。実質今となっては零夢ただ一人で故にどれ程の思いかを彼女は痛感できた。

赤き瞳に溜まる其れは今まではそぶりを見せる事も許されなかった、己の無力に対する深い恨みとそんな簡単な事にも実際に感じなければ気づけなかった自分に対する自己嫌悪。

「………恋………っ…………嘘……つきっ」

 

一層ひざに顔を埋め小刻みな震えが始まる小さな肩、脳裏に蘇るのは文官たちがわざと聞こえるように囁いていた影口 “人の心を持たぬ人” “殺人人形” “鬼人” “戦と血を望む化け物”いっそのことその通りならば、世情通りの人間ならばと自身で思わずにはいられない。何も考えずに唯戦場で殺し合いだけを楽しむ事が出来るような人の道を外れた下種で皮肉にも今は其れが羨ましく思える人間ならばどれだけ楽だったろう。

 

否、変わろうと思えばいつでも変われる。敵を殺し続ければいい、殺して殺して殺して殺して殺して殺して押されている味方の事など脇目にも触れず、仲間から恐れられても気にもとめず、大切な友人達からの注意も無視を決め込み、殺戮だけを繰り返せば大丈夫。きっと自分の大事な皆は自分を見捨ててくれる。

 

                              ─ そうだ ─

 

壊れかけの答えが妙な得心と共に生みだされる。捨てられ一人になれば誰も守る必要も無い、それ以前に“守れなかった”自分がこれ以上誰かを“守る”資格なんて無い、これなら一人だけど誰かを失う事も無くなる。─そうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそ─

 

「…………恋様」

 

一体何度“壊答”を胸中で繰り返した事か、変わらない優しい声と視界が真っ暗になるのとほぼ同時に顔面からくるやわらかい感触にようやく我に帰る。このままでは呼吸もままならないので少し強めに締められた腕から顔面を上下左右に必死に振り、程なくして顔を上に向ける事が出来た。視線に移るのは軽く目を閉じ口元には変わらない優しい笑みを浮かべている

 

「……何をお考えか、大体の察しはつきます。……それは間違い……実際に行われてはなりませんよ?」

 

「っ……………んで…………れ……ん……は………っ恋は!!」

 

「…………痛っ…………」

 

意図が分からなかった、半端な長さの付き合いでない仲で自分の事をよく理解してくれていると思っていた。其れを裏つけるように陳宮、ねね共々常に自分を支えてきてくれた、分かっているのなら何故邪魔をするような事を言うのか、口端が切れるまで唇を強く噛み締め、何とか押さえ込もうとした激情は止まらずに、気がつけば抱きしめられていた自分が相手に馬乗りとなっており、爪が食い込むほどに強く肩をつかんでいる。瞳に溜めていた物が雫となって零夢の頬に落ち緩やかから徐々に速度を増してつたう。苦悶の表情を浮かべるも零夢はすぐに穏やかな笑みを戻し小さなため息をついた、まるで聞き分けのない子供を諭す母親のような、優しいため息を。

 

「……恋様は、城内では人とあまり接さられない分セキトを初めとした多くの動物達と頻繁に戯れておられます」

 

「…………っ!?」

 

ますます意味が分からない、割って入ろうとした言葉は静かに、誇らしげに目を閉じた相手の続きによって飲み込まされた。

 

「所を気にせず、時には陣中にまで連れ込むそのお姿は他の陣営の者達には白い目で見られましたが、我等には殺伐とした雰囲気を和ませ、必要以上に剣呑としたみなの顔を程よく緩ませ、──戦からの恐怖から守られ助けて頂きました。これだけではございません。ねね殿が高熱を出され寝台でうなされていた折りもつきっきり看取られていた事皆存じ上げておりますよ?臧覇が微細な失敗で必要以上に文官達からなじられていた時、前に出られ言葉無く眼力のみで黙らせたのは実に爽快でございました。市中では屋台の焼鳥屋から酒屋まで“たくさんの犬を連れたやたら強い赤髪の女の子”をどれも笑顔で語るほど知られておりましたよ?虎牢関からの逃避中に執拗に襲ってくる賊から常に殿を勤められ、その上寝る間も惜しんで見張りに立たれておられたのは何方でしたか?」

 

言葉を聞けば聞くほどに強く睨んでいた瞳は大きくなり、最後にいたるころには信じられないものを見るかのように見開かれて口はぽかんと小さく開けられ手にこもる力は完全になくなっていた。半ば放心となりかけている恋に上半身を起こし向かい合う零夢。

 

「ご自身の悪点を謙虚に見据え、素直に受け止めるのであれば良点も又同じように受け止め、ご自慢にされてください」

 

「…………それでも、恋は守れなかった…………どれだけ頑張っても…………無駄だった……っ」

 

言葉ではどう言おうと頭ではどう思おうと事実は結局変わらない、絞り出すような声に零夢の笑みは始めて優しいものから悲しげなものへと変わり、恋の顔を再びそっと自分の胸元へと抱きしめる。

 

「恋様は皆を守るために今日まで生きてこられ、彼らはその恋様を守るためにあの日死んだのです……自分たちではこの先守れぬ仲間を守ってもらうため、あの日の約束を守ってもらう為、そして何より自分たちが大好きな将のために…………そんな彼等が“貴方がふがいないから俺達は死んだんだ”など言うと思われますか?」

 

「…………っ……ぅ…………ぅぁ」

 

抱きすくめられ胸に当てながらも顔を俯かせる、再度両肩が小刻みに震えだし相手の背中に回した腕に少し力を込める恋、そんな彼女の後頭部を優しく撫でる零夢。もう言葉はいらず引き金になるのはそれだけで十分だった。

 

「ぅぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!わあああああああああああぁぁ!!!」

 

まるで何かが爆発したかのように大声で悲痛な叫びを上げ、大粒の涙を流し続ける自分の主を優しくなで続けながら零夢は恨む、人一倍強く 人一倍優しく 人一倍脆い主人を泣かせた乱世を。世を此処まで腐敗させておきながら後始末もせず無責任に先に逝った先人達を。天下の動乱とは一切の関係を持たず、常に汚れをもたない月光は抱き合う二つの影を何時までも優しく照らし続けた。

 

 

 
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