No.646753

チートでチートな三国志・そして恋姫†無双

第3章 北郷たちの旅 新たなる仲間を求めて

2013-12-21 00:35:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1592   閲覧ユーザー数:1392

第31話 宗教

 

 

 

 

 

 

「そう、そうだったね。宗教。“ナショナリズム”と並んでとても重要なものだ。ただ……。」

 

「“あの人のことを越えようとしているときに、また振り返り、真似させるようなことはやめてほしい”ですか?」

 

俺の言葉を遮り、福莱はそう言ってきた。どうして分かるんだよ……。

 

「ああ……。」

 

「ならば、ご主人様の言葉で語ればよろしいではありませんか。その方の仰ったことをそのまま繰り返すのではなく、自分の言葉で。でも、今回は勘弁してあげます。」

 

そう言うと福莱は微笑んだ。

 

「いや、やってみる。」

 

まず何をすべきか……。考えろ。福莱たちに説明する方法……。そうだ。評論の流れ、具体→抽象。要は具体例を使おう。

 

「甄、カバンを貸してくれ。」

 

「? わかった。」

 

「カバ……? ン……?」

 

俺は彼らのように全てを頭の中で考えて説明するなんて不可能だ。ノートとシャープペンを使おう。

 

「久々に見ますね……。“天”の道具。」

 

「天の道具?」

 

「ええ。ご主人様の世界の道具です。我々では到底作ることはできません。ノートとシャープペンといいます。」

 

「のおと? しゃあぷぺん?」

 

「見れば分かるよ。」

 

 

 

指導者:張角

 

付き人:張宝・張梁

 

“聖水”を飲み、“太平道”を信じさえすれば病気が治る

 

 

そう書いた。

 

? 福莱が固まるのは当然として、どうして愛紗まで困惑の表情を浮かべているのだろう?

 

「ご、ご主人様? い、一体何と書いたのです?」

 

「え? 指導者:張角 と。」

 

「その下です。」(※1)

 

愛紗が指し示したのは“き”だった。

 

まさか……。

 

「なあ愛紗、“付き人”って書いて貰えるか?」

 

「? わかりました。」

 

そこに書かれたのは漢文だった。返り点も送り仮名もない。白文だ。しかも、今は後漢。冷や汗が出てきた。明治時代の重臣、副島種臣(そえじまたねおみ)は隋・唐代の漢文が読めたという。そのレベルよりさらに難しいのだ。絶句するしかない。読みはともかく、書きをこなすには学者以上の知識が必要だろう。

 

 

……。幸いにして言葉は通じるのだ。俺が読み上げて愛紗に書いてもらうか、愛紗に読み上げてもらって理解すればそれでいい。……。いや、その役目は女媧でいいか。“付き人”だし、それくらいはやって貰おう。このことで愛紗を煩わせてはいけない。

 

それより……。

 

「福莱、どうしたの?」

 

「……。ご主人様は普段、これで何をしていらっしゃるのですか?」

 

「勉強、かな。」

 

「すごく……。羨ましいです……。」

 

 

 

「それで、このまやかしが何だというのです?」

 

「まやかしじゃないんだ。これが“宗教”の怖さだ。」

 

「“聖水”などあるわけがないでしょう!!」

 

「いや、あるよ。やってみせようか。」

 

「?」

 

俺は愛紗の前に水を差しだした。

 

「はい、聖水。」

 

「あまり馬鹿にすると許しませんよ。」

 

「俺の言うこと、信じられない?」

 

「え?」

 

「俺のことを信じて飲めば愛紗の病気は治るよ。」

 

「え? 私、病気などには……?」

 

戸惑っているな。よし。もう一押し。

 

「飲んでごらん。」

 

愛紗は飲んだ。

 

「何も変わりませんが……。」

 

「俺のことを信じきれていないからだよ。はい、もう一杯。」

 

「ご主人様。」

 

「福莱?」

 

福莱は少し青ざめていた。ちょっとショックが大きかったかな。

 

「つまり、“聖水”を飲み、太平道を信じさせすれば病気が治る……と喧伝し、治らないと訴える人物には信仰心が足りないから……と言うわけですね。」

 

「ああ。」

 

愛紗は顔面蒼白だった。

 

「私がああなってしまうとは……。しかし、あれだけの軍勢になるには相当の資金が必要なはず。どうやって……。まさか!?」

 

気づいたようだ。

 

「勿論。“聖水”を無料で配るとでも?」

 

「いや、それだけではない。」

 

と、珍しく女媧が話に割って入った。

 

「それもあるが……。”鍵”が使われている。“鍵”に関しては後で説明する。その時は悪いが愛紗、福莱、お前たちは私が呼びに行くまで席を外していてくれ。」

 

女媧にしては珍しく、苦々しい口振りでそう告げた。猛烈に嫌な予感がした。でも、今は無視だ。

 

「それでね、宗教にはもう一つ恐ろしい点があるんだ。社会が不安定になると強大化する……という点が。」

 

「? 社会が不安定になると強大化する?」

 

「何故ですか?」

 

愛紗も福莱も意味が分かっていなかった。

 

「社会が不安定になると、縋るものがなくなるんだ。すると、その縋るものとして、心の拠り所として、人々は宗教を求めていく。」

 

「よく……分かりません。」

 

「ええ……。」

 

2人とも困惑していた。

 

「本当に?」

 

「はい。」

 

2人ともそう答えた。

 

仕方ない。少し意地悪くいこう。

 

「愛紗や福莱は一番よく分かる筈なんだけどなあ……。」

 

「?」

 

「!!」

 

それでも愛紗は意味が分かっていないようだった。福莱は顔を強張(こわば)らせた。

 

「”天の御遣い”

 

ある種の宗教だよ。」

 

「それは……。ですが、ご主人様は」

 

「俺がどう……とか、そういう問題じゃないんだ。わかるかな? もし、この世界が平和で、戦乱なんてなくて、みんな”笑って暮らせる”ときに”天の御遣い”が空から降りてくる占いがでたらどうする?

 

胡散臭い、怪しい奴……って思うよね。普通はそう思うはずなんだ。でも、社会が不安定になるとそういう常識が働かなくなる。戦乱を、乱世を静めてくれる存在があるのならばそれに縋りたくなる、そう思う人が出てくる。今回は、本来ならば動くはずもないような人物が6人も動いた。」

 

 

「だから、水鏡先生は止めたんですね……。」

 

「止められたの?」

 

「最初は大喧嘩になりました。破門寸前です。でも、私たちの決意が揺らがないのを見て、桔梗さんを紹介してくれて許してくれました。何とか、したかったですから。」 (※2)

 

「……。今回の旅で謝りに行こう。俺も挨拶に行くよ。」

 

気づいている人は気づいているんだ。流石だ。

 

 

 

そう、福莱から話を聞いて不思議だった点。どうしてそれだけの頭脳の持ち主が怪しさ満点の奴のところに超優秀な学生を3人も送り出したのか。一応、護衛として桔梗さんをつけたとはいえ、あまりに不用心だ。

 

その謎も解けた。福莱たちが強引に突破してきたのか。

 

 

 

 

解説

 

※1:“指導者”は合っていることにします。筆者はそこまで漢文に詳しくありません……。

 

※2:“破門”が正確な表現かどうかわかりませんが、わかりやすいので使わさせて頂きました。

 

 

 

 

後書き

 

 

先に謝っておきますが、次話は本当に胸糞悪くなります。筆者も嫌になりつつ書いています。それでもどうしても・・・という話なのです。

 

20日投稿に間に合わなかった・・・。 すみません。


 
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