No.635162

超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ルウィー編

さん

その18

2013-11-08 06:59:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:458   閲覧ユーザー数:450

目を疑った。

変わり果てた空の姿に。

あの暴力的なまでの存在感を出していた黄金の髪も健康的な色をしていた肌は、まるで水死体の石鹸化したように真っ白になっていた。

抱き上げた空はあまりに軽かった。否、まるで風船でも持っているような感覚に近かった。

直ぐに本教会に持ち運んだ。空が俺の名前を掠れた声で呼んでくれなかったなら、完全に死体と勘違いしていたかもしれない。

ネプテューヌ達は駆けつけて空の姿に悲鳴を上げていたが、一番冷静だったのはコンパだった。直ぐにベットを用意するように指示をして、ホワイトハート様が教院関係者に指示を出して客室のベットに空を寝かせた。

デペア曰く『人間でいう心肺停止状態に近い状態』と言って更に場が混乱したが、空は旧神とかいう隷属で体の構成も人間ではない、そもそも心臓がないそうだ。故に俺達は教会関係者の魔法で自然回復を促進する手にして実行した。効果はまだ出ない。

そして、空が眠る客室の隣で俺達は集まっていた。全ては、先ほどの現象についてデペアについて教えてもらう為に

 

世界改変(テラ・ザイン)……それが、空が起こした奇跡?」

 

『奇跡…。まぁ、君達からの視点からすればそう見えるだろうね』

 

デペアはため息交じりにホワイトハート様の答えた。

『奇跡』ーーー空が起こしたそれは、それ以外に表現できる言葉が見つからない。

半分廃墟となっていた教会も、髪の毛一本も残っていない筈の亡くなった人も、レーザーやミサイルによって破壊された地面や木々も、全てが無かったことにされたように、元通りになっていた。

 

「それじゃ、あれはなんなの?なんで空が、あんな姿になっているのよ。というかアナタこういうことになるのを最初から知っていたんでしょ」

 

『この状況から攻勢になるためにはあの力が必要不可欠だった。……まぁ、まさかここに住んでいた人間の為に使うとは思っていても無かったけど』

 

あいつは心底から人間が嫌いだと言っていた。なのに、この状況はあいつが言っていたゲイムギョウ界の味方と言うより、人間の味方をしたように見えた。しかし、デペアそれはーー

 

「答えになっていないわよ」

 

『知ってどうするんだよ』

 

「それは……」

 

『あれは君たちの想像を絶する禁忌の技だ。普通の人間なら操れる場所まで行くまでに存在が吞まれて消える。それに旧神の鍵・儀典はそもそもこの世界の物じゃないし、僕もその全てを知っている訳じゃない。知ろうとすれば、あの光の深淵に足を踏み込むことになって……良くて狂う。悪くて消滅する』

 

震えた声でデペアはそう言った。思い出すだけで鳥肌が立った。

あの光は、確かに神聖なる物だと理解できる。だが、同時にあれは神聖過ぎて近づけれなかった。地獄で溺れる咎人が天国に住む善人を見ることしかできないように。生きている時間と空間のあまりの乖離さに同じ生き物として判断が出来ないように。あれは、そういう物を思わせる程に深かった。

 

「でも、あれのことを知っていれば空さんの状態をもっと回復させる方法が……」

 

『甘ったれるな人間。好奇心でだけで歩いているとまともな死ね方できねぇぞ』

 

ナイフのような鋭い声が空気を切り裂いた。

 

『……さっきも言ったけど、僕も全部を理解している訳じゃない。ただ、あれは世界にある可能性を具現させた。あの状態は世界と一時的に存在を溶かして、まだ完全に自分を構築出来ていない…。はい理解できる?』

 

全員が黙った。ネプテューヌは居づらそうに顔を曲げて、アイエフはぐっとデペアを睨んで、コンパは俯き、ホワイトハートは、複雑そうな顔をした。そして俺は静かに立ち上がった。

 

『どうしたの…?』

 

「空の奴に会ってくる」

 

『……何をする気?』

 

そんな怪訝そうな思考を送ってくるなとデペアに送り返した。

 

 

「凄く簡単なことだよ。あいつはいま、苦しんでいるつまりは病人だ。手の施しようがなくても、傍にいたら少しは楽になるだろう」

 

『……バカだ君は』

 

「バカで上等……っで、お前らも来る?」

 

既にネプテューヌ達も立ち上がっていた。決まりだな。

 

 

 

 

 

 

………無かった。

世界と繋がって、世界のあらゆる情報が雪崩込んできた。人の歩んできた歴史を女神が紡ぐ神話を死んだ人の遺志と今を生きる人の欲望の声。

世界の声に、やっぱり彼女の姿は無かった。

当然だと結論を出した自分が憎かった。あの世界は人が幕を終わらせたんだ。灼熱の火炎と共に。

女神という存在によって制御させられていた思考が、暴走を繰り返して一気に破滅に向かった。役目を果たそうとした女神。しかし、女神は人間を止めようとした手を人間は下らないプライドを持った子供のように叩いて遠ざけて、尚を手伸ばす女神を殺した。そして人は、女神の事を忘れて女神はその理不尽な行いに神としての役目から終ったことになり、その魂魄と肉体を消えた。

 

ーーーゲイムギョウ界にレインボハートはいない……そういう風にできている。

 

誰も知らない。誰も覚えていない。女神を僕だけが知っていた。覚えていた。

誰かの為にその身を削っていた女神を、誰かの為にひたすら平和を願って実現させようとした女神は、あっさりと邪な感情を持つ人間の手で殺されたんだ。

 

レイちゃんのいないゲイムギョウ界。そのような女神は存在していないとされている世界はとても冷たく感じられた。

 

「……愛し…てる…か…?……だって」

 

ナイアーラトホテップの言葉に思い出しただけで笑いが込み上げてくる。

『愛』ときたか。希望を吞み込み、絶望より深い、究極の感情。いくつもの世界も時代も結局それが中心になってくる。愛する女を自分の物にしたいという思いが戦争への引き金となったり、愛する者を守るために災厄を打倒す物語だったり、愛を失い復讐を誓い世界を滅ぼさんとする壊れた者。

さてさて、どうだろう?せっかくふかふかのベットで寝かせてもらっているんだし、ゆっくり考えよう。

ハードブレイカーとキラーマシンの存在を破壊したから、予備機がいたとしても既に作られた物は同じく僕の能力の射程内だ。新しく作れば問題はないんだろうけど、時間稼ぎになるはずだ。

……まぁ、ナイアーラトホテップのしそうなことなんてもう予想出来ている。西沢ミナだけを蘇生するつもりが、ロムちゃんとラムちゃんの精神状態を考えた時に建物も直した方がいいよね?とか考えていたら全員を助ける結果になってしまった。全く、我ながら酔狂なことをしたものだ。

 

…ま、話を戻してレイちゃんを愛しているか…か。

うーん、うーん……好きだとは、はっきりと言えるんだけどね。

愛する感覚が分からない僕じゃ、答えが見つかりそうにない。愛の一言で千差万別に自身の価値観による答えが帰ってきそうな話題だ。僕にとって『愛』とはなんだろう?

 

「おーい、体調は大丈夫か?」

 

あ、紅夜だ。残念この状態だと指一本も動かないから何も出来ない。その後ろにはネプテューヌ達も入ってきた。一体なんの公開処刑だ?

 

「…ぶ……い…」

 

「その掠れた声でVと言われても説得力の欠片もないんけど?」

 

そう言われても肉体と魂が薄れている状態なんだし、ちゃんと顕現しないと何もできない。

半分夢のような浮遊感しか感じられない今の僕じゃ、紅夜の声を聴くことすら一苦労。……あ、そうだテレパシー使えばいいんだった。

 

 

ほいっと、聞こえているー?

 

 

「わっ!いーすんみたいに空ちゃんの頭から声がする!」

 

「……これは魔法の一種?」

 

「不思議な感じね」

 

「空さん、体調はどうです?」

 

まぁ、いいかな?あと何日かすればちゃんと立てれるよ。

 

「……なぁ、夜天」

 

はいはい、なにかな?胸がちょっとかわいそうな女神様。

 

 

「ホワイトハート様!?なんでハンマーを持っているんですか!今の空は病人ですよォぉ!?」

 

「うっせぇぇえぇぇ!感謝しようと思ったにこいつ…人が気にしていることをいきなり言いやがってぇぇ!!」

 

場を和ませるジョークですよ。

どうせ、君達さっきまでシリアスレベル全開で話をしていたでしょ?そもそもネプテューヌシリーズはこういった目の前にボスがいようが関係なくボケとツッコミが飛び交うゲームでしょ?

 

「私達ゲームの中のキャラクターだったの!?」

 

嘘だけどね。

 

「テレビの前のみんな!ゲームは明るい所でしないと目が悪くなるから気を付けようねー!」

 

「ネプテューヌ、ノリに乗るなよ…」

 

抑えていたホワイトハートがようやく落ち着き、それに紅夜はため息交じりにそう言った。

 

 

……で?どしたの、来たってことは何か理由があるんでしょ?

 

 

「あんたの弄りセンスには呆れるわ……。ただのお見舞よ」

 

 

だったら菓子寄こせ。メロンあれば文句なし。リンゴかバナナは必需品だよね。

 

 

「お前、そんな…がめついキャラだっけ?」

 

 

人が進化するように一分前の僕も進化する!どっかの女神さまはどこも進化しないままだけどね!

 

 

「女神化ァァァ!!!」

 

「やべっ、デペア頼む!!!」

 

『はーい』

 

漆黒の皇神鎧(アーリマン・ディメイザスケイルメイル)』を身に纏って女神化して巨大な斧を手にとって僕に飛びかかろうとしたホワイトハートを抑える紅夜。直ぐにブラッディハードにならないのは正解だね。

 

 

ふぁいと~☆

 

「全 然 可 愛 く な い!!」

 

『紅夜!チャンスだーーーこの状況ならちょっとタッチしても空に意識が集中しているから気づかれない筈だ!』

 

「お前はいつもどうして俺を性犯罪者に仕立てようとするんだ!?」

 

『愚問だね紅夜。ーーー目の前におっぱいがある。それが小さいくても大きくでもそこに確かに夢と希望がある二つの山があるんだ……!!揉めば天国、突けば極楽!そんな桃源郷への切符が目の前にあるんだ!』

 

 

ーーーいつやるか?

 

 

『今でしょ!』

 

「お前ら、実は仲いいだろう!?」

 

そんなコントをしていると、同じような体型のアイエフが冥界の神の如くオーラを放ちながらぐさっと後から宝玉を突き刺した。

 

『おぅ!?一体何を……』

 

「……今日の晩飯は焼きトカゲがいいかしら?」

 

『なんかすいませーん!!!でも僕は絶壁でも受け入れるぜぇぇ!!」

 

「…おい、確かアイエフって言ったよな。…一緒に〆るぞ」

 

「分かりましたホワイトハート様ーーーアポカリプス・ノヴァ!!」

 

「ハードブレイク!!!」

 

「ちょ、中身は俺だから!やめ…ッ!?あいついきなり感覚リンクを解除しや……ギャァアアァァアァ!?!?!?」

 

 

 

「コンパ、何だか楽しいね」

 

「はいです♪」

 

そうだね。君たちにしんみりした空気はあまりに不釣り合いだよ。


 
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