No.636774

IS‐インフィニット・ストラトス‐黒獅子と駆ける者‐

トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!

2013-11-14 16:53:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:600   閲覧ユーザー数:584

 

 

 

episode229 本当の絆

 

 

 

(・・・・)

 

 脳裏に何かが過ぎった瞬間に、隼人の視界は光に包まれていた。

 

(何だ?何が起きて・・・・)

 

 隼人はすぐに周囲を見渡す。

 

 

 

(相変わらず、頑固なのは変わらないわね)

 

(っ!?)

 

 すると隼人の耳に、懐かしい声が伝わる。

 

 しかし、その声の持ち主はもういない人物のものであった。

 

(そ、その声は・・・・)

 

 隼人は顔を上げると、目の前に光の粒子が集まり、人の形を形成すると、一人の少女が姿を現す。

 

 

(久しぶりじゃん、隼人)

 

(・・・・)

 

 隼人の目の前に現れたのは・・・・・・死んだはずの鈴であった。

 

(り、鈴。なぜ・・・・)

 

(まぁ驚くわよね。死んだ人がいきなり目の前に現れたりすると)

 

 鈴は苦笑いを浮かべる。

 

(・・・・)

 

(強く願ったら叶った・・・・ってところかしら)

 

(願った?)

 

(もう一度隼人に会いたい。そう想っていたら、こうなったのよ)

 

(鈴・・・・)

 

(それと、隼人が巻いているあたしのリボンが、ここまで来れた道しるべになったのよ)

 

(・・・・)

 

 隼人は左手首に巻いている黄色いリボンを見る。

 

 

 

(それにしても、本当に隼人は頑固ね。ダイヤモンド並みにね)

 

(そこまで言うか?)

 

(そんなもんよ。まぁ隼人が一夏達の事を心配して守ろうとするのは分かるけど、隼人は守られている側の気持ちを考えた事はあるの?)

 

(な、何?)

 

 突然の問いに隼人は戸惑うが、少ししても答えられなかった。

 

(考えた事ないんだ。まぁ、そりゃ仕方ないわよね)

 

(・・・・)

 

(まぁ守られるのは嬉しいよ。それだけ隼人が仲間の事を大切に想っているって言うのが伝わるよ。

 でも、そうやって隼人ばかりが傷ついてばかりで、時には死に掛けたことだってあった。それじゃ守られる側も良い気持ちはしないわよ)

 

(・・・・)

 

 隼人は今までの戦いを振り返る。

 

 

 鈴の言う通り、仲間を守る事ばかりしか考えていなかった。大切な仲間達を守れれば、それでいいと、そう思っていた。

 だが、今思えば、それはただの自己満足だ。他人の事は考えていない・・・・

 

 

(二度と誰も失いたくは無い。それは誰だって思っているわよ。でも、隼人の場合異常過ぎる)

 

(・・・・)

 

(あの時だって、あれはあたしが自らの意思で行った行動よ。悔いは無いし、後悔だってしていない。隼人だって重荷を背負う事なんて無かったのよ)

 

(だが、お前を死なせた事に、変わりは無い・・・・)

 

(・・・・)

 

(俺があの時、もっと気をつけておけば、こんな・・・・)

 

(言ったでしょ。あれは私が自分の意志でやった事だって)

 

(・・・・)

 

 

(・・・・あたしが死んでから、更に拍車が掛かっているし、もう自分を犠牲にしても構わない状態になっているじゃない)

 

(それは・・・・)

 

 

(そこまでする事を、誰が望んだの?)

 

 悲しげに鈴は隼人に問う。

 

(・・・・)

 

(誰もそんな自己犠牲心なんて、求めてないわよ。自分の身は自分で守れる)

 

(・・・・)

 

(隼人も、大切で信頼できる仲間なら、頼りなさいよ)

 

(鈴・・・・)

 

(それが仲間ってもんでしょ?)

 

(・・・・)

 

 隼人は顔を下げて俯く。

 

(・・・・はぁ)

 

 と、鈴はため息を付くと、右手を握り締めて拳を作り、隼人の頭に拳骨を入れる。

 

 

(こうなって初めて隼人に拳骨が与えられたわね。でも、これで目が覚めた?)

 

(・・・・そう、だな)

 

 痛みは一切感じていないが、隼人は俯いていた顔を上げる。 

 

(鈴の言う通り、一番分かってないのは・・・・俺の方だったな)

 

(・・・・)

 

(仲間の事を信じろと言っておいて、信じてないのは俺の方だ)

 

 隼人は拳を握り締める。

 

(人は簡単には変われないものよ。隼人だって、例外じゃない)

 

(・・・・)

 

(もし、隼人が絆の本当の意味を知れば、その時こそ本当の力を知れるだろうって)

 

(・・・・?)

 

 突然の鈴の言葉に隼人は理解できなかった。

 

(あのね、あたしがこうやって隼人に会えるのは、ある事を伝える事があるのよ)

 

(伝える事?)

 

(そっ。隼人は二つの力を受け取ったのよね)

 

(あ、あぁ。だが、なぜそんな事を?)

 

(こうやって話す前に色々と頭に叩き込まれているのよ)

 

(そうなのか)

 

(まぁ話を戻すけど、ノアとグリッターから力を受け取った。一つはグリッターの『希望の光』。無限ではないものも、強大なエネルギーも自らの力に変換する力)

 

(あぁ)

 

 隼人は軽く縦に頷く。

 

(でも、今の隼人は最後の力を発揮できていない)

 

(発揮できていない?)

 

(そう。それがノアの『絆の力』。この意味が分かる?)

 

(・・・・)

 

 

(隼人。さっきも言ったけど、あんたは本当の絆の意味を理解していない。だから力を発揮できていないのよ)

 

(・・・・)

 

(絆って言うのは、簡単に言葉で説明できる代物じゃない。それは自分で見つけ出すものよ)

 

(自分で見つけ出す、か)

 

 

(それが、あたしが言える事よ)

 

 と、鈴は足から徐々に消えていく。

 

(っ!鈴!)

 

(大丈夫よ。あたしはいつだって、隼人の傍に居るんだから)

 

(・・・・)

 

(隼人。こうしてまた会えたこと・・・・・・嬉しかったよ)

 

 鈴は涙を流して隼人に抱擁する。

 

(仲間を・・・・・・大切な仲間達を・・・・・・信じてやるのよ)

 

(・・・・)

 

(さようなら・・・・)

 

 そうして鈴は姿を消し、周りの光が消える。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

「・・・・!」

 

 隼人は意識が現実に引き戻される。

 

 レイをハルファスとフェニックスが残った武器を全て使用して牽制している。

 

 

(絆の・・・・本当の意味)

 

 鈴の言葉を内心で繰り返す。

 

(ただ、信じるだけじゃ、絆とは言えない。なら、何が足りないんだ)

 

 隼人は俯くと、左手を握り締める。

 

 

「隼人」

 

 と、右肩に何かが触れる。

 

「・・・・?」

 

 隼人は顔を上げると、簪が左手を隼人の右肩に手を置いていた。

 

「どうしたの・・・・?」

 

「・・・・」

 

 

「・・・・簪」

 

「何?」

 

「・・・・簪は、俺の事を信じているか?」

 

「え?」

 

 突然の質問に戸惑う。

 

「も、もちろん、信じてるよ!誰よりも・・・・ずっと!」

 

 戸惑いながらもすぐに返事を返す。

 

「・・・・」

 

「どうして・・・・そんな事を?」

 

 当然今更そんな事を聞く隼人に疑問を抱く。

 

 

 

「俺、今まで本当にみんなの事を・・・・信じていたんだろうかって」

 

「え・・・・?」

 

 簪は目をぱちくりと瞬きする。

 

「みんなを守ろうと思ってばかりで、何も、分かっていなかった」

 

「・・・・」

 

「俺が傷つくばかりで、守られてばかりのみんなは、あまり良くは無かったんだよな」

 

「・・・・」

 

 簪は何も答えれなかった。

 

「こんなの、ただの自己満足さ」

 

「隼人・・・・」

 

「俺・・・・・・みんなの事を・・・・信じていなかった」

 

「・・・・・」

 

 

 

「そんな事、無いと思うぜ」

 

「・・・・」

 

 すると気付けば、隼人と簪の周りには、一夏達が集まっていた。

 

「みんな」

 

 

「本当に隼人が俺達の事を信じてなかったら、ここまで来れてなかったと思うし、隼人の事をここまで信頼していない」

 

「一夏・・・・」

 

 

「そうだな。お前はちゃんと私達を信じていた。信じていなければ、仲間として成り立っていないだろうな」

 

「箒・・・・」

 

 

「そうですわ。隼人さんはわたくし達を信じていたからこそ、例え傷ついても守り切ろうと思えたのですわ」

 

「セシリア・・・・」

 

 

「僕もだよ。あの時隼人が僕が立ち直ってくれる事を信じて、心を込めて叱ってくれた。そうじゃないと、僕は隼人の義妹になりたいって、心から思わなかったと思う」

 

「シャル・・・・」

 

 

「私もです。私が師匠に教えを乞い、師匠が私を信じていたからこそ、本当の強さの意味を知る事が出来ました。そうでなければ、今の私は無かったと思います」

 

「ラウラ・・・・」

 

 

「そうだね。隼人君が本当に誰も信じてなく、駒としか思っていなかったら、たぶん私とバンシィは最後まで付いて行ってない」

 

「うん」

 

「ユニコーン。バンシィ・・・・」

 

 

『私もです。私は殆ど常にあなたの気持ちが伝わっています。その中で、隼人が仲間の事を信じなかったことなど、一回もありません』

 

『リインも、お姉ちゃんと同じ気持ちです!』

 

「リインフォース、ツヴァイ・・・・」

 

 

「・・・・私も、そう思う」

 

「簪・・・・」

 

 最後に簪が口を開いた。

 

「だって、本当に信じていなければ、バインドに誘拐された私たちを命を賭けて、本気になって助けてなかったと思う」

 

「・・・・」

 

 

「悩む必要なんか無いんだよ、隼人」

 

「あぁ。隼人が私達を信じていたからこそ、私達も隼人の事を信じてここまで来れたんだ」

 

「そうですわ」

 

「うん」

 

「はい」

 

「だから、迷う必要はないんだよ」

 

「仲間に頼る時は、迷わず頼る」

 

『それが仲間と言うものです』

 

『はいです!』

 

 

「・・・・み、みんな。そこまで、俺の事を」

 

 するとSエクセリオン・ゼロのツインアイより、光り輝く光が漏れ、まるで涙を流すかのようにマスクに沿って流れ落ちる。

 

「隼人・・・・」

 

 

「こんなに嬉しいと思った事は無い。俺は・・・・こんなにも・・・・慕われているんだと」

 

「・・・・」

 

「・・・・ありがとう・・・・みんな」

 

 

 

 

 

 

 するとSエクセリオン・ゼロの胸部コアが光を放つ。

 

「っ!」

 

「こ、これは・・・・!」

 

 光は一夏達を優しく包み込んでいく。

 

 

「・・・・そうか。これが、そうなんだな」

 

 そして隼人は、ようやく気づく事ができた。

 

 

「・・・・みんな」

 

 隼人はマスターブレイカーを左手に持ち替えると、右手を前に出す。

 

「俺に・・・・力を貸してくれ」

 

 

「当然だ」

 

 一夏は隼人の右手の上に手を置く。

 

「あぁ」

 

 その上に箒が・・・・

 

「もちろんですわ」

 

 その上にセシリアが・・・・

 

「うん」

 

 その上にシャルロットが・・・・

 

「もちろんです」

 

 その上にラウラが・・・・

 

「もちろんだよ」

 

「どこまでも」

 

 その上にユニコーン、バンシィが・・・・

 

『力を貸します』

 

 その上にツヴァイが・・・・

 

「私たちは・・・・ずっと一緒だよ」

 

 そして最後に簪が上に乗せる。

 

 

「みんな・・・・」

 

 すると、重ねられた手の上に、光を放つ手が置かれる。

 

「・・・・」

 

 その手の持ち主を見ると、半透明ながらも光を放ち、隼人を見て微笑みを浮かべている鈴であった。

 

(そうだな。ずっと、一緒だ)

 

 隼人は深呼吸して、ゆっくりと息を吐くと、重ねられた手から光が放たれる。

 

「一緒に行こう」

 

 光は更に強さを増し、光が隼人達を包み込んでいく。

 

 

『ユニゾン・・・・インッ!!!』

 

 全員が声を揃えて言い放つと、光は隼人達を完全に包み込み、一つに纏めていく。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

『っ!』

 

 レイはハルファスとフェニックスの攻撃を払っていると、眩い光に気付く。

 

『なんだ?何をしている・・・・』

 

 目を細めて眩い光を睨む。

 

 

 

「どうやら、お兄様たちが遺した最後の力が、完全に覚醒したみたいね」

 

「うん。神風隼人は、本当の答えを見つけたみたい」

 

 損傷が激しい中、二体は眩い光を見つめると、光は一つの形を作り出す。

 

 

 

「絆の力・・・・『ネクサス』」

 

「本当の絆を知り、本当の絆で結ばれた者達のみが起こす奇跡。そして、最強の力」

 

 光が弾け飛ぶと、中より一体の機体が姿を現す。

 

 

 形状こそSエクセリオン・ゼロとほとんど変わりは無いが、カラーリングはエクセリオン・ゼロのトリコロールカラーに近いカラーリングになり、背中の二基しかないウイングが四基に増えている。

 そして胴体のコアの奥には、IS学園の校章が浮かび上がる。

 

 

『インフィニット・・・・ゼロ!!!』

 

 

 全員の声が重なり、信じる者達の心の絆によって、新たなる伝説が顕現する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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