No.66089

思春の昔話 アフター・ストーリー

komanariさん

当初、僕は全く予想していなかったのですが、多くの方がアフターを希望してくださいましたので、がんばってみました。


ただ、もともと考えていなかったことなので、内容がひどいです。
キャラ崩壊もひどいです。

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2009-03-30 23:19:09 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:15855   閲覧ユーザー数:11170

「ごめんな。思春。今まで言えなくて・・・」

一刀はそう言いながら私を抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

私が甘述にあの話をしてから、3ヶ月ほど経過していた。

 

私と甘述、それに北郷は、蜀との定期会合のために成都を目指して蜀内を移動していた。

 

両国の首脳陣のほとんどが出席し、「祭り」的な意味合いの強い平和式典とは違い、もっと事務的なものである定期会合は、毎回少人数の幹部同士が会合を行い、両国のよりより発展を目指して、知識の共有(主に蜀が北郷の持っている天の知識を知りたがっているのだが)や、両国共通の問題解決の協議などを行っている。

 

蜀からの要望もあり、北郷は毎回この会合に参加しているのだが、その付き添いを呉の武将が当番制で担当している。そして、今回は私だった。

 

各武将に娘が生まれてからは、娘も連れて行くのが通例となっていた。

 

そんな、移動中のある日、私たちは道中の町で宿をとっていた。

 

 

北郷は町の長老に酒宴に連れていかれた。

まぁ、いつものことではあるが、お人よしの北郷が好々爺といった風の老人の誘いを断れるはずもなく、私と甘述は宿で先に休むことにした。

 

甘述は最近、自分の聞いた話を私に聞かせるのが好きらしく、北郷から聞いた話を喜々として話していた。

 

 

「・・・それでですね。その男の子はいなくなってしまったんですけど、なんとか女の子と再会できて、ふたりは幸せに暮らしたんですって。」

 

 

私は耳を疑った。

 

 

「何だか、母上のお話と似てますよね。あぁ!そう言えば、父上はこの前母上がお話してくださったお役人と異国の人が母上と父上に似てるって言ってくださいましたよ!?母上はやっぱりそうは思いませんか??」

 

いつもなら全く抵抗することのできない涙目と上目づかいで、甘述が私を見ていたが、私の頭の中は、先ほど甘述から聞いた、北郷が話したという内容でいっぱいだった。

 

(どう言うことだ!?なぜ北郷が、一刀が消えてしまったことを知っているのだ?もしや・・・)

 

私の頭の中に、北郷と出会ったころわずかに期待していたことが再び浮かんできた。

 

(私との記憶を覚えているのか!?)

今すぐに、北郷の所に行って、やつを問いただしたかった。

 

「母上!聞いていらっしゃいますか!?」

傍らの甘述を見れば、自分の質問に答えてもらえなかったのが不満だったらしく、頬を膨らましていた。

 

「あぁ。すまない。確かに少し似ているかもしれんな。」

 

(もし、北郷にあの記憶があるのなら・・・)

 

「やっぱり!そうですよね!私もそう思っていたんです。」

甘述は嬉しそうにはしゃいでいる。

 

(もし、あるのなら・・・)

 

甘述は、ひとしきりはしゃぎ終えると、移動で疲れていたのか、すぐに寝てしまった。

 

(なぜ、あの時に言ってくれなかったのだ!一刀!!)

 

私はもう、自分を抑えられなかった。

甘述を起こさないように、布団から抜け出し、部屋から出ようとすると、

 

 

ガチャッ

 

 

私の部屋の扉が開いた。

 

「ただいま思春。ごめん遅くなって。述はもう寝ちゃった?」

北郷がそう言いながら入ってきた。

 

「うん?どうしたの思春?」

私が質問に答えないことを疑問に思ったのか、北郷が訪ねてきた。

 

私は北郷を見つめた。

(・・・お前は本当にあの一刀なのか?)

 

その疑問を確かめたくて、私は北郷の腕をつかんだ。

 

「え!?ちょ、ど、どうしたんだよ思春!??」

 

「・・・黙ってついてこい。」

私は北郷の腕をつかんだまま、宿を出て町の城壁へと向かった。

 

「いてて・・・んで、どうしたんだ?思春。」

私がつかんでいた腕をさすりながら、北郷は言った

 

 

城壁は雲に隠された月からわずかに漏れる光によって、淡く照らされていた。

 

 

「・・・・」

すぐに聞くことはできなかった。

すぐに聞いて知らないと言われたら、私は立ち直れないような気がしていた。

 

もう2度と会うことができないとあきらめていたあの時の一刀。

もし、今目の前にいる北郷がそうであったのなら、私はどんなに幸せだろうか。

愛した者に抱かれ、その者の子を産むことができた。

あの時失ったと思っていた大切な者。もしそうであったなら・・・

 

しかし、私の胸の中にあるのは期待だけではない。

 

もし違かったら?

もし、北郷があの時の一刀ではなかったら?

甘述に話した話も、天の国の話で、私のことではなかったら・・・

 

わずかに生まれた期待が、粉々になって消えてしまったら。

 

(そんなことになるのなら、むしろ聞かないままの方が幸せではないのか・・・)

 

私の胸の中に、その恐怖が確かにあった。

 

「・・・・・」

それでも、私は聞いてしまいたかった。

甘述から聞いた話が、私と一刀だと思ったから。

あの話を知っているのは、いかに天の国があろうと、私と一刀だけだと思ったから。

 

 

「・・・・・・・お前は・・・」

私は、意を決して口を開いた。

 

 

「うん?」

 

 

「お前は・・・昔、私といたときの記憶が・・・・」

 

 

ここで確かめなかったら、私はこの後ずっと聞けない。

そんなのは嫌だった。

あの時、私に視察の命令が来た時にわずかに感じた違和感。

それを確かめなかったばかりに失ってしまった大切なもの。

 

そして、今、北郷に感じている違和感。

これを確かめなければ私の大切なものは帰ってこない気がした。

 

 

「・・・・・・あるのか?」

私は北郷の目を見た。

 

 

「・・・・」

北郷も私の目を見つめ返した。

次の言葉が出るまでが、まるで永遠の時のように長く感じられた。

 

 

「・・・・・・」

雲に隠されていた月が、風によってその姿をあらわした。

 

 

 

 

「・・・・・・・・うん。あるよ。」

 

 

城壁を美しい月の光が照らした。

 

 

「っ!な、なら、なぜすぐに言わなかった!!なぜすぐに言ってくれなかったのだ!一刀!!」

光に照らされた一刀の服が、キラキラと輝いていた。

 

「ここにいる思春が、俺の知ってる思春か分からなかったし、それに・・・」

 

「それに?」

 

「こっちで初めて会ったときの思春の視線が・・・・その、怖くってさ。言い出せなかったんだ。」

一刀はそう悪びれながら頭を掻いた。

 

「なっ。貴様はそんなことで、そんなことで・・・・」

涙が出てきた。

 

「私がどれだけお前の言葉を待っていたと思っている!?私がどれだけお前からの言葉を・・・」

続けられなかった。

 

私がどれだけ一刀からの「覚えているよ」という言葉を待っていたか。

どんな思いで一刀がいなくなってから過ごしてきたのか。

 

それを言ってやりたかった。でも言葉が出てこなかった。

 

「私が・・・私が・・・」

そんな私の気持ちも知らずに、怖かったからなどという理由でそのことを言ってくれなかった一刀に、言ったやりたいことがたくさんあった。ぶつけてやりたい怒りがたくさんあった。

 

でも・・・

 

「ごめんな。思春。今まで言えなくて・・・・」

一刀はそう言いながら私を抱きしめた。

 

悔しかった。

私が言ってやりたかった言葉が、ぶつけたかった怒りが、ただ抱きしめられただけですべて消えてしまった。

 

「ごめんな。」

一刀は私の顔に触れた。

 

あの日、私の顔に触れた力ない手と同じ大きい手。

あの時と違うのは、その手が暖かく、そして確かに私の顔を捉えていること。

 

「ばか者・・・・」

それしか言えなかった。

 

一刀はわずかに、悪びれた表情をすると、私に口づけをした。

 

「それで、思春。俺あの時の答え、まだ聞いてないんだけど・・・」

一刀は私の顔を見つめた。

 

あの時の答え、

 

「最後ぐらい、好きな女の子と一緒にいたい。だからここにいて、思春・・・」

 

そう言った一刀への私の答え。

 

 

そんなもの、一刀が消えてしまうよりもっと前から決まっていた。

 

 

「・・・・・・・・私もお前が好きだ。このばか者。」

 

 

あの日、一刀がいなくなってしまった日から、することのなかった私の笑顔は、きっとぎこちなかっただろう。

 

 

でも。

 

 

これからは、きっと普通に笑えるようになるのだろう。

 

私のもとに、失ったものが帰って来たのだから。

 

「よかった。」

一刀はそう言って笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~蛇足~

 

 

城壁で思春を抱きしめたあと、俺たちは宿に戻り、愛し合った。

 

事が終ってから

「甘述が起きたらどうするつもりなのだ!」

と思春に怒られたが、むしろ激しかったのはあなたの方で・・・

 

そんなことを思いながら、その日は眠りについた。

 

幸せだった。愛した人とその人との子供に囲まれて眠ることができたのだから・・・

 

そう。ここで話が終わっていたら、きっと幸せな気持ちのまま終われていただろう。

 

けど、そうは問屋が下ろさなかった。

いや、この場合は問屋じゃなくて思春か・・・

 

次の日、目を覚ますと昨日よりもよほど違和感のない笑顔の思春が、

「一刀。久しぶりに稽古をつけてやるから、庭に行くぞ。」

と有無を言わさず、俺を庭に連れて行き、それから始まった稽古。

 

いや。あんなものを稽古とは言わない。

 

昔の思春ですら、かなり手加減して俺をぼこぼこにしていたのに(今更ながらそうだったことに気付いた。)、今回は終始笑顔の思春さんが、ただ俺に打ち込んでくる(しかも、俺が死なない程度に本気)といういじめが半日ほど続いたのだった。

 

その激しさは、それを見ていた甘述がそれから数日間、笑顔の思春を見ると震え出すぐらいだった。

 

あぁ、昨日のあの可愛らしい思春が懐かしい・・・

 

結局、思春に半日ぼこぼこにされた俺は、馬に乗ることができず、結局その町に1週間ほど留まることになってしまった。

 

俺が思春に本気のいじめ(憂さ晴らしか?)を受けた後は、思春は前のようによく笑うようになった。

 

その笑顔になれた甘述と、一緒になって笑っている姿は、ほんとに似ていて、見ている俺はとても幸せな気分になった。

 

その後、何とか馬に乗れるようになった俺が、成都につくと、あろうことか、思春が俺の腕を抱いて離そうといなかった。

 

「貴様が蜀の女に手を出さぬようにするためだ。」

と言ってそのまま蜀の王宮へと入城。

あの、思春さん。さっきから胸が当たってるんですけど・・・

 

父親の腕を離さない母親を見て、

「母上!父上を独り占めするなんてずるいです!!」

と甘述が反対側の腕にしがみつき、俺は両腕の自由を失ってしまった。

 

そんな状況の俺を見て若干引き気味の諸葛亮ちゃんら蜀の皆様。

 

「この男は私のものだ」

と言わんばかりに、蜀の方々を俺の腕を抱いたまま威嚇する思春さん。

 

あぁ思春さん、ここ同盟国なんですけど・・・・

 

 

その後の会合でも終始そんな感じの思春のせいで、今回の会合はあまり大きな進展がなく。

また、予定より時間がかかってしまったため、呉に帰ってから蓮華にしこたま説教を食らう俺。

そんな俺を庇うこともせずに、思春は楽しそうに甘述と遊んでいた。

 

蓮華に

「思春が明るくなったけど、何かあったの?」

と聞かれたけど、その話をしようとすると、遠くで遊んでいるはずの思春から、殺気のこもった視線が・・・・

 

 

 

・・・あぁ。今日も呉は平和です。

 

 

 

あとがき

 

どうもkomanariです。

 

まず、すみません。

ひどい話ですみません。

キャラ崩壊ひどくてすみません。

 

予想していなかったまさかのアフター希望のコメントをいただき、

愚考に愚行を重ねた結果。

 

①一刀がどうやって生き残り、そしてまた戻ってきたのか。

②記憶が戻った後の呉皆さんとのやりとり。

③一刀くんとの呉でのいちゃつき。

 

などはスルーすることにしました。

 

すみません。僕の限界です。

特に①について書きはじめたら、なんかアフターを前・中・後に分けなきゃ無理そうでしたし、そんなことしたら、僕の文章力ではまとめ切れないことがわかりきっていましたので、思いっきりすっ飛ばしました。

 

もし、そのあたりの話を期待してくださった方がいらっしゃいましたらすみません。

 

 

さて、その辺をすっ飛ばしてもなかなか話を進めることができなかったのですが、僕としては最終的に、

 

「一刀の腕を掴み、離そうとしない思春」

 

っていうところを目指した結果こうなりました。

 

えっと、アフターを希望してきださった方々のご期待に添えているかは、甚だ疑問ですが、楽しんでいただければ幸いです。

 

前作、「思春の昔話 後編」を閲覧してくださった方々。そしてたくさんの、本当にたくさんの支援、そしてコメントをくださった方々。

本当にありがとうございました!

 

毎回、あとがき長くてすみません。

 

それでは、また次のお話でお会いできますことを・・・・


 
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