「な・ん・で・わ・た・し・を・ク・リ・ス・マ・ス・に・さ・そ・わ・な・い・の・か・し・ら・ねぇア~キヤ~…!!」
「ちょ、待ってアリ…痛だだだだだだだだだだだだだだだギブギブギブギブッ!!!」
「ワン、ツー、スリー、フォー!」
ハルトと黒帝の勝負が終わってから数分経ち、現在ルカはアリサによってヘッドロックをされているところだった。その横ではハルトが面白そうにカウントまでし始めている。
「クリスマスぐらい一緒に過ごそうと先に言ったのはアンタでしょうが!! こんの約束破りがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「うぐぇ、ちょ、死ぬ…ぬごぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」
「ファイブ、シックス、セブン、エイト、ナイン……テーンッ!!」
-カン・カン・カーン!-
何故かゴングのような音まで鳴り響き、ルカは完全に撃沈した。
「全く、この馬鹿は人の気持ちを知りもしないで…!!」
「お~い、大丈夫か~?」
「カハ、カハ…」
「あ、駄目だこれ。完全にノックアウトされてら」
地面に倒れたルカは、口から魂らしき物がエクトプラズムしそうになってしまっていた。ハルトが木の枝で突っついてもピクピクしたままで、それ以外の反応が一切返って来ない。
「まぁ確かに、さっきの状況は俺じゃなくてアキヤが助けるべきだったんだろうけどな。約束も守れないようじゃ、男としても失格だしな」
「は、はひ……ふみまへんでひあハルトしゃん…」
「あ、生きてた」
まだ少し呂律が回っていないものの、ルカはどうにか復活を遂げる。
「なぁアキヤ。任務が忙しいのも分かるがよ、女の子との約束くらいはキッチリ守ろうや。そんなんじゃカッコ悪いぞ?」
「す、すいません。アリサの事も守って頂いたようで…」
「それくらいは別にどうって事も無いけどよ。あの状況、アリサちゃんを守るべきだったのは他でもない、お前だろ? アキヤ」
「は、はい……仰る通りです…」
ハルトにしっかり説教され、シュンと落ち込むルカ。そんな彼の右腕を、アリサがガシッと掴む。
「約束を破った罰よ。今日一日、私のやる事に付き合いなさい」
「へ? ちょ、そんないきな―――」
「い・い・わ・よ・ねぇ?」
「…ハイ、モチロンデス。アリササマ」
アリサの放つ威圧感に、ルカは冷や汗を掻きながら片言で返事する。
「おうおう、若いってのは良いねぇ……ん?」
ルカとアリサの様子を見て感慨ふけるハルトだったが、ここでようやくある事に気付く。
「あいつ、何処に消えたんだ?」
黒帝の事だ。
黒帝は先程ハルトとの戦闘でダメージを負っただけでなく、ルカからは何の抵抗も出来ないままボコボコにされてしまった。すぐに立ち上がれるような傷ではない筈なのに、何時の間にか姿を消してしまっているのだ。
「…まいっか」
しかしハルトはそんな事は気にせず、ひとまずルカとアリサの様子を見守る事にするのだった。
その黒帝が、既に何者かに排除された事も知らないまま。
一方、とある次元世界では…
「ハァ、ハァ、ハァ…!!」
違法研究施設。
現在この施設内にて、一人の女性が通路を走っているところだった。女性は左肩から血を流しており、既に走る体力も尽きかけている。
「嘘よ…嘘よ…!! こんな、こんな筈じゃなかったのに……どうしてここの場所が…!!」
女性は恐怖に怯えているかのような形相で、来た道を時折振り返りながら必死に走り続ける。
しかし彼女を追っている人物は、予想外の場所から姿を見せる。
「よいしょおっ!!!」
「ッ…!?」
走っていた女性の足元に何発もの銃弾が放たれ、女性を上手く足止めする。
「はい残念、ここはもう通行止めだ」
通路の真上から、ベレッタを構えた青年―――FalSigがシュタッと床に降り立つ。
「な、何者よアンタ!? 何でここの場所が分かったの!? 何で私を殺そうとするのよ!?」
「いやいや、一度に質問し過ぎじゃないかねぇ…」
FalSigは呆れた様子で自身の髪を掻きつつ、右手の指を三本立てる。
「まず一つ目、俺が何者なのかは明かす気は無い。二つ目、ここの場所は俺の仲間が特定した、だからどうやって特定したのかは俺も知らん。そして三つ目」
ここで、もう一丁のベレッタを抜く。
「アンタを殺す事が、俺等の任務だからさ」
「ひぃっ!?」
FalSigが持つ二丁のベレッタが、狙いを定めるように女性へと向けられる。
「次元犯罪者、柴崎白亜……次元世界のあちこちで自分が可愛いと思った女性を誘拐し、この施設に拉致監禁してるんだっけ? 随分とまぁ、悪趣味な事をしたもんだよ」
「な、何が悪いのよ!! 連れ去った女の子を私がどうしようと、私の勝手でしょう!! アンタみたいな男が、この私に口出しするんじゃないわよ!!」
「おぉう、物凄い男嫌いって感じだなぁ……あ、そうそう。アンタが不正の転生者だって事、うちの上司にはもうバレちゃってるから」
「ッ!?」
「不正な形で転生した者は、この次元世界に大きな悪影響を及ぼす。俺も可愛い女の子は好きっちゃ好きだけどさ、アンタみたいに無理やり愛するようなマネだけはしたくない訳よ」
「く…!!」
女性―――
-ズドォンッ!!-
「んなっ!?」
「…今更、何を抵抗しようとしてんのさ」
FalSigの早撃ちによって、それは阻止される。FalSigは再び正面を向いてから、少しずつ白亜に歩み寄っていく。
「や、やめて…!! 私が、私が悪かったから…!!」
「君も結構可愛いから、出来れば撃ちたくないんだけど……こっちも仕事なんでね」
女性の額に向けられる銃口。FalSigの指が、ベレッタの引き鉄を引こうとしたその時…
「ちょおっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
思わぬ邪魔者が、この場に乱入してきた。
「チェストォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」
「え、ちょ…のごわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
通路先から猛スピードで突っ走って来た蒼崎が、仲間である筈のFalSigに向かって跳び蹴りをしてきたのだ。突然の攻撃に防御が出来なかったFalSigは大きく吹っ飛んだ挙句、壁に激突して瓦礫の中に飲み込まれてしまう。
「…へ?」
「ふ、決まった」
自分の仲間に跳び蹴りを炸裂させた蒼崎は床に着地し、キリッとした表情で白亜と向き合う。
「失礼、お嬢さん。お怪我は痛くないかい?」
「へ? い、いえ、そこまで痛くは…」
「あぁ、こんな可憐な女性に凶器を向けるなど、俺の仲間はなんて酷いマネを……大丈夫、俺はあなたに危害を加える事は決してないよ」
「は、はぁ…」
「安心してくれ。君の事は、俺が守ってみせるからさ。さ、怪我を治療してから俺とデートでも―――」
「おいこらシャドォォォォォォォォォォォッ!!!!!」
「ぶべらっぱぁー!?」
白亜に対してやたらカッコ良く決めようとしている蒼崎だったが、そんな彼の後頭部にFalSigが容赦なく大きめの瓦礫を投げ当ててみせた。
「人がターゲットを仕留めようとしていた時に、よくも蹴っ飛ばしてくれやがったな!! どんだけ女好きなら気が済むんじゃアンタはぁっ!!!」
「何を言ってるんだお前は!! こんな美人だぞ!? そんな女性の肌を傷付けるなんて、失礼な行為だとは思わないのか!?」
「失礼とか以前にそいつは不正転生者じゃボケェェェェェェェェェェェェェッ!!!!!」
二人が盛大な言い争いを開始してしまったその時…
-ドスゥッ!!-
「「!?」」
蒼崎の背中に、槍型デバイスが突き刺さっていた。
「な……がふ…」
「アハ…アハハハハハハハッ!! 馬鹿な奴ね、わざわざ庇ってくれるなんて!!」
「あぁもう、言わんこっちゃない!?」
ズボッとデバイスが抜かれ、蒼崎の背中から鮮血が舞う。
「良い様ね!! 精々私の為に、一人で勝手に死んでなさいよ!!」
勝ち誇ったかのように高笑いする白亜だったが……その笑いも、途中で途切れる事になる。
そう…
「あらあら、酷い事してくれるじゃない?」
聞こえる筈のない、別の女性の声が聞こえてきたのだから。
「「!?」」
膝を突いていた蒼崎が立ち上がり、刺された筈の彼の背中が赤く光り出す。光が収まる頃にはあっという間に傷が治ってしまっていた。
「嘘!? もう傷が…!?」
驚きを隠せない白亜を他所に、蒼崎の身体には大きな異変が起き始めていた。
短かった髪は一瞬で長く伸び、肉体はメキメキと音を鳴らしながら少しずつ女らしい身体つきへと変わっていき、胸には二つの大きな膨らみが出来ていく。そして身に纏っていたバリアジャケットもズボンがスカートに変わり、全体的により露出度の高い状態になる。
「ん、はぁん……久しぶりに出て来れたわ」
「うげ、その声はまさか…!!」
その色っぽい声に、FalSigは聞き覚えがあった。
「また面倒なタイミングで出て来たな。蒼崎……いや、蒼崎深夜」
「ん~…シャバの空気も、新鮮で美味しいわ~♪」
蒼崎夜深―――もとい“
「な、何なのよアンタ……男が、女に変わるなんて…!?」
「ん? あら、可愛い子ちゃんがいるわね…」
白亜の存在に気付いた深夜は舌舐めずりをし、白亜は思わず背筋に寒気が走る。深夜のその目は、獲物を見つけたかのような鋭い目付きだ。
「ふ~ん……確かにあの子の言う通り、可愛らしい子じゃないの」
「な、ちょ!? 何でこっちに来るのよ!?」
「あなた、可愛い女の子が好きなんでしょう? 私がたっぷり愛してあげるわ」
「ひっ!? や、やめて……お願い、来ないで…!!」
「大丈夫よ? こう見えて私、可愛い子にはそんな痛い事はしないから」
「いやそういう意味じゃ…ひゃあっ!?」
涙目になりながらも逃げようとする白亜だったが、深夜によって床に押し倒された挙句、無理やり馬乗りされてしまった所為でそれは叶わない。
「あらあら。ひょっとして、自分が攻められるのは苦手なのかしら?」
「や、やめて…!!」
「怯えちゃって、可愛い…♪」
「ちょ、待…んんっ!?」
深夜の唇が、白亜の唇に押し付けられる。そのまま深夜の舌が白亜の口の中に入り込み、舌と舌がねっとり絡み合っていく。
「ん、ちゅ…ぷはぁ♪」
数十秒が経ってからようやく深夜が白亜から離れ、互いの舌に涎の橋がかかる。
「ハァ、ハァ…」
「もうギブアップかしら? でも残念、私が満足してないのよね」
深夜は身に纏っているバリアジャケットを若干はだけさせてから、顔が赤くなっている白亜の頬を人差し指でゆっくり触れる。
「さぁ……いっぱい楽しみましょう♪」
そう言って、深夜は再び白亜に襲い掛かるのだった。
「…うん、駄目だ。ここにいたら身が持たないや」
あまりにピンク過ぎる光景に耐えられなかったのか、FalSigは施設に監禁されている女の子達の救助に向かう事にしたのだった。
某次元世界、とある岩山…
「や、やめてくれ!! もう許し―――」
-ドシュッ-
「その台詞、もう聞き飽きました」
また一人、不正転生者を始末したデルタ。突き刺した軍刀を抜き取り、血を払ってから鞘に納める。
「そっちは終わったみたいだな、デルタさん」
「おや、awsさん。という事はそちらも?」
「あぁ。無駄にしぶとかったが、それほど苦労は無かったよ」
awsは引き摺っていた不正転生者の遺体を、デルタの前で放り捨てる。
「やれやれ、こんなのがまだ沢山いるとなると、こちらの骨が折れそうですよ」
「そうは言っても、これも団長の勅命だしな。少しずつ探して始末していくしか無いだろうな」
「全く……私達にこんな事をさせて、クライシスは一体何を考えているのやら…」
「考えても仕方あるまい。遺体をさっさと処分して、一旦
二人が不正転生者達の遺体処理に取り掛かろうとしたその時…
「そこの二人、止まりなさい!!」
「「!?」」
デルタとawsの身体に、鎖型のチェーンバインドが巻き付いた。
「私達は、時空管理局の魔導師です!!」
「直ちに武器を捨て、こちらに投降しなさい!!」
「…おやおや、意気が良い事で」
デルタは面倒臭そうな表情で、空中にいる魔導師を睨み付ける。
高町なのは。
フェイト・T・ハラオウン。
二人の若き魔導師が、ついにOTAKU旅団の一員と邂逅した。
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豹変:妖艶なる深き夜