No.665539

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第二十八話


 お待たせしました!

 今回は拠点第三回目です。

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2014-02-23 17:38:00 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:8147   閲覧ユーザー数:5606

 

「ようやく着きましたねー」

 

「此処まで復興してるなんて…この前来た時とは違う街に来たみたいね」

 

 そう言いながら洛陽に入ってきたのは眼鏡をかけた理知的な風貌の少女と

 

 眠そうな眼をして頭に人形のような物を乗せている不思議な風貌の少女の

 

 二人組であった。

 

 実は彼女達は前にも洛陽に来た事があった(ちなみに一刀が命達と出会っ

 

 た頃である)。その頃の洛陽は張譲や何進の専横と民を顧みない政のせい

 

 で荒廃の極みにあったので、彼女達は早々に洛陽を後にしたのであったが、

 

 久々に訪れた洛陽は違う街になったかの如くに活気に満ち溢れて行き交う

 

 人々の顔も笑顔ばかりであったので、二人には驚きの連続なのであった。

 

「ふうむ…これ程までとは。新帝のお力は噂以上という事か」

 

「そうですねー。でも、それだけでは無いような気もしますけどねー」

 

「?…風は何か他にも要因があると?」

 

「…ぐぅ」

 

「寝るな!」

 

「おおっ、あまりの街の中の居心地の良さについ寝てしまいましたよー」

 

「はぁ…で?他に何かあるの?」

 

「本当の事を言うと、風にも確証があるわけでも無いんですけどねー」

 

「それじゃ勘とでも?軍師志望の私達がそんな事でどうするの。勘なんて物

 

 に頼るようじゃおしまいよ?」

 

 

 

「風も別に勘に頼ってるわけじゃないんですけどねー」

 

「…どういう意味?」

 

「何かしら惹きつける物が此処にある気がするのですよー」

 

 それが勘なんじゃないかと眼鏡の少女は心の中で思うが、珍しくそういう

 

 事にこだわる相方に、少し戸惑いと驚きの色が混じった感情も抱いたのも

 

 また事実であった。

 

「それでこれからどうするの?洛陽の復興ぶりを見るならもうちょっと色々

 

 回る必要があるけど」

 

「そうですねー。とりあえずは…お食事にしましょうー。丁度お腹もすいて

 

 きた所ですしねー。稟ちゃんは何か食べたい物はありますかー?」

 

「私はこれといっては無いし、風に任せるわ」

 

「分かりましたー」

 

 ・・・・・・・

 

「おおっ、此処はさらに活気がありますねー」

 

「確かに案内してくれた人が言ってただけの事はあるわね」

 

 二人は途中で巡回の兵士に食事処を尋ねていて、教えてくれた食堂街に来

 

 ていた。そこは店が軒を連ねているだけでなく、多くの屋台も並んでおり

 

 昼前の時間にも関わらず既に多くの人で溢れていたのであった。

 

「これだけたくさんの店があると目移りするわね…何処の店にするの?」

 

「さっきの兵士さんが一番のお勧めだと言っていたお店を聞いていますので

 

 そちらにしようかと思ってますよー」

 

「でもそれだけの店では既に席は埋まっているような…」

 

「その時はその時ですよー」

 

 

 

 そして二人は目当ての店に入ると、運良く二人分空いていた席に座る。

 

「席が空いていて良かったですねー…ところで、稟ちゃんは何の本を買った

 

 のです?」

 

「え、いや…大した本じゃないから。風が気にする程の物では無いわ」

 

 稟と呼ばれた少女はそう言って紙包みを隠すかのように遠ざける。

 

 風と呼ばれた少女は、そんな彼女の様子を少々呆れ気味に見つめていた。

 

 と、そこに…。

 

「だ・か・ら!何であんたの考える事は何時も何時もそうエロいのよ!!」

 

「何言うてんねん!これでエロかったらこの前の衣装なんかもっとえげつな

 

 いんちゃうんか!?そもそもこの前やってあれで大盛況やって喜んでたん

 

 は何処の誰や!!」

 

 突然、奥の部屋から怒鳴り声が聞こえてくる。風と呼ばれた少女はその声

 

 に驚いてそちらの方を振り向くが、何故か周りの客は特に何も気にする事

 

 も無い様子で普通に食事をしていた。

 

 それに戸惑った風の様子を見た一人の客が、

 

「嬢ちゃんは初めてのようだね。気にする事は無い、あれは今や此処の風物

 

 詩みたいなもんさ。俺達も最初の内は驚いたけど、すっかり慣れっこだよ」

 

 そう声をかけると、ポンポンと彼女の肩を叩く。

 

「あれは一体何なのですかー?」

 

「あれはな、今売り出し中の役満何とかいう歌い手とその世話役の兄ちゃん

 

 との口喧嘩さ。もっとも、本人達は『来る未来の為の議論』だとか言って

 

 るけどな」

 

 

 

 そしてその本人達は…。

 

「この前のはたまたまよ、た・ま・た・ま!!一回位ちょっとうまくいった

 

 位で調子に乗るんじゃないわよ、このヘボマネージャー!」

 

「誰がヘボやねん!!ワイが許可を貰ってきたから、この間のライブやって

 

 あんな大きな舞台で出来たんやないか!」

 

「へぇ、あんたのねぇ…何時から一刀の口利きがあんたの手柄のなったって

 

 言うのよ?はっ、呆れて物も言えないわ」

 

「何やてぇ~、誰がかずピーの腰巾着や言うねん!」

 

「え~、ちぃはそこまで言ってないけど?っていうか、自分でそう言ってる

 

 って事は、あんた自身がそう思ってるって事なんでしょ?」

 

「ぐぬぬぬぬ…言わせておけば、何時も何時も口の減らん女やな…」

 

 果てる事の無い口喧嘩(あくまでも本人達は否定してるが)を続けていた。

 

 とは言っても、実際喋っているのは地和と及川だけであり、天和と人和は

 

 他人事のような顔で黙々と食事をしていたりする。最初の内は二人も議論

 

 に参加していたのだが、地和と及川の果てしない口喧嘩についていく事が

 

 出来ず、今となっては本人達の好きにさせていたのであった。

 

(ちなみに店側も最初の頃は注意していたが、役満姉妹が有名になったのと

 

 常連客が一種の娯楽として楽しむようになってさらに売り上げが伸びたの

 

 とで、まったく注意をしなくなっていたのであった。ついでに言うと、地

 

 和が普通に横文字を使っているのは、一番の仲良しになった蒲公英から教

 

 わる内に普通に使いこなすようになったからだったりする)

 

 

 

 とは言っても、普段はそろそろ終わる頃だったのだが…。

 

「そんなに言われるのが嫌なら、一度位は一刀が考えた以外のアイディアを

 

 持って来たら?」

 

 地和のその軽口で及川の顔が一気に怒りに彩られる。

 

「何やて!言っちゃなんやけど、ライブのアイディアのほとんどはワイが考

 

 えたもんや!何も知らんといい加減な事言うな!!」

 

 その剣幕にさすがの地和もたじろぐが、

 

「な、何よ…そんなに怒る事も無いでしょう!そもそもあんたがもうちょっ

 

 とマシな事を考えてくればいいだけでしょう!」

 

 そう言い返すと近くにあった布を及川の顔に投げつける。

 

 それに激昂した及川が今度は持っていた茶碗に入っていた水をかけてしま

 

 うと、二人はそこら中にある物を投げ合い始めてしまう。さすがに天和達

 

 も止めに入ろうとするが、近付く事すら出来ない。

 

 ・・・・・・・

 

 普段と違う雰囲気に店の常連客も騒めき始める。

 

「おや?一体どうしたのですかねー?ねえ、稟ちゃん…稟ちゃん?」

 

 風と呼ばれた少女が友人の方を向くと、彼女は何時の間にやら買って来た

 

 本を読むのに夢中になっていた。しかもその内容が…。

 

「はぁはぁ、『近衛兵と宦官』の第二弾とは…前回で結ばれた二人を引き裂

 

 いて美貌の宦官をモノにしようとする政商の影…その政商に自分の身を差

 

 し出してまでも二人を守ろうとする近衛兵に密かに想いを寄せる御曹司…

 

 ああっ、これから待ち受ける運命や如何に!?」

 

 輝里が書いた八百一の続編だったりしていた。稟と呼ばれた少女はすっか

 

 りその内容に夢中になってしまい、騒ぎも耳に入っていなかった。

 

 

 

「ああっ、遂に政商に捕えられた宦官…政商は手に入れた媚薬を使って宦官

 

 をよがり狂わせようと…そして政商のゴツゴツした手が遂に宦官の服を引

 

 き裂きその白い肌をあらわに…これは、これは…」

 

 だんだんと興奮してくる彼女の様子に、風と呼ばれた少女が危険を感じた

 

 のと同時に、奥の部屋の扉が何故か開き、そこから皿が一枚飛んでくる。

 

 それが二人が座っている机の方に飛んで来ると同時に…。

 

「ぷはぁーーーーーっ!?」

 

 稟と呼ばれた少女は盛大に鼻血を吹いて倒れる。ちなみに皿は卓にぶつか

 

 って割れただけだったのだが…。

 

「大変だ、飛んできた皿が当たっちまったぞ!」

 

「鼻血が止まらねえぞ、大丈夫か!?」

 

 そう近くの客達が騒ぎ始める。風と呼ばれた少女は違うと言おうとするも

 

 喧噪に紛れて聞こえない。

 

 しかもその喧噪は及川達にも聞こえたようで…。

 

「地和姉さん、さっき投げたお皿がお客さんに当たったって!」

 

「ええっ!?…及川がよけるからでしょ!」

 

「そないな事言うてる場合やない!早く医者を連れて行くんや!!」

 

 及川が呼んだ兵士が倒れた彼女を連れて行ってしまい、風と呼ばれた少女

 

 はついていくのが精一杯な状況なのであった。

 

 

 

 場所は変わり、城の医務室にて。

 

 倒れた少女の容体が安定した様子を見た一同は、ホッと胸を撫で下ろして

 

 いた。そこに、

 

「及川と地和が人を怪我させたって聞いて来たけど…」

 

 話を聞きつけた一刀がやってきた。

 

 その一刀の顔を見た瞬間、風と呼ばれた少女は衝撃が走ったかのような顔

 

 をしたまま固まってしまっていた。

 

 ・・・・・・・

 

「部下が失礼しました。ご友人の治療代はこちらで持たせていただきますの

 

 で…」

 

 及川達から一部始終を聞いた俺は倒れていた娘の友人の娘に深々と頭を下

 

 げる。

 

「いえ…あの、その…」

 

 その娘は俺のそんな様子を見ながら、何やら言い難そうに口を開く。

 

「そう言っていただくのは有難いですし、此処までしてもらってから言うの

 

 も何なのですけど…この娘の鼻血はそちらの投げた皿が原因じゃないので

 

 すよー。皆が勘違いして此処まで運んでもらって、風もあまりの喧噪に言

 

 い出す事が出来なくてごめんなさい」

 

 それを聞いた俺達は完全に脱力してしまっていた。

 

 

 

「何だ、最初からそう言ってくれれば良かったのに~。なら一安心、一安心」

 

「そうや、そうや。てっきりワイ達に責任ある事かと」

 

「そもそも、ちぃ姉さんが皿なんか投げるからでしょ…二人とも喧嘩は口先

 

 だけにしてよね」

 

 地和と及川がそう言う横で人和が二人をたしなめる。

 

「という事なので…治療費はお支払します」

 

「いや、例えそうであってもこっちが迷惑をかけたのは事実みたいだし彼女

 

 の治療費はこっちで払うよ…そういえば、まだ名乗ってなかったね。俺の

 

 名前は北郷一刀。一応こいつらの責任者的な立場にいる」

 

「風の名前は…程立といいますー。それと彼女の名前は戯志才ですー」

 

 戯志才ってのは何だか偽名っぽい気がするが、程立って何処かで聞いた気

 

 がする…そうか。

 

「つまり程立さんはまだ日輪を探している最中って事だね」

 

 俺がそう言った瞬間、程立さんの眼が驚いたように見開かれたまま動かな

 

 くなる。

 

「かずピー、この娘どないしたん?何か変な事でも言ったんか?」

 

「いや、別に…」

 

「あ、あの…お兄さん?」

 

「「お兄さん?」」

 

「あっ、北郷さんの方です。お兄さんって呼んでもいいですよね?その代わ

 

 り風の事は風と呼んでください」

 

「へっ?…ま、まあ、いいけど…?っていうかそれ真名だよね?いいの?」

 

「お兄さんならいいですよー」

 

「そ、そう?俺の事は一刀でいいよ…一応」

 

「なら改めて…お兄さん、お兄さんは何故風が自分の日輪を探している事を

 

 知っているのですかー?稟ちゃ…この娘以外にそれを言った事は無いのに」

 

 

 

 風にそう言われてようやく俺も気付く。そういや、初対面の俺がそれを知

 

 ってたらおかしいよな…。

 

「何せ一刀は『天の御遣い』だからね!知らない事は無いのよ!」

 

「何でそこで地和が偉そうに言うんや?」

 

「うるさい、及川は黙ってて!一刀が凄いって、ちぃは言いたいの!」

 

 そこから二人はまた口喧嘩を始める。

 

「あ、あのー…」

 

「ああ、あれは何時もの事だから気にしないでくれ」

 

「はい。ところで今の『天の御遣い』って何ですかー?」

 

「いや、別に俺とあの及川ってのが違う国から来たってだけだよ。そんなに

 

 大した事じゃないから。何だか一部の人がそんな事言ってるだけ」

 

「へぇ…そうなんですかー。でも、風の秘密を知っていたんですからあなが

 

 ち間違っていないかもですねー」

 

 風はそう言いながら何だか俺の事をキラキラした眼で見る。そして…。

 

「決めましたー、風は今日からお兄さんの為に働く事にします。それと今日

 

 から名前は『程昱』と名乗る事にしましたのでよろしくですよー」

 

 突然そんな事を言い出す。

 

「ええっ!?そんな事簡単に決めていいのか?それに名をそう名乗るって事

 

 は俺が日輪って事か?」

 

「いえいえ、簡単にではないですよー。お兄さんに会った瞬間に風の心は決

 

 まってたのですー。お兄さんこそ我が日輪であると。天からの御遣いなら

 

 まさしくそうですしねー。これからよろしくお願いします」

 

 

 

「はぁ…私が眠っている間にそんな事が決まっちゃうなんてね…まったく風

 

 は何時も何時も突拍子も無い事をいきなり言い出すんだから…」

 

 それから半刻程して、ようやく眼が覚めた戯志才さんが風の話を聞いた直

 

 後の感想がそれであった。そりゃそうですよねー。

 

「で、稟ちゃんはどうするのですかー?」

 

「申し訳ないけど、私は北郷殿に仕えるつもりは無いわ。確かに北郷殿も一

 

 角の人物であろう事は私も認めるけど…」

 

 一応、俺の事を認めてはくれるのか…。でも、それじゃ…。

 

「戯志才さんはまた何処か旅に出るって事?」

 

「そうですね。風とは長い付き合いでしたが…お互い自分の信じる道が出来

 

 たらそれを邪魔しないと旅に出る時に誓い合いましたから。無論、それが

 

 同じであればもっと言う事が無かったのも事実なのですけどね」

 

 彼女はそう言って少し寂しそうに微笑んでいた。ならばこれ以上は何を言

 

 っても仕方のない事だな。ところで…。

 

「何故戯志才さんはあんな所で鼻血なんか?皿がぶつかったんじゃないなら

 

 …もしかして何処かご病気とか?」

 

「い、いえ…特にそういうわけでは」

 

「稟ちゃんは少しでも興奮するとすぐに鼻血を出すのですよー。その度に風

 

 が首の後ろの所をトントンしてあげていたのですけど…稟ちゃん、もう風

 

 はいないのですから、鼻血には気を付けないないとダメですよー」

 

 風がそう言うと戯志才さんは何ともバツの悪そうな顔をしていた。

 

 そして次の日、戯志才さんは一人洛陽を後にしたのであった。

 

 

 

「というわけで、今日から仲間になる程昱だ」

 

「よろしくなのですー。風の事は風と呼んでくださいねー」

 

 数日後、顔を揃えた北郷組の面々に風を引き合わせる。実を言えば最初は

 

 命に話をして宮中のしかるべき職につけようとしたのだが、風本人が俺の

 

 部下以外には興味が無いと発言し、命の裁定で風は北郷組の一員となる事

 

 になったのである。何故か命が俺を見る眼が異様に怖かった気がするのだ

 

 が…俺は何かいけない事をしたのだろうか?しかも、北郷組の面々も命と

 

 同じような眼で俺を睨んでいたりする。

 

「なぁ、俺何か皆の気に障る事したのか?」

 

「「「………………」」」

 

 俺の質問に三人は無言で俺を睨み続けるだけであったが、

 

「はぁ…一刀さんのそれにいちいち反応してたら身がもたないわね」

 

「そうですね…何時かまたあるだろうとは思ってましたし」

 

「どうせまた増えるんだろうしね…」

 

 半ば諦めたような口調でそう言いながらため息をついていた。

 

「なるほど…敵は多そうですねー」

 

「言っておくけど、私達だけじゃないからね」

 

「はい、陛下も同じ眼をしてましたし…盧植様や董卓様にも睨まれましたか

 

 らねー。でも、風は風の思う通りに進むだけですから」

 

 風はそう言ってほくそ笑んでいたが…結局何の話なのか俺に理解する事は

 

 出来なかった。(自覚無し)

 

 こうして北郷組に新たな仲間が加わったのだが…軍師が二人か。今度は武

 

 官が欲しい所だな…俺はそんな事を考えていたのであった。 

 

 

                                  続く。

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は風が仲間になった話でした。

 

 最初は稟と二人…というのも考えたのですが、

 

 彼女にはやはりあちらに行ってもらおうと…

 

 ちなみに再登場はもう少し後になります。

 

 そして風は一刀を巡る戦いにも加入していき

 

 ますので…さらに激しくなる事請け合いです。

 

 そして次回は、拠点第四弾です。次回の登場

 

 人物は…まだ考え中です。

 

 

 それでは次回、第二十九話にてお会いいたしましょう。

 

 

 追伸 二回連続でメインヒロイン勢が出ていませんが、

 

    次は出番ありますので。

 

 

 

 

 


 
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