No.630120

真・恋姫無双 異聞  ~俺が、張角だっ!!~ 第1話

isakaさん

恋姫無双の世界に転生した農大生のお話。

彼はどう生きていくのだろうか?

姓は姜、名は維、字は伯約。そんな彼の物語。

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2013-10-21 16:22:28 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1813   閲覧ユーザー数:1739

 

第1話 誕生 Transmigration

 

 

この世の中には「転生」という概念がある。死後に別の存在として生まれ変わることだ。

 

主としては「輪廻転生」などと言うように仏教の言葉らしいのだが、仏教が出来上がる以前にもこの考え方は存在したらしい。詳しくはWikipediaでも参照してくれ。

 

とは言え、この考え方自体は古くから存在していても、正しいかどうかは誰にも証明出きるはずもない。実際議論するなら信じるかどうか?と言う結論に落ち着くと思う。

 

さて、ではこの俺は「転生」を信じるのどうか、という話だが・・・・・・信じる、と結論付けさせてもらう立場になるだろう。

 

え?何で信じているのかって?別に熱心な仏教徒でも新興宗教や、あるいは死んで別世界に行きましょうなんて謳っているカルト教団に嵌まってしまったわけでもない。

 

ただ単純に、俺がそれを体験した立場だからだ。まぁ、神様には会わないで気付いてたら・・・・・・というタイプの転生だったとだけ言っておこう。

 

さて、なんだか無駄に前置きが長かった気もするが、結局はそういう事である。前世ではゲームや漫画が好きだった平々凡々な農大生であったところこの俺が何の因果か転生してしまったというわけだ。

 

生まれた場所は天水郡のとある村だ。特に大きいってわけでもなく、逆に小さいってわけでもない。時勢の影響で活気は少々少ないものの、それでも餓えて死んだものが出たり、口減らしが起きていないだけマシというものだろう。

 

そうそう、自己紹介が遅れたかな。俺の名前は姓は姜、名前は維。字はまだない。そして真名は雷華である。

 

ここまで言えば俺が生まれた世界、場所、そして時代がわかるだろう。或いは分からない人もいるかも知れないけれど。

 

そう、俺が生まれたのは三国志の時代のちょっと前くらいの中国なのだ。それもただの三国志ではなく、「恋姫無双」というゲームに登場する人の想念で作られた外史という世界だ。

 

人の想念による影響で三国志の世界だけどところどころが違う、そんな世界に生まれてしまったわけだ。

 

それには当然俺は困った。この先殺し殺されの乱世が来るのである。俺に人を殺す覚悟なんてあるわけないし、逆に殺されるのも勿論嫌だ。

 

乱世に生まれながら現代日本の平和ボケしている感性を持っている。この矛盾がこの先動影響するんだろうなぁ。とシリアスぶりつつ。

 

今のところはそこらへんは丸投げしているのが現実である。

 

さて、そんな俺が今力を入れているのは文字の勉強と農業の実験だ。

 

まず第一の前提条件として、この先は喰っていくのにも困る時代である、というのは分かってもらっていると思う。

 

大きな街ならともかく、小さな村なら凶作による飢饉で餓死者が出たり、或いは口減らしに売られてしまうのも普通に起こり得る現実だ。

 

それら殺し殺されなんてものよりも現実に脅威として訪れうるものの対策として俺は今文字の勉強と農業の実験をやっているわけである。

 

文字の勉強はいざという時のための就職先として文官を選べるように、そして農業の実験は凶作を起こさないようにするためにしている。

 

幸いにも俺は前世は農大生だった。つまり、農業の知識と勉強するための下地というものが出来ているのである。

 

そのため両方とも今現在は上手くいっているといってもいいだろう。大学で習った知識を元に収穫量が上がるような実験をし、その結果をレポートとして漢文で書くということが出来るくらいにはなった。

 

今現在も実験の結果を竹簡に書いているところだ。本当は紙に書きたいんだけど、紙は高いんだから仕方がない。

 

「これで良し、っと」

 

ちなみに今現在している実験は良くある堆肥である。家畜の糞やあるいは生ごみ、人糞などを発酵させて出来るあれだ。良く二次創作の農業SUGEEEEで出てくるので知っている人も居ると思う。

 

家畜糞、生ゴミ、人糞それぞれにワラの量、水の量、あるいは混ぜる回数などを変えた複数の肥溜めやゴミ溜めを用意し実験を行っている。これで上手くいった条件のものだけで、こんどはどれぐらいの量の堆肥を混ぜれば上手く収穫量が上がるのか、という実験が今度は待っている。

 

現在書き終えた実験の進捗状況を見て、乱世に間に合えばいいんだけどなぁ、と嘆息するしかない。実際間に合うかはギリギリだろう。

 

とにかく、これからも死なないために頑張っていくか、とちょいと気合を入れなおして竹簡を元の場所に直しておく。

 

兎に角今日はもう寝る時間だ。俺の今の年齢は満5歳。正直言って気合を入れても夜更かしは出来ないのである。農大生時代に夜更かしを散々した身としては情けなくなるけど。

 

寝る前の習慣として体を拭きにいく。この時代、風呂なんてものは燃料を大量に消費する贅沢品。庶民は一生に一度は入れればいい方だ。庶民は体を濡れた布で拭うのが精一杯の体を清潔に保つ方法なのである。

 

水がめから桶に水を入れる。布を濡らしてキチンと絞ろうとするものの、そこはまだまだ幼児パゥワー。水が滴らないように出来れば上出来だ。

 

服を脱ぐ。今は春の中ごろだからまだいいが、これが冬になると体を拭うのもかなり着つくなる。水が冷たすぎて布を濡らすのが辛く、また寒すぎて服を脱ぐのが億劫になるんだよな。

 

そうして体に溜まった垢と汗を取り去っていっていると、ふと桶の水面に映っている顔と目が合った。言うまでもなく映っていたのは俺の顔だ。

 

暗闇でも尚浮かび上がる程の黄金の髪。その感触はサラサラと滑らかで、触ったことはないけど絹糸ってこんな感じなのかなって思ってしまう。

 

長いまつげで彩られた大きな目。その中の瞳は真紅に染まっている。その色味は何時か美術館で見た最高級のルビーを思わせるほど鮮やかだ。

 

自分の顔ながらかなり整っていると思う。成長したら前世で見た一流モデルとタメを張れるんじゃないかという予感を抱かせる顔は、その幼さからまるで西洋人形のようだと感じさせる。実際無表情で微動だにしなかったら人形に間違われたし。怖かったからもう2度しないでって怒られたっけ。

 

3次元の人間の顔に成っているから良くわからないけど、何か前世で知っているキャラクターと被る表現も混じっているなぁ。

 

金髪紅眼に人形めいた美貌。前世で好きだったアニメである魔法少女リリカルなのはのフェイト・テスタロッサを思い出させる表現だけど。

 

まさか、ねぇ、と思いながらもそのまま体拭きを終えた俺は、寝巻きに着替えて寝てしまうのだった。

 

 

 
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