No.635220

太守一刀と猫耳軍師 2週目 第8話

黒天さん

今回は拠点と拠点の間の話+桂花さんの拠点っぽい感じ。
ルートについては迷いましたが、取り敢えずは魏ルート寄り。

2013-11-08 15:52:28 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:9661   閲覧ユーザー数:6843

翌日の朝議の結果、華琳の傘下に入る事に決定した。

 

欲しいと言っていた俺を始めとして、天泣、天梁、星、桂花と有能な将が一気に手に入ると知ってか、華琳は上機嫌だった。

 

黄巾党との戦いで秋蘭救出のために尽力したこともあり、上機嫌な所に交渉したため、

 

地位としては華歆が春蘭、秋蘭につぐ3番目。という結構な地位になった。

 

一応俺は華琳の直属になったのだが、華歆の近くにいることの方が多い感じ。

 

紫青は言葉通り、俺の部下ということになった。

 

話しを聞く限りは客将みたいなもんだったらしいし、その辺割りと自由が効いたのだろう。

 

あと、華歆の領土には別の管理人を置いて、陳留に移動することになった。

 

麗ちゃんも同様で、様態が安定してるときに引っ越しすることに。

 

麗ちゃんについては、話が決まると既に連れてきていた医者が見てくれた。

 

医者に言う限りでは、どうにかなりそうだという。

 

俺と交換っていうぐらいだから、抱えてる医者の腕にも相当の自信があったのだろう。

 

「言っただろ? 麗ちゃんは良くなるって」

 

それがいい影響だったのだろう、華歆の胃の具合もいくらか良くなったらしく、最近よく笑顔を見るようになった。

 

何度か会って話しをするうちに、真名を許してくれたので俺も真名で呼ぶことを許した。

 

確かに一人、助けられたと思うと嬉しいけど、気がかりな事がいくつかある。解決方法を考えて見るが中々出てこない。

「何かあったんですか?」

 

麗ちゃんの問いにドキリとする。史実の華歆の子、華表についてはよくしらないけど、この子はこれでかなり鋭いらしい。

 

表情に出ていたのかもしれないけど、隠してたつもりなんだけどなぁ……。

 

「そんなことないよ。麗ちゃんは余計な事を考えてないで、早く良くなって俺や子魚を安心させてくれないとね」

 

笑いかける、顔がぎこちない事になっていないかが心配だ。

 

これ以上ボロがでないうちにと、俺は麗ちゃんの部屋を後にする。

 

「麗の様子はどうかしら?」

 

そういってやってきたのは華歆。華歆も仕事の合間に様子を見に来たのだろう。

 

「よくなってきてるとおもうよ。素人目には、だけどね」

 

「そうそう、ずっと言いそびれてたのだけど、北郷殿に話しがあるのよ」

 

「ん?」

 

「私もあなたに真名を教えておこうと思ったのよ。もっと早くにそうしようと思ってたのだけど、中々機会がなくて。

 

私の真名は冬華-トウカ-よ。冬の華と書くわ」

 

「冬華、ね。俺の真名は知っての通りだけど、普通に呼んでくれていいから。

 

領を一人で回してた冬華は凄いと思ってるし。

 

それにしても、親子で全然名前似てないんだなぁ……」

「当然でしょう?」

 

「こっちはそうなんだ? 俺のいたとこだと、親の名前の一字を取って子に名前をつけたりしてたからさ」

 

俺の話しを聞いて信じられない、というような表情。どうやら、そういうのはあんまり好まれないらしい。

 

「国によって風習が違うのは当然よね。でもこの大陸で妻を娶って子を成すつもりなら気をつけた方がいいわよ?

 

基本避けるべき名前の付け方だから、それ」

 

「気をつけるよ」

 

冬華の言葉に苦笑しながら答えるしかなかった。

 

「それにしても、夢も信じてみるものね。麗がこんなに元気になるなんて思いもしなかった」

 

「夢?」

 

「そう、夢よ。多分、建物の様式や民の服から考えると呉だとおもうのだけど……。

 

一刀殿に連れられて私はどこかの街を城に向けて歩いている。

 

あなたは嬉しそうだった。確か、ここが私の娘の嫁いだ街で、もうすぐ会える、という感じのことを言ってたかしら。

 

でも麗は病死していて、麗の墓を前にして泣いてしまう夢だったわ。だから呉から来た人間には麗を預けなかったの」

 

関係が薄かった冬華が夢を見るなんて思ってもみなかった。

 

そういえば俺が来た後に呉から誰か来たことってなかったよなぁ……。

 

夢のことがなかったら手遅れだったってことか。

 

「他には、俺の出てくる夢って見た?」

 

「ちょっと思い出せないわね。見たような、見ていないような……」

 

「そっか。意外と見てる人多いんだなぁ……」

 

「そのようね、さて、それじゃ私は麗の様子を見てくるわ」

 

「うん、それがいいよ」

───────────────────────

 

「負けちゃいましたー……」

 

「ちょっとは勝率上がってきたかなぁ……」

 

所属が変わったからといって毎朝の日課は変わらない。今日も朝一から天泣と勝負している。

 

変わった所はといえば……。

 

「お、やってるやってる! ボクも混ぜてくださいよー!」

 

季衣がたまに混ざる事ぐらいかな。起きれたら、程度らしいけど。

 

ちなみに春蘭(秋蘭を助けてくれたからってことで真名を許してもらった)はまず混ざらない。朝は強い方ではないらしい。

 

あと秋蘭や華琳が見物しにくることもある。

 

桂花達は大抵気を使ってか、見に来ることはまず無い。

 

天梁や紫青、桂花がたまに物陰からこっそり見てるのは知ってるんだけど気づかない振りをしている。

 

今日も、視線を感じるのでチラっとそっちをみると、桂花がいた。

 

「それじゃ、俺が審判やるから天泣と季衣でやったら?」

 

「えー、兄ちゃんとがいいなぁ」

 

「んー、まぁ俺はいいけどさ」

 

「じゃあ私が審判しますねー」

 

そういえば季衣の鉄球って、あれ中身空洞だよなぁ、絶対。

 

気になって計算してみたんだけど、

頭の倍ぐらいのサイズがあるから半径25センチと仮定して、鉄の比重がだいたい8だから芯まで鉄だとざっくり計算して500kgはある。

 

青銅だった場合は比重を忘れたので計算してない。

 

あれを振り回して投げるとかウェイトリフティングの選手でも無理だよ……。

 

「いくよ!」

 

投げてくる鉄球を横に飛んで避ける。

 

受けるのは無理、剣や槍なら鉄扇で受けれるけど、幅が広いから受けると指が潰れかねないし。

 

なので弾き返したりすることは考えず、とにかく避けて隙を突くのがメインになってくる。

 

幸いにもこっちも投擲があるのでリーチで不利ってことはないし……。

 

基本ルールはどちらかがカスリでもしたら負け。あと、俺の投げ物がなくなっても負け。

 

幸いにも季衣の攻撃は直線的なものが多く避けやすい。

 

実力が近いからだろうけど。

 

「ふっ!」

 

鉄球が地面についたところで、羅漢銭を2枚続け様に投げ放つ。

 

簡単にあたってくれるわけもなくそれは避けられて、鉄球を振り回すようにしてくる。まぁ予想の範疇なので後ろに飛んでそれを避けて……。

 

かたや面積の広い物で攻撃を、かたや小さな物を複数投げて線または面で攻撃する。

 

かすったら負け、という勝負なので手数の多い俺が有利ではある。

「あいたっ!」

 

今回の勝負の結果は、投擲が見事に季衣の額にヒットし俺の勝ちとなった。

 

ちなみにこの羅漢銭、というか投げ銭は研いでない普通の小銭なので当たっても痛いだけだ。

 

極力目とかは狙わないようにしてるし。

 

「ううぅ……。最近負けがこんでるきがする。兄ちゃんと普通に勝負したいなぁ」

 

「俺の指が潰れちゃうからだめだって……。俺、短い武器しか使わないからさ。だから天泣とやるのを薦めたのに」

 

などと言いつつ投げた小銭をせこせこと回収。む、1枚足りない……。

 

「ちょっと天泣と季衣でやってて、投げたのが1枚足りないから探してくる」

 

「はいー、じゃあ季衣さん、いきますよー!」

 

2人の鍛錬する音を聞きながら、俺は小銭を投げた方向へ。

 

這いつくばって縁の下やら覗きこんでみるも見つからない……。

 

「これですか? そこに転がってましたけど」

 

と、声のする方を見ればそこには桂花が、どうも探してるのを見て植え込みとか探してくれたらしい。

 

「探してくれたんだ?」

 

「通りがかったら落ちてましたので」

 

思わず小さく笑ってしまう。そっと桂花の肩に手を伸ばす。

 

「じゃあそういうことにしとこうかな」

 

俺の手には肩にくっついていた葉っぱ。植え込みを探したんだろうなーという根拠はコレだった。

 

それを見ると顔が見る間に赤くなっていく。

 

可愛いなぁ……。

「これ一つをそんなに必死になって探す事も無いと思いますけれど」

 

「でも桂花は必死になって探すほどの事も無いものを、植え込みに潜り込んでまで探してくれたんだよね」

 

「ち、違います! ただ、茂みに転がっていくのを見たので……」

 

「訓練してるとこ、見ててくれたんだ?」

 

「はい……」

 

観念したのかやっと頷く桂花。頭から湯気でも出すんじゃないかって感じで顔が真っ赤で。

 

「いっつも柱の影とかからのぞいてるでしょ」

 

「き、気づいてらしたんですか!?」

 

「うん、知ってた。華琳達みたいに普通に見物にくればいいのに」

 

華琳の真名についても、みんな許してもらっている。秋蘭を助けに行ったのを随分高く評価してくれてるらしい。

 

「天梁から、見物にいくと天泣の邪魔になるから控えるようにと言われてるんです」

 

「あんまり気にするようには思えないけど、姉の天梁がいうんならそうなんだろうなぁ……。」

 

「私も武器が使えれば良かったのですけど……」

 

天泣と季衣の方を見ながらなにか物言いたげな表情。

 

そういえば連日仕事漬けだから、2人で話す機会も中々とれなかったっけ。

 

天梁とも話せる機会作らないとなぁ……。今度考えとこう。

 

「たまには2人で話したいし、今夜部屋に来ない?」

 

「はい」

 

桂花に誘いをかければ言葉の後ろに音符でもつけそうな嬉しそうな返事。

 

そうと決まれば今日は早めに仕事切り上げないとなぁ……。

と、思っていたのだが、習慣とは恐ろしいもので、桂花がたずねてくるまでガッツリ仕事をしてしまった。

 

あまりに仕事漬けなので華琳にまで「体を壊すわよ」と、心配される始末だ。

 

「まだ仕事してらしたんですね……」

 

「うん、まぁ今日の分はもう終わってるんだけど」

 

書簡を机の脇に寄せて片付けて、取り出したのは酒。

 

久しぶりに一緒に飲みたいと思ってのことだ。

 

「よければお酒に付き合ってもらおうと思ってさ」

 

「あんまり強くないですよ?」

 

「俺もそんなに飲む方じゃないから。

 

というか強い人と飲むと潰されちゃうから、弱いぐらいの人と飲むほうがいいんだよ」

 

苦笑しながら酒器に酒を注ぎ、桂花に差し出して。

 

「そういえば桂花と飲むのは初めてだっけ」

 

「そうですね」

 

話す話題は他愛も無い事がほとんど、仕事をし過ぎだとかも言われたけど。

 

「天泣が羨ましいから……」

 

しばらく飲んで、今の話題は何で武器を持ちたいか、ということ。

 

驚いた事に、前の世界で桂花に渡した小刀もしっかりと持っていた。

 

「羨ましい?」

 

「邪魔が入らなければ一刀とふたりきりだし……」

 

俺はここで気づくべきだった、『飲ませすぎた』と

 

久しぶりに2人で話すのが楽しかったのと、俺も酒が回っていたのもある。

 

口調、呼び方が変わっていたのに気づくのが遅れた。

「大分酔ってきたみたいだし、そろそろ部屋に戻ったほうがいいかな?」

 

「まだ大丈夫、それに、もっと一刀と話したいから戻りたくない」

 

そう言いながら椅子を近くに持ってきてもたれかかるようにしてくる。

 

前とおなじならこうなったらもう離してくれないからなぁ。

 

「せっかくこうしてゆっくり話せる時間が持てたんだから、いいでしょ?」

 

「じゃあ、桂花の気が済むまでここにいるといいよ」

 

多分、潰れて寝るまでここにいるんだろうなぁ、なんて思いながら。

 

こっちを上目遣いに見上げてくる桂花の頭を軽く撫でる。

 

そうすると嬉しそうに目を細めて……。なんだか懐かしいなぁ。

 

「どうしたの?」

 

口調も前の桂花そのままだし。

 

「桂花はさ、俺のこと慕ってくれてるんだよね」

 

軽く頷いてから、桂花が口を開く。

 

「私は一刀に身も心も捧げていいと思ってる。

 

夢で見たからだけじゃない、今の一刀を見てそう思ってる」

 

「そっか」

 

それは多分、比喩でもなんでもないんだろうな。

 

桂花の髪を撫でながら、軽く自分の方に引き寄せて、ゆるく抱いて。

 

こうしてみると、別人じゃないと思える。はっきり覚えてなくても桂花は同じ桂花だと感じられる。

 

「だ、だからっていきなり過ぎない?」

 

少し慌てたふうにそういう桂花に苦笑。

 

「これ以上何にもしないよ」

 

もともと、酔った桂花にあれこれする気なんてなかったし。

 

そういうと、少し残念そうな顔をしたけど我慢してもらおう

 

「酔ってるしね、ただ、少し甘えたかっただけだから」

 

「やっぱり、寂しいの?」

 

「ん、やっぱり時々顔に出ちゃってたかなぁ……」

 

「隠してるつもりかもしれないけど、夢の話しをすると死んだ家族を懐かしむ老人のような顔をするわよ?」

 

「老人は酷くない?」

 

「例えよ例え」

 

でも、ある意味桂花の例えはあたってるともいえるかな?

 

「寂しかったら、私の部屋に来てくれればいいのに」

 

「じゃあ、本当に寂しかったらそうさせてもらうよ」

 

しばらくこうしてくっついていたのだが、やはり桂花が寝てしまい、仕方が無いので俺のベッドに寝かせ、

 

俺は机に突っ伏して寝る事になり、そのまま朝を迎える事になった。

 

翌朝、俺の部屋で目を覚ました桂花が大変なことになったのは言うまでもない。

あとがき

 

どうも黒天です。

 

ようやく華歆さんの真名が出てきました。冬華の名の由来について。

 

蕗蒲公英(フキタンポポ)の花言葉が「公平(公正)な裁き」

 

款冬花(カントウカ)といって薬になるそうなのですが、この冬花からとりました。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。


 
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