No.628989

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

集合:集まる旅団と地獄の宴

2013-10-17 14:23:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3157   閲覧ユーザー数:1247

あれから数十分後。

 

管理局の魔導師に察知されない内に移動した一行は、楽園(エデン)へと戻って来ていた。

 

「いや~すまんな竜神丸、また世話になった」

 

「本当本当、おかげで助かったぜ」

 

「…全く」

 

竜神丸は呆れ果てる。どうやらまたテレポートで機体を含め全員転移させられたようだ。

 

「次からは代金を取りますから、そのつもりで」

 

「え~ケチ~」

 

「一回か二回くらい良いじゃねぇかよぉ~」

 

「ちょ、待て竜神丸!! それはアレか、最近金欠になりかけてる俺への当て付けか!!」

 

竜神丸の発言に一同は文句を垂らし、特にとある事情の所為で金欠になりかけているokakaは食いつき方が半端ではない。

 

そこへ…

 

「よし、着いたぞ二人共」

 

「おぉ~久しぶりの旅団アジトだ~」

 

「アナタは何度も来た事あるでしょうが……僕なんか、ここへ来た回数なんて数えるくらいしか無いんですよ?」

 

支配人、蒼崎、ルカの三人も到着。ちなみに三人共、先程まで喧嘩していたからか服が汚れてたり顔に殴られて出来たアザがあったりする。

 

「おぉ、支配人! それに蒼崎、ルカの二人も!」

 

「あぁ、久しぶりだなガルム!」

 

ガルムと支配人が互いの拳をぶつけ合う中、ルカはロキのいる方へと近付いていた。

 

「さぁて兄貴……何でいつまで経っても家に帰って来ないのか、洗いざらい吐いてもら―――」

 

「チェストォッ!!」

 

「ぐばぁっ!? ちょ、何で僕が殴られるのさ!!」

 

「良いところに来てくれた!! 俺のストレス発散に付き合え弟よぉっ!!!」

 

「いや、待っ…そげぶっ!?」

 

最も、何故かロキに殴り飛ばされるという理不尽な目に遭っているのだが。

 

「あ~も~アン娘ちゃんのドレス姿は本当に可愛過ぎるわ~♪」

 

「ちょ、いい加減くっつくのはやめてくれ姉貴!!」

 

「あれ、何でアン娘さんはドレス姿になってるんですか?」

 

「あぁ~それには色々と事情があってね…」

 

「懐かしいプールだヒャッホゥ!!」

 

「こら蒼崎!! プールへの飛び込みは危ないから禁止だって事を忘れたのか!?」

 

「違うぞげんぶ!! プールには浮き輪が付き物だろう!!」

 

「いや待てお前等、突っ込みどころが色々と違う!! まず蒼崎は服を着たままプールに飛び込むんじゃない!!」

 

朱音はドレス姿のUnknownに抱きつき、ディアーリーズはokakaからUnknownがドレス姿になっている事情を聞き、久しぶりだからか蒼崎は何故か服を着たままプールへ飛び込み、そんな蒼崎に対してげんぶとBlazは間違った突っ込みをしてしまい、awsが訂正を入れつつ冷静に突っ込みを入れる。

 

「相変わらず騒がしい旅団な事…」

 

「博士、今更それを言うのもどうかと」

 

「そうそう。何をどうしようが、この旅団は変わりはしねぇよ」

 

「…ですよねぇ」

 

「フフッ♪」

 

「カッカッカ」

 

一同のはしゃぐ光景を見て、竜神丸は溜め息をつき、イーリスとmiriは楽しそうに見ている。

 

「…む? そういえば二百式さんの姿がありませんね」

 

「あぁ、二百式ならここにはいないよ」

 

竜神丸は二百式の姿が無い事に気付き、FalSigがその疑問に答える。

 

「? では何処に…」

 

「先に団長の所まで向かったよ。デルタさんを連れてね」

 

「「「!?」」」

 

FalSigの言葉を聞いて、竜神丸は驚きの表情を見せる。イーリスとmiriも驚いた様子で互いの顔を見合わせる。

 

「まさか、デルタさんもここに…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽園(エデン)最上階、バルコニー…

 

「着いたぞ。団長は貴様と話をしたがっている」

 

「……」

 

デルタは二百式に連れられて、バルコニー前の通路までやって来ていた。そこからデルタは一人でバルコニーへ向かう。

 

「?」

 

しかし、辿り着いたバルコニーには、自分が会うべき肝心の人物がいなかった。デルタは辺りをキョロキョロ見渡し…………素早く後方へと下がった。

 

 

 

 

-ズガンッ!!-

 

 

 

 

デルタのいた場所に、一本の杖が突き刺さった。そして一人の男が真上から降りてきて、スタッと着地して見せる。

 

「…その歓迎法はどうにかなりませんかね、クライシス」

 

「すまんな。訛っていないかどうか確認したかった」

 

男―――クライシスは床に刺さった杖を抜き取ってから、改めてデルタと向き合う。

 

「流石の私も、お前がまたここへ来てくれるとは思ってもいなかったぞ」

 

「何かあった時は、私にも声をかけるように言った筈です。でなきゃ殴り込みをかけると前も言っている筈でしょう?」

 

「はは、そういえばそうだったな」

 

クライシスは少しだけ笑ってから、真剣な目つきに変わる。

 

「何処まで戦える?」

 

「…肉体の汚染が悪化してますので、前線に立つのは難しいかと。しかし問題はありません、前線には出ずとも後方支援も出来ますし」

 

「そうか……無茶だけはしてくれるなよ?」

 

「!」

 

デルタは一瞬だけ目を見開いてから、フッと笑みを浮かべる。

 

「今更、無茶をする程の気力もありませんよ。むしろあなたの方が無茶をやらかして、トンボみたいに撃墜でもされるんじゃないかと思って怖いんですがね?」

 

「ふっ、ジョークも相変わらずか…」

 

二人は控えめではあるが、楽しそうに笑い合う。今までもこうして何かある度に互いに笑い合い、時には互いに酒を酌み交わす事だってあった。

 

懐かしい記憶が甦り、あれから長い月日が経ったものだとデルタは改めて認識する。

 

「こんな形ではあるが……お前の顔を再び見れた事、嬉しく思うぞ」

 

「それは、こちらも同じ事ですよ」

 

「…また力を借りるぞ、デルタ」

 

「また一つ貸しですよ、クライシス」

 

二人は笑みを浮かべつつ、互いに拳をぶつけ合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

そんな二人の会話を、物陰から二百式が聞き耳を立てていた。

 

憎しみ。

 

嫉妬。

 

彼の表情は、それらが混ざり合ったかのような感情が浮き彫りになってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「デルタ(さん)も参加するだと!?」」」」」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

デルタが召集に応じた事を知ったメンバー達は驚きの声を上げ、デルタはそんなメンバー達にペコリと頭を下げる。

 

「驚いた、まさかまた来てくれるなんてな」

 

「と言っても、前線で戦い続けるのは難しいかも知れませんけどね。恐らく今回は後方支援に徹する事になるかと」

 

「まぁ、何かあれば言って下さい。状況によっては私が作った栄養剤でも…」

 

「「お前の栄養剤は色々怖いからやめろ!!!」」

 

栄養剤の入ったアンプルを取り出した竜神丸に、支配人とawsの二人が同時に突っ込みを入れる。

 

「失敬な、別に死ぬような事はありませんよ? 私はただ栄養剤にちょこっと劇薬を混ぜたらどうなるのか調べたいだけであって…」

 

「劇薬って言っちゃったよ!! 俺達を実験台にする気満々だよコイツ!!」

 

「頼むからやめてくれ、私の胃が持たなくなるから…!!」

 

竜神丸の見せる黒い笑顔に、支配人は突っ込みを炸裂させawsは胃がキリキリ痛むのを手で押さえる。突っ込み組は今日も色々と苦労しそうである。

 

「…さて、アイツ等は放っておくとしよう」

 

ロキの一言で、竜神丸達の漫才は放置される事となった。

 

「あれ、ルカさんは?」

 

「ストレス発散で殴って来た。今は医務室だ」

 

「えぇ~…」

 

満足したかのような表情で答えるロキに、デルタは心の中でルカに対して合掌するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶあっくしょん!!」

 

もちろん、当の本人が医務室のベッドでくしゃみをしているのはここだけの話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ま、まぁ何はともあれ、デルタさんがまた一緒に戦ってくれるなんてこちらにとってはありがたい事ですよ。デルタさんの指揮はいつも素晴らしいですから」

 

「はぁ、そんなものですかね…?」

 

「そうですよ。実際、旅団内にいる関係者達が集まってデルタさんの為の親衛隊まで結成しちゃうくらいですし」

 

「あぁ~それですかぁ…」

 

FalSigの言葉に、デルタは頭を押さえる。

 

実は人徳や人脈が理由でデルタを慕う者は旅団内でもかなり多く、その規模は一つの武装組織にも及ぶのではないかと言われるくらいである。しかしデルタ自身はそこまで自覚は無いらしく、その大き過ぎる規模はどうにかならないものかと悩みの種になっているらしいが。

 

「別に私は、そこまで慕われるような人間ではありませんよ」

 

「えぇ~? あなたがそれを言っても、全く説得力を感じませんけど?」

 

「本当の事ですよ。実際、過去に無茶をした所為で今じゃ前線に立つ事すら難しい身体になってしまいましたしね」

 

「無様なものだ、本当に」

 

「!」

 

デルタ達の会話に、二百式が割って入って来た。途端にデルタの目つきも鋭くなり、二百式と睨み合いになる。

 

「肉体がコジマに汚染されただけでなく、旅団から離れて喫茶店のオーナーとは……戦争が怖くなって逃げ出してから、とうとう残ってた牙も全部抜け落ちたようだな」

 

「そうは言いますが、確か二百式さんのその左目は前の戦争で失ったんでしたっけ? 全く、どんなドジを踏めばそんな事になるのやら……あ、もしかしてドジっ娘キャラでも狙ってるとか?」

 

(((うわぁ、また始まったよ…!!)))

 

「…!」

 

デルタと二百式の周りが一触即発の空気になり、近くにいるメンバーは居心地が悪くなる。竜神丸もその空気に気付き、静かに二人の様子を見守る。

 

デルタと二百式の不仲については、旅団内でもかなり知られている話だ。いつからこうなったのかは不明だが、二人は色々と反りが合わないらしく、顔を合わせる度にいつも口喧嘩をしている。時には口喧嘩から殺し合いにまで発展し、それを止めようとしたメンバーが逆に返り討ちにされてしまう、なんてパターンだって珍しくないのだ。

 

とはいえ、そんな二人の喧嘩を止められるメンバーだってちゃんといる。

 

「あ~も~やめろって二人共」

 

ロキだ。

 

彼は早速、喧嘩している二人の仲裁に入る。

 

「毎回毎回、凄まじいくらいの犬猿っぷりだな。前の戦争から全然変わっちゃいない」

 

「ロキさん…」

 

「……」

 

「お前等が普段どれだけ仲が悪かろうと、今は同じ旅団の一員だ。目的だって共通してる筈だ。いつまでもこんな下らない喧嘩して任務に支障が出たりするとな、一緒に行動してる俺達が困るんだよ」

 

「…ふん」

 

二百式は鼻を鳴らしてから、背を向けて立ち去ってしまった。

 

「…すいません、ロキさん。いつも止めて貰って」

 

「いや、許さない。ただし」

 

ロキはデルタを指差す。

 

「俺は任務が終わり次第、ちょこっと食べ歩きでもしようかと思っている。何処か美味しい店を俺に紹介してくれたら、許してやっても良いかもな」

 

「…分かりました。また今度、私の通っている店を紹介しますよ」

 

「うっしゃ」

 

ロキはガッツポーズし、デルタは苦笑する。

 

「何かヤケに嬉しそうだな、ロキの奴」

 

「あぁ、確かに」

 

「美味しい店にいけるのが、そんなに嬉しいんでしょうか…」

 

Blazやmiri、ディアーリーズはロキが喜んでいる理由が分からず首を傾げる。

 

「……」

 

そんな中、竜神丸はデルタの後ろ姿を眺めているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一同は食事を取る為に食堂へと移動した。

 

今回は支配人と朱音の二人が料理当番であり、厨房で調理中である。クライシスと二百式、研究室でウイルスの研究データを纏めている竜神丸、医務室で看病されているルカの四人はこの場にはいない。

 

「しかし驚いたな。モンスターの繁殖期なんてのがあったなんて」

 

Blazはテーブルに並ぶ料理を順番に平らげていく。

 

「モンスターの詳しい生態については何も分かっちゃいないけどな。民間人に被害が出る可能性がある以上は、俺達の手で駆除していかなければならない」

 

「今回、旅団のメンバーは全員このアジトに滞在する事になった。モンスターが出没した時、いつでも動けるようにな」

 

ロキはとてつもない勢いでミートソース・スパゲティを食らい尽くし、ガルムは大盛りのカレーをモリモリ食べている。

 

「まぁとにかく、今はたらふく食って腹を満たそうじゃねぇか」

 

「そうそう。腹が減っては戦は出来ぬ、とも言うしな」

 

「右に同じ」

 

miri、げんぶ、蒼崎もどんどん料理を食らい尽くしていく。食欲はかなりのものだ。

 

「料理はまだまだあるから、一杯食べてね~♪」

 

「「「「「は~い♪」」」」」

 

料理を運んできた朱音の言葉に、一同は元気良く返事をする。

 

「いやにしても、宝石の肉(ジュエルミート)のステーキは本当に美味いな。肉汁が半端じゃねぇ」

 

「本当にな。竜神丸の奴、飯も食わずに研究室に篭って何やってんだか…」

 

宝石の肉(ジュエルミート)かぁ……支配人に食材確保を頼まれて、ディアーリーズと一緒にリーガルマンモスのいる場所まで向かって、そして何故かディアーリーズにリーガルマンモスの体内へ放り込まれたのが、今では凄い懐かしいよ…」

 

「「「「「「何やってんのディアーリーズ」」」」」」

 

「その件についてはすいませんでしたawsさん、いや本当に」

 

遠い目をしているawsを見てロキ、ガルム、okaka、miri、げんぶ、FalSigから同時に突っ込まれ、ディアーリーズはその場で土下座しながら謝罪する。

 

「やれやれ、騒がしいのはいつもと変わりませんね…」

 

デルタはそう口にしてはいるものの、その表情はとても楽しそうだった。

 

そんなこんなで、一同は馬鹿騒ぎしながら料理を堪能し、楽しい時間を過ごすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、事件は突然起きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぐむぐ……うっ!?」

 

突如、料理を食べていた蒼崎が顔を青ざめ、テーブルに突っ伏してしまった。

 

「ん、どうした蒼崎?」

 

「喉でも詰まらせたのか?」

 

突っ伏した蒼崎の身体をユサユサと揺らすmiriとガルムだったが…

 

「ん……むぐっ!?」

 

「うぇ……何、だ…これ…」

 

直後、miriとガルムも同じように顔を青ざめ、バタンと倒れてしまった。

 

「な、何だ?」

 

「三人共、倒れちゃいましたけど…」

 

「皆、大変!!」

 

突然の事態に戸惑うロキ達の下に、厨房から朱音が慌てた様子で走って来た。

 

「調理中だった支配人さんが、突然倒れちゃって…」

 

「支配人まで!?」

 

料理当番の支配人まで倒れた。

 

何が起こっているのか、それを考えようとする一同だったが……事件は更に加速する。

 

「ん…ごほぁっ!?」

 

「ぐべぇっ!?」

 

「おい、どうし……ぐがふっ!?」

 

「え、ちょ、ロキさ……ぼはぁっ!!?」

 

「がふっ!?」

 

「ぼへぁっ!!?」

 

okaka、げんぶ、ロキ、ディアーリーズ、FalSig、awsの順番で、メンバー達は次々と倒れていく。

 

「な、何がどうなってるんですか!?」

 

「分からん、俺でもサッパリ……ブフォアッ!?」

 

「Blazさぁぁぁぁぁぁぁん!?」

 

Blazまで倒れてしまった。

 

デルタが混乱している中、Unknownは一つの結論に至っていた。

 

「姉貴、まさかとは思うけど…………洋食系に手を出した?」

 

「え、えぇっと、その……………………ハイ」

 

目線を逸らしつつ、朱音は肯定。

 

その瞬間、Unknownの中の何かがキレた。

 

「―――あ~ね~き~? 作るなら和風か中華にしろって、前にも言わなかったっけ~?」

 

「は、はい……確かに言いました…」

 

「なのに何で洋食系に手を出したのかな~? 姉貴が洋食系を作っても地獄の宴以外に何も起こりはしないんだから絶対にやめろ、とも言った筈だよね~?」

 

「だ、だって、練習しないと上手にならないと思って…」

 

「練習なら練習で、料理の出来る人に付き合って貰いなさいよ~? 支配人さんもいるんだから頼む事くらい出来たよね~?」

 

「お、仰る通りです…」

 

「味が美味しくても時間が経つとようやくダメージが来るって、どんだけ性質の悪い料理を作っちゃってくれたのかな~? 俺ならまだ良いけどさぁ、他のメンバーが食べたら大惨事しか起こらないのは当たり前でしょ~?」

 

「す、すいませんでした……痛だだだだだだだだだだ!!?」

 

Unknownの強力なアイアンクローが、朱音の頭に炸裂。彼女の頭蓋骨から何やらミシミシと骨の軋む音が鳴り始める。

 

「何て事をしてくれたのかな~? えぇ? ア~ネ~キ~?」

 

「ご、ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」

 

朱音がUnknownのO☆HA☆NA☆SHIを受けているのを見て、デルタは唖然としていた。

 

「じゃあ、全員朱音さんの料理を食べて…」

 

デルタは倒れたメンバーを見渡しながら呟く。支配人の場合は恐らく、朱音に味見を頼まれた際に気付かず口にしてしまったのだろう。

 

「…あれ、待てよ? という事は料理を食べた私も……ッ!?」

 

突如、デルタの視界も歪んできた。朱音の手料理によるダメージが、今になって襲って来たのだ。

 

(い、今になって…!!)

 

デルタも床に倒れ、少しずつ意識が薄れていく。

 

(ヤバい、これから先が不安になってき、た―――)

 

意識を失う直前、旅団の未来が別の意味で不安になってきたデルタであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、食堂にいなかったメンバーはどうしているかというと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「博士、そろそろ夕食を取らねば体調を崩しますよ」

 

「あぁ、食堂には行かないのでそのつもりで」

 

「え? ですがそれだと…」

 

「行きませんったら行きません、何が何でも絶対に行きません」

 

「は、はぁ…」

 

朱音が料理当番である事を察知していた竜神丸は、その日はイーリス達と共にずっと研究室に篭り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「団長、夕食は…」

 

「行かない方が身の為だ、二百式」

 

「…ですよね、はい。分かってました」

 

クライシスと二百式も、薄々危険性を察知していたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ~…まだ痛い…」

 

ロキに殴られたダメージが抜けないルカは、医務室のベッドで寝込んだままであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、朱音の料理を食べずに済んだのはクライシス、二百式、竜神丸、ルカの四人だけであった(ちなみにUnknownは食べたけど平気だったらしい)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、目を覚ましたロキが八つ当たりでまたルカを殴り飛ばしたのは別の話である。

 


 
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