No.644322

恋姫婆娑羅

KGさん

なんだか久しぶりの投稿の気がしないでもない。

今回で主要メンバーがそろいます! いやーマジで長かった!

それではどうか楽しんでお読み下さい

2013-12-11 00:09:52 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:2821   閲覧ユーザー数:2521

「二つの頭脳」

 

 

 

 

 

 

 

南皮との国境にほど近い曹操の領内のとある小さな城の前では、現在、三万を超える袁紹の軍勢が陣を張っていた。

その本陣では、袁紹、文醜、顔良の三人が何やら論議を繰り返している。

袁紹の命令で国境で最も防御の薄いこの地点を探して来た顔良が何やら攻められているようだ。

 

「斗詩・・・。確かに私、防御が手薄な所を見つけて来いと言いましたけど・・・・いくらなんでも少なすぎません?」

 

「えー せっかく良い所を見つけて来たのに、ダメだしですか~!?」

 

「な~んかつまんないな~・・・。どうせならもっとこう、十万くらい敵がいる所とかを選べば良かったのに!」

 

「・・・それはいくらなんでも負けちゃうよ~」

 

どうにも派手好きな袁紹と文醜が敵の規模に不満があるらしい。

実際、顔良が見つけて来たこの城には千にも満たない程度しか兵士がいなかった。

これから曹操の本拠地を攻めるならば当然、初戦で戦力を削がれるのは得策では無いのだが、どうにもあの二人にはそのような思考は無いらしい。

この面子で唯一の頭脳派である顔良は主君と同僚の悪癖に頭を抱えざるを得ない。

 

「まぁ良いですわ。そんなしょぼくれた相手なんかサクッと蹴散らして、私の力を示しておあげなさい猪々子さん!」

 

「へーい!」

 

「はぁ・・・」

 

袁紹の命令にお気楽に答える文醜と先行き不安な顔良は出陣のため準備に取り掛かるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、曹操の城では兵士たちが慌ただしく動き周り出陣の用意を整えていた。

 

「糧食は後続に持たせろ、我々が持つのは最小限で良い! とにかく機動力を高めろ!」

 

忙しなく動き回る兵士たちの中心では春蘭が激を飛ばし、さらに彼らを急がせる。

 

「ちょっ! 惇ちゃん、何やってん!?」

 

「見て分からんか! 出撃の準備だ!」

 

庭から聞こえる喧騒に引き寄せられた霞が驚愕を隠そうともせず春蘭に問う。

先の軍議に参加していたはずの春蘭が起こしているこの行動が信じられないと言った様子である。

 

「出撃って・・・。そんなん華琳に禁止されてたやんけ!」

 

「ふん、袁紹ごときに華琳様の領土を穢されて黙っていられるものか! 華琳様がお許しになっても、この夏候元譲が許さん!」

 

「ド阿呆! ホンマに猪も大概にせぇや! 命令違反がどうなるか分かってんねやろ!」

 

「華琳様のためならこの首の一つや二つ・・・何も惜しくは無いわ!」

 

完全に頭に血が昇っている春蘭は霞の制止も聞かずに準備をやめる気配が無い。

そして最悪のタイミングで一人の兵士が出撃の用意が出来た事を春蘭に伝える。

 

「よし、ならば先発隊、出るぞ!」

 

「はっ!」

 

「あっ! 待ちぃや!」

 

ついに霞の制止を振り切って馬に跨り、隊を率いて出撃しようとする春蘭であったが、その目の前に一人立ち塞がる者がいた。

 

「・・・おい、これからどこに行くつもりだ、春蘭?」

 

「か、片倉・・・。どけぇ! 私は華琳様のために・・・!」

 

「お前には稽古の度に言っていたはずなんだがな・・・。どうやらまだ分かってなかったようだな」

 

静かに、しかしてドスの効いた声色に春蘭はもとより、後ろに続く兵士たちも怯えだす。

その様子を見た小十郎は一つため息を吐くと目の前のバカを諭すために行動するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「文醜様、兵の配置、完了しました」

 

「んー」

 

兵士の報告に面白くなさそうに返答する文醜。

 

「なんだか、面白くなさそうだね・・・文ちゃん」

 

「あったり前だろー。ガキと喧嘩して勝てって言われて、やる気が出る奴なんているもんか」

 

「もぉ。・・・でも千かぁ・・・」

 

目の前の城を落とすために袁紹は自身の近衛以外の全兵士を展開させていた。

この規模であれば半日と掛からずに城は落ちるだろう。

弱い者いじめのようで気が引けていた二人に本陣より伝令の兵が走って来た。

 

「袁紹様より伝令です! 速やかに攻撃行動を開始するようにとの催促が!」

 

「うー・・・・」

 

「どうする、文ちゃん?」

 

「うーん、正直、百万くらいいると思って、とにかくぶち当たれば良いやー、くらいに考えてたのに・・・。千だぜ、千! この萎え萎えになったやる気、どうしてくれるんだよー」

 

「い、いや・・・百万はいくらなんでも無理・・・」

 

自分の想定していた戦いと真逆の状況にやる気を無くす文醜と、想像であっても無茶な事を言う同僚に呆れる顔良だった。

しかし、いつまでもこうしている訳にもいかないと文醜が声を上げる。

 

「よーし、決めた! 斗詩、全軍に通達! これより行動を開始する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「説明してもらおうか、春蘭? これは何の冗談だ?」

 

鋭い眼光で春蘭を見据え、小十郎は問う。

軍議にて華琳が出撃を禁じたのは、曹魏の将兵であれば周知の事実である。

華琳の右腕たる春蘭が知らないはずは無いし、この命令を破ればどうなるか知らないはずも無い。

 

「そ、それは・・・いかに華琳様の決断とは言え、今回の件、納得できない! 袁紹ごときに華琳様の領土を穢されるなど・・・あってはならんのだ!」

 

「・・・それで、兵を動かした訳か・・・」

 

「そうだ! 華琳様のためならば、私の命など惜しくは無い!」

 

春蘭の言葉を聞いた小十郎は、思わずため息を吐いてしまう。

いつも稽古では氷のように冷静になれと教えてきたはずなのだが、まるで実践出来ていない。

武芸の方はメキメキと上達しているのだが、頭の方はまだまだ未熟である事が今回で分かった。

これからの教育方針が定まった小十郎であったが、今は目の前に問題を片づけなければならない。

 

「やれやれ・・・。お前にはやはり座学を中心に勉強させるべきだな。良いぞ、出撃しろ」

 

「片倉っ!」

 

「おいおいおいっ!? それでええんか?」

 

案外、あっさり出撃を許した小十郎に嬉しそうな表情をする春蘭と、それで良いのかと焦る霞。

 

「だが、これだけの兵を連れていくのは許可できねぇな。お前の最精鋭・・・まぁ、三百もいりゃ十分だろ」

 

「さ、三百て・・・いくらなんでも無茶やろ!」

 

「城の兵士と合わせりゃ千になるんだ。これで勝てないようなら、お前の力量で足りない部分は補ってみろ。真に華琳の事を思ってんならこれくらいやって見せろ。・・・出来るか?」

 

「・・・・・」

 

「しゅ、春蘭・・・」

 

はっきり言って小十郎の言っている事は無謀と言う他無い。

何せ、三万の敵を千の手勢で退けろと言っているのだ。

 

「どうなんだ? 出来るのか? お前の言う忠義はこの程度のものなのか?」

 

「・・・華琳様への忠義を全うするのに多勢はいらん! この戦でそれを証明してやる。見ていろ片倉! 総員、騎乗!」

 

「こらっ! 春蘭!」

 

「腕に覚えのある者だけ私に続け! ただし、城を出た時に三百を超えた者は置いていくぞ! 出撃!」

 

春蘭が号令を飛ばし、彼女に付き従う兵士たちは遅れまいと我先についていく。

そうして春蘭の姿が完全に見えなくなった時、霞が憤りながら小十郎に詰め寄る。

 

「片倉の兄さん! いくらなんでも酷過ぎやで? 七百が千になったかて三万相手じゃ足しにもならへんで!」

 

「良いんだよ、どうせあいつが着く頃には終わっているだろうからな・・・正直、三百でも多いくらいだ。」

 

「・・・それってどういう・・・?」

 

「要するに、心配する必要は無いって事だ。ほら、お前も仕事に戻れ、野盗の討伐を任されていたはずだろう?」

 

そう言って背を向けて歩いて行く小十郎。

その背中をただただ見送る事しか出来ない霞であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春蘭が城を出てからすっかり日も落ちた頃。

そろそろかと時間を見計らい城壁の上へと足を向ける小十郎。

するとそこには思わぬ先客が二人いた。

 

「あ、おっちゃん・・・」

 

「・・・どうしたんだ二人とも眠ないのか?」

 

「はい。季衣が眠れないらしくて・・・」

 

「そうか・・・」

 

季衣の心配も尤もであろう、春蘭は季衣を良く可愛がっていたし、季衣もまたそんな春蘭を慕っていた。

 

「それにしても小十郎様はどうしてここに?」

 

「ああ、俺の予測だとそろそろだと思ってな」

 

「・・・? 何がそろそろなのおっちゃん?」

 

訝しそうに見てくる季衣を優しく撫でながら小十郎は言う。

 

「まぁ、見てろ。心配しなくても春蘭は無事だろうぜ」

 

「その通りだな」

 

突然、三人の後方から声が聞こえて来た。

驚いたように確認する季衣と流琉。

 

「秋蘭様! どうしたのですか?」

 

「いや、私の予測だとそろそろだと思ってな」

 

「・・・秋蘭様もおっちゃんと同じ事を言ってる・・・」

 

困惑する季衣と流琉を尻目に小十郎と秋蘭は地平線を見つめる。

 

「・・・・あれ?」

 

「ん? どうかしたの?」

 

「・・・来たな」

 

「うむ、そのようだな」

 

城壁から身を乗り出すように季衣は指を指す。

指し示す先にはもうもうと砂煙が立ち昇っている。

あの規模からすると夜を徹して駆けてくる伝令の類いでは無い。

 

「旗印は・・・夏候です! 春蘭様ですよ!」

 

「本当に春蘭様!? 今日、出撃したのに・・・速すぎじゃないの?」

 

「戦ってねぇんだろ」

 

「えっ! それってどういう・・・」

 

「とにかく門を開けて、姉者を出迎えてやらねばな」

 

秋蘭の言葉に従い、皆、城門へと向かう。

門を開けると出撃した時よりも多くの兵士が帰還していた。

 

「春蘭さまー!!」

 

「おお、季衣か・・・」

 

春蘭を発見した季衣は喜びを隠すことなく、彼女に飛びつく。

一方、春蘭は何やら腑に落ちてないような表情をしていた。

 

「どうだった、春蘭」

 

「あっ! 片倉っ! お前、こうなる事を知っていたのだろう!」

 

小十郎が声を掛けると、季衣との再会もそこそこに春蘭が詰め寄ってくる。

見た所、彼女の武具にも防具にも戦をした形跡は見られない、当然、連れて行った三百の兵士もだ。

 

「まぁ、半分は予測だったがな。どうやら当たったようだ」

 

「予測って・・・。そんな事が出来るのか?」

 

「袁紹の性格と状況の把握が出来ていればな、華琳もそれが分かっていたからあんな命令を出したんだろ?」

 

「うぐぐ、お前に色々と教えてもらっているのに、私には解らなかったぞ・・・」

 

「それは、お前が座学を真面目に受けないからだろ・・・」

 

「ぐぅ・・」

 

呆れ半分で春蘭を見る小十郎に、心当たりがあるのか二の句を継げない春蘭であった。

 

「まぁ、そんな事は良いが、件の人物は連れて来たんだろ?」

 

「ん? あ、ああ! もちろんだ! 程昱、郭嘉、これから華琳様の下へと案内する。ついて参れ!」

 

「は~い」

 

「わかりました」

 

春蘭の言葉で兵士の群の中から少女が二人歩み出して来た。

その人物を見た小十郎は目を見開く。

 

「・・・・存外、世間と言うものは狭い物なのかもな・・・」

 

どうやら、二人は気づいてないようで素直に春蘭についていく。

小十郎はその二人の背中を見つつ思わぬ再開に小さく呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって袁紹軍本陣では、困惑したような表情で部下の報告を聞く袁紹の姿があった。

曰く、千にも満たない軍勢を叩き潰した所で袁紹の名声に傷が付くだけだから、後日、改めて正々堂々と事を構えた方が袁紹らしいとの事だ。

最初は、戦わずに帰って来た部下に一つ説教でもしてやろうかと思っていたが、この言葉に気を良くする。

 

「確かにその通りですわね・・・。この大軍団で、千を蹴散らすと言うのも、大! 将! 軍! たる袁本初にしてはあまりに大人げない行為ですわ!」

 

「偵察にこれだけの大部隊を連れてくるのは、大人げなくないのかね、斗詩?」

 

「十分、大人げないと思うけどなぁ・・・」

 

「そこっ! 何か言いまして!」

 

「「何も言ってませーん」」

 

「なら良いですわ! 斗詩さん、周囲の地形はしっかり記録したのでしょう?」

 

「はいっ!しっかりと!」

 

顔良の言葉に満足気に頷いた袁紹は、最早、こんな場所は用済みと全軍に撤収の指示を出す。

次に会う時が華琳の最後だと高笑いする袁紹の声と共に、彼女らは南皮へと帰って行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中に緊急軍議が開かれ、城にいた曹操軍の主要なメンバーが玉座の間に集まっていた。

華琳が玉座に座り、その前に程昱と郭嘉がいる。

 

「それでは、説明してもらおうかしら? どうして程昱は増援はいらないと?」

 

「・・・ぐーZZZ」

 

「こらっ! 風! 曹操様の御前よ! ちゃんと起きなさい!」

 

「・・・おおっ!?」

 

この状況で眠りこけていた程昱を郭嘉が叩き起こす。

普通ならとんでも無く失礼な行為だが、華琳は特に気にする事も無く、言葉を促す。

 

「あー・・・えっとですねー、相手は数万の袁紹軍であったわけですが。前線指揮官の文醜さんは派手好きですから、たった七百の敵なんて、相手にしたくないだろうと思ったのです。ですが、ここで曹操様が増援を送って下さったら向こうも喧嘩を売られたと思いますよねー。袁紹さんの性格だと、売られた喧嘩は絶対買っちゃいます。・・・そしたらこっちは全滅してしまいますねー」

 

「ふむ・・・」

 

「なるほど、袁紹と文醜の性格は良く分かっているようね・・・。では、顔良が出てきたら?」

 

桂花は程昱に話に納得しつつも、自分の疑問をぶつけていく。

 

「あの三人が出てくれば、顔良さんは必ず補佐に回ります。でないと抑えが効きませんからー」

 

「・・・分かった、春蘭? あなたも小十郎や秋蘭のようにもう少しだけ聡明になる必要があるわね?」

 

「うう、申し訳ありません・・・。しかし、もし袁紹が七百の手勢を与し易しとみて総攻撃を仕掛けてきたらどうしていたのだ?」

 

「損害は砦一つと、兵七百だけで済みますね。相手の情報はすでにそちらに送っていたので無駄死にでは無いですし、袁紹さんの風評操作にも使えたと思いますけど」

 

「そうなれば、お前は逃げるつもりだったのか?」

 

「まさか。その状況で逃げ切れるなんてこれッぽっちも思っていませんよ~」

 

「むぅ」

 

程昱は春蘭の疑問にさらりと答える。

この考えだけを聞いていたならばとてつも無く無謀な策であったように聞こえてくる。

 

「郭嘉。あなたは程昱の作戦をどう見たの?」

 

「・・・・・」

 

「郭嘉、華琳様のご質問だ。答えなさい」

 

「・・・・ぶはぁっ!」

 

華琳の質問を無視したかと思うといきなり鼻血をふき出し倒れてしまった郭嘉。

あまりにも唐突な事態に皆、反応が遅れる。

 

「ちょっお主、大丈夫か!?」

 

「Oh・・・it's crazy・・・」

 

「誰か!救護を呼べ、救護!」

 

一気に騒然となる場で程昱だけは落ち着いて郭嘉のうなじ辺りをトントンと叩いている。

手馴れている所を見ると、どうやらこの鼻血はかなり頻繁にあるようだ。

 

「・・・うう、すまん」

 

「郭嘉さん、何か持病でも・・・?」

 

「いいえ、稟ちゃんは曹操様のところで働く事が夢だったので、きっと緊張で鼻血が出てしまったのでしょうねー」

 

「難儀な体質だな・・・」

 

「大丈夫かしら、郭嘉とやら?」

 

ようやく立ち直って来た郭嘉に華琳が声を掛ける。

郭嘉は少し、恥ずかしそうに自身の無事を伝える。

 

「・・・無理なようなら後日でも構わなくてよ?」

 

「そ、曹操様に心配して頂いている・・・・・・ぶはぁ!」

 

「Give me a break・・・・。 とりあえず衛生兵でも呼んで来い・・・」

 

「程昱・・・代わりに説明してくれるかしら?」

 

本日二度目の大量出血に心配を通り越して呆れてしまった華琳は程昱に説明を求める。

 

「は~い。・・・稟ちゃんは最悪の事態になれば、城に火を放って、皆で逃げようと考えていたようですねー。七百の兵なら十分可能ですからねー」

 

「確かに、これが三千の兵であったならその策は使えなかっただろうな・・・まぁ、何にせよ春蘭の増援は要らなかった訳だ」

 

「では、何故、行かせたのだ片倉?」

 

「二人を城まで連れてくる護衛って所だ。それにお前は実際に見て、感じないと納得しないだろう?」

 

「むぅ・・・それはそうだな・・・」

 

こうして、一通りの説明が終わると秋蘭が袁紹に関しての報告をする。

 

「華琳様、今、報告が入りまして、袁紹は南皮に引き上げたようです」

 

「そう、こちらの損害は?」

 

「ありません。しいて言えば、周囲の地形を確認されたくらいですね」

 

「それは偵察を受ければ当然のことね。被害の内には入らないわ。見事な指揮だったわ、程昱、郭嘉」

 

「ありがとうございますー」

 

「・・・・ふが、ふが」

 

華琳の称賛に答える二人であったが、鼻血のせいでどうにも締まらない事になっている。

そんな二人に微笑みながら、華琳は彼女らに自身の軍師として働くように告げる。

その言葉に真っ先に反応したのは桂花であった。

 

「華琳様っ! それは・・・!」

 

「別に桂花が不要になったわけでは無いのよ? 軍も大きくなって来て、これからは複数の局面を指揮する必要になってくるはず、そうなった時、将は足りても軍師がいないでは済まされないでしょう?」

 

「私はいくつもの戦局を支えて見せます!」

 

「そうやって無理して、自分から崩れていった軍師を何人も知ってますけどー?」

 

「全くだ、一人の力には限界がある。・・・それにお前はここ最近ろくに休んでいないだろ?」

 

「うっさいわ! ヤクザ者に言われたくないわよ!」

 

激高する桂花であったが、次に発せられた華琳の言葉で鎮静化する。

 

「桂花、二人の言う通りよ。私はあなたにそうなって欲しくはないの・・・そんなに心配なら、今宵はその体にしっかりと教え込んであげようかしら?」

 

「か、華琳様! ・・・はい。私めの体に、華琳様のお気持ち・・・沢山教え込んで下さいませ・・・」

 

展開される百合畑の光景に政宗と小十郎は苦い顔を隠せない。

他の面子は何やら羨ましそうな表情をしている。

 

「では、今日の軍議はここまでにするわ。程昱と郭嘉には部屋を与えるから好きに使いなさい」

 

「じゃあ、程昱と郭嘉は俺が案内するぜ?」

 

「あら? あなたが率先してそんな事をするなんて珍しいわね?」

 

「まぁな・・・あの二人に少しばかり話があるもんでな」

 

「・・・ふぅん、まぁ良いけど・・・」

 

こうして軍議は解散となった。

政宗と小十郎は程昱と郭嘉を引きつれ玉座の間を後にする。

ただ、部屋から出るとき華琳の機嫌が急に悪くなったような気がした政宗であった。

 

 

 

 

 

 

 

「You doing OK? 久しぶりだが・・・俺らの事は覚えてるか?」

 

部屋に案内する道中に政宗は二人に訊ねる。

 

「もちろんですよー。まさかあの時のお兄さん方が華琳様の下にいるとは思いませんでしたけど。曹魏筆頭、魏の独眼竜とその右目、他にも魏の双竜って言われている方がいるとは聞いてましたけどお兄さん方の事だったんですねー」

 

「・・・ほぉ、中々Coolな呼ばれ方してるじゃねぇか」

 

「そういえば、あの時の陳留の刺史は曹操様だったわね」

 

「そうだな、あの後、政宗様と共に華琳の所で世話になっている。それにしても二人とも名前を変えたのか?」

 

「ああ、あの時、稟ちゃんは偽名でしたので、それと風は素晴らしい夢を見たので、それに倣って士官が叶った時に改名したのですよぉ」

 

「ほぅ、良い夢をか・・・」

 

現代人からすれば、そのような事で改名するなんてと思うだろうが、このような時代、時勢であれば特に珍しくもない行為であった。

その為、政宗も小十郎も特に気にせず話を続ける。

 

「まぁ、これからよろしく頼むぜ?」

 

「政宗様、共々よろしく頼む」

 

「はーい、よろしくなのですー、お兄さん方」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。政宗殿、小十郎殿」

 

こうして、曹魏に程昱と郭嘉と言う新たな頭脳が加わった。

これから、曹魏もさらに発展していく事だろう。

 

「はてさて・・・これからどんなpartyがおっ始まるのかねぇ・・・」

 

「政宗様、ご自重なされよ・・・」

 

「やれやれ、相変わらずかてぇー奴だなお前は・・・」

 

程昱と郭嘉を部屋に送り届けた政宗と小十郎は夜空に浮かぶ下弦の月を眺めながら呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

これで、魏のメンバーが全て出そろいました! ここ最近、更新出来なかったのは卒論のせいです。

クソッ! 卒論、クソッ! 卒論なんて大嫌いだ!

 

とまぁ、卒論も一段落したので、サクサク更新していきたいですね! 次回は拠点話です。

 

次のお話もどうぞ良しなに!

 

 

 


 
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