No.635988

安住 part 2

i-pod男さん

とある民間軍事会社に勤めていた傭兵は、僅か二十六でその生涯に幕を閉じたが、次に目を開けた時には、赤ん坊として生まれ変わっていた!

チートな特撮の武器も『神の介入』と言う事で出します。

2013-11-11 03:16:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:626   閲覧ユーザー数:612

暫くは食器と咀嚼の音しかしなかった。よっぽど腹が減ってたんだな。特に麗と冴子は武術の有段者でもあると言う事もあってか、孝や俺と同じ位の量を食べていた。

 

「あ”ー・・・・美味かった・・・・」

 

「本当。先生羨ましい、料理美味い人が彼氏なんて。」

 

麗も口元をナプキンで拭いて自分の食器を流し台に運んだ。食後の一服にコーヒーやら紅茶が振る舞われている。

 

「滝沢さん、実際の所どうなんですか?先生とは。」

 

期待に満ちた顔で俺の方を見るな、麗。昼ドラの登場人物じゃねえんだよ、俺は。何修羅場を欲してやがんだ。

 

「あー・・・・言ってしまえば、」

 

「うん、」

 

「「双方合意の上での二股かな?」」

 

俺と静香は顔を見合わせて頷き合い、口を揃えた。実際そうなのだ。今の所、特に問題が無い為そのままにしていた。しかも俺とリカ、そして静香の『初体験』が3Pだったからそう言う協定が出来てしまったのだ。

 

「合意の上での二股って・・・・ヌルいエロゲじゃあるまいし。」

 

沙耶が半ば呆れた様子で静香を見やる。まあ、確かに普通やる様な事じゃないからそう思ってしまうのも無理は無いが。

 

「良いんだよ。さて、飯も食ったし、空腹も収まった所で次の話だ。」

 

俺は自分のマグに入ったコーヒーを飲み干して更に続けた。

 

「今はここを一時的な拠点にする。食料も水も、ネットからの情報も手に入る。だがその次のプランが必要だ。ここにいても、いずれ物資は尽きる。誰か使える場所の心当たりはあるか?」

 

「あ・・・・あります。高城の、沙耶の家なら。あそこ、かなりデカいし。」

 

「そ、そうね!パパとママなら何とかやってる筈よ。」

 

おお、名前で呼ばれた事に反応したのか目元が少し赤い。はは〜ん、こいつ麗と同じで孝に惚れてるってクチか。

 

「高城のご両親は一体・・・?」

 

「右翼団体、憂国一心会のトップよ。」

 

冴子の質問に沙耶がさらりと答える。一心会か。百合子さん元気かな〜。

 

「決まりだな。そこに向かって出来るだけの間そこにいよう。出発は明朝、今は各自ゆっくり休め。ここの物は好きに使ってくれて構わない。だが、注意事項が幾つかある。遵守しなければ俺達全員が危険に晒される可能性だって僅かながらあるんだ。一つは、カーテンを閉める事だ。外界の生き残ってる奴らは俺達の加護に預かろうとするだろう。だが当然、俺達は全員の面倒を見切れる程余裕が無い。互いの、そして自分の身を守るだけで精一杯だ。二つは、夜には灯りを消す事、理由は同じだ。以上、解散。」

 

さてと、着替える前に風呂にでも入るか。脱衣所で服を脱いで冷水がシャワーヘッドから噴き出した。汗でべたついた時にはこれが一番の薬だ。床に座り込んで胡座をかくと、背筋から水が流れ落ちる。

 

「あー、気持ち良い〜。」

 

・・・・・とは言った物の、やっぱりきついな。撃発音と共に脳味噌やらが吹っ飛ぶあの光景は、傭兵を始めてまだ日が浅い頃を思い出す。初めての仕事で送られたのは、あろう事かソマリアだった。その時の任務は、海賊退治。何故かは分からないがヨーロッパの貿易会社が輸出を急ぎたかったらしく、奴らの縄張りであろう海域を突っ切る自殺ルートを通ると言って聞かない。小隊(約三十人)三つを雇い、運悪く俺はアルファチーム、つまり第一の遊撃部隊に配属された。波の所為で照準は定まらないから、銃撃なんて碌に当たらず、向こうは馴れた様子で回避し、マシンガンやRPGなんかをぶっ放して来る。

 

最終的には傭兵全部隊の約三分の一が負傷、または死亡したが、仕事はしっかりこなして一小隊に付き百万、合計三百万ユーロがキャッシュで支払われた。ドルに変えたらものすげえ額になったっけ?あの時、正直海にいて良かったと思う。恥ずかしい話、俺はあの時ビビって失禁していた。と言うのも、俺は一際デカい波で船から落っこちてしまい、偶然海賊のモーターボートのヘリに掴まって乗り込むと、ソイツらを殺してボートを奪った。だが、奴らの中には、ガキが一人いた。十歳にもならない様なガキが俺に銃を突き付けて来たのを、俺は咄嗟に持っていたライフルを棍棒の様に振って頭をかち割り、死体を海に蹴り込んだ。それからの事は朧げにしか覚えていない。設置されたマシンガンで海賊達を船から引き離し、RPGや手榴弾で二艘ほど吹き飛ばした。気付いた時には本船のデッキに引き上げられて傷の手当を受けていたが、あの瞬間は忘れない。

 

「圭吾、どうしたの?そんなに冷たい水浴びてたら風邪引くよ?」

 

いつの間に入ったのか、タオルを巻いた静香が冷水の温度を微温湯に上げて俺の後ろに座っていた。

 

「静香・・・・お前、もう風呂入ったのにまた入ってどうするんだ?」

 

「圭吾と入りたかったの。それに、食べてる時もずーっと暗い顔してたんだもん。」

 

「何時もこう言う顔だよ、俺は。よっぽどの事が無い限り表情が変わらない事位知ってるだろ?それに、一日足らずで世界は壊れたんだ、暗くもなるさ。それ以上に、心配なんだ。俺は言うなればお前を助けに行った成り行きでチームの一人となった。この先、お前を守れるかどうか、リカが無事か否か。解消したくても出来ない問題が山積みだからな。」

 

水を止めると、俺は静香に連れられて自分の部屋に行った。掛け布団やシーツ、枕があちこちにあるが。そう言えば、そのまま静香助ける為に出て行ったんだっけ?

 

「悩みまくってたら白髪増えるよ?ほら、疲れたんだからさっさと寝る!今日は大変だったんだから。丸一日寝てないし!」

 

ボーンと俺をベッドの上に突き飛ばした。

 

「大変はお互い様だろ。悪いな、運転は俺が行くまで殆ど任せっきりで。お前も寝ろ。」

 

「ん、そうする。」

 

僅かばかりの休息を得る為に、俺は目を閉じて以外と直ぐに眠りについてしまった。


 
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