No.670053

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第023話 後編

後編投稿です。

もうちょいしたら、追加したキャラの設定集でも貼ろうと思います。

2014-03-12 02:12:55 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1434   閲覧ユーザー数:1354

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第023話「孫呉の未来への為の道しるべ(後編)」

その言葉を聞き、孫権は自分に自問自答した。

先代である自分の母孫堅。

彼女を大きく支えた家臣をすぐ浮かぶ限り少なくとも二人知っている。

まずはその母を武で支えたと言われている黄蓋。

彼女は未だに現役であり、今回の董卓討伐の折にも孫家の将の一人として参戦している。

先代の存命時は大陸でも5本の指に入る弓の名手としても知られた。

もう一人の人物とは……程普、字を徳謀。

彼はその類まれなる知識をもって孫堅を支え、当時は『武の黄蓋と知の程普』と知られ、権力者からは『程公の知がある限り、文台に手出しは叶わず』と恐れられた。

だが孫権が知る限り、程普はこの世にいるはずは無かった。

自分が物心付き、当時まだ母の存命時。

その母と当時の呉の隣国であった荊州の劉表が一悶着あった時に、その時に母と共に戦死したことになっている。

だが次の瞬間、部屋の(ふすま)を開けて入ってきた人物は、黒い龍の刺繍の男性用の赤いチャイナ服を着た20代後半から30代半ばぐらいの男であり、孫権の知っている人物である程普その人であった。

 

程普「策ちゃん、姫。久しいな」

 

彼はあの懐かしき時と変わらぬ声で、姉の雪蓮のことを「策ちゃん」と呼び、自分のことを「姫」と呼んだ。

容姿は昔と変わらずにその長い黒髪を後ろに束ね、顔も年を取っているのかいないのか、全く変わらずのままである。

ただ昔と違っていたのは、彼は杖を使っていることと、彼が歩く度に左足を引きずっているという点である。

 

孫権「泊地(はくち)さん!?」

 

泊地というのは、彼の真名である。

孫権の後ろにいる雪蓮も、自分の持った杯を持ち、口を開けたまま固まってしまっている。

 

泊地「その通り……俺だ」

 

孫権「何故!?……貴方は劉表の謀略により、母と共に戦死したはず――」

 

泊地「だが生きている。この通りピンピンと。ただ、ある体の一部が動かなくなったのは痛々しいがな」

 

それは見ての通り、先程より引きずっている左足のことである。

 

泊地「だが、今はそんな些細なことは置いておこう」

 

やがて泊地は左足を引きずり庭に出ると――

 

泊地「姫よ。私が何故成人している君に対し、まだ『姫』と呼び続けるのか。それは想像出来るか?」

 

孫権「そ、そんなものは昔の愛称ではないのでh「だから君は判っていないのだ」―――」

 

咄嗟の自分を見知った者の返しに彼女は黙ってしまう。

やがて話は一戦試合を行う形になり、重昌邸の庭にて程普対孫権の戦いが執り行われる。

この頃には凌統による甘寧の拘束は解かれており、二人もギャラリーの一部に加わる。

試合の立ち会い人の中心は重昌が行い、彼が「始め」と一声をかけると孫権は一気に間合いを詰めて、剣で泊地に斬りかかった。

ちなみに補足を付けると、孫権の使っている剣は雪が収める州の鍛冶屋で作られた名も無きちょっとした名剣。

そして泊地の使っている剣は、刃は赤く長い剣で名は『炎蛇剣』と言う。

炎と言われるのはその刃の色にあり、蛇と言われるのは、その受けたときの一撃が、蛇が絡んできた様に重くのしかかるからである。

そのことを知っている故、孫権は泊地に打たせる隙を与えぬように剣撃をさらに増やし、速度を速める。

だが二人は鍔迫り合いで絡まり、力比べではフリと思い孫権は後ろに仰け反る。

そこに追い打ちの一撃がかかり彼女は驚愕したが、なんとかその一撃を防いだ。

しかし彼女は今だに驚きを隠せずにいた。

本来であれば泊地の加えるリーチの範囲以上に彼女は仰け反った筈である。

決して油断をしたわけでは無いにも関わらず、何故自分に斬撃が襲って来たのか彼女は疑問に思っていたが、その答えは直ぐに得られた。

泊地は自ら操る剣のリーチを広げたのだ。

その言葉の通り、剣は”伸びた”のだ。

ただし、ただまっすぐに伸びたわけではなく、その剣は鞭の如くしなやかな曲線を描いて、やがて元の場所に収まった。

 

泊地「姫、俺の剣の由来は知っているな?………俺は臣下として、あの時、堅殿を守れなかった。だからと言ってそこで嘆いていても何も始まらない。次こそは誰も死なせないように、修行を重ね、重昌の親父殿にこの剣を改良して貰った。名を『炎蛇極剣(えんだきょくけん)』。これがこの剣の名だ」

 

孫権はその説明を聞くと思考する。

その昔、稽古にて教えを請うていた頃に比べ、目の前の彼はその実力も数段に上がっているということを。

まともに戦りあっても、今の自分に勝ち目がないのは比を見るより明らか、ならば自分にあって、彼にないもので勝負をすればいい。

それは”速さ”。

生憎と言ってはなんだが、今の彼には左足のことも含めて”速さが足りない”。

なればこそ、動きでかく乱し、そこより一点の隙を見出すまで。

彼女はそう判断し、右へ左へと動き回る。

その手の動きは、彼女傍付き将である甘寧により教わっている。

泊地が呉の将であった頃、つまりは孫堅が存命であり、今の元呉勢力が、袁術に吸収される前、甘寧はまだ呉に所属していなかった。

よって自分のこの動きは彼も知らないと思い、流石の泊地もこの動きの対処には少し時間を要すると思い、その隙から彼に必殺の一撃を与える算段であった。

だがその思いも虚しく、彼女の算段は無残にも打ち砕かれるのであった。

彼女は動きながらも泊地の立ち回りを見ていれば、彼は足の影響からか、左へ立ち回る際にかなりの時間を要することが判り、それならばと彼の背中の左脇に渾身のひとふりを放つが、水平に放たれた剣の一撃は、彼に届くことは無かった。

その一撃が放たれた瞬間に、孫権の剣は折られていたのだ。

「何故!?」、「なにで!?」っと折られた理由を自問自答すると、直ぐにその理由が判った。

剣は泊地が自らの左足を支えるために持っていた杖によって叩き折られていたのだ。

だが彼は完全には振り返っていない。

杖を振り上げ下ろし切るにもそれなりの間が出来る。

そこで彼は杖を垂直に振り上げて、水平な剣の上にそのまま勢い良く下ろしたのだ。

確かに剣を折るならば、刃の部分ではなく、まだ柔い側面を攻撃する技もあり、ただ普通に振り上げて叩き切るより、面積も狭く重心が集中する突きの方が折ることに関しては遥かに効率がいいが、問題はそこではない。

剣筋も見れない後方からの攻撃を、己の感と経験だけで剣筋を特定し、その様な離れ技をやってのけたことに彼女は唖然とし、その様な隙だらけの彼女に泊地は右立ち回りで一瞬の背中を見せる余裕を悠々と見せて孫権に向き直って、右手の炎蛇極剣を彼女の首に当て模擬戦は終了した。

泊地が一瞬の背中を見せた際、武器を持っている孫権であればその背中を取ることが出来たかもしれない、だがその時の孫権にそんなことを考える余裕も武器も無かった。

重昌の「そこまで」の合図の後、泊地はサッと構えを解き、孫権も気が抜けその場でへ垂れ込んでしまった。

 

泊地「……やれやれ、少しはマシになったかと思いきや、まだまだ甘いな。姫、お前は策ちゃんの戦いに憧れ、その動きに固執し過ぎているせいで自分の戦い方が全く出来ていない。かと言って動きでは私を上回ると思い、速さを生かした動きをしてきた。それもお前自身の動き方ではない。恐らくは………そこにいる甘寧の動きだろう。だがそれも完璧ではなく中途半端。つまりだ、何もかもが中途半端なんだよ。戦いにおいてもその間の戦術においても。だが俺が納得出来ないのは――」

 

杖のカツカツと足の引きずる音と一緒に彼は孫権に近づき、彼女を見下ろして訪ねた。

 

泊地「……何故、俺の左足を狙わなかった?」

 

戦いの際、孫権は一度も彼の左足を狙わなかった。

その問いに彼女は「武人として、相手の弱みにつけ込むは恥。それに大恩あるものに対してであればなおさr」と言いかけたが、孫権は頬に泊地の杖による一撃をくらい言葉を途中で遮られた。

 

泊地「武人の誇り?そんなもの戦場で何の意味がある?死んでしまえばそれまで。勝てば語れるが死ねばそれまで。死人に口無し。それに半人前のお前が武人の誇り等おこがましい。そんなものは本物の実力がついたものこそが、初めて口に出せる言葉だ」

 

再び杖と足の引きずる音を鳴らしながら彼は歩き出すと、重昌庭の池の前に立ち、その中で泳ぐ魚を眺めながら孫権に続けて言った。

 

泊地「それに君の母・孫堅も姉・孫策も自分より強い相手と当たった時は、どんな卑怯な手も使うぞ」

 

それを聞くと流石の孫権は反論した。

自分が目標とする、今は亡き母、後ろで見ている姉がその様なことをするはずがないと信じて疑わなかった。

だが反論虚しく、その論破は自らの姉に打ち砕かれる。

 

雪(雪蓮)「あら、ホントよ。流石に数人でよってたかってことは無いけど、明らかに勝てない相手と当たって、それに加えて逃げられない状況になったら、砂かけ唾吐き、相手傷口への集中攻撃も普通にするわよ」

 

孫権「う、嘘です!!お姉様ことしながら戦っているなんて」

 

雪(雪蓮)「そりゃ、もうここ数年はそんな戦いはしていないけど、母さんに連れられ駆け出しだった頃は、そんな戦い方ばかりしてたわよ。『まずは戦場で生き残ることだけ考えろ』そう母さんは言ってたわね」

 

ちなみに彼女の言う母さんとは、恋歌のことではなく、この世界での母・孫堅であろう。

勿論、恋歌は恋歌でも雪に対して色々と教えてきたが、ここでそれらを一つ一つ説明するのは些か骨が折れるので割愛させてもらう。

 

泊地「俺や堅殿、祭(黄蓋)でさえも、生き残るためにそんな戦いをしていた。わかったか?何故俺が未だに蓮華、お前をその歳になってまで『姫』と呼ぶわけが」

 

孫権は下唇を噛み、悔しそうに顔を伏せる。

今彼女は何を思うかは彼女にしか判らない。

だが、この後に重昌は、当初の話の通り孫権を弟子に取ることを決め、名実共に孫権、その彼女につられ甘寧は影村の配下に。

旧呉の配下であった程普と凌統は、前君主の娘である孫策の元に呉の配下として帰還した。

 


 
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