No.674795

ALO~妖精郷の黄昏~ 第15話 雨露の襲撃者

本郷 刃さん

第15話になります。
前回の続きでタイトル通りの話になりますが、原作とは違い・・・。

ここから展開が本格的に変わっていきますが、どうぞ・・。

2014-03-30 12:03:19 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:9018   閲覧ユーザー数:8301

 

 

 

第15話 雨露の襲撃者

 

 

 

 

 

 

 

詩乃Side

 

なんだか壮大な話しを聞かされたわ…。

新しい技術を利用しているマシン『ソウル・トランスレーター』に『フラクトライト』、

それに魂の加速『フラクトライト・アクセラレーション』、他にも専門用語が飛び交っていたけど、

ほとんど理解できてない。和人の頭の中はどうなってるのかしらね…。

 

「ふぅ、やっぱり思い出せないな…」

「それって、さっき言ってた実験中の記憶のこと?」

「あぁ。ま、ブロックしきれない断片の部分なはずだ。どうしても気になったら凜子さんやタケル辺りにでも聞いてみる」

 

当の本人は引っ掛かりが少し気になってるみたいね。

かといって私たちがなんとかできるわけでもないし、専門家たちがいるのならその人たちに頼るしかないかも。

 

「俺のことはこれくらいにして、来月は期末試験があるからな。みんなはどんな感じだ?」

「うっ、嫌なこと思い出させないで…。3人はいいわよ…ペーパーテストもほとんどないじゃない。

 うちはいまだにマークシート方式なのよ…」

 

和人の言葉に私は顔を顰める。

3人の学校は各学期末のテストしかなく、最高でも3回…しかも景一、和人、明日奈の3人は今年で卒業なのでテストは2回、

あとは大学の入試くらいかもしれない。

それに対して私の学校は中間テストとか実力テストとかもあるから、まだまだあるのよね……はぁ、勉強しなくちゃ…。

 

「いいわよね、3人とも成績優秀で…」

「あはは、確かにそうかもしれなけど…」

「詩乃だって成績が悪いわけじゃないだろ? 不安があるなら景一に見てもらえばいいじゃないか」

「……喜んで引き受けるぞ」

 

私の皮肉に明日奈は苦笑して、和人は提案してケイは乗り気な様子だけど、彼に勉強を見てもらうのはちょっとなぁ…。

 

「ケイに見てもらえるのは嬉しいけど、多分勉強に身が入らないと思う…///」

「うん。その気持ち分かるよ、シノのん///」

「2人とももう少し我慢できるようになろう」

「……なんだかんだで飛び掛かってくるのはそっちだからな」

「「は、はい…///」」

 

まぁ、そういうわけなのよ…///

し、仕方ないじゃない、好きな人と部屋で2人きりだなんて、ドキドキするのが止まらないもの///

悪いのは私たちじゃないはず、むしろ少しも動揺しない彼が悪い///!

 

「んじゃ、近々みんなで勉強会だな」

「……そうするか」

 

男2人で予定を決めているわね、賛成だけど。

そんな時、明日奈が時計を見たようで声を上げた。なんと既に午後6時に近い時間になっていた。

今日はこれでお開きということになって、和人が今回のバイト代で奢るということなので、私たち3人は先に出口へ向かう。

 

「エギルさん、ごちそうさまでした」

「ベイクドビーンズ、美味しかったです。また来ますね」

「……失礼する」

「おう、気を付けて帰りな」

 

和人と会計を行っているエギルさんから返事を聞いてから、傘を広げて外に出る。

だけどその瞬間、私はうなじに狙撃手の気配を感じたような気がして、素早く周囲を見渡した。

 

「シノのん、どうかしたの…?」

「え、その……ケイは、なにも感じてない…?」

「……いや、特には…」

「そ、そう、ならいいの。GGOでのクセがこっちでも出ちゃったみたいで…」

 

不思議そうに訊ねてきた明日奈。

感じ取った感覚について私よりも鋭いケイに聞いてみたけど、彼が何も感じなかったのなら気のせいに違いない。

明日奈は短く「そっか」とだけ答えて、ケイもいつも通りなままだもの。

それからすぐにドアベルが鳴ったから、邪魔にならないように前に出ると、会計を終わらせた和人が出てきた。

 

「…『アリス』……『アーティフィシャル・レイビル・インテリジェント・サイバネーテッド・イグジスタンス』、

 通称『A.L.I.C.E』……これのこと、じゃないはずだ…。

 また別のアリス…そう、人の名前だった気が……だめだ、今度聞こう」

 

さっきの話で感じた引っ掛かりについて気にしているみたいだけど、どうにも難しい単語をぶつぶつ呟いている。

でも最後は諦めた感じで言ったから、いま考えるのをやめたみたいね。

 

「それじゃ景一、詩乃、GGOへのコンバートの打ち合わせはまた今度で」

「……了解した。次はALOで行うか」

「ええ、2人とも今日は来てくれてありがとう。またね、明日奈」

「じゃあね、シノのん」

 

言葉を交わしてから明日奈は和人と一緒に帰って行った。

私と景一は地下鉄で帰るためにまた別の道でそちらへと向かった。

その時には、店を出た時に感じた粘つくような視線は消え去っていた。

やっぱり気のせいだったんだと思って私は隣を歩くケイと手を繋いで、帰宅の道についた。

 

この時、私は慣れ過ぎていたせいか気付いていなかった。ケイの瞳が鋭くなっていたこと、

放つ雰囲気そのものが刃のように尖っていたこと、そして……明日奈たちとの別れ際、

和人と一緒にたった一点に向けて視線を向け、殺気(・・・)を放っていたことに…。

 

ケイに自宅のアパートまで送られて、彼は帰らないでもう少しここに居ると言い、私は嬉しかったので上がってもらった。

少ししてから私は彼がやけに気が立っていることを感じて、なんで私の部屋に残ると言ったのかも気になるようになってきた。

そして、私たちが部屋について2時間ほどが経った頃、私とケイの端末に緊急の一報が入った。

この時、私は初めて悟った……なんで、ケイが私の部屋に残ることを選んだのかを…。

 

詩乃Side Out

 

 

 

 

明日奈Side

 

雨が止んで、和人くんと2人手を繋いでわたしの家に向かっている。

ここ最近、というよりも少し前から和人くんはどんな時もわたしを家まで送ってくれてる。

最初はちょっと過保護じゃないかなって思ったりしたけど、それも彼からの愛情なんだし、

そんな過保護っぽいところもわたしは愛おしいと感じちゃう。

そして、それは和人くんも同じなんだってことは分かってる。

仮想世界では触れ合ってなくても意思疎通ができるけど、

最近では現実世界で触れ合っていればお互いの気持ちがある程度分かるようになって、以心伝心って言えばいいのかな?

さすがに深い部分は感じ取れないけど、それでも彼が大切に思ってくれてるのが良く分かる。

ふとっ、わたしたちはお互いに歩みを止めて、見つめ合う。

ちょうど7時になったみたいで、歩いてる道の街灯が点灯していく。

 

「明日奈…俺、決めたよ」

「決めたって、進路だよね…?」

「あぁ。俺は進学する、『東都工業大学電気電子工学科』に…」

「そこって確か、凜子さんたちの…」

「そう。茅場、須郷、凜子さん、タケルの母校だ」

 

以前は工科大学の中でも有数のカリフォルニア工科大学、

『ブレイン・インプラント・チップ(通称:BIC)』の研究を進めているサンタクララ大学、

このどちらかにしようか悩んでいたけど、少し前から選択肢が増えたって言ってたっけ?

それが、東都工業大学の電気電子工学科…。

 

「BICも確かに魅力的な次世代フルダイブ技術だけど、やっぱり俺はSTLに一番の魅力を感じたんだ。

 茅場が全てを始めて、癪だけど須郷がそれを繋いで、凜子さんは医療に、タケルは国に力を注いだ。

 なら俺は、その先の未来に繋いでいきたい、そして見たいんだ、次の世界が生まれる瞬間を…」

「和人くん…」

 

彼らしい、最初にそう思ってから次に思ったのは少しの安堵。

 

「わたしは、それが和人くんの決めた道ならどこまでも応援するよ。

 実はね、少しホッとしてるんだ、アメリカじゃなくて日本に残れて。

 キミがアメリカに行く道を選んだとしても、無理を言ってでもついて行くつもりだったんだけど、

 やっぱり日本の方が安心できるからね」

 

これがわたしの本心、和人くんと一緒ならアメリカでも大丈夫という気持ちはあったけど、不安があったのも本当だから。

そういえば、和人くんはなんだかんだで茅場さんのことを尊敬しているし、

凜子さんともメールでVR技術のやり取りをしているし、その後輩の比嘉タケルっていう人とも話は合うみたいだもんね…。

 

「でもわたしも早いところ進学先を決めないと……女子大で経済学部のあるところかな」

「なんでまた女子大?」

「だって、あまり和人くんには心配かけたくないからね…あ、

 でも母さんの居る大学だったら女子大じゃないけど安心できるかも」

「男のことか…。確かに女子大か京子さんの居る大学なら安心はできるかもな」

 

苦笑してからそれもありと言う和人くん。止めていた歩みを再開して、わたしたちは自宅への道を進む。

 

 

自宅近くの公園まで着いた時、わたしと和人くんはそこでまた歩みを止めた。

少し前まではここまでがわたしを送る場所だった。

家はもうすぐそこだし、和人くんが帰るのが遅くなってしまうのでここで別れようと提案して、

だけど自分で提案しておきながら名残惜しくなっちゃう。

うぅ、やっぱり提案するべきじゃなかったかも…それどころかうちに誘っても良かったかも…。

で、でも駄目、最近は和人くんに送ってもらってばかりだから、今日はここで…。

 

「えっと、それじゃあ、ね…///」

「…あぁ」

 

彼も名残惜しそうにして、わたしたちは自然と体を近づけて、唇を重ねようとした……その時、

こちらに向かってくる足音が聞こえて、わたしは咄嗟に和人くんから体を離した。

振り返ってみると少し後ろにあるT字路から小走りに男の人が飛び出してきて、

わたしたちを視界に収めてから、甲高い声を上げて歩み寄ってきた。

 

「すいませぇん。駅はどっちの方ですか~?」

「それでしたら、この道を真っ直ぐに進んでから……えっ」

 

駅への道を教えようとした時、途中まで話したところで後ろに和人くんに引っ張られて、彼の後ろへと動かされた。

和人くんはそのまま私の前に出て、警戒心を露わにした。

 

「お前、ダイシー・カフェのそばに居た奴だな……何者だ、答えろ」

 

えっ、エギルさんのお店の時から…? そこでわたしは自分の気が緩んでいたことに気が付いた。

多分、和人くんが傍に居て、さっきのキス未遂が頭の隅にあったからだと思う。

 

改めて男を見てみると黒っぽい服装に小柄な体型、まだらにメッシュの入った長髪、

頬のこけた輪郭線には無精髭が濃く生えていて、黒のTシャツに黒い革パンツを穿いて、

腰には金属チェーンがたくさん繋がっている。

街灯が照らしてぼさぼさの前髪から細い目が見えて、それは笑みを浮かべているように見えるけど、

そこに宿る光は怪しくてわたしは身震いした。

 

「不意打ちは無理か」

「っ、お前……そうか…」

 

不意打ち? それに和人くん、キミはこの人を知っているの?

 

「まだ捕まっていないとは聞いていたが、まさか警察に政府、朝霧の追手からも逃げ遂せているとは驚いたよ。

 久しぶりだな、とでも言えばいいのか……なぁ…」

 

次に彼から告げられた言葉に、わたしは息を呑んだ。

 

「金本敦、いや………ジョニー・ブラック!」

 

明日奈Side Out

 

 

 

 

和人Side

 

「オフコーーース、ってな!」

 

ここ1ヶ月の間、ダイシー・カフェ付近で感じていた殺気と悪意の視線の正体はコイツだったのか…。

 

「か、かずとくん…」

 

恐怖を滲ませた声で俺を呼ぶ明日奈。

簡単な護身術ならば彼女に教えてはいるが、いざ実戦にと言われても中々こなせるものではない。

第一、いまの彼女はSAOのステータスがある剣士でもなければ、ALOの水妖精でもない…普通の女の子なのだ。

彼女を危険に晒すわけにはいかない……武器は、あるとすれば傘か…。

軽く腰を落とし、右手を動かしやすいように下ろし、左手に傘を構える。

 

「捕まっていないが、音沙汰も無しっていうからそこら辺で野垂れ死んだと思っていたんだがな」

「残念で~した、見ての通りピンピンしてるぜ。ザザのやつが捕まっちまったからさ、オレが根性みせなきゃだめじゃん?

 んでもって、あの喫茶店を見つけるのに5ヶ月、その近くに張り込み続けて1ヶ月……絶好のチャンスが巡ってきたわけだ!」

 

軽快な口調で話してやがるが、相変わらずなんて執念してやがる。

 

「にしてもキリトよぉ、剣が無いと単なるガキにしか見えないな。ま、傘がある分だけ少しはマシか?」

「へぇ、そこまで言えるか……そういうお前愛用の毒武器は、サクシニルコリン入りの『デス・ガン』ってところか?」

「お、お、分かっちゃう? いいねいいね、知ってるんだったら話しが早ぇや! いや~、話しが早いのはお兄さん好きだよ!」

 

そう言って金本は懐からグリップのついた高圧ガスを利用した注射器を取り出し、左右に揺り動かし始める。

これは、明日奈を下がらせないといけないな……俺は自身のポケットから携帯端末を取り出し、それを明日奈に手渡す。

 

「明日奈、逃げながらでいいから菊岡に緊急用の番号で連絡を入れるんだ。

 『金本敦が現れた。至急応援を頼む』と伝えてくれ。次に雫さんにも緊急番号で応援を頼んでくれ……行け!」

「は、はいっ!」

 

一瞬、逡巡した様子を見せたが、すぐさま頷いてから走り出した。これでいい…。

 

「おい【閃光】! ちゃんと他のやつに言うんだぜぇ……【黒の聖魔剣士】を殺ったのはこのジョニー・ブラックだってなぁ!」

 

明日奈の去り際に金本がそう叫ぶが、おそらく彼女にはもう聞こえていないだろう。

いまの明日奈は俺の指示に従うので精一杯のはずだからな。

 

「じゃあま、早速……死ねやぁっ!!」

 

明日奈、なるべく早く頼むぞ……そうでないと…、

 

「来いよ、お前に引導を渡してやる」

 

俺がコイツを、殺してしまう…!

 

 

警戒心を最大まで高め、動作を全て受け流しと回避に集中させる。

特にデス・ガンによる攻撃を全力かつ無駄な動きをなくして回避する。

これを喰らえば死が確定すると思うと、肝が冷えるどころの話じゃないな…。

 

「オラオラッ、逃げてばっかじゃねぇか、剣士さんよぉ!」

「はっ、黙って、ろ…!」

 

時折、空いている拳で殴り掛かってきたり蹴りを行ってくるので、

それを受け流したり腕や脚で防ぐなどしつつ、デス・ガンを回避する。

キリのいいところで反撃しないと、応援が来た時に逃げられてしまうかもしれない……コイツは、逃がすわけにはいかない!

回避と受け流しを行いつつ、やつを公園の中へと誘導する。

これなら明日奈や通りがかった人を巻き込むことはないだろう。

 

「はっ、なんだなんだ? 粋がってた割りには防戦一方じゃないか!」

「黙れって、言ってるだろ!」

 

確実に回避しつつ、わざと大袈裟に避ける様もみせる。

同時に息が上がっているようにもみせてやる。まだ、まだ時じゃない…。

 

「言い様だな、【黒の聖魔剣士】様よぉ!」

 

コイツもそこそこ体力があるのか、それとも執念がここまで駆り立たせているのか、どちらにせよ息は少し乱している程度か…。

しかし慢心が多すぎる…そろそろ、潮時だな。

 

「そらよっ!」

「くっ!?」

 

金本の殴り掛かりにバランスを崩した俺。それを見て好機と思ったのか、奴はデス・ガンを一気に突きつけてきた……掛かった…!

 

「神霆流歩法術《影霞(かげかすみ)》」

「へっ…?」

 

バランスを崩したように見せかけた罠にハマった金本。

俺は《影霞》による歩法で攻撃を回避し、その場で倒立を行い、脚を交差させてデス・ガンを持つやつの腕を絡め取り……そして、

 

―――ボキッ!

 

「ぐっ、ぎゃっ!?」

 

金本の右腕をへし折る。

これによりデス・ガンはやつの手から離れて地面に落ち、俺はそれを手の届かない場所へ蹴り飛ばす。

 

 

 

 

折れた腕の痛みに悶絶しながらも、地に膝を突かずに俺を睨みつける金本。

 

「テ、テメェ…!」

「どうした、俺は単なるガキなんだろ? 制圧してみせろよ……それとも、武器がなければお前こそ只の木偶の坊か?」

「っん、のガキがぁっ!」

 

痛みに悶えていたが俺の挑発に血がのぼったのか、

それとも先程からの戦闘でアドレナリンが多量に分泌されているからなのか、

再び激昂し、空いている左手で懐に忍ばせていたと思われるナイフを取り出した。

やはり、まだ武器自体は隠し持っていたか。

 

「ぎゃはははっ! これならさっきよりも戦いやすいぜぇ!」

「ちっ、狂ってやがる…!」

 

折れた腕で叩き付けるかのように殴り掛かり、同時に左手のナイフで的確に攻撃を仕掛けてくる。

極度の興奮状態にあるのがわかる…アドレナリンの影響なのか、痛みがないように折れた腕で殴ってくる。

しかし、それでいてナイフ捌きは的確、こちらはSAO時代の経験が体に染みついているのかもしれない。

俺はナイフを確実に捉えるために、ある方法を実行する。

 

―――ズブッ!

 

「うぐっ…!」

「ひはっ! 刺さった、刺さったなぁっ!」

「あ、あぁ……刺さった、けどなぁっ!」

 

金本の持つナイフは確かに俺の左の掌に刺さった……が、

俺はすかさず右手で拳を作り、やつの左腕目掛けて全力で上から叩き落とした。

 

―――バギッ!

 

「へぎゃっ!?」

 

今度はやつの左腕が折れる…これによりナイフも手から落ち、最早いまの金本に武器は取ることができない。

 

「両方とも、折れたじゃねぇかぁっ!?」

 

それでも地に膝を突かず、俺に飛び掛かってくるとか……執念深すぎるだろ!

 

「いい加減に、しやがれっ!」

「ごっ、がぁっ!?」

 

右脚でやつの左脚を側面から蹴り、バランスを崩した金本の腹に向けて俺の血で塗れた左拳を叩き付ける。

やつの左脚が折れる音が聞こえ、さらに金本自身も2mは吹き飛んだ。

どうやらまだ動けるようだが、既に両腕と左脚が折れているため、立つことはできないようだ。

仰向けに倒れたままだしな……俺は自分の傘を拾ってからそのまま奴に近づく。

 

「ごの…ばげもの、やろうが…」

「褒め言葉として受け取っておいてやる…」

 

金本は嫌な笑みを浮かべながら皮肉を言ってのけ、俺もそれに軽口で答える。

俺からすれば、コイツの方がある意味で執念の化物だったと思うがな。

 

「くぞ、が……おれも、ここでゲームオーバーがよ…。

 まぁ、SAOであんだけ殺れだし、デス・ガンもおもしろがったから、な…。ぎゃは…!」

「なん、だと…」

 

コイツはなんて言った、ゲームオーバー?それに、面白かっただと…?

 

「面白かったって、言ったんだよ…。デス・ガンは、計画通りにいったのが良くてさぁ。

 SAOの時は、泣きながら命乞いしてるやつなんて、笑えて腹が痛くなったぜ…くふっ」

「きさまっ…」

 

殺人をして、笑えるだと…?

 

「そういやぁ、こんなのもいたなぁ~…。

 ある男がさ、自分の女を庇ってそいつに逃げろとか言うんだけどさ…ぷふっ、その女な?

 オレたちが雇った女なわけよ。それ知った時の男の顔といやぁ、めっちゃ笑えるっての!

 あ、ちなみにその女もその男の前で殺して、あとで男の方も殺したぜ」

 

人の心を弄んだ挙句、どちらも殺した?

笑いながら当時のことを次々と喋っていく金本。

 

ついに、俺の抑制(リミッター)が外れた。

 

「もういい…」

「あ? まだまだあるぜ?」

「もういいって言ってるだろ? ダマレ」

 

―――ゴギィッ!

 

「あっ、ぎゃあっ!?」

 

俺は残っていた奴の右脚を自分の足で踏みつけて折る。

コイツのせいで、こんなやつのせいで、お前のせいで、どれだけの人間が絶望し、命を落とした?

自分の欲に塗れて、快楽に任せて人を殺したやつが、

死を受け入れることしかできなかった人たちが生きていないで、なんでコイツが生きている?

俺は右手の傘を奴の腹へと向ける。

 

「お、おま、え…なに、じで…。まで、よ…ごれじゃ、オレど…おなじに…」

「ソンナコトシルカ…」

 

こんな野郎が生きていても、どうせ周囲に被害が出るだけだ……それなら…、

 

 

 

 

 

「シネ!」

 

 

 

 

 

処分してしまおう。

 

 

 

 

 

「ダメだよっ、和人くん!」

 

 

 

 

 

和人Side Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

これより原作第9巻から内容が大幅に外れていきます・・・まずは和人と景一が怪しい気配を察知していました。

 

さらに和人は事前に菊岡や朝霧の情報で金本の顔を知っており、それでいて気配で奴だと判断しました。

 

そしてウチの和人は金本如きに遅れを取るような人物ではないので圧倒します。

 

しかし和人も人の子、純粋な怒りの前では自身の自我を保ちきれません。

 

そんな彼を止めたのはやはり彼女で・・・次回は和人の指示を受けて別れたあとの明日奈の視点からです。

 

最近シリアスな展開が多い気もしますが、まぁできれば楽しんでいただきたいです。

 

それではまた・・・。

 

 

 

 

 


 
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