No.643506

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第十五話


 お待たせしました!

 今回は拠点第二弾です。

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2013-12-07 21:37:03 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:9417   閲覧ユーザー数:6487

 

「お兄ちゃん、お仕事お疲れ様。はい、どうぞ」

 

「ありがとう璃々」

 

 俺は璃々から手渡されたお茶を飲んで一息入れる。

 

 此処は天水の中心街にある茶店である。俺は董卓さんに任された仕事が

 

 終わった後、璃々達を連れて此処に来ていた。何故『達』なのかという

 

 と…。

 

「ああ~っ、いいなぁ~。璃々、たんぽぽにも頂戴~」

 

「蒲公英…あなたの所にはもうお茶はあるでしょうに」

 

「分かってないなぁ~輝里姉様は。璃々から貰うから美味しさも倍増する

 

 んじゃない。ねぇ、一刀お兄様♪」

 

 蒲公英のその言葉に俺は苦笑いを浮かべ、輝里はやれやれといった顔を

 

 していた。

 

 ちなみに何故二人が一緒にいるのかというと、

 

「たんぽぽは伯母様に言われて月との連絡役で天水に駐在する事になった

 

 からだよ!」

 

「蒲公英…いきなり何を言い出してるの?」

 

「まぁまぁ、輝里姉様もほら♪」

 

「…ええっと、私は月様に言われて正式に客将となった一刀さんの補佐役

 

 になったからです…って本当に誰に説明してるのよ、これ?」

 

 …少々メタ発言ではあるが、以上のような理由である。ちなみに蒲公英

 

 は本来は董卓さんと馬騰さんとの連絡役のはずなのだが、何故か普段は

 

 何だかんだと理由をつけては俺達といる事が多い(既に真名は預かり済

 

 である)。

 

 実は此処にはさらにもう一人いて、

 

「私も本当に良かったのですか?」

 

「何言ってるの、沙矢(さや)だって頑張ったんだから当然でしょ?」

 

 申し訳無さそうな顔をして座っていて蒲公英にそう言われている沙矢と

 

 呼ばれたこの女性は、実は前に馬騰さんの所に行った時に催眠薬を使っ

 

 て情報を聞き出したあの侍女さんである。

 

 俺が天水に戻ってきてしばらく経った後、突然に現れて『馬騰様の所か

 

 らは暇を頂戴しました。今日から北郷様のお側近くでお仕えさせてくだ

 

 さい!』と言われた時は驚きの一言だったのだが…。

 

 

 

 ~回想~

 

「俺に仕えるって…俺は董卓さんの客分に過ぎないし、ちゃんと面倒みて

 

 あげれるような収入だって無いんだけど…」

 

「大丈夫です!馬騰様の所で働いていた時の給金はあまり使わずに貯めて

 

 ましたから、自分の食費の一年や二年分位へっちゃらです!」

 

 侍女さんはそう言って胸をドンと叩いていた。

 

「あっ、そういえば…私の真名は『沙矢』ですので今日からそう呼んで下

 

 さいね」

 

 ええっと…俺をおいてどんどんと話が進んでいるような気が。とりあえ

 

 ずこのままでは何だし…。

 

 ・・・・・・・

 

「はぁ、それで私に相談を…」

 

「申し訳ない、俺一人で決めかねる所があったもので」

 

 俺は董卓さんの執務室に相談に来ていた。

 

「私からこのような事を言うのも不謹慎かもしれませんが、董卓様からも

 

 お願いしてください!私は、もう北郷様以外の方にお仕えするつもりは

 

 無いのです!」

 

「へぇ~っ、一刀は随分慕われてるんやな~」

 

 たまたま近くにいた霞がからかう様な口調でチャチャを入れる。

 

「話は分かりました。でも北郷さんは実際身の回りの事はご自分でされる

 

 様子ですし、侍女の働きどころは無いですよ?」

 

「実はこう見えても私は少々武芸の方にも自信がありまして!護衛も出来

 

 ますのでご安心を!」

 

 確かに沙矢さんは槍を持ってきていたけど…本人には悪いがあまり強そ

 

 うには見えない。

 

「へぇ、武芸にね…ならウt『それなら私が腕試しをしてやろう』…おい

 

 華雄、いきなり来て何ウチの台詞取ってんねん!!」

 

 

 

「何を言うか、張遼。この者の腕を見るというのなら私の出番だろう」

 

 いきなり現れた華雄さんはそう言ってそっくり返っていた。

 

「うう…せやかて」

 

「私としてはどちらでも!むしろ高名なお二人のどちらかとでも手合わせ

 

 出来るのなら光栄です!」

 

「それではまずは華雄さんにお願いしましょう」

 

 董卓さんのその一言で沙矢さんと華雄さんが手合わせする事になったの

 

 だが…大丈夫か?普通に考えたら華雄さんに秒殺されそうだが。

 

 ・・・・・・・

 

 その約四半刻後、鍛錬場にて。

 

「か、華雄が負けた…嘘でしょ?それに始まってからまだそんなに経って

 

 ないわよ!?」

 

 そう叫んでいたのは話を聞いて見に来ていた賈駆さんであった。

 

 そう、手合わせが始まると同時に完全に沙矢さんの方が華雄さんを圧倒

 

 してしまい、ものの数分で沙矢さんの勝ちが決まったのである。しかし

 

 あの華雄さんを此処まで圧倒するなんて彼女は一体何者なんだ?

 

「ほほぅ…まさか華雄相手に此処までとはなぁ。なら次はウチが相手や!」

 

 沙矢さんの予想外の腕に抑えが効かなくなったらしい霞が出てくる。

 

「待て霞、彼女は今華雄さんと手合わせしたばかr『大丈夫です。やれま

 

 すから』…そうですか」

 

「よっしゃ!それじゃ行くでぇ!!」

 

 

 

 それから一刻後。

 

「嘘…霞とこんなに長い時間互角に渡り合えるなんて」

 

 賈駆さんが本日二度目の驚きの声をあげていた。

 

 正直、俺ももう驚きしかない。まさか此処までとは…本当にこの人侍女

 

 だったのか?

 

「くくく、こないに楽しいのは一刀との模擬戦以来や!まだまだ行くでぇ!」

 

 霞は余程楽しいのか薄ら笑いを浮かべながら戦っている。

 

「こっちこそまだまだです!てぇぇーーーい!」

 

 沙矢さんの方もまだまだ元気そうに戦っているのでこれは何時終わりを

 

 迎えるのか予想がつかない程になっていた。

 

「二人とも強い…ほとんど互角」

 

 そう呟いていたのはこれまた話を聞いて見に来ていた呂布さんであった。

 

 呂布さんにまでそう言わせるって…何故沙矢さんは今まで侍女なんかし

 

 てたのだろう?これだけの武があるのなら馬騰さんの所でも重く用いて

 

 くれるだろうに。

 

 俺がそんな事を考えながら見ていたその時、霞の一撃が沙矢さんの槍を

 

 弾き飛ばす。

 

「ま、参りました…さすがは張遼様です」

 

「よっしゃ、ウチの勝ちやな。でも、あんたもなかなかの腕や、結構ヒヤ

 

 ヒヤもんやったで!」

 

 そう言って二人はがっちり握手をしていた。

 

「ふふ、これなら北郷さんの護衛も十分務まりそうですね」

 

 それを見ていた董卓さんがそう言うと、

 

「そ、それじゃ…私、北郷様にお仕えしても良いのですね!?」

 

 沙矢さんはそう嬉しそうな顔をしながら聞いてくる。

 

 

 

 

「それは、北郷さんの決める事ですよ」

 

 ううっ、此処で俺にふるか…でも、此処まで言ってくれるのを無下に断

 

 るわけにもいかないだろうし…。

 

「本当に俺で良いのですね?さっきも言いましたけど俺の収入じゃ『それ

 

 ならご心配なく』…どういう事です、董卓さん?」

 

「北郷さんさえ良ければ客将として遇したいと思ってます。それなら収入

 

 も今よりグンと上がりますし」

 

 客将か…正式に召抱えるとか言わないのは命達の事を考えての事だろう

 

 か?確かに何時までもただの客分ではな…よし!

 

「分かりました、俺で良ければよろしくお願いします。沙矢さん、本当に

 

 客将の家臣で良いのですね?」

 

「はい!例え北郷様が無職であろうともついていきます!」

 

「では今日からよろしくお願いします。俺の事は一刀と呼んでください」

 

「分かりました、一刀様!では改めて自己紹介します!姓は龐、名は徳、

 

 字は令明、真名は沙矢と申します!これからよろしくお願いします!」

 

 …えっ!?今、何て名乗ってた?

 

「あ、あの…あなたの名前は龐徳なのですか?」

 

「は、はい、そうですけど?それがどうかしましたか?」

 

「本当に沙矢さんは馬騰さんの所で侍女をしてたんだよね?」

 

「はい、我が一族の女は代々馬家に侍女として仕えていました。私の祖母

 

 も母もです」

 

 どうなってるんだ、この世界…俺の知ってる三国志とは違うのはもう分

 

 かっているつもりだったけど、龐徳が馬騰の侍女って!?龐徳は馬騰の

 

 一の家臣とかじゃないのか!?

 

「あの…大丈夫ですか、一刀様?」

 

「あ、ああ、大丈夫…と思いたい。少々頭が混乱しただけだから」

 

 俺の頭の中では少々釈然としない物が残ったが、こうして沙矢さんは俺

 

 の家臣となったのであった。

 

 

 

「どうされました、一刀様?」

 

「い、いや、ちょっと考え事をしてただけだよ」

 

 どうやら俺は回想に浸っていたようだ。

 

「まぁまぁ、一刀お兄様も最近忙しそうだしさ。今日の所はしっかり休ん

 

 で英気を養おう!」

 

「…蒲公英はもう少し普段から真面目にして欲しいものだけどね」

 

「輝里姉様、ひど~ぉい!まるでたんぽぽが普段からサボってるみたいじ

 

 ゃないのさ!」

 

「「「「違うの(ですか)?」」」」

 

「ううっ、みんなひどい…くすん、くすん」

 

 全員からのツッコみに蒲公英は少々拗ね気味になり、皆はそれを見て笑

 

 っていた。

 

 しかし考えてみればなかなかの面子だな…徐庶がいて、馬岱がいて、龐

 

 徳がいて…これで誰か弓使いの人が加われば完璧な布陣になりそうだ。

 

 ちなみにこの面子を中心としたグループは董卓軍の中では『北郷組』と

 

 呼ばれる半独立部隊として、後々大陸中に名を轟かせる事になるのだが

 

 この時の俺にはまだ分からない事であった。

 

 

 

 

 

 一方、その頃。董卓の執務室にて。

 

「月、どうであったか?」

 

「はい、空様がいなくなった後の洛陽は張譲と袁紹の専横に拍車がかかっ

 

 ているようで…もはや都と呼べない位に人の行き来が無くなっているよ

 

 うです」

 

 董卓の報告を聞いた空は忌々しげに顔を歪める。

 

「ちっ、張譲の奴めが…義真達はどうしてる?」

 

「三将軍の方々は件の賊の討伐に追われ洛陽にいる事すら少ないとか…」

 

「件の賊?噂に聞く黄色い布をつけた奴らの事か?」

 

「はっ、どうやら大陸中にその活動が広がりつつあるようです」

 

 その報告に空だけでなく命と夢を顔をしかめる。

 

「どうやら妾達もこのままでいるわけにも行かないようじゃな」

 

「姉様の言う通りではありますが、まだ我らには手持ちの兵力が…『ああ、

 

 それなら心配無いぞ』どういう事です、母様?」

 

「雍州はとっくに私の支配下にある。月の軍勢と葵の軍勢と合わせれば七

 

 ~八万にはなるだろう。とりあえず黄色い布の賊を退治する位は問題無

 

 いはずだが」

 

 空のその言葉を聞いた命達は開いた驚きの余り口が塞がらなかったので

 

 あった。

 

 

                                          続く!?

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 一刀が催眠薬を使ったあの侍女さんは実は凄い人

 

 だったという話でした。

 

 本当は違う名前にしようと思ったのですが、結局

 

 龐徳に落ち着いてしまいました。蒲公英もいない

 

 し、西涼勢の力のバランスや如何に!?でもきっ

 

 と葵さん一人で翠十人分位の武力があるから大丈

 

 夫(適当)!

 

 

 とりあえずはこれにて拠点は一旦終わりにして、

 

 次回から黄巾編に入ります。

 

 空がいなくなった後の洛陽はどうなっていくのか?

 

 一刀達は一体どのように関わっていくのか?

 

 

 それでは次回、第十六話にてお会いいたしましょう。

 

 

 追伸 三将軍の再登場も近々ですので。それと空がどうやって

 

     雍州を掌握したのかは次回にてお送りする予定です。

 

 

 


 
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