No.648532

Cの挑戦/コール、オールイン

i-pod男さん

フルボッコタイム、スタート!!!Let's PARTY!!! ヒーハー!!!!

すいません、興奮しました。今回は自分としてはかなり上手く書けたかなーと思っていますので。更新して間も無いこの小説を読んで下さった方々、感想、評価を下さったユーザーの皆々様、ありがとうございます。

2013-12-26 09:42:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1157   閲覧ユーザー数:1135

寮長室に帰る途中、一夏は箒に呼び止められた。

 

「よう、どうした?」

 

「大丈夫なのか?」

 

「クラス代表の事だったら心配するな。空を飛べて銃や剣を振り回す以外は普通の喧嘩とそうは変わらないだろう。」

 

身も蓋も無い言い方だが、表現としてはあながち間違ってはいない。ISバトルとは文字通りISを使って戦うと言う事なのだから。

 

「同い年とは言え年季が違うから勝つかどうかは分からん。まあ、やれるだけやるさ。今から道場か?」

 

「そうだ。お前も来い。腕が鈍っていないか見てやる。まだ続けているのだろう?」

 

「まあ、我流だけどな。オーソドックスな物とはかけ離れてるよ。喧嘩ヤクザの度胸剣法と大して変わらないさ。それでも良いってんなら。」

 

箒は何も言わずに一夏の腕を掴むと道場まで引っ張って行った。それを偶然見た生徒がいたのか、僅か五分程でかなりのギャラリーが集まって来た。

 

「防具は付けないのか?」

 

「別に良い。蒸れるし、重い。」

 

一夏は改めて竹刀を手に取って軽く振ると、それを逆手に構えて突き出した。箒はそれを見て面の奥で顔を顰めた。逆手で持つ事は一般的にはあり得ない事なのだから当然だろう。それに箒の様に古武術を幼い頃からやっている者に取って逆手で持つのは邪道だ。

 

「だから言ったろ?我流だって。」

 

「まあ、良い。怪我をしても知らんぞ。やああああああああああ!!」

 

気合いの籠った声と共に、箒は竹刀を振り上げて来た。一夏は構えを崩さず、竹刀を見つめ続ける。スロー再生の如く緩やかな動きで自分に向かって来る竹刀を半歩下がってすれすれに避けると、深く踏み込んで二人の位置が入れ替わった。そして振り向き様、胴に一本入れた。

 

(やっぱりスロー再生みたいに動きが遅い。ちゃんと見える。悪いな箒、ずるして。)

 

「な?我流だけど速いだろ?」

 

「もう一本だ!」

 

更に二の太刀、三の太刀を防御し、再び立ち位置が入れ替わると今度は面に一本が入った。

 

「織斑君カッコいい〜!!」

 

「座頭市みたい〜!」

 

「箒、大丈夫か?結構力入れたからな。」

 

「問題無い、まだ行ける!」

 

と言いつつも、箒は頭を抑えていた。防具を付けていてもあの横一閃の衝撃は確実に体に伝わったのだ。一瞬とは言え息も詰まった。

 

「も、もう一本だ!」

 

「オッケー。」

 

今度は竹刀を順手に持ち替えると、脇構の構えに入った。そして今度は一夏が動く。素早い踏み込みで箒が反応するよりも早く彼女の面に竹刀を振り下ろした。

 

「どうだ?腕はまだ衰えてないだろう?昔も何百回やっても、俺はお前に勝ってたな。」

 

「くぅう〜〜〜〜!」

 

箒は悔しそうに歯を食い縛る。それを一夏は微笑ましく思った。小学生時代、剣道の同門だった頃に箒は一夏に一度も勝てた試しが無い。その頃の事を思い出し、思わず顔を綻ばせた。

 

「気は済んだろ?寄る所があるんだ、先に行くぞ。」

 

試合途中、一夏は避けながら周りを見ていたのだ。そして気付いていた。道場の入り口で自分の事を見ていたセシリア・オルコットの姿に。彼女の後を追って殆ど誰もいない廊下で一夏は彼女を呼び止めた。

 

「陰に隠れて人の試合を見物とはレディーのする事じゃないと思うけど。クラス代表の事、まだ根に持ってんのか?」

 

「いいえ、私は英国淑女、そこまで器の小さい人間ではありませんわ。あの試合を見て貴方が手練であると言う事は良く分かりました。」

 

セシリアはフンと鼻を鳴らす。

 

「意外と素直だな、教室ではあそこまで言ってた割には。」

 

「認めるべくを認めただけですわ。他意はありません。」

 

腕を組んでセシリアはそっぽを向いた。

 

「ISバトルもスポーツですが、あの様な物とは勝手が違いますのよ?ですので、貴方の力を見極めさせて頂きます。代表が務まるだけの実力を持っているかどうか。」

 

「言うなればエキシビション・マッチか。以前の決闘をまた持ち出すと思ってたから断るつもりでいたけど、純粋な興味での試合なら話は別だ。その勝負(ベット)承諾(コール)するぜ。先生には俺から伝えとくから、それまで待ってろ。See you。」

 

一夏はおどけて寮長室に戻るやいなや盛大な溜め息をついた。

 

「とは言った物の、俺のISまだ起動出来ないんだよな。」

 

そう呟くと、突如一夏の右腕が光りだした。嵌っていた腕輪、零式が光を放ち始めたのだ。

 

『生体データ収集完了。装甲形成率、百パーセント到達。パイロットとのシンクロ率Maxレベル』

 

光は収まり、それとほぼ同時に千冬も入って来た。

 

「ん、先に帰っていたか。クラスでのあれは懸命な判断だ、無駄に衝突する必要は無い。と言うのは教師としての言葉だが、オルコットも言葉が過ぎる。姉としてはあの低い鼻っ柱をへし折れと言いたい。」

 

「そのつもり。改めて試合を申し込まれたから、俺受けたよ?あくまでエキシビションだから、決闘みたいな阿呆臭いもんじゃ無いし。」

 

それを聞いた千冬は溜め息をついた。

 

「全く・・・・・まあお前らしいと言えばお前らしいな。アリーナの予約は入れておく。絶対に勝てとは言わん。良い試合を見せてくれ。」

 

「うす。」

 

 

 

 

 

試合当日、一夏はピットで板チョコを齧っていた。セシリアは既にアリ—ナ上空で待機していた。最後のひとかけらを口に放り込むと、ISを起動した。

 

『零式、展開。フォーマットとフィッティング完了まで、後二十五分です。』

 

「さあ、檜舞台だぜ。」

 

零式は一夏の体を口元以外完全に覆い尽くす鎧の様な物だった。ピットにある鏡を覗くと、見た目は仮面ライダーに変身した時の姿にそっくりだった。しかし、ボディーの色は黒、目は深い青色と言う風に、写真のネガの様に本来の色から逆転している。カタパルトに足を乗せて、一夏は観客で埋め尽くされたアリ—ナの上空に飛び出した。

 

「フルスキンタイプ・・・・そもそも貴方はどうやって専用機を手に入れましたの?!」

 

「ソイツはちょっと教えられないな。」

 

「まあ、逃げなかった事は誉めて差し上げますわ。」

 

「一度乗った勝負(ベット)はショーダウンまで見届けるの俺がポリシーだ。さてと、」

 

試合開始のブザーが鳴る。

 

「掛かって来なぁ!」

 

セシリアの持つライフルから青いレーザーが放たれ、一夏に襲いかかる。だが、フルスキンである為に、全体的なサイズは小さく、普通のISより体積は圧倒的に低い。故に被弾する確率は大幅に下がっている。一夏は右に飛んで回避した。

 

(武器は・・・・近接ブレード、とハンドガンか。まあ、いいや。使い易い物から、っと。)

 

右手にブレードをコールした。相変わらず一夏は回避に専念するが、レーザーは少しずつだが確実にシールドエネルギーを削っていた。一夏の超人的な反射神経に対して、フォーマットとフィッティングが終了していない初期設定の零式はそれについて行けていない。それ故本来の力が発揮出来ないのだ。

 

(まだか・・・・糞・・・)

 

 

 

 

管制室の方では、千冬と真耶が戦闘の映像を見ていた。箒も特別にそこに留まる事を許されているらしく、食い入る様に画面を見つめている。

 

「ほえ〜、織斑君凄いですね。物凄く馴れている感じがするっていうか何と言うか。本当に初心者なんですか、織斑先生?」

 

「ああ。あいつはISを起動するのは、これで三回目程度だ。だが、あいつは元々武道をたしなんでいる。近接格闘に馴れるのは時間の問題だ。元々実戦形式の訓練で成果を出す人種でもある。今でこそぎこちないが、空中戦もすぐ馴れるだろう。」

 

「そ、そんなに強いんですか?!」

 

一度は世界最強の座を手にした先輩の言葉に、真耶は耳を疑った。だが千冬は薄ら笑いを浮かべて画面を見続ける。

 

「ああ。努力の天才だ。 あいつの培った技術は全て血の滲む様な弛まぬ努力の賜物だ。ISの方はどうか分からんが、生身での戦闘なら僅差であいつが私に勝つ可能性はある。」

 

「一夏は六年間一体何を・・・・?」

 

「色々あったのだ。守秘義務があるからそうとしか言えない。」

 

箒の疑問にに千冬は素っ気無く返した。

 

「だがこれだけは言える。あいつは善くも悪くも変わった。篠ノ之、お前も既に気付いているだろう?あいつがもうお前の知る織斑一夏では無いと言う事を。」

 

「それは、分かります・・・・あの強さは・・・・」

 

異常。箒はそうとしか思えなかった。全国大会で優勝を修める程の技能を持っている箒は、腕にそれなりの自信はあった。だがまるで子供があしらわれるかの如く、圧倒的な強さと格の差を見せつけられた。

 

「後五分位だな。オルコットの敗北の色が濃くなるのは。」

 

 

 

 

 

「誉めて上げます、初見で私のブルーティアーズ相手にここまで粘ったのは貴方が初めてですわ。ですが、近距離での勝負を挑もうなど、愚の骨頂!」

 

一夏が近付いた所で再びレーザーライフル『スターライトmkIII』の銃撃が一夏を襲う。

 

「そいつぁ分かんねえぞ?勝負ってのは終わって結果が出てこそだ。それより、棒立ちのまま撃つのはよろしくないんじゃないか?クレーの的より撃ち易いぜ?!」

 

何度も回避しながら近付き、後ろに回した左手にリボルバーをコールすると、引き金を引いた。ISが反動を殺してくれるお陰で拳銃の中では比較的威力と反動が高いリボルバーも連射出来る。撃った内の何発かはセシリアに被弾し、シールドエネルギーを削る事に成功した。

 

「小賢しいですわね、ハンドガン一丁で・・・・!!」

 

「ポットはまだ小さいがこう言う小さい勝ちが大当たり(ジャックポット)を呼んでくれる。(とは言った物の、向こうのシールドエネルギーは八割、こっちは半分を少し下回る位か。後五分、後五分だけ持ち堪えれれば・・・・)」

 

「調子に乗るのもここまでですわ!お行きなさい、ブルーティアーズ!」

 

セシリアの腰部のスカートパーツが四つ外れて自立行動を取り、一夏を攻撃し始めた。それを必死でかい潜りながら、一夏は次の手を考え始める。そして、何を思ったのかセシリアに向かって突貫を初めた。そして遂に、

 

『フォーマットとフィッティングが終了しました。ファーストシフトに移ります。』

 

一夏は光に包まれ、装甲の形状とが限り無くネガ色のエターナルに近い物になった。両腕の前腕部がオレンジ色のフレアマークに包まれ、ご丁寧に白いエターナルローブの色違いまでついている。

 

「武装が変わった。雪片・無限に、天幻。大当たり(ジャックポット)だ、セシリア・オルコット!!」

 

「ファーストシフト・・・・?!貴方まさか、今まで初期設定のままで?!」

 

「そうらしいな。反応速度が追っ付かない訳だぜ。ハイパーセンサーの感度は良好、エネルギーも装甲欠損も全て完全に回復した。様子見(チェック) はもうしない。中盤(ベンド)終盤(リバー)、続けてコール。オールインだ。」

 

形が変わって行くリボルバーを構え、続け様にビットを二つ撃ち落とした。そして新たなウィンドウが開く。

 

『ワンオフ・アビリティー「魂魄記録(ソウル・メモリーズ)」発動』

 

一夏の目の前に赤いH、金のL、緑のC、ネオンイエローのE、そして青白いRのアルファベットが合計五つ現れた。

 

「これって・・・・まさかな。」

 

一夏は試しに赤いHの文字を選択した。

 

『Heat!』

 

「やっぱり。燃えるぜ、バーニング!!」

 

頭の中に響いて来たガイアウィスパーまで同じだ。リボルバー、天幻の引き金を引くと、弾は火球となって残り二つのビットをバラバラに吹き飛ばす爆発を引き起こした。

 

「そんな!弾の性質が変わるなんて・・・・?!何なんですの、そのISは?!」

 

「正直言うと俺も分からん。でも、まだまだ行くぜ。」

 

一夏は再び接近しながら青白いRの文字を選択する。

 

『零落白夜・真!』

 

『シールドエネルギー転換率100%  零落白夜・真、発動。』

 

「千冬姉の暮桜と同じか。面白い。」 

 

特攻して行き、一夏はにやりと頬を緩めた。飛んで来るレーザーも全て霧散した。だが、セシリアも同じ様なしたり顔を見せている。一夏はそれに気付いて咄嗟に身をかわそうとした。

 

「おあいにく様、ブルーティアーズは合計で六機ありましてよ!」

 

残ったビット二つの攻撃と共に腰のスカート部分から二本の弾道ミサイルが放たれたが、一夏は相変わらず余裕の表情を保ったままだ。

 

「こんな時には!」

 

『Luna!』

 

「Let’s illusion!!」

 

リボルバーの引き金を引くと、再び弾の性質が変わった。六発の銃弾は曲がりくねった軌道を描きながらレーザーとミサイルに命中して爆発、相殺した。これにはセシリアも今まで以上に驚いた。最初にビットを撃墜した銃弾が衝撃によって爆発するタイプの爆裂鉄鋼弾だと考えれば説明はつくが、今回ばかりはそうは行かない。実弾兵器から放たれる銃弾の軌道が曲がるなど、映画の中でしかあり得ない現象なのだ。

 

「性質がまた変わった・・・・実弾兵器の弾の軌道を曲げるなんて非常識にも程がありますわ?!」

 

「ショーダウンだぜ!!!」

 

『Cyclone! 』

 

最後にセシリアの後ろに凄まじいスピードで回り込むと、目にも留まらぬ剣捌きでシールドエネルギーを完全に削り切った。

 

『試合終了!勝者、織斑一夏!』

 

ISを解除すると、一夏は突如襲って来た疲労感に思わず片膝をついた。

 

(変身した時とは大違いだな。馴れない事はするもんじゃないが、まあ良いや。)

 

「一夏!!」

 

ピットに戻ると、声を掛けられた。聞き覚えのある懐かしい声だ。

 

「一夏、だよね・・・・?」

 

「簪、なのか?」

 

IS学園の制服に、内側に少し跳ねた水色の髪と赤い瞳。髪はあの時よりも少し短めだが、間違い無い。間違える筈が無い。家に一晩泊めた後、去り際に告白して来た更識簪だった。

 

「うん、そうだよ。」

 

一夏は自然と彼女に手を伸ばし、その小柄な体を自分の方に抱き寄せていた。力を入れてしまえば間違い無く骨を砕いてしまうのでかなり加減してだが。

 

「ぅえ?!あ、ちょ・・・・・」

 

「俺もだよ?」

 

一夏は困惑する簪の耳元でそう囁いた。

 

「え?」

 

「あの時の、返事。俺も、その・・・・・簪の事が、好き・・・・だから。」

 

近付いて来る足音を強化された聴覚で拾った。恐らく箒や千冬達だろう。パッと離れると、簪の頭を優しく撫でてやった。

 

「また後で話そう?」

 

「う、うん・・・・・」

 

一夏は慌てて走り去り、簪も壁に背を預けて胸を押さえた。先程の接触で心臓が張り裂けそうな程にバクバク胸を打っている。

 

((信じられない・・・・・ここにいるなんて・・・・))

 

だが、簪は顔を赤らめながらも笑っていた。一夏の言葉が、ループして耳に残っている。

 

 

 

 

「中々見応えのある戦いだったな。楽しかったぞ。」

 

「そりゃ良かった。」

 

「そら、褒美だ。」

 

千冬は懐から銀紙に包まれたビターチョコを差し出した。

 

「食いもんで釣られるガキかよ俺は。まあ好きだから良いけど。いやいや、疲れたぜ。」

 

「あれだけの大見得切っておいてあのザマとはな。」

 

いつの間に千冬と合流して来たのか、箒はフンと鼻を鳴らしてアリーナの方を見やる。

 

「まあまあ、彼女にもそれなりの事情って物があるんだろ。負けて悔しいだろうから、今は放って置こう。勝者が敗者に情けをかけるなんて失礼過ぎるし。ほとぼりが冷めたら改めて話そうと思う。別に良いよな、千冬姉?」

 

「織斑先生だ、馬鹿者。」

 

「ぉうふ!痛いっす。」

 

千冬は指で額を小突いて訂正させる。

 

「だが、まあ、それが良いだろうな。今のあいつの心はボロボロだ。お前の所為だがな。」

 

「ちょいちょいちょい。俺はあくまで勝負を受けただけだなのに何で俺が悪者扱い?」

 

「冗談だ。そら、さっさとシャワーを浴びて部屋に行け。」

 

 

セシリアは試合が終わった後、誰にも見られない様に気を配りながら部屋に飛び込むと、シャワーの蛇口を捻った。

 

(負けた。負けて、しまった・・・・・)

 

溜まらなく悔しい。今まで自分が積み上げて来た努力が、彼を素人と高を括って侮ったが故に全て崩れ去った。シャワーの微温湯が込み上げる涙を隠しているが、それと一緒に漏れる嗚咽を隠す事は出来なかった。

 

(あの時、決めた筈ですのに・・・・・男には、負けない。母様の様な強い女になると!!なのに私は・・・・)

 

セシリアは壁に背を預け、崩れ落ちながら顔を両手に埋めて泣いた。

 


 
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