第壱廻 またね
荘周「貴方は誰?」
一刀「北郷一刀。」
荘周「君は誰?」
一刀「北郷一刀。」
荘周「お前は誰?」
一刀「北郷一刀。」
荘周「貴方の目的は破壊?」
一刀「いいえ。」
荘周「君の目的は修繕?」
一刀「はい。」
荘周「お前は---
何処から来たの?」
一刀「 」
荘周「どこから…来たの?」
一刀「 」
荘周「どこから…ぐっ、えぐっ」
貂蝉「もう止めなさい荘周ちゃん。
もう懲り懲りだわ、こんな姿のご主人様を眺めるのも、貴方の涙を見るのも。」
荘周「どうして!なんでなの!
いつもみたいに軽口を言ってみせてよ!!もう一度…もう一度笑って見せてよ!!」
貂蝉「荘周ちゃん…。」
虚ろな瞳で横たわる青年。
彼の名は北郷一刀。歴史に名を残さない彼は外史での英雄である。
彼自身は認知していないが、救ってきた外史の数は294,312廻。
三国志という狭い外史の中で、外史という広い世界の中で、喜びも痛みも蓄積していった。
プツリと切れた彼の糸は、もう戻ることはないと物語るかのようにゆらりと垂れ下がる。
英雄の歩みが止まると、外史の時間も寄り添うように歩幅を合わせた。
彼は歴史に名を残せない。
外史の発端から悠久の旅に出る彼は、とても曖昧な存在だから。
それでも、私にとっては何にも代え難い存在。
294,312…この数が示す通り、私は随分と長い、永い時を彼と過ごしたのだろう。
荘周「だから…言わなかったのかな?」
貂蝉「…。」
荘周「ううん、言えなかっただけ。
貴方がもし、もしももう一度笑ってくれたら…その時は伝えるね?」
貂蝉「荘周ちゃん…。」
荘周「だから今はおやすみなさい、愛しの君。
また…ね。」
英雄は消える。何も残さずに。
英雄の歩みとともに、彼女たちも歩みを止めた。
外史の根は、正史の草に。
正史の幹は、外史の葉に。
しかし、正史も外史も関係なく、物語は唐突に始まるのだった。
聖フランチェスカ
一刀は友人の及川とともに、教室で昼食をとっていた。
及川「…納得できん。」
一刀「何だよ藪から棒に。」
及川「なんでかずピーばっかりモテるんや!わいかて頑張っとるのに!!」
一刀「いやいやいや、別にモテてないだろ!
彼女いた事ないし…あ~、いかん落ち込んできた…。」
及川「ほんまか~?こないだ不動先輩とデートしとったんちゃうん?」
一刀「ぶっ!
違う違う!道着が破れちゃったって言ったら付き添ってくれて…」
及川「そら不思議やな~、道着を買うのに付き添いなんか要るん?」
一刀「ん~、不動先輩が言うには部活の備品のようなものだから…って。」
及川「朴念仁。」
一刀「なんか言った?」
及川「い~や、何も言っとらんよ。」
そこで及川は深呼吸をすると、急に大声で話しだした。
及川「そうか~!!一刀は誰とも付き合うてないんや~!!」
キラン☆
と周囲が光ったような気がした。
一刀「おい、恥ずかしいだろ!」
女生徒A「北郷くん!!」
一刀「はいぃぃ!!?」
女生徒A「今日の放課後なんだけど」
女生徒B「こら!抜け駆け禁止!!ところで北郷くん、よければ今度の日曜日…」
女生徒C「ちょっとちょっと!休日は反則!なら北郷くん、今晩私とホテルに」
女生徒AB「アウトーーー!!!!!」
一刀「あ、あははっ、みんな気を使ってくれてありがとう。
でも大丈夫だよ!俺には部活があるし!一人な分頑張らなきゃ!」
女生徒「「「(全然伝わってない~~~~><)」」」
一刀「気持ちは嬉しかったよ。」にこっ
女生徒A「(きゅんっ)」
女生徒B「(きゅんっ)」
女生徒C「(じゅんっ)ちょっと私トイレに」
女生徒AB「アウト~~~///」
及川「はぁ~~~、こら不動先輩も苦労するわ。」
放課後、使い古した道着入れを持ち、そそくさと席を立つ一刀。
及川「なんや かずピー、今日も部活かいな。」
一刀「おう。大会も近いしな。」
及川「近い言うても、全国大会じゃ相手おらんやろ。
本家とは別種目やのに世界選抜でトップランカーやし。」
一刀「そんなことないよ。強い相手も沢山いるからね。」
及川「北郷流の本種目の合気道・盾剣術やったらどないになってまうん。」
一刀「あははっ、あまり使うことないからなぁ。
でも、修行してもっと強くならないと!この間も熊に負けそうになったし!」
及川「…はい?え、ちょっと待って、熊?」
一刀「うん、爺さんの道場に向かう途中でさ、縄張り争いしてる三頭のヒグマが出てきてビックリしたよ。
一本取られるかとヒヤヒヤした。」
及川「ヒグマを三頭て…。引くわ。
え、そのヒグマはどないしたん?」
一刀「美味しかった~!」ほっこり
女生徒A「(きゅんっ)」
女生徒B「(きゅんっ)」
女生徒C「(じゅんっ)ちょっと私トイレに」
女生徒AB「え、何で?!」
及川「はぁ~、そないに強なって、修行に打ち込んでどないするん?」
一刀「約束したんだ。修行を怠らないって。」
及川「誰と?」
一刀「誰とだろう?」
ズッコける及川。
及川「な、なんやそれ。」
一刀「誰かがね、夢で俺に語りかけてくるんだ。『またね。』って。多分その人かな?」
及川「夢の誰かて…そらまた曖昧な存在やな。」
一刀「曖昧でもいいんだよ。俺には届いてるんだから。
じゃ、そろそろ行くよ。またな。」
及川「はいは~い、行ってらっしゃい。
ん?おたくらは何してるん?」
女生徒A「あぁ、お気になさらず。この超高性能ウルトラハイスピードカメラはただの情報収集用ですから。」
女生徒B「そうね、この暗視ゴーグルと発信機も念のため持っているだけですわ。」
女生徒C「えぇ、もちろん今履いてるパンツもすり替える用です。」
女生徒AB「アウトーーーー!!」
女生徒C「あっ。」
及川「おい、どないしたん?」
女生徒C「お気になさらず。軽くイッただけですので。」
及川「色々と大丈夫なんあんた!!??」
聖フランチェスカ・道場にて
不動「せいっ!!やぁ!!!」
刀弦「甘いわい。」
不動「なっ?!あっ!
…参りました。」
刀弦「ホッホ、腕を上げたがまだまだじゃの。」
不動「やはり、まだまだ修行が足りないでござるな。」
刀弦「まぁまぁ。不動の娘だけあって筋が良いからのう。まだこれからじゃろ。」
不動「有り難うございます!」
刀弦「ところで…。」
不動「はい?」
刀弦「もうウチの孫は落としたかの?」
不動「なっ///ななななな何をおっしゃってごじゃる?!///」
刀弦「なんじゃ、その様子じゃとまだのようじゃの。」
不動「うっ///」
刀弦「あ奴も朴念仁じゃからのう。
もうあれじゃ、裸で迫ったらどうじゃ?」
不動「んなっ!?で、ででででできるわけありませんっ!!!」
刀弦「初心じゃのう。
あやつも年頃。持っとるえっちなビデオは迫られるしちゅえーしょんが多いのう。」
不動「その話詳しく聞かせてください!!!!」
刀弦「ホッホ、ひ孫の顔が楽しみじゃ。」
不動「///」
女生徒A「聞きました?」
女生徒B「勿論聞きましたわ。」
女生徒C「えぇ、しっかりとイキました。」
女生徒AB「天丼は三回まで!!」
女生徒C「あふっ♪」
一刀「失礼します!!
って、爺ちゃん来てたの?!」
刀弦「おぉ、一刀!邪魔しとるぞい。」
一刀「せっかくだし組手しようよ!」
刀弦「馬鹿モン!この老耄じゃもう神童には敵わんわい。」
一刀「う~、じゃあ不動先輩!百本組手お願いします!!」
不動「殺す気でござるか?!」
刀弦「やれやれ、一刀や。お主の強さは技術でも、力でもない。
心の強さと素直さ、そしてその吸収力じゃ。
足りぬものは覚悟のみ。」
一刀「覚悟…。」
刀弦「そうじゃな。
例えばじゃ、北郷流は元来殺しに特化した技術じゃ。
今の世じゃそうそう使わんじゃろう。
じゃがな、もし悪漢に不動のお嬢ちゃんが襲われていたとしよう。それも、お主と同じくらい強く邪悪なものにじゃ。」
一刀「…。」
刀弦「お主、その悪漢を殺せるか?
もちろん、殺しは良くないことじゃが、何かを守るというのはそれと同様の覚悟が必要じゃ。」
一刀「俺は…。」
刀弦「…。」
一刀「出来るよ。」
刀弦「辛いぞ?」
一刀「不動先輩を失うほうが辛い。」 バタッ
刀弦「…よう言うた。それでえぇ。
とうとう免許皆伝じゃな。」
一刀「えぇ?!良いの?!」
刀弦「当然じゃ。
その為に来たんじゃから。ほれ、皆伝の証に我が家に伝わる盾と剣を授けよう。」
一刀「これは…すごく綺麗な盾だね。
ん?裏に収納スペースがある!もう住めそうだここに!」
刀弦「(住む??)この盾と剣はな、いつの間にか我が家に伝わったものじゃそうじゃが…。」
一刀「どうかしたの?」
刀弦「切れんのじゃよ。刃こぼれ一つしとらんのに、全くな。
盾も同じじゃ。どんな使い手が使おうとも、ことごとく敗れ去る。」
一刀「いわく付きってやつ??」
刀弦「うむ。それでも長きに渡り伝わったということは…この武具も探しておるんじゃろうな。使い手を。」
一刀「そうか…。
見てよ不動先輩!この盾…不動先輩?!」
刀弦「あぁ、嬢ちゃんならさっきから気絶しとるぞ。」
一刀「なぜ?!」
刀弦「…お主の言葉を思い出すとえぇわい。」
一刀「ふ、不動先輩!不動先輩!」
不動「うにゅ~~~~~~~~///」ぷしゅー
刀弦「(何やら胸騒ぎがして来てみたが…やつの目が旅の時を告げておる。
ホッホ、ひ孫は当分お預けかの。)」
聖フランチェスカ・寮へと続く林道
一刀「ふ~っ、すっかり遅くなちゃったな。」
いつものように林道を抜けると、視界を何かが横切った。
一刀「ん?
…ここの生徒じゃないな。あっちは確か…展示館があるはず。」
後を追う一刀。
展示館の一角、青銅の鏡の前にその男は居た。
左慈「ちっ、ここでも無いか。」
一刀「おい!」
左慈「っ?!見つかった!?」
一刀「そこで何をしてる!」
左慈「北郷…一刀だと?!」
一刀「え?どこかで会ったかな?」
左慈「そんなバカな!お前は…!」
一刀「何をそんなに狼狽えてるんだ?」
左慈「お前は存在しないはずだ!!」
一刀「…え?」
左慈「何故お前がここに居る?!
いや、そんな事はどうでもいい。
説明している時間がないから手短に言う。貴様が死んで止まった外史がまた動き出した。
それも、我ら管理者を受け付けずにな。」
一刀「俺が死んで?外史?ちょ、ちょっと何だよそれ!」
左慈「説明している時間はないと言ったはずだ!
早くこの鏡の前に立て!!」
一刀「え、ちょっ!」
左慈「思い浮かべろ!」
一刀「何を?!」
左慈「扉をだ!!」
一刀「思えって言われても…
ドクン
えっ?
ドクン
ドクン
『またね。』
ドクン
ドクン
『笑ってよ。』
ドクン。」
【外史の扉を開きましょう。】
まばゆい光が舞い降りる。
荘周「うそ…でしょ?」
貂蝉「ありえないわ!!ご主人様はもう!!」
暗い空間をただただ照らす流星を、荘周は必死に追った。
躓いても構わない。涙で目が霞んで見えなくても、その光を追う。
その光は突如として現れた扉に吸い込まれていった。
光から聞こえた声は幻聴だったか。
荘周の耳には『またね。』と確かに響いていた。
荘周「こんなことが…。」
貂蝉「見て!荘周ちゃん!外史が!」
荘周「?!」
貂蝉「外史が動き出したわ!英雄の帰還よ!!」
あれがもし、私の希望の光なら。
もし待ち焦がれた光なら。
私は今度こそ間違わない!!
Another view 董卓
賈詡「ごめんね月~、こんなに遅くなっちゃって。」
董卓「ううん、仕方ないよ。お仕事忙しかったもんね?」
賈詡「あの領主…小娘だと思って足元見てくれちゃって…!
月を夜道に歩かせるなんて危ないのに!」
華雄「何を異な事を。その為に我らが要るのだろう?」
張遼「せやせや。」
董卓「ふふっ、いつも有り難うございます。
あ、そうだ。皆さん、こんな話を御存知ですか?」
賈詡「??」
董卓「流星より天の御遣いが舞い降り、そのものは天下に平和をもたらす…って。」
賈詡「何かと思えば、管路のインチキ占いじゃない。
(でも、そんな人が本当に現れてくれたら…。)」
董卓「ふふっ。」
賈詡「ど、どうしたの月?」
董卓「詠ちゃん、本当は占いとか大好きだもんね?」
賈詡「ち、ちがっ!」
張遼「なっ?!」
賈詡「そんなに驚くことないじゃない!!」
張遼「ちゃうちゃう!!みんな上見てみ!!」
私は言われたとおりに夜空を見上げました。
そこには眩いばかりの流星が一筋流れていました。
賈詡「まさか…本当に天の御遣い?!」
華雄「なぁ、流星とは…あんなに長くとどまるものなのか?」
張遼「ていうか…だんだん大きくなっとらん?あれ。」
賈詡「ちょ、ちょっと!こっちに向かってきてるわよ?!」
董卓「きゃっ!!」
その時、私達を光が包みました。
お日様のように暖かな、とても柔らかな光でした。
賈詡「な、なんなのよもう!!」
華雄「私もいささか驚いた…ん?」
張遼「およ??」
皆が私の足元を見ています。
なんだろう?そう思って私も視線を下ろしました。
そこには綺麗な白い服を身にまとい、盾と剣を携えた男の人が倒れていました。
私は詠ちゃんの言葉を聞かずに、ただ導かれるままにその方の頬へ手を伸ばしました。
触れた瞬間に、気が付いていました。
この方が、お日様だと。
今回もお読み頂き誠に有り難うございます。
新しいスタートは如何でしたでしょうか。
読みにくい文章かも知れませんが、これからも何卒宜しくお願い致します。
コメント、メッセージなどお待ちしております。
※補足説明
この第二章の一刀くんのステータスは、武力・魅力値がMAXを振りきっているものだと考えて下さい。
Tweet |
|
|
26
|
2
|
追加するフォルダを選択
第一章の完結に伴い、新章に突入です。
最強の一刀とオリキャラも登場します。