「「…何だこれ」」
目の前に広がっている光景を見て、二百式とmiriは唖然としていた。
何故なら…
「うぅ……何で私ばかり、こんな目に…!!」
「文句が言いたいのは私も同じですよ、全く…」
「何でだ、何で弟はならないで俺がなるんだ…!!」
「あっれぇ、おっかしいなぁ? こんな事になるとは俺も予想外だったぞ…?」
「ほほう? ちっちゃくなるっていうのも、中々に新鮮だな」
「ですよねぇ。私も、幼少期の頃を思い出しますよ」
「おい、何でだ…? 何で俺まで、巻き添え喰らわなきゃなんねぇんだよ…!!」
「俺は特に違和感は無いな。今までも転生するたび、大きくなるか小さくなるかの繰り返しだったからなぁ…」
「僕はいつもいつもこんな扱いばっかりか…!!」
「ハッハッハ、まぁ安心しろウル。今回は俺も巻き添えだからさ」
「おぉう……どうしてこうなったし…?」
何故か
「「…何故こうなったし?」」
「ちなみに、原因はそこの大馬鹿野郎らしいぞ」
いつも通りの姿である二百式とmiriは首を傾げ、同じくいつも通りの姿であるokakaはこの状況の原因であるという、幼児化している蒼崎を指差す。
「…一体何をやったんだ? 蒼崎」
「いやぁ、実はさぁ?」
蒼崎は「テヘッ☆」と舌を出す。
説明によるとこうだ。蒼崎が自分の作った薬品を他のメンバーに見せびらかしていた中、食堂内に一匹の“G(正式名称は省略)”が出現。そのGを退治すべく支配人や厨房スタッフが殺虫剤や丸めた新聞紙を手に駆け回っていたところに、ディアーリーズとハルトが偶然遭遇。そのGを見てディアーリーズは「気持ち悪い」の一言でパニックに陥り、ハルトはそのGを退治してやろうとバースバスターで食堂中のあちこちを乱射し始める。バースバスターの乱射に巻き込まれないようメンバー達が必死に逃げ回っている中、無事にGを撃破する事には成功。しかしその乱射の所為で、蒼崎の持っていた薬品入りのビンが割れてしまい、薬品が食堂中に飛散。
その結果、食堂にいたメンバー全員が幼児化してしまったという訳である。
「「要するにお前の所為か」」
「…乱射してすいませんでした☆」
二百式とmiriがジト目で見ると、ハルトはお茶目な感じではあるが素直に土下座して謝罪する。
「…んで、元には戻れるのか?」
「イーリスさん達に調べて貰ったところ、幼児化の効果が出るのは約一日だけらしい。だから明日には全員、元に戻るだろうってさ」
「じゃあ問題ないじゃねぇか。一体何がそんなに不満なんだ? そこで落ち込んでる連中共は」
「いや、だってさぁ…」
落ち込んでいるUnknown、ロキ、支配人、ディアーリーズにmiriが問いかけ、Unknownが答える。
「ちっちゃくなったこんな面倒な状況だぞ? もしこの状況を姉貴が聞いちゃったら、私は一体どんな目に遭わされるか―――」
「アン娘ちゃんが幼児化したと聞いて!!」
「「「「「聞きつけんの早いなオイッ!!?」」」」」
「え、ちょ、待って姉貴……あれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」
噂をすれば何とやら、メンバー達の幼児化を聞きつけた朱音が食堂まで素早く駆けつけて来た。彼女はそのままUnknownを捕獲し、あっという間に自分の部屋まで連行して行ってしまった。
「…流石は朱音さん、揺るぎが無いぜ」
「全くな……む」
「ん」
miriが苦笑いしている中、二百式と幼児化したデルタの視線が合う。
「…貴様までもが小さくなってるとはな。全く、無様なものだな」
「おやおや、最初の一言目でそれですか……他に言う事が無いんですかね?」
「ふん……小さくなった貴様など、もはや恐れるにも足らんな。そんなちっぽけな格好で、一体どうやって戦うつもりなんだかなぁ?」
「ほう? という事は、大人である私の事は恐れているという訳ですね? 私が子供じゃなければ倒せないと、自分でバラしてるようなものですが?」
「「……」」
「「殺す…!!」」
「やめんかアホ共ぉっ!!!」
やっぱり一触即発の空気となった、二百式と幼児化中のデルタ。そんな二人の後頭部に、幼児化したロキがハリセンで素早く突っ込みを炸裂させる。
「というかアンタ等、この前もここで大喧嘩して団長に制裁されたばっかりだろ? またこの前と同じ目に遭いたいってのか?」
「しかも二回目ですからね。このまま暴れると、この前以上に悲惨な制裁が待ってるでしょうよ」
「「ぬ…」」
団長の制裁。その恐ろしさを過去に味わった経験からか、二百式とデルタはそれぞれ構えていた武器を渋々ながらも下ろす。
「全く、大人気ないぞ二百式」
「デルタさんもだぞ? あそこの三人を見習ってみなよ」
「「三人?」」
miriとokakaが指差した方向に、二百式とデルタが振り向いてみると…
「ねぇ早苗~、膝枕して良い~?」
「はいはい、私は構いませんよ」
幼児化したガルムは、早苗に膝枕して貰ったまま気持ち良さそうにしており、早苗もそんなガルムの頭を愛しそうに撫でている。
「イーリスさん。このまま少し、寝てもよろしいですかね?」
「あ……はい、何時でも♪」
幼児化した竜神丸は、イーリスの膝に座ったまま眠りに付き、イーリスは彼の後頭部が自身の胸に当たっているにも関わらず嬉しそうに抱きしめている。
「俺がこんなちっちゃくなるのも久しぶりだ……なぁ、白蓮」
「あぁ。今までもこうして、お前を可愛がっていた時期が懐かしいよ」
幼児化したげんぶは、白蓮の膝に座ったまま彼女と一緒に、自分達の思い出を振り返る為にアルバムを見ているところだった。
「…アイツ等、今の状態でもメチャクチャ馴染んでんじゃねぇか」
「というか約一名、すげぇ羨ましい事してる奴がいんぞオイ」
しかしそんな状況でもやはり、目をギラリと光らせる人物はいた。
「おんのれ貴様等ぁっ!! 俺の前で羨ましい事をしてくれおってぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「ほっほう、これは面白い状況に出くわしたぞハッハッハ~♪」
(((あぁ、また面倒臭いのが二人出てきた…)))
女性陣のおかげで幼児化を満喫しているガルム達に対して、蒼崎は嫉妬の炎を目に宿しながら彼等に飛び掛かり、幼児化の噂を聞きつけたkaitoは幼稚園児の服を持って突撃してきた。
もちろん、そんな彼等の存在を撃退する為に…
-ドゴゴォンッ!!-
「「あじゃぱーっ!?」」
イワン率いるタイラント部隊は、常に警備が万全なのである。
「おぉう、よく飛ぶなぁ~」
「…流石は竜神丸のタイラント部隊、ボディーガードが強過ぎる」
イワンに吹っ飛ばされた蒼崎とkaitoの二人が上半身から壁に突っ込んでいるのを見て、miri達は苦笑せざるを得ない。
「…ん? 何人か足りんぞ?」
「へ?」
その時、okakaは幼児化したメンバーが何人か足りない事に気付く。
「あぁ、ディアーリーズさんはディアラヴァーズに、ハルトさんはルイさんに、支配人さんはユイさんやフィアレスさんに、兄貴はリリィさん達に連行されちゃいましたよ」
「「「だから早いなオイ!?」」」
(…女の行動力とは、私達が思っている以上に凄まじいものですねぇ)
幼児化したままでもナイフのジャグリングをしているデルタは、ルカの答えを聞いて女性に対する恐ろしさを少なからず感じ取っているのだった。
ちなみに、連行されたメンバーはと言うと…
「ちょ、待って姉貴!? 前も言ってるけど、ゴスロリだけは駄目なんだってば!?」
「良いじゃないのアン娘ちゃん、せっかくだから着てみなさいよ~♪」
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」
Unknownの場合、朱音によってゴスロリなどの衣装に着替えさせられていた。
そして、それはディアーリーズも同じであり…
「離せ!! はーなーせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」
「無駄よウル。いい加減、観念して諦めなさい」
「せっかくだからさ。ウルにこんなのを着せてみようよ」
「あ、良いわね。じゃあこの服はどうよ?」
ディアラヴァーズの部屋にて。ディアーリーズは椅子に座らされたまま、縄で縛り付けられて身動きが取れない状態だった。そんな中で、アキやこなた、アスナは女性が着るであろう衣装を次々と用意しつつある。
「あらあら、面白い状況になってるじゃない?」
「!? そ・の・こ・え・は…!?」
ディアーリーズはギギギと音を立てながら、声のした方に振り返る。
「ヤッホーウル~♪ 久しぶりじゃない~♪」
「あ……お久しぶりです、ウルさん…♪」
「り、凛!? それに…みゆきさんまで!?」
長い銀髪をツインテールにした、身長低めの少女―――凛。
橙色のロングヘアに、胸も大きくスタイルの良い少女―――みゆき。
二人のディアラヴァーズが加わり、部屋にいる人数が更に増えてきた。
「ちょ、二人共、何で来たのさ!?」
「いやだって、ウルが子供になったってこなたから聞いたからさ? それはもう、急いで駆けつけるしかないでしょと思ってね」
「ま、そういう訳よ。悪いけどウル、諦めて頂戴な」
「わ~い♪ ウル兄ちゃん、咲良とおそろ~い♪」
「この、そうは…」
≪リキッド・ナウ≫
「行くかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!!!」
「「「「「!?」」」」」
ドライバーの音声が鳴ると同時に、ディアーリーズの身体が液状化。縄で縛り付けられていた状態から素早く脱出し、一気に部屋のドアまで移動する。
「な、いつの間にリキッドの指輪を!?」
「ハハハハハハッ!! コネクトを使って、ハルトのポケットから抜き取っておいたのさ!!」
ディアーリーズ自身も、こうなる事は大体予測出来ていたのだろう。ディアラヴァーズに連行される直前に、コネクトリングを使ってハルトが所持しているリキッドリングを抜き取っていたようだ。
「ヤバい、逃げられる!?」
「この、観念しなさーいっ!!」
「悪いけど逃げさせて貰うよ!! フハハハハハハハッ!!」
しかし、そんなディアーリーズの逃走劇も…
-ガシッ-
「ッ!?」
美空とみゆきによって、すぐに終止符を打たれる事となる。
「「行ったら、嫌です…!」」
「!? うぐ…ッ!!」
二人が上目遣いでディアーリーズを見つめ、ディアーリーズは思わず動きが止まる。その一瞬が、ディアーリーズの逃げ道を失うキッカケとなる事も知らずに。
「「「「確保ーッ!!!」」」」
「はっ!? しま…ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!??」
アキ、こなた、アスナ、凛の四人が一斉に飛び掛かった事で、動きを封じられていたディアーリーズはあっという間に確保されてしまった。
「さぁて、今度は厳重に縛っておこうかね」
「それじゃ私達は、どの服を着せるか決めようじゃない♪」
「「「オッケー♪」」」
「ウル兄ちゃん、かわいいの着せてあげるからね~♪」
「「…ウルさん、可愛いです」」
「トホホ…」
結局逃走は失敗し、ディアラヴァーズによって咲良と同じ服装を着せられたりと色々疲れる羽目になったディアーリーズであった。
その一方で、ロキの部屋では…
「んも~キリヤちゃん、本当に可愛い~可愛過ぎるよ~♪」
「ねぇちょっと、私にも抱かせてよ~!」
「あ、あの……私にも、キリヤさん抱かせて下さい…!」
「も、もう勘弁して、うぷぅ…」
幼児化中のロキは、自身の幼馴染の一人である緑髪の少女―――エヴァによって抱きしめられており、咲とリリィも何とかロキに抱きつこうと必死だった。エヴァに抱きつかれている事で彼女の胸がロキの顔面に押し付けられており、現在のロキは息をするのも大変な状況である。
(い、息が…!!)
今日のロキは、色々と苦労人である。
支配人の場合…
「お~い、二人共~? 何時になったら解放してくれるんだ~?」
「ちょっと待って! もう何枚か写真撮らせて!」
「…まだ、もう少し抱かせて」
幼児化中の支配人は、椅子に座っているユイに抱きしめられたまま、二人で一緒にフィアレスに写真を撮られているところだった。
「あぁそうだ。ユイちゃん、後で私とも交替してね?」
「分かった。写真、一杯撮って…」
「…もう好きにしてくれ」
やりたい放題の二人により、支配人はされるがままの状態で諦めるのであった。
そして最後に、ハルトはと言うと…
「…あの、ルイちゃん」
「はい?」
「…何故に俺に抱きついちゃってんの?」
「ハルトさんが可愛いからです!」
「あぁ、そうなの」
幼児化中のハルトは、何故かルイの膝の上に座らされ、ギュッと抱きしめられている状態だった。ルイ自身がハルトの事を抱きしめたまま離そうとしないが故に、彼女の胸がハルトの背中にちょうど良い感じに当たっており、ハルトは今の体勢に若干困り気味だった。
「すいません! もう少しだけでも、この状態でいさせて下さい……あの、駄目ですか…?」
「あぁいや、別に構いはしないけど…」
「良かった! ありがとうございます!」
(ぬぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?)
また更にギュッと抱きしめた為、ルイの胸がよりハルトの背中に押し付けられる。
「♪」
(…ま、たまには良いかね。こういうのも)
ルイが嬉しそうにしているのを見て、ハルトは今の状況を終わるまで楽しむ事にしたのだった。
翌日、幼児化したメンバーは無事に元に戻る事が出来た。それにより、女性陣はかなり残念そうにしていたという。
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幼児化騒動