No.627832

新訳 死神の過去~幼少期~

以前の過去を細かく書いたものです。
あともうすぐお気に入り登録が100人に到達しそうです。
YATTA!!
100人になったらなんかしようかね?

2013-10-13 21:23:37 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:635   閲覧ユーザー数:590

普通だった。

 

最初は何処にでも居るような、何も知らないガキ。

 

それが僕でした。

 

親父は戦で死に、母親一人が僕を育て、友人にも恵まれ、村で生き、村で死ぬつもりだった。

 

だが、俺の友人はそんな器じゃなかった。

 

友人はただただ国を良くするために考え、勉学に励み、挫折させられた。

 

無実の罪により捕らえられた友人。

 

流れでとはいえ、共に勉学を学ぼうとしたこの身は、友人のために動くことを拒まなかった。

 

母親に苦労を掛けても、必死に無実を証明するために走り回り、思考を巡り、証言を言った。

 

だが、平等など皆無の時代。

 

そんなに簡単に助けられるはずもなく、ただただ友人は牢獄に閉じ込められるだけだった。

 

その時の僕は正義に酔っていたのでしょうねぇ。

 

僕は友人を脱獄させようと考えた。

 

無実の罪を晴らし、友人を救い出す正義。

 

ただそれを胸に、脱獄を企てた。

 

その結果が上手く行くはずがなかった。

 

所詮ガキの悪知恵。

 

僕も捕まりそうになるが、母親に助けられた。

 

僕は初めて母親に叱られた。

 

今まで母親の言うことに従い『時に人のために行動せよ』と言われてきた僕には、母親が怒る理由が全く分からなかった。

 

母親が言うには『急ぐ場合は回り道をしなければいけない時もある』だそうだ。

 

疑問だった。

 

ただただ疑問。

 

何故?

 

何故、待たねばならない?

 

何故、待たねば救えない?

 

暫くの間、僕は外に出ることを禁止された。

 

僕は部屋の中で、読めもしない書物を眺めながら、友人の事と母親の言った事が絡み合い、『何故』は消えることが無かった。

 

そこから僕は『何故』を周りにぶつけ始めた。

 

読めもしない書物を他の絵のついた数少ない書物と共に眺め、文字の解読をし始めた。

 

解読と言っても自分の中で解釈するだけで、あっているのか、間違っているのかも確認できなかったが、その時間は僕にとっては革命だった。

 

半年も経たず、僕は文字を大体だが覚えていた。

 

それと共に世界が、国が分かり始めてきた。

 

今までの歴史とこれからの歴史。

 

巨龍と呼ぶにふさわしい国だった。

 

だったのだ。

 

必ず後に大きな乱が起こる。

 

それはただの勘だったのか、推理だったのか。

 

僕は武術を習い始める事を決めた。

 

戦と言えば『武』としか考えていなかった。

 

「母様、僕は今村に来ている旅人の方から撃剣を習います。どうか、外出を許可してください。」

 

「……今なら私の言ったことが分かるのねぇ。分かりました、許しましょう。でも貴方には撃剣など似合わないとおもいますけどねぇ。」

 

僕はある程度、撃剣が使えるようになった。

 

撃剣を習っている間、友人を再び助けようと言葉で挑んだ。

 

友人を捕まえた権力者は、その権力を使い、今度は僕を捕まえた。

 

だが僕は後悔はなかった。

 

撃剣は少々勿体ないとも思ったが、一番最初の願いの友人を救うことが出来たのだ。

 

僕の命が権力者の気分により、消し飛ぶ事となっても後悔などなかった。

 

捕まっている間、毎日母親の顔が思い浮かんだ。

 

心配しているのだろう。

 

今まで支えてきてくれた母親ならそう考えれくれているだろう、悪いことをした。

 

親不孝者だった。

 

僕を許してくれとは言いません。

 

貴女は幸せに生きてください。

 

毎日言った。

 

思っていただけなのかもしれない。

 

それさえも分からないほど、僕の体は衰弱していった。

 

もう駄目だ。

 

そう考えると涙が溢れた。

 

今まで懺悔している時は一度も涙が出なかったのに、こんな衰弱しきった身体でも諦めたときに涙が出た。

 

後悔はしていない。

 

だが悲しかった。

 

まだまだ子供の身。

 

死は恐ろしかった。

 

そして死が近づいて来るのが分かるのも、恐かった。

 

目の前まで迫っていた死は、たった一瞬で消え去った。

 

「ありがとう。」

 

助けに来た友人は、僕に対し一番最初にそう言った。

 

権力者はその地位を落とされた。

 

無実の罪を付けられていたのは、僕達だけじゃなかったようだった。

 

そのため僕は解放されたらしい。

 

久しぶりに戻ってきた家。

 

久しぶりに見る母親の顔。

 

随分とやつれてはいるが、優しい母親の顔だった。

 

そしてまた涙が溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕らは水鏡塾へと入門することとなった。

 

部屋に乱雑に置いてある読み終えた本と、友人と共に勉強する姿を見た母親が進めてくれた。

 

僕の撃剣は完全に弱っていったが、悲しんではいなかった。

 

僕のやりたい事は戦では無く、人を救うことだと分かったからだった。

 

そして人を救うには武力もあるかもしれないが、言葉でも救えると知ったからだった。

 

今の世は黄巾の乱が起こっていた。

 

撃剣を捨てた今、言葉で救い、言葉で戦うために水鏡塾へ入門することを僕も決めた。

 

水鏡塾では様々な人間と出会った。

 

お調子者の孟建、生真面目な石韜、そして天才の片鱗を見せる諸葛亮。

 

この三人と僕はあっという間に仲良くなっていった。

 

最初はまだ子供。

 

しかし、年月はだんだんと僕らを大人にしていった。

 

あまりにも楽しく、高め合っていけた数年間。

 

旅立ちの時には、それぞれ自分の信念を持っていた。

 

一番最初に旅立った孟建は、遊ぶために故郷へ帰ると言いだし、諸葛亮や僕は必死でそれを止めた。

 

諸葛亮が言うには「三人は仕官すれば、州刺史か郡太守くらいにはなれる」だそうだ。

 

だが孟建はそのまま旅立ち、二番目に旅立った石韜と共に荊州で、兵を集めていた曹操に仕官した。

 

僕にも旅立ちの時が来た。

 

諸葛亮とは「また会おう」とそれだけ交わし、なんとなく荊州の新野へと歩を進めた。

 

 

 


 
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