No.626737

太守一刀と猫耳軍師 第36話

黒天さん

今回は対周瑜戦です。原作とはそこそこ違う展開です。

2013-10-10 12:18:04 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:7749   閲覧ユーザー数:6000

「どういうことかしら?」

 

出発前の軍議の席で華琳が俺に詰め寄ってくる。

 

「主力の将がみんなこっちに来ちゃってるから国のほうに戻って欲しいっていったんだよ」

 

「承服しかねるわね。公瑾が起ったという報告があがってきてるのよ?

 

公瑾に追従する街も多い、それだというのに私に帰れと?」

 

「そこをなんとか頼むよ、街の方でも頭を張れる人間がいないと困るんだ」

 

「私も見くびられたものね。この曹孟徳が不要だとでも言うのかしら?」

 

「不要だなんて思っちゃいないけど、もう一つ理由として、愛紗達との衝突があるんだけどな」

 

俺は大げさにため息をついた。

 

「戦を前に喧嘩なんかされたら全体の士気に関わってくる」

 

「なら関羽を下がらせればいいのではなくて? 

 

関羽の倍は仕事をしてみせるわよ。

 

私はあなたの臣ではなく友としてね」

 

「だから、そうやって無用に愛紗を挑発するのはやめて欲しいって言ってるのに……。

 

とにかく、今回の戦には連れて行けない、これは曲げないよ」

 

「……、不愉快だわ。まぁいいわ、今回はあなたの顔を立ててあげる。

 

先に言っておいてあげる、今回の事は高くつくわよ?

 

春蘭、秋蘭、いくわよ」

 

「御意」

 

華琳とともに、秋蘭と夏侯惇が俺に睨むような視線を向けてから立ち去っていく。

 

「やれやれ……」

 

一つ大きくため息をつく。

 

「良かった、曹操のようなものをご主人様の傍においておいては不安でなりません」

 

「……、愛紗もその曹操を敵視するのをもうちょっと何とかしてくれればいいのに。

 

さて、それじゃあ解散してそれぞれの隊で出発の準備を」

 

俺の声で軍議は解散し、それぞれの持場へ散っていく。

───────────────────────

 

荒野を進軍していると、忍者隊の者から前方に敵軍が部隊を展開しているとの報告が入った。

 

出発前に、周喩はやはり決起し、呉を乗っ取ったとの報が入ってきていたため、

 

既に俺達はいつでも戦闘を開始できるよう、臨戦態勢になっていた。

 

周喩軍の数はおよそ5万。かなり早く行動に出られたはずだったが、これだけの兵を集める時間を与えてしまったのが口惜しい。

 

対するこちらは10万。戦力的にはかなり上だが、孫権の話しを聞く限り、おそらく周喩は伏兵を隠していると見ていい。

 

正面、先鋒に愛紗と華雄の隊を向かわせ、右翼に霞、左翼に星を配置して機あらば横撃をかけるよう指示を出している。

 

中央後方に紫苑と朱里。その背後の本陣に俺、桂花。

 

白蓮は騎射隊としての機動力と射程を武器に状況に応じて各隊の援護に回る事になっており、

 

状況判断のため、白蓮の隊には紫青を同行させている。

 

全軍としては鋒矢の陣に近い形で配置し、一気に敵軍に突撃をかける形になる。

 

鈴々と翠の隊は後方で遊軍として待機させ、伏兵が現れた際に即座に対応するように指示を出している。

 

「敵影、確認できました!」

 

「大陸を支配してきた大国もいよいよこれで最後か、さて……」

 

馬上から正面を見据える。遠くに見えるのがそうなのだろう。

 

軽く息を吸い込み、声を張り上げる。

 

「皆きいてくれ! おそらくこれが最後の戦になる。この戦いを制して俺達の手で平穏な日々を勝ち取ろう!

 

目を閉じて国の家族を思い出せ! 残してきた恋人を思い出せ! 自分の友を思い出せ!

 

残してきた皆の望む平和な世にするために、今この時だけは修羅となり、共に最後の大国を喰らい尽くそう!

 

俺達にはその力がある! 剣を抜き、雄叫びを上げろ! 全軍突撃!」

 

俺が合図を出せば兵士たちは雄叫びを上げながら駆けていく。

───────────────────────

 

まもなく、愛紗と華雄の隊が敵軍の先鋒と激突し、戦闘が始まる。

 

「華雄様、前方に戦列の薄い部分があります」

 

「分かっているが、美周郎に限ってそんな布陣をするとは思えないな……。何かある。

 

進行方向を少しずらして薄い部分の右を突く、関羽隊と歩調をあわせ前進せよ!

 

けして突出するな。突出すれば待ち受けるのは不名誉な死だ!」

 

華雄に声をかけるのは一刀が推薦した隊の副官つとめる男で、兵の中ではそこそこ頭がキレる者だ。

 

「中々いい動きをする。暇を見て軍師から兵法を習っていたのは無駄ではなかったようだな。

 

華雄隊に遅れるな!」

 

愛紗の隊も華雄隊に歩調をあわせ、同時に敵軍に突撃していく。

 

「関羽、華雄隊の突撃に合わせて正面に斉射……、放ちなさい」

 

その激突する寸前に紫苑の隊の放った矢がそのやや後方の敵に降り注ぎ、勢いを削ぐ。

 

「紫青、どうする?」

 

「そうですね、霞さんの隊の背後につき、突撃を援護しましょう。

 

速さでいえば星さんより霞さんの隊の方が上です、機を作れば横撃をかけてくれるでしょう」

<

「了解」

 

白蓮の隊が霞の隊の背後に移動し、その突撃に合わせて弓を射る。

 

勢いを削がれた敵兵に霞が切り込んでいき敵左翼の隊を壊滅させていく。

 

「さぁいくで! 鋒矢の陣を敷け! 横っ腹に風穴あけたるんや!」

 

そのまま方向転換し、鋒矢の陣に陣形を変えて横撃をかけていく。

 

将の数が少ないためか、左翼に混乱が起き始める。

 

伏兵も確かに現れたものの、遊軍として待機していた鈴々と翠の隊が抑えこみ、戦に支障が出る事はなかった。

 

敵の数が減り、混乱が大きくなり始めた所で一気に攻勢をかけて本陣を制圧する。

 

本陣はもぬけの殻といっていい様相で、捕虜にした者に話しを聞けば、周喩は本陣を捨てて呉の本城へと退却したとのこと。

 

3人の軍師からここが切所との進言をうけ、追撃をかけていく。どうにか前の方に敵の後ろ姿が見えている。

「敵前方に砂塵ありです!」

 

「何……!?」

 

忍者隊からの報告に、皆が緊張した表情を見せる。一刀と、桂花達3軍師以外が。

 

「旗は曹、夏が2つ、許、司馬! 援軍です!」

 

「何だと!?」

 

「間に合ったみたいね」

 

「そうですね。各隊は援軍と息を合わせて周喩軍を挟撃、一気に討ち取ってしまいましょう」

 

「ご主人様、どういうことです!?」

 

「周喩ぐらいの軍師なら引き時をキッチリ見てくるだろうってのは予想してたし、

 

こちらに間諜がいるだろうっていうのも予想できるだろ?

 

例えば呉からの投降兵の中とかに紛れ込ませてる可能性もあるし、そもそも俺達がいたのは呉の街だ。

 

だから皆の前で喧嘩するような形で一度引かせて別経路から背後に回らせ、退却する周喩に奇襲をかけてもらうことになってたんだ。

 

城に篭もらせたら厄介だからどうしてもその前に勝負をつけたかったんだよ」

 

愛紗の態度は予想済み、俺は要点をかいつまんで手短に説明するが、どうも納得しかねる、という様子。

 

「何故私達に知らせてくれなかったのですかっ!」

 

「敵を欺くにはまず味方から。

 

これを知ってたのは俺と華琳。軍師3人と詠だけだ。

 

説明は後でする、今は周喩を討ち取ろう」

 

愛紗はやや渋い顔をしていたが、他の者の隊に遅れをとるまいと前進指示を出す。

 

街についた時に詠と季衣は物資と兵の補充のために早馬を飛ばして呼んでいたのだが、

 

周喩が本格的に起ったという報が入った所で華琳と3軍師に相談した所、

 

退路に兵を伏せるために詠達を向かわせようということになり、

 

その指揮を誰が取るかというところで、華琳がこの策を申し出てくれたのだ。

 

「周喩を逃がすな! 敵軍を踏み潰せ! その頸を北郷への土産とせよ!」

 

華琳が叫び、偃月の陣を取って周喩の軍へと突撃を仕掛けていく。

 

詠と季衣を合流させたのは、兵站と軍馬の補充と敵の退却経路の予想、それに奇襲の機の進言のため。

 

どうやらうまくやってくれたようで、周喩の軍の目前で進路を塞ぐように陣取ってくれた。

 

華琳達の兵は2万、詠の合図で突撃を仕掛け、敵軍を蹴散らしていく。

 

そのうち5000の季衣と詠の隊は、自国からここまで強行軍を行ったため、

 

兵の疲れも考慮してか前線に積極的には出ず、少し後ろから弓で援護に回っている。

 

本拠地で兵を補充するつもりだったであろう周喩の軍は、

 

奇襲をかけた華琳達と北郷軍の本隊の前にあっけなく壊滅させられ、周喩は捕縛された。

 

派閥をまとめあげていた周喩が捕縛されたことで残る呉の軍勢は降伏し、戦は終わりとなった。

 

───────────────────────

 

捕縛した周喩に話しを聞いた所、実際決起するかどうかは迷っていたのだが、

 

白装束を着た男に背を押される形で起った。

 

華歆の娘の事もその男から聞いた、という……。

 

男の名は于吉。

 

特徴を聞けば俺があの時会った白装束にメガネの男と合致する。

 

月や詠に聞いてみたところ、宦官をそそのかし、

 

月の両親が人質になる原因を作ったのも、その于吉という男らしい。

 

「于吉、か……」

 

白装束の男はこの後まだ俺の前に立ちはだかるのだろうか。

 

周喩を筆頭とする呉の反旗を翻した者達の処分は孫権に任せ、重い気分になりながら部屋へと戻った。

 

あとがき

 

どうも黒天です。

 

今回周喩との決着がつき、とうとう三国を平定しました。

 

太守一刀と猫耳軍師のシリーズももうすぐ終わりになりそうですね。

 

この先どういう展開が待っているのやら……。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
48
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択