無人世界デュオリア、この山岳地帯にて…
「ギャォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!」
「「「「「グルルルルル…!!」」」」」
「「「「「ウゥゥゥゥゥゥゥゥ…」」」」」
疾風の飛竜“ワイバーン”が、遥か上空を優雅に飛び回っているところだった。地上では獣人オークや人形兵ゴーレム、屍兵マミー等が大量に出没していた。
そこへ…
-ドゴォォォンッ!!-
「「「ギャァァァァァァァァッ!!?」」」
「「「「「!?」」」」」
何体かのオークが、一発の魔力弾で遠くまで吹っ飛ばされた。そう、たった一発の魔力弾で。
「ここかぁ、俺の餌場ってのは…」
声のした方向に、モンスター達が一斉に振り向く。
「滾る、滾るぜ……ガルルルルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
一人の凶獣―――ZEROは、モンスター達に向かって咆哮を上げる。
「ギャォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!」
「「「「「グルォワァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」」」」」
「「「「「ウォォォォォォォォォォォォォォ…!!!」」」」」
モンスター達が一斉に向かって来た。ZEROも義手の左腕をゴキンと鳴らしてから、地面を大きく蹴って駆け出して行く。
「うぅぅぅぅぅおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「「「グガァァァァァァァァァァッ!!?」」」
ZEROが左腕を思い切り振るっただけで、地面を抉り上げる程の巨大な衝撃波が発生。正面から向かって来ていたオークやマミー達が吹っ飛ばされる。
「テメェ等全員……俺の腹ん中に収めてやらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「「「オォォォォォォォォォォ…!!?」」」
「ハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
口から発射した砲撃魔法で何体ものゴーレムを粉砕し、ZEROは狂気の笑みを浮かべながら迫り来るワイバーンに向かって突撃するのだった。
「本当、いつになっても血の気が多いのね彼って人は…」
「全くです。正直、俺等でも手に負えない奴ですよ」
「…あのぅ」
ZEROがモンスター達との戦闘を開始した一方で、朱音とokaka、ルカの三人は遠く離れた位置にある岩場の上で待機していた。朱音とokakaは面倒臭そうな表情で座って寛いでいる中、ルカだけは自分達がここで待機している理由が分からなかった。
「二人共、何で僕等はここに待機してるんでしょうか…?」
「何でってお前……あぁ、そういやルカはZEROの事をよく知らないんだったっけな」
「見ていればすぐに分かる事よ。それから……ルカ君、いつでも逃げられる準備だけはちゃんとしておきなさい」
「へ?」
「朱音さんの言う通りにした方が良いぞ、ルカ。死にたくなかったらな」
「は、はぁ…」
朱音とokakaの言葉の意味がよく分からないルカは首を傾げるが…………数秒後、すぐにその意味を把握する事となる。
「ん……ヤベぇ、来やがった!!」
「ちょ、いくら何でも早過ぎるわよ!?」
「え? 二人共どうし―――」
二人がある方向を見て急に焦り出し、その場から慌ててジャンプ。ルカは何だろうと思い、二人の見ていた方向を向いて見ると…
ワイバーンの巨体が、
「―――うぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」
ルカは慌ててその場からジャンプし、岩場から離れる。それと同時に三人のいた岩場にワイバーンが落下し、その巨体で岩場が粉々に粉砕される。
「あの野郎、初っ端からぶっ放してくれやがったな…!!」
「本当、周りの事を何も考えちゃいないわね」
「アバババババババ…!?」
朱音とokakaは愚痴を零しつつも慣れた様子を見せているが、ルカだけは突然過ぎる事態に頭の思考が追いついておらず震えている。
「な、何でいきなり飛んで…!?」
「それがZEROの厄介な所さ」
震えが止まらないルカに、okakaが説明を加える。
「あの戦闘バカ、見境って奴が無さ過ぎるんだよな。味方が近くにいようが、お構い無しだ」
「会議の時も言ったでしょ? 彼の所為で、アン娘さんの保有していた戦艦が何隻か沈められちゃったって。あとはそうね……確かロキさんも、乗ってた機体が危うく破壊されそうになってたわね」
「え、兄貴も…!?」
「大破寸前まで追い込まれたらしいぜ。おかげで修復に物凄い時間がかかっちまったんだとか」
「そ、そんなに……あっ」
『…気をつけていけよ』
(…兄貴の忠告はそういう事だったのかぁ~!!)
朱音とokakaの言葉、そして任務に出る前に言われたロキからの忠告を思い出し、ルカは改めて自分が危険人物の任務に同行している事を認識する。
「いくら俺等でもな。アイツの戦闘に巻き込まれるとなっちゃ、他の連中までいちいち守ってやれるほどお人好しじゃねぇ。まぁ早い話は…」
「自分の身は自分で守れ、という事ね♪」
「もう嫌だ、今すぐ帰りたい…!!」
ルカが涙目になったその時…
「ぬぉぉぉぉぉぉまた来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「え…のぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「あらま~大変ね~」
今度は流れ弾の砲撃がいくつも飛んで来た。okakaとルカは慌てて回避し、朱音はヒラリヒラリと楽そうな感じで流れ弾を回避していく。
「…まぁ、こんな感じだ。今の内に慣れておかないと後でキツいぞ」
「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ……き、肝に銘じておきます…!!」
「本当なら彼が周りの事を考えてくれるのが一番良いんだけど……まぁ、ZEROちゃんに限ってそれはあり得ないわよねぇ」
朱音は溜め息をつき、ZEROが暴れているであろう方向に振り返った。
「ガッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
ZEROはワイバーンの尻尾を両手で掴み、ハンマー投げのように高速回転し、周りにいるモンスター軍団を次々と薙ぎ払う。
「まだだぁ!! もっとぉ……もっと俺を楽しませろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
「ガルァァァァァァァァァァァァッ!!?」
「「「「「グギャァァァァァァァァァァァッ!!?」」」」」
そして思い切りワイバーンをぶん投げ、他の離れた距離にいるモンスター達を押し潰してしまった。
「ハッハァ……んぉ!?」
野獣のような眼光をしているZEROに向かって、突如緑色の火炎弾が飛んで来た。ZEROは片手で火炎弾を払いのけ、飛んで来た方向を見据える。
「ギャォォォォォォォンッ!!」
「何だ、もう一匹いやがったか…!!」
ZEROは舌舐めずりしてから地面を大きく蹴って跳び上がり、遥か上空を飛んでいるもう一体のワイバーンに急接近する。
「よぉトカゲ、飛べば俺に勝てるとでも思ったか……よぉっ!!!」
「グルギャアッ!?」
ZEROは右手拳を握り締め、ワイバーンの顔面に強烈なパンチを加えた。この一撃でワイバーンはノックアウトされ、白目を向いて気絶したまま地面に落下していく。
「さぁて」
ZEROは空中に浮遊したまま、目の前に巨大な魔法陣を出現させる。
「どう喰らい尽くしてやろうか……そうだな、全員丸焼きにすんのが一番だろうなぁ…!!」
ZEROが口元を大きく開くと、魔法陣の前に魔力エネルギーが収束され始める。
「ん? アイツ何やって……げぇっ!?」
ZEROが収束魔法を使おうとしている中、双眼鏡で様子を見ていたokakaが急に顔を青ざめる。
「アイツ、またやらかす気かよ!?」
「ヤバいわ、急いでここから離れましょう!!」
「え、ちょ、あれって何をやって…」
「えぇい、説明は後だ!!」
「ぬごぁ!?」
状況把握が出来ていないルカの首元をokakaが掴み、三人は急いで遠くまで避難する。
「魔力は、こんなところだな…」
魔力エネルギーは充分に溜まった。ZEROは自身の左腕を目の前の魔法陣に通すと、左腕が黒い野獣のような大砲へと変わる。
「テメェ等全員、料理してやるよ」
「ギャォォォォォォォォォォォォォンッ!!」
撃墜されたのとは別のワイバーンが、ZEROに向かって火炎弾を連発する。しかしその程度ではZEROの砲撃魔法は止まらず、野獣の目らしき部分が赤く発光する。
「さぁ……死に去らせぇっ!!」
「
数秒後、山岳地帯の全てが焼け野原と化すのだった。
それとは別の、某次元世界…
「この世界か?」
「はい、間違いありませんね」
ロキ、ガルム、竜神丸、ディアーリーズの四人は、深い森林の中を進んでいるところだった。この四人は現在、モンスター退治とは別のある任務を遂行する為にこの世界へとやって来ている。
「…それにしても、大丈夫なんですかね」
「ん、何がだ?」
「ZEROさんの事です。僕から見ても、物凄く危なっかしい雰囲気が出ていたので…」
ディアーリーズが気がかりに思っていたのは、やはりZEROの事だった。彼が現在、別世界で全てを焼け野原に変えている事を知らない彼は、ZEROをよく知る三人に問いかける。
「ZEROかぁ……アイツは見境って物がまるで無いからな。アン娘さんの率いる艦隊も何隻かやられちまったし、俺のユニコーンも流れ弾を何発か受けて損傷しちまったし。俺達旅団のメンバーでもメチャクチャ危険だぜ」
「あぁ、アイツの所為で俺の機体も危うく大破する所だったしな…」
「その後、機体の修理が大変でロキさんが真っ白になっていたのは私もよく覚えてますよ」
(そんな人に喧嘩を売られたのか僕は…)
ZEROが普段どれだけヤバい人物なのかを改めて思い知り、ディアーリーズは身震いする反面、売られた喧嘩を買わなくて良かったとも思うのだった。
「まぁそんな事よりも、今は自分達の任務に集中しましょう……と、着きましたよ」
四人は森を抜け出し、高い崖の上から目的地を見据える。
「管理局の違法研究施設を潰せ、か……シンプルで分かりやすいねぇ」
「位置を特定するのは時間かかるがな。管理局の連中も、そういう所だけは無駄にズル賢い」
「……」
ロキとガルムが武器を構える中、ディアーリーズはただ無言で研究施設を睨み付ける。
(あそこにもまた、捕らえられている人達がいる……昔の僕みたいに…)
思い出される過去。
管理局に捕らえられ、人体実験に利用された自分。
薬を打たれて苦しむ自分を、嘲笑うかのように見下ろす研究員達。
「ッ…!!」
無意識の内に拳を握り締める力が強まり、爪が食い込んで僅かに血が流れる。そんなディアーリーズの様子にロキが気付く。
「…憎いのは分かるがディアーリーズ、今は殺気を抑えとけ」
「! す、すいません…」
ロキに言われてハッと我に返り、ディアーリーズは首を振って過去を思い出すのをやめる。
「一応、任務内容の確認をしておく。研究所の連中はもちろん、敵対する者は全員排除。捕らえられている子供達は全員救助。何かしらデータがあれば回収。最後に残った施設を丸ごと爆破」
「いつもと変わりありませんか。何かトラブルでも起こらない限り、セオリー通りでしょうね」
「…だったら、早く行きましょう」
レオーネ・フォルティスを起動し、バリアジャケットを纏うディアーリーズ。
「時間を無駄には出来ません。こうして話している間にも、また誰かが苦しめられてるかも知れないんですから」
「ディアーリーズに賛成」
ガルムも二丁のビームライフルを構える。
「俺は管理局に特別な恨みがある訳でも無ぇが……管理局が世界中でデカい顔してんのは個人的に気に入らねぇ」
「あなた方がそう言うのであれば、私はデータ回収に徹するとしましょうかね」
タブレットを操作しつつ、既に潜入方法も考え付いている竜神丸。全員、準備は完了しているようだ。
「んじゃまぁ、それなら…」
ロキも専用デバイス“ユーズ”を構え、バリアジャケットを展開する。
「いっちょ、カチコミに行くか!!」
「「「了解!」」」
四人の戦士は一斉に崖から跳び上がり、研究施設まで飛び立つのだった。
一方、四人の襲撃など知る筈もない研究施設では…
-ゴポポ…-
ある大型カプセルにて、全裸姿の少女が緑色の液体に浸かっていた。カプセルにはNO.91のナンバーが刻み込まれている。
そんな少女の口元が、僅かに動く。
「―――ウル……さ、ん…」
波乱は再び、起こり出そうとしていた。
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破壊:暴れる凶獣・向かう戦士達