No.656327

アクセル・ワールド ~Blaze Brave~第4話 encounter second part:邂逅 中編

遼東半島さん

第4話になります
少々書き方を変えましたが、どうか生温かい目でこれからもご覧ください(笑)
では、どうぞ!

2014-01-20 21:56:05 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:718   閲覧ユーザー数:711

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第4話 encounter second part:邂逅 中編 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12時02分07秒 御子島学園ローカルネット≪世紀末≫ステージ サラマンデル・ブレイブ

 

 

 

 

 

「ッハァ!」

 

「くッ」

 

俺は再び突進攻撃を繰り出したセントールの斧槍―ブル・ハルベルト―の一撃の防御をエーデルに任せ、そのガラ空きの前脚めがけて炎を纏わせた大剣を振るう。

 

「させるかよ!」

 

紅の刃がセントールの巨躯を支える脚に吸い込まれようとした刹那、その後方から飛び込んできたエメラルドの剣角がかろうじてそれを弾き返す。

 

二騎は計8本の脚を巧みに動かして俺の後ろへと並んで駆け抜けると、10m程距離をとって停止した。

 

「ったく、反則過ぎるぞ、あのコンボ!」

 

「近接攻撃では付け入る隙が無いですね…」

 

そう悪態をつくキャバレリーの体力ゲージ(HPゲージ)は6割、セントールに至っては先頭を取っていることもあって5割以下にまで減少している。

 

(…この調子で攻めればやれる)

 

俺のダッグパートナーである瀬菜のデュエル・アバター≪カナリー・エーデル≫は間接攻撃を得意とする黄色系統のアバターの中でも特に本体のステータスが低く、防御力に至っては皆無な程に脆い。

 

しかし、彼女のアバターの特筆すべき能力はステータスでは無く、そのアビリティに集約されていると言っていい。

 

アビリティー≪守護障壁(バリアリング)

 

必殺ゲージ(Sゲージ)を消費して手の平に発現する光のバリアはあらゆる属性に対して非常に高い防御力を誇るうえに、彼女の意思で打撃属性の弾丸として撃ち出す事で攻撃にも転用する事が可能だ。

 

更に、レベルアップボーナスで手に入れた強化外装≪スカラー・リング≫によってバリアを発現する座標・大きさ・形を調節する事が可能になり、その能力と炎の噴射力で加速する俺の≪炎熱噴射(バーン・バーニア)≫を合わせる事で攻撃と防御が一体化したコンボ≪攻守陣(オフェンス&ディフェンス)≫が生まれたのである。

 

技を繰り出すタイミングを掴む訓練に二人してかなりの時間とポイントを割いて完成したこのコンボは、近接系の攻撃手段しか持たない相手に対しては絶大な有利性を発揮する。

 

現にキャバレリーとセントールのHPゲージはあれほど減少しているのに対して、俺のそれは最初にセントールの突きと弾かれた際に地面に接触して受けたダメージでしか減っていない。

 

戦闘開始前に潜伏させたエーデルに至っては、攻撃どころか未だ二人からは発見されてもいないのでHPゲージはフルの状態だ。

 

(あとは、エーデルのSゲージが続く間に押し切れれば)

 

そう考えていた俺の思考は、一気に加速空間の対戦へと引き戻された。

 

距離をとっていた二騎が顔を合わせて互いに頷き合うと、キャバレリーは騎乗するエメラルドを駆って再度こちらへと向かってきたのである。

 

既に十数回にわたって俺に繰り出してきた二人の機動力を生かした連続攻撃コンボ≪騎兵突撃(ナイト・アサルト)≫を再び行うのかと思ったが、そうではなかった。

 

セントールはキャバレリーの後方に付く事無く、単騎で校舎方面へと移動を開始したのだ。

 

そんな中、迫るエメラルドの角は光の防壁が弾き返され、その隙を突いてこれまでと同じ様におれは愛剣フレイム・ブリンガーを横薙ぎで振るう。

 

キャバレリーはその攻撃を手綱でエメラルドの首を振るい、淡い光を纏う美しい剣角を交差させて防御し、鍔迫り合いの形に持ち込んだ。

 

「ブレイブ。悪いがこっからは俺達の反撃とさせてもらうぜッ!」

 

「…エーデルの位置を特定したみたいだけど、遠距離攻撃を持たないキミらじゃ彼女にに手出し出来ないよ」

 

そう、エーデルが潜伏しているのは新校舎の屋上だ。

 

しかし一階から屋上までの高さは15mを超え、俺の≪炎熱噴射≫でのジャンプでどうにか運ぶことが出来たほど高いのだ。

 

建造物への侵入不可である≪世紀末ステージ≫で、彼女のいる位置に到達する手段はこの二人には無いはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはどうかなぁ~」

 

「!」

 

キャバレリーの瞳の端が上に吊り上る。

 

「ブレイブ、お前とエーデルちゃんのコンビネーションは確かにスゴイけど、別に一緒に戦う事だけがコンビネーションじゃないぜ。…それに、アドにぃを只の近接特化型アバターだとは思わない方がいいぞ」

 

「なにを……ッ!!」

 

そう口にした瞬間、キャバレリーの言葉がブラフやハッタリでは無い事を俺は悟った。

 

俺の前方―キャバレリーにとっての後方―を疾走しているセントールが斧槍を高く振りかざすと

 

「≪タウラス・ブレイク≫!!」

 

技名発声と共にかざす斧槍が青いライトエフェクトを放ちながら、地面をしっかりと踏み締める強靭な四本足から生み出されたスピードを重ねて、新校舎の壁へと振

り下ろされた。

 

その時、俺は対峙しているキャバレリーの事を忘れて、視線の先で生じた現象に見入ってしまっていた。

 

セントールの必殺技が新校舎の壁に直撃すると、直撃点を中心にコンクリートの灰色を思わせる壁に幾重にも亀裂が生じ、物凄い破壊音と同時に校舎が大崩壊を起こしたのである。

 

≪鋼鉄ステージ≫や≪魔都ステージ≫ほどでは無いにしろ≪世紀末ステージ≫の、それも木やドラム缶とは比較にならない耐久値を持つはずの建造物を一撃で一部どころか半壊状態と言える程に破壊したのだ。

 

「あれがアドにぃのアビリティー≪建造物粉砕(オブジェクト・クラッシュ)≫さ。にしても相変わらずスゲェ迫力だよなぁ~」

 

既にエメラルドの角を下ろさせたキャバレリーの声が、呆然としている俺の耳に入ってくる。

 

(マズイッ!)

 

新校舎が屋上ごと崩壊した以上、あそこにいたエーデルが無事で済むはずが無い。

 

その声で我に返った俺はそう判断すると、半壊して土煙を上げている新校舎の建っていた場所へと駆けだそうと噴射で加速しようとした。

 

しかし―

 

「おおっと、そうはいかねぇーぜ。≪バインド・テイル≫!!」

 

キャバレリーはそう叫びながら手綱を引いてエメラルドを前脚を軸に回転されて俺に対して後ろを向けると、緑光色に輝いたエメラルドの尾の毛の1本1本が荒縄の様に編み合わさりながら伸長すると、ブリンガーを持つ俺の右手首に巻き付いてきた。

 

「セィヤァ―――!」

 

同時に再び手綱を振るうと、エメラルドの半身ごと俺を拘束している尾がしなやかに激しく動き、俺の体は空中へと飛ばされてから強かにコンクリートの地面へと叩き付けられた。

 

その衝撃で今まで9割以上を残していた俺の、サラマンデル・ブレイブのHPバーが対戦開始以来初めて大きく変動し、8割近くまで減少した。

 

さらに、手にしていたブリンガーも俺の右手を離れ、8m以上遠くに金属音を立てながら弾き飛ばされてしまう。

 

(だが、このていどのロープ、ブリンガーが無くてもッ)

 

「うおぉー」

 

俺はブレイブのアビリティ≪火炎発火≫で右手首に高温度の炎を発現し、右手の荒縄を焼き切ろうとした。

 

しかし、ジリジリと焼ける音を発しながらも荒縄は焼き切れる事無く俺の右手を拘束し続けている。

 

「ッ!」

 

「こんな事もあろうかと、前のレベルアップボーナスでラルドの炎熱属性への耐性を上げといたのよ。そう簡単には焼き切れねぇよ」

 

(なら、どうにかブリンガーを取らないと)

 

「悪ぃけど、こっからは俺に付き合ってもらうぜ。そりゃぁーーー!!」

 

その俺の思考を見抜いたのか、キャバレリーは俺を繋いだままエメラルドを一気に走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガギギギギギギッと、地面との接触で激しい擦過音と共に俺のHPゲージをジワジワと削りながら、エメラルドはさらにそのスピードを上げ続けている。

(この縄をどうにかしてこの状況を切り抜けて勝機を作らなければッ!)

 

≪バインド・ロープ≫が当たる瞬間にエーデルの援護が無かった以上、彼女はこちらを視覚出来ないか、援護出来ない状況に立たされているという事になる。

(クソッ、マズイぞ。どうする。一体どうすれば―)

 

半ば混乱状態の思考で考えを巡らす中で、今ここにはいない俺の師の言葉が頭の中から聞こえた。

 

―ブレイブ、対戦中はどんな危機的な状況でも必ずチャンスはあるもんだ、それは例えどんなに可能性の低い類でもな。たが、その低い可能性に賭けもせずに諦めてるようじゃあどんなに経験を積んでも強いリンカーにはなれねぇぞ―

 

(そうだ……冷静になれ。まだ負けた訳じゃ無い。チャンスを……!。それだ!!)

 

ある考えが浮かんだ俺はその“行動”を起こせる機会を待った。

 

必ず成功する保証は無い。だが、

 

(やってみる価値はあるッ)

 

前方に迫る校門の壁を回避しようと、キャバレリーはエメラルドの速度を極力落とさない様に大回りでUターンを行う。

 

来た方向へ大きく回りながら方向転換に成功すると、さらに速駆けの体勢でキャバレリーはその速度を上げる。

 

それに比例して俺のHPゲージの減少速度と熱を感じる痛みが増大するが、それでも俺は意識を冷静に保ちながら機会を待つ。

 

そしてHPゲージが5割を切るかと思われたその瞬間、チャンスはやってきた。

 

右前方50m程先に愛剣がある事を確認した俺は、視覚でその距離が20m程に縮まったのを見計らって、引きずられて足を削られながらも立ち上がり

 

「ハァアァーーー!!」

 

胴の左脇から最大火力で激しく炎を噴き上げた。

 

「ッ!!何!」

 

キャバレリーは驚きの声を上げて後ろを振り返る中、火炎噴射で生み出されてた加速エネルギーで俺の体はエメラルドを中心として円を描く形で右へと激しくスライド移動する。

 

地面に落ちているブリンガーの柄がはっきりと見えた。

 

激しく視界が暗転する中、俺は只がむしゃらにその柄へと自由の利く左腕を最大限に伸ばした。

 

手の平に馴染みのある金属の感触が伝わる。

 

刹那―

 

右腕から伸びる1本の線に熱を帯びた一閃を繰り出した!

 

切断されたエメラルドの尾は、綺麗な緑色の絹糸の様に解けて宙を舞いながらポリゴン化して消滅していく。

 

そんな美しさとは程遠いながらも、俺は地面との接触の衝撃で受けるダメージを最小限に抑える動作での着地に成功させる。

 

「おいおい、マジかよ…。あの状況を打開するなんでよぉ~。………クゥーーッ、やっぱ対戦はこうでなくちゃな!!」

 

エメラルドの脚を止めてそう発するキャバレリーの声は、戦法を破られた悔しさよりも俺の対処に対する興奮の方が勝っているようであった。

俺は自身を纏う兜の中でうっすらと笑みを、ブリンガーをキャバレリーに向けて構え直した。

 

「だったら、こっから第3ラウンドといくぞッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第4話 encounter second part:邂逅 中編 END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御待たせ(?)致しました。

 

邂逅中編になります。

 

本来は今回で邂逅編は終わらす予定でしたが、書き方を少々変えてから戦闘描写を書いていたら意外と長くなってしまいました。

 

あと1話で入学初日は終わる予定ですので「長いぞ!!」と思われるかもしれませんがご了承下さい。

 

ではまた次回ノシノシ

 

 

 

 

 

 

 


 
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