No.662786

島津一刀と猫耳軍師 2週目 第16話

黒天さん

今回は桂花と紫青の拠点と戦闘を少々、という中身になってます。
さて、一刀達は財政難をどう打開するのか?

2014-02-12 23:40:52 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:7724   閲覧ユーザー数:5608

「というわけなんだけど、どうしようか?」

 

桂花と紫青にああ言われた事もあり、久しぶりに4人会議を開く事にした。

 

メンバーは桂花と紫青と天梁と俺。詠は忙しそうだし、華歆も忙しそうなので呼ばなかった。

 

今日の議題は先日霞達とも話した忍者隊の情報と資金難の話しについて。

 

というか兵糧の一部を売って不足に充ててるからお金も兵糧も無い上に、

 

馬騰がいつ攻めてくるか分からないというこの絶望的状況をどうするかという……。

 

「正直こっちでは手を尽くしてます。後は結果待ちとしか言えないです……」

 

「同じくよ、せめて外交ででも時間稼ぎができればいいんだけど……」

 

「紫青からの意見も同じくです」

 

やっぱり名軍師2人をしてもこの問題は難しいか。

 

あと月の性格もネックになってきている。

 

税の臨時徴収とかその辺について中々ゴーサインが出ないのだ。

 

どうも月的に、領民に重い負担を強いるのはNGらしい。

 

俺としてもなるべくならそういうのは避けたいし……。

 

それに確かに、これ以上税を増やすとなぁ……。既に不満が出るか出ないかのギリギリのラインだし。

 

「うーん、馬騰も流石に一年はまってくれないだろうしなぁ」

 

来年になれば軍屯の整備も始めたし兵糧はどうにかなると思うんだけど……。

 

「以前に成果を上げた治安維持のための区画整理等々も先立つものがないと始められないしね」

 

そういって桂花が大きなため息。

 

虎牢関での勝利は確かに大きかったけど、金銭や領土という方面で得るものがほぼなかったというのが痛い所。

 

戦で国が疲れきってる、という形になっている。

 

先立つものがないと動きようがないわけで……。

 

午前から初めて、夕方になるまで話していたが、結局有効な解決策は出なかった。

 

「……疲れたし、何か食べにでようか。城じゃ晩御飯が寂しいしね……」

 

「そうですね、紫青もそれが良いと思います。では半刻後に城門で集まるということでいいですか?」

 

それぞれ頷くと、それぞれ俺の部屋から出て行く。紫青と桂花が出て行ったのを見送ると天梁が口を開く。

「一刀様、内密にお話したいことがあります」

 

「ん、何?」

 

「実は、実家に支援要請をしてまして、資金が届きました。

 

実家から私宛の荷物として届きましたし、開封された形跡はなかったので、おそらく月さんや詠さんも中身を知らないハズです。

 

それでですね、これだけ届きました」

 

と、天梁が提示した金額を見て目が飛び出るかと思った。

 

そういえば史実でも糜竺の実家って凄い富豪だっけ……。

 

兵糧の問題が解決するほどの額ではないにしても、これだけあれば行動の選択肢が増える。

 

「それで、この資金の使い道は一刀様に一任しようかと思うんです。」

 

「え、俺?」

 

「商売の元手にして更に増やしてもいいですし、もちろん月さんに預ける形で予算にしても構いません」

 

「本当にいいの?」

 

「ええ、そのつもりで送ってもらったお金ですし」

 

「何だか申し訳ない気がするけど」

 

「私にできる事といえばこれぐらいですから。紫青さんや桂花さんほど知恵は出ないですし、

 

軍を率いるには向いていませんしね」

 

「ありがとう。天梁には何かお礼しないとなぁ……」

 

「いえ。そういうつもりでは無いですから結構です。でもどうしてもと仰るのでしたら……」

 

と、天梁が俺にしてきた要求は、時々天泣にするように、頭を撫でて欲しい。と。

 

それぐらいなら、と、軽く天梁の頭に手を乗せて撫でると、嬉しそうな表情を見せてくれる。

 

本当はもう少しきっちりとお礼したいんだけど、いつも目立たない所で頑張ってくれてるのは知ってるし……。

 

「さて、今日はちょっと抜け駆けしてしまって桂花さんと紫青さんに申し訳ないので

 

この後の食事は欠席します。3人で楽しんできてくださいな」

 

そういって天梁は俺の部屋から出ていった。まぁ、天梁に何かお礼っていうのはおいおい考えよう……。

───────────────────────

 

というわけで、やってきたのは場末の酒場。

 

給料も大分削られてるからあんまり高い所はいけないしなぁ。

 

華琳とこで仕事してた時の貯蓄があるからまだいいとはいえ。

 

「こういう所ってあんまりこないですねー」

 

「あー……、確かにこういう所って柄悪いのが居たりするから一人じゃきづらいかもね。

 

おやじさん、お酒とおすすめの料理を適当によろしく」

 

適当なテーブルに座って注文して。俺の正面に2人が座る。

 

そういえば紫青が酔った所って見たこと無い気がする。

 

この前は時間も遅くて明日に差し支えちゃまずいからってことで、結局酒は飲まずに俺が買ってた夜食を食べただけだったし。

 

「それにしてもいいのかしら、こんな所で食事なんかしてて……」

 

「一刀様にお金を出してもらうと何だか申し訳ない感じがします……」

 

現状、給料少ないしなぁ。華琳の所の十分の一と言ったら言い過ぎだけど相当目減りしてるのは事実だし。

 

無い袖は振れないものだからしょうがないんだけど。国の財布をやりくりしてる本人たちもそれをよく知ってるわけで……。

 

「まぁ、俺はまだ財布に余裕あるし、遠慮しなくていいよ。

 

それにちょっと明るい見通しが立ってきたしね」

 

「明るい見通し、ですか?」

 

「うん。まぁここまで来て仕事の話しっていうのも何だから、明日にでも話すよ」

 

そういってここで話しを切り、他愛無い話しへと話題を移す。

 

城に帰らなきゃいけないからお酒は控えめに。

 

と、俺は酒を控えてたんだけど……。

「桂花さんお酌しますよ」

 

「じゃあ、私からもつがないとだめよね。あら、空になっちゃったわ」

 

2人のペースの早い事早い事。何かこう、先に相手を潰して俺と2人で話そう。何て思ってるような気がして怖い。

 

ひょっとして天梁はここまで見越して来るのを辞退したんだろうか……。

 

「また邑がやられたってよ」

 

「最近多いな、流石に洛陽は大丈夫だろうけど、出稼ぎに来てる身としては実家が心配だな」

 

隣の席から聞こえてくる話しがふと気になった。盗み聞きするのは良くないとおもいつつ、それを聞いていると。

 

報告に上がってきてるから俺も知ってるんだけど、どうにも最近盗賊が良く出るらしい。

 

さっさと処理したい所ではあるんだけど、兵糧と資金の不足がそれを難しい物としている。

 

それを知っての事かどうなのか、よく邑が襲われるらしい。

 

「あ……」

 

どうにかしなければならないことが目の前にもう一つあった。

 

俺が隣の席の話しに聞き耳をたててる間に、桂花と紫青がそろってかなり出来上がった様子になっていた。

 

俺がよそ見したるあいだにも潰し合いは継続してたらしく、テーブルの上には追加で数本の徳利が。

 

多分中身は全部空だろう。

「おやじさん、お勘定。ほら、2人共帰るよ」

 

と、代金を支払って2人をつれて外に。

 

「一刀様ぁ……」

 

「一刀ぉ……」

 

と、完全に酔っ払って左腕をに抱きつく紫青と右手に抱きつく桂花。

 

星あたりに見られたらめんどくさい事になりそうだなぁ。

 

というか足元がおぼつかないのか結構体重かけてくるし。不意に引っ張られて転びそうになる。

 

というか柔らかい物が腕にめっちゃあたってるんですけど。

 

そして案の定というかなんというか、2人揃って俺の部屋までくっついてきた。

 

桂花は多分そうなるだろうなーってのは予想してた。紫青は多分それに張り合ってって感じなんだろう。

 

「何よー、こんな所までついてきて」

 

「桂花さんこそ一刀様の迷惑を考えてください」

 

「はいはい、2人とも喧嘩しないで取り敢えず座るように。別に迷惑してたりはしてないから

 

と言うか何で2人揃って俺の部屋までついてきちゃうかな……」

 

俺が勧めるままに椅子に座ってくれたのはまぁありがたい。

 

俺の問いかけに対してはしばらく沈黙して、紫青が口を開いた。

 

「寂しかったんです。だから少しでも一緒に居たくて」

 

「桂花も?」

 

紫青に先に言われたのが悔しいのか若干渋い顔をしながら頷く。

 

「そっか。やっぱり、天泣や天梁、霞や華雄を優先してるように見える?」

 

「見えるわよ。特に天泣なんか、毎日毎日朝に勝負してるじゃない」

 

「たしかにね」

 

そういって自分もゆっくりと椅子に座って。

 

「話しやすいからって天泣や霞達とよく話してたのは事実だし、その分桂花達と話す時間が減っちゃったし」

 

それに余裕がないから仕事に逃げて、仕事仕事で前々から話す時間が少なかったってのは思ってた。

 

「ごめん、俺も余裕無くてさ」

前の世界だったら抱きしめてでもあげたい所。

 

こっちだとまだ関係も薄いし、そう考えると頭を撫でてあげるくらいしかしてあげられなかった。というかする勇気がなかった。

 

頭に触れると2人は嬉しそうにしてくれて。でもそれだけじゃ物足りないらしく……。

 

「一刀、撫でるだけじゃなくて……、抱きしめてくれたりはしないの?」

 

「あ、桂花さんずるいです、それだったら私も……」

 

俺としてはそれはイヤじゃないんだけど、どっちから、とかでまたモメそうだし少し考えこんでしまう。

 

対する2人はなんだか不安そうな顔。

 

「それもいいけど、今日はこのまま一緒に寝ちゃわない?」

 

「一刀と……」

 

「一緒に……」

 

2人揃って顔を赤くして、可愛いなぁ……。まぁ酔っぱらい2人相手に半ばヤケクソで提案出したけど、2人には嬉しかったらしい。

 

冷静になって考えると、前天梁から聞いた通り、主君から臣下へ信頼の証として寝床を共にする、なんていうのもあったらしいし

 

そのこともあるのかもしれない。実際の所、俺が月に仕えてるから月の下にいるだけで、この2人にとっては俺が主君なんだろうし。

 

というわけで言い出しっぺの俺が寝台に向かうと気恥ずかしそうに2人がついてくる。

 

2人に左右を挟まれて寝る形になったわけだけど、いかんせん寝台が狭いのでピッタリ密着する形に。

 

胸とか太ももとかが当たってるのがなんとも悩ましい。

 

ずいぶん酔っぱらってた2人はすぐに寝息を立て始めたんだけど

 

当然俺はこの状況で寝れるわけもなく、開き直って2人の寝顔を観察しつつ眠気が来るのを待つ事にした。

翌日、やっぱり飲んでた後半ぐらいから覚えてなかった桂花は起きてから慌てふためき、

 

紫青はちゃんと覚えてたらしく、少し気恥ずかしそうな顔をするだけだった。

 

「抱いても、良かったんですよ? きっと桂花さんもそう思ってたと思います」

 

慌てた桂花が部屋から出て行ってから、紫青が少し視線を外しながらそういう。

 

「酔った勢いでっていうのは好きじゃないから、そういうこと言うなら素面の時に……、って今は素面か。

 

桂花は飲むと記憶が飛んじゃうのはよく知ってるしね」

 

「なら、今度また夜にお話しに来ます。では……」

 

そういって、紫青は落ち着いた様子で部屋から出て行った。

───────────────────────

 

「と、言うわけなんだけど……」

 

現在皆が集まってるのは俺の部屋。メンバーは、星、華雄、霞、桂花、紫青。

 

「盗賊を有効利用、か。一刀殿もなかなか悪どい手を考えますな」

 

「正直、月はいい顔しないと思うんだけどね」

 

「せやな、あかんとまでは言わへんけど微妙な顔はすると思う」

 

「私掠……、確かに馬騰相手にけしかければ色々と有利にはなるかもしれないけど……」

 

「だからこれは俺の独断で、責任は俺が持つよ。皆に協力して欲しい。俺1人の力じゃ、盗賊相手に交渉まですらもっていけないから」

 

「ようはうちらで盗賊ねじ伏せて言うこときかせるわけやろ? やったろやん」

 

霞の言葉に皆が頷いてくれて、行動を起こすなら早いうちに、ということで月に話しを通してすぐに兵を揃え、出陣の運びとなった。

 

兵の数は1万。盗賊相手に大げさかと思うかもしれないが、領地の北端を事実上占領されてる状態……。

 

さすがに洛陽まで出張ってはこないけど早く解決しなければならない案件ではあった。

───────────────────────

 

出陣して北へ向かうことしばらく、周囲の偵察をさせていた忍者隊から、10里先の邑が襲われているらしいとの報告が入る。

 

10里、およそ5キロか。間に合うか?

 

「10里、間に合うかどうかあやしい所ですが、どうします、一刀殿?」

 

「ん、気持ちとしてはすっ飛んでいって邑を助けたいけど、10里全力で行軍した直後にまともに戦えるかといったら答えは、否。

 

俺達が全滅したらもともこも無いから、やや行軍速度を上げる程度に留める。

 

と、したいところだけどどうかな? 紫青、桂花」

 

「賛成です」

 

「同じく、賛成」

 

俺の答えに、上出来というように2人が頷く。

 

行軍速度を少し上げるように指示し、しばらく移動すれば邑から立ち上る煙が見えてくる。

 

ここで忍者隊から次の報が入り、盗賊は邑を後にし、東へ移動しているらしい。数はおよそ2万。

 

進路を東に向け、その最後尾を捕捉すべく兵を急がせる。

 

「見えました、盗賊団です!」

 

相手もこちらに気づいたのか驚いた事に逃げようとせずこちらに向けて移動してくるように見える。

 

それも陣形を整えて。見る限り鋒矢の陣か。ただ、大将が一番先頭にいるような気がするけど。

 

「黄巾党の残党かと思ったけど、何この動き……」

 

「頭のキレる奴がおるんやろか、えらい整然と動きよるように見えるな」

 

彼我の距離が1里程に迫った頃、怒号が響き渡る。

 

「野郎ども! あたしに続きな! あたしらの方が数が多いんだ、相手が軍隊だろうが何を怯む事がある!

 

踏み潰しちまいな!」

敵は一気に速度を上げ、こちらへと突撃を仕掛けてくる。一番先頭をかけて来る女が先ほどの声の主か。

 

露出の多い服に、長い黒髪、よくシャムシールとか呼ばれる曲刀を振りかざし、突撃してくる。

 

「なんやえらい血の気の多いやっちゃな」

 

「華雄さん、方形陣を敷いて突撃を耐えます、一刀様と星さんは右翼から、霞さんは左翼から横撃の準備に入ってください。

 

私が華雄さんと、桂花さんは一刀様の傍に!」

 

相手が盗賊だから逃走することも見越して、騎兵多めの編成できたのだ、その機動力を生かさない手は無い。

 

華雄の重歩兵の隊が紫青の声に即座に反応し、方形陣を展開し、それとほぼ同時に接敵、突撃を受け止める。

 

星と霞も即座に動き、軍の後ろに引き、左右へと散っていく。

 

「はん、そういうことかい。いいようにされるのは癪だねぇ!」

 

大将と思われる女は華雄の隊に一当するとすぐ後方へ取って返し、声を張り上げる。

 

「白兎!」

 

「あいあいー」

 

その声と共に空に向けて矢が放たれ、甲高い音が周囲に響き渡る。

 

鏑矢!? あれってこんな時代からあったのか!? いやまぁ、今はそれは考えるまい。

 

その音を合図に盗賊団の突撃が止まり陣形が方円陣に変わる。

 

「マズいわね」

 

「え?」

 

「横撃かけようとしてるのが看破されてる、出来るわ……。でも方円陣なら抜けれるはず、でも相応の被害は覚悟して。

 

魚鱗の陣を敷いて一点突破をかけましょう。大将を抑えないとどうしようもないわ」

 

そして運良く、というかなんというか、俺、星、霞が横撃を仕掛けるとそれに合わせるように盗賊が押し寄せてくる。

 

盗賊が横撃に対応する2隊と華雄の隊を抑える1隊、合計3つに割れ、混戦状態に陥った。

───────────────────────

 

「へぇ、アンタが将軍様かい? 馬なんかに乗ってないで、降りてきて一騎打ちと洒落込もうじゃないか」

 

黒髪の女が曲刀を霞に向ける。

 

「そや、ウチは張文遠。しかしほんま、血の気の多いやっちゃ、ほんでも、そういうのは嫌いやないで? さあ、かかってきい!」

 

「あたしは張燕、字は無い! んじゃ、先にいかせてもらうよ! ハアアァァ──ッ!!」

 

霞が馬から降りるのを見ればそれに駆けより、大上段から満身の一撃を放ち、それを霞が受け止める。

 

「お、あたしの一撃を受け止めるとは、やってくれるねぇ? さぁ、次いくよ!」

 

「なんの、今度はウチの番や!」

 

横薙ぎに振りぬいた偃月刀を張燕は受け止め、その勢いを使って後ろに飛ぶ。

 

「ふーん、あたしより腕は上か」

 

大きく踏み込み、袈裟懸けに剣を振り下ろせばそれを霞が受け止め、つばぜり合いの形となる。

 

「で、その将軍様がこの盗賊に何のようだい?

 

旗を見たところじゃあ、将軍格が4人、軍師が2人、ただ盗賊の相手をしに来るにしては張り切りすぎじゃあないかい?」

 

「はん、あんたらに物言うてまともに聞くんかいな?」

 

青筋を立てて剣を押し返しながら、言葉を返し、一気に力を入れて剣を弾き返す。

 

「ああ、聞いてやるさ、あたしらだって馬鹿じゃぁないからね。多分後数合で負けるのだろうってのは見えたし」

 

そういって張燕は剣を鞘に収めた。

 

「それに、あっちを見れば劣勢なのは分かる。あたしと白兎の指揮から離れた連中、縦深陣に誘い込まれてボコボコにされてるからね。

 

やれやれ、流石に軍師様相手じゃ頭が足りないねぇ。おい、引き金を鳴らせ!」

 

───────────────────────

「大将見っけ」

 

やたら軽い口調と共に俺に向けて言葉が発せられる、その先を見れば、赤い髪に赤い目、そして桂花そっくりの服を着た女の子。

 

ただその頭にかぶってるフードは白くてうさみみつきだけど……。

 

「さぁ勝負! 黒山賊の眭固白兎とは私の事!」

 

そう言って手にした短弓を俺に向けてくる。

 

黒山賊!? 黒山賊っていったら黄巾党の時代に暴れまわった盗賊のハズ、場所的にはかなり北で活動してたはずだけど……。

 

しかしまさかここで一騎打ち挑まれるとは思ってなかった。星の方に行ってくれれば良かったのに、ハッキリ言って運が悪いというしかない。

 

でもこれ、断ったら絶対士気おちるよな……。

 

「俺は董卓配下の島津北郷、その一騎打ち受けてやる」

 

俺がそういうが早いか短弓が放たれ、体をひねって躱すとそれが顔のすぐ横を通りすぎていく。

 

これ以上的にされるわけにも行かない、俺は姿勢を低くして横に軸をずらしながら眭固へと接近していく。

 

「うわわわ、寄ってくるな! ……なーんてね!」

 

惜しげも無く短弓を投げ捨てると袖から取り出した小刀を俺へ投げつけながら一気に距離を詰めてくる。

 

俺と同じ暗器使いってことか!

 

自分が使う分、袖に仕込んだそれを取り出す動きを看破出来たのでその小刀を左の鉄扇で打ち落とすことが出来た。

 

「それがうわさに聞く「天の御遣いの光る武器」か。いい趣味してるね、でもその短い武器でやれるかなー?」

 

「さてね!」

 

こちらからも接近しながら右手で羅漢銭を3枚同時に投擲すると、眭固は命中コースの一枚だけを小刀ではたき落とし、残りは避けない。

 

「へぇ、将なのに暗器使いとは珍しいね、さっきの小刀を読まれたのもそれでかなー?」

 

「俺のやり方にそっくりだったしな」

 

「ということは小細工は大体バレちゃう感じだね、それなら……。武器2本で勝負しようよ、こっちはこれで行かせてもらうよ」

 

そういって眭固は両手に小刀をかまえる。2本で勝負しようというなら言うまでもなく俺は両手に鉄扇をかまえる。

 

もっとも、何を仕掛けてくるかわかったものではないし警戒は怠らない。

 

お互い暗器使いで、不意をつくということが出来なくなったため、賞味の実力勝負になる。

 

次々に繰り出される小刀を鉄扇で受け止め、スキを見つけては突きと斬撃で返していくが、どうにも実力は互角らしい。

 

お互い決定打に欠け、攻防は一進一退というところ。

 

十合ほど撃ちあった所で、引き鐘が打ち鳴らされる。それも両軍の、どういうことだ?

 

「勝負はおあずけかな? それじゃあね!」

 

その音を聞いて俺の注意がそっちへ向くなり、眭固は盗賊の軍勢の中へと消えていった。

───────────────────────

 

その後、両軍の戦いがとまってから張燕がうちの陣へ一人でやってきて、話があるらしいから聞く、と提案してきた。

 

まぁ主目的は交渉だし願ったりってことで俺は頷いて、立ち話も何だからって事で拠点へと案内された。

 

拠点はどうやら廃砦らしい、といっても補修したのか割りと立派な物だけど。

 

兵と共にその中に入っていけば、その一室に俺達は通された。

 

「さて改めて自己紹介しとくよ、あたしは張燕、字は無い。黒山賊の頭目だ」

 

「私は眭固白兎。よろしく、島津将軍?」

 

あぁ、桂花が眭固をめっちゃ睨んでる。まぁ見た目のキャラかぶりまくりだしなぁ……。属性的には小悪魔……かなぁ?

 

張燕の方はあんまり見ないタイプだなぁ。姉御的な、見た目もあいまってイメージはどこぞの宇宙の蜉蝣さんみたいな……。

 

「で、あたしらに話しっていうのは? あたしらはあんたらに降伏したんだ、遠慮しなくていいよ」

 

「単刀直入に言えば、馬騰の領、特に輜重隊や輸送隊を襲ってもらいたい」

 

「……、ぷっ」

 

俺の提案を聞くなり、張燕は笑い始めた、ツボに入ったのか腹を抱えて大爆笑。

 

「いや、まいった、苦しいったらありゃしない。

 

しかし、ずいぶん汚い手を考えるねぇ、盗賊を味方に引き込んでけしかけようなんてさ。で、見返りは何かあるのかい?」

 

「あれ、持ってきてくれる?」

 

兵にそういえば、兵が持ってきたのは木箱、その蓋をあければ中身は金目の物がぎっちり入っている。

 

例の、天梁の実家から送られてきたものの一部。

 

「まずこれが手付金、これで食料の足しにするなり武具を買うなり好きにしてくれればいい。

 

略奪したものについては、主君である董卓、盗賊の頭である張燕、その部下達へ一定の割合で分配という形にしたい。

 

それと当然ながら、董卓領内で今後略奪行為を行わないのであれば、うちの軍は黒山賊の討伐に動く事は無いよ。

 

さらに、馬騰側に略奪に向かうにあたり、都合のいい立地の空き砦を拠点として確保してあるから使ってくれて構わない。

 

腕の良い間諜を数人派遣するので索敵等に役立てて欲しい。

 

また、馬騰軍に追撃された場合、領内まで逃げ込めれば庇うけど、向こうで捕まったらこちらは知らぬ存ぜぬを通す。

 

以上が詳しい所だけど」

 

「ふむ、成果を上げた場合、董卓の配下に加わる事はできるかい?」

 

「ん、董卓が良いというかは分からないけど、董卓直下が無理なら、在野の将として俺の下についてもらうよ。

 

もちろん眭固も一緒に」

 

「じゃあその条件で仕事をしようじゃないか。白兎もそれでいいだろ?」

 

「私は異議なーし」

 

「じゃ、もうちょい詳しい話しを詰めようじゃないか。島津将軍、あんたが頭なんだろ?

 

さっきから他の連中は口を開かないし、だったら3人だけで話そうじゃないか」

 

張燕の言葉に頷いて俺はさらに奥……、おそらく張燕の私室に通された。

 

───────────────────────

まぁなんというか、頭がキレるのは確かなようで、大体の事は把握して了解してくれたため話し合いにそう時間はかからなかった。

 

頭もいいし、統率に優れる上に個人としても強いのに何故盗賊なんかしているのか?

 

気になったので聞いてみると……。

 

「島津将軍はなんであたしに字が無いか分かるかい? ふふ、分からないって顔してるね。

 

あたしが人間じゃないからさ」

 

思い切り顔に疑問が出ていたとおもう。どっからどうみても普通の女の人だし。

 

「差別階級の出なのさ。だから仕事もない、食うにも困る。字が無いのは社会に出る事すらできないゴミだから。

 

誰に似たのか、頭はそこそこ良かったし、腕っ節も強かった。だから盗賊なんて始めたのさ」

 

星に聞いた話しにはなかったけど、字が無いにはそういう場合もあるのか……。

 

「さて、ここまで話しておいて何だけど、どうする?」

 

「俺はそういうのは気にしないし、功績を上げれば仲間にする、っていうのは変わらないよ」

 

「即答か。気に行った。ならそれを信じようじゃないか」

 

その仕事ぶりは相当のもので、監視役としてつけた忍者隊の者も間諜としてうまく使って馬騰軍の輸送隊を次々に襲い、物資を略奪していった。

 

おかげで兵糧等の不足はかなり改善されたし、武具も調達できた。大きいのは馬も略奪してきてくれたこと。

 

さらには馬騰軍の戦の準備を遅延させることもできている。

 

というのも、狙うのは戦の準備のために国境近くの街に向かう輸送隊が主のため。襲えば襲うだけ準備が遅延することになる。

 

約束通り月の領地では略奪は一切しなくなったし、こちらから要望を行えば応えてくれる。

 

まさかここまでやってくれるとは思ってなかった。というのが正直な所。

 

これなら戦の準備は馬騰より先に整うかもしれない。

 

先手をとれれば最良か。何にせよ手抜かりがないように気を配りつつ、政務と兵の訓練に精を出す日々に戻るのだった。

あとがき

 

どうも黒天です。

 

今回2人新キャラが出てきました。

 

眭固の方はキャラがまだ定まってない感じですが、張燕は姉御枠で決定しました。

 

作中で年齢の話しは出てきてませんが、20代後半から30代前半を想定してます。

 

この後この2人がどう動いてくるかはお楽しみ、と言った感じです。

 

あと字についての張燕の話しは、調べるのに使ったサイト様で、典韋がそうだったらしい、という説があるためから、張燕もそうなのでは?

 

と考え、そういう設定にさせていただきました。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。

 

追伸:TINAMIの友達リストが真っ白なので友達になってくれる人を募集してます


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
37
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択