私はいつものようにご主人様を起こしに行った

蓮華殿や華琳殿、雪蓮殿そして桃香様よりも早くご主人様の部屋に着いたはずだった

愛紗「ご主人様」ｺﾝｺﾝ

愛紗「ご主人様？起きていらっしゃいますか？」ｺﾝｺﾝ

愛紗「ご主人様、失礼します」ｶﾞﾁｬ

愛紗「ご主人様？ご主人さ……」

既に部屋はもぬけの殻だった

この時から『異変』というものを感じていた

‘闇’の御遣い〜

　　　聖なる力と復讐の魔人

　　　　序章‘訪れた悪夢’

　　　　一節　〜異変〜

華琳「一刀がいないですって？」

愛紗「はい、ご主人様の部屋には誰もいませんでした」

雪蓮「おかしいわね

愛紗が一番乗りなら寝てる筈なのに」

桃香「書置きみたいのもなかったの？愛紗ちゃん」

愛紗「左様です」

冥琳「北郷に限ってそれはない

何処かに行くにも書き置きをしていくと約束をしたからな」

蓮華「では何故いないの？」

華琳「ひとまず緊急会議を開きましょう

この国の王が行方不明だなんて論外よ」

冥琳「あぁ、一刻も早く見つけ出さねばならぬ」

この後、すぐ魏、呉、蜀の重鎮が大広間に集められた

鈴々「にゃぁ～眠たいのだ」

翠「流石にアタシも眠いな」

星「一体何が起こったのだ？」

明命「何があったのでしょう？」

思春「分からぬ、蓮華様も何も教えて下さずひとまず大広間に集まれとしか仰らなかったからな」

祭「分かるのはただ事ではないということだけじゃな」

流琉「ほら季衣、目を開けて

緊急会議なんだから」

っ

季衣「眠いよ〜〜」

霞「何があったっいうんや？」

雪蓮「皆静まれ！！」

全員「「「「っ！」」」」

一瞬で集められた者達が口を閉じた

流石江東の麒麟児、素晴らしい威圧だ

愛紗「皆が集められたの理由は他でもない

我らが主、北郷一刀様の行方が分からなくなってしまったのだ!!」

朱里「なっ……」

麗羽「何ですってー！？」

春蘭「華琳様！今愛紗が言った事は本当なのですか!?」

華琳「えぇ、私や雪蓮も確認したわ」

秋蘭「なんと……」

雪蓮「私達全員が一刀を捜索する為

皆を集めたのよ」

桃香「ご主人様を見つけ次第早急にお城に連れて帰って」

華琳「一刀の命に何かあればこの国が取り返しのつかない危機に陥るわ」

雪蓮「私達呉は街の南東から北の区域を」

桃香「私達蜀は北から南西の区域を」

華琳「そして私達魏は残りの南西から南東の区域を探すわよ」

全員「「「「御意！」」」」

雪蓮「皆のもの、行動に移せ！」

全員「「「「御意!!」」」」

魏呉蜀の者達は蜘蛛の子を散らすように慌ただしく大広間を出ていった

ただ警邏隊の三羽鳥を残って……

華琳「どうしたの？真桜、沙和、凪」

沙和「華琳様……」

真桜「隊長の事なんですけど…」

華琳「っ！何か知ってるの！？

あなた達」

凪「実は今日の丁度日の出の時刻だったのですが

隊長が部屋から出てくるのをみまして……」

真桜「ウチら三人で、鍛錬しようと鍛錬場に向かおうとしていたところだったんですわ」

雪蓮「何処に行ったか分かる？」

凪「城から出ていくのは見たのですが、そこから何処へ向かったかまでは……」

華琳「そう……分かったわ」

凪「申し訳ございません

この様な事になるとは……」

雪蓮「そんなことないわよ

どちらにしろ街にいるのは確かなんだから」

桃香「自分を責めないで、真桜ちゃん、沙和ちゃん、凪ちゃん」

華琳「自分に責任があると少しでも感じるのなら

あなた達も捜索に加わり、いち早く一刀を見つけ出すことが

最善の罪滅ぼしよ」

凪「華琳様………」

沙和・真桜「「御意!!」」

真桜と沙和は走って大広間を後にした

華琳「…？何かしら凪

まだ何かあるのかしら」

凪「はい…実は……」

桃香「？？」

雪蓮「どうしたの？凪」

凪「実は隊長が門を出るとき一回後ろを見たのですが、違和感を感じまして……」

冥琳「違和感？」

凪「この事は真桜や沙和にも言っていないのですが…

隊長の…目が……」

蓮華「一刀の目がどうしたの？」

凪「いつも隊長の目はとても澄んでいたのに

その時は……とてつもなく濁っていたのです…」

冥琳「北郷の目がか？」

雪蓮「なんか嫌な予感がするわね…」

華琳「それはいつもの勘かしら？」

雪蓮「そうよ

でもこの感じ、お母様が亡くなった時同じ感じなのよね……」

冥琳「孫堅様がか…」

凪「あ、あと！」

蓮華「他にもあるのか？」

凪「その時の隊長から発していた

‘気’が隊長の物と違ったように感じ取られました」

雪蓮「一刀じゃない‘気’？」

凪「隊長の‘気’を白と例えるなら

その時の‘気’は漆黒と言っても過言ではなかったと思います」

華琳「一刀の身に何が起こっているの……？」

桃香「早くご主人様を見つけないと!!」

雪蓮「私達も行きましょう」

冥琳「凪よ、その気を探知出来るか？」

凪「やってみます！」

華琳「それじゃ、行くわよ！」

城を出てすぐご主人様の捜索が始まった

雪蓮「どう？凪分かる？」

凪「あれ程の禍々しい気、忘れもしません

ですがやはり広いこの街の中から探すのは……」

冥琳「やはり容易な事ではないな…」

桃香「……っ！まさかご主人様

最近あった行方不明の人たちみたいに……」

愛紗「っ!!」

私も考えてしまった

考えてはいけないのに…

ﾊﾟﾝｯ!!

愛紗「!!?」

雪蓮「何を言ってるの…？桃香」

冥琳「雪蓮……」

今の音は雪蓮殿が桃香様は

叩いた音だった

桃香「雪蓮さん……だって……」

雪蓮「そんなこと口にしてどうするのよ!?

まだそうなっているか分からないのに決め付けるな!!劉備!!」

桃香「っ!!」

雪蓮殿の気迫に肩を震わせる桃香様

恥ずかしい話私は雪蓮殿の気迫で

一歩も動けなかった

雪蓮「そんなことをさせないために

私達は一刀を探しているのよ、桃香」

そう言い雪蓮殿はニッコリと

微笑んでいた

桃香「…はい゛」

凪「っ!!見つけました!!隊長の気です!!」

全員「「「「「!!!」」」」」

凪「こっちです!!」

我々は凪が走った方向へついて行った

来たのは廃墟のような古い家が

建っている所

今迄で警邏をしていたがこの場所の

存在を知らなかった

冥琳「なんだ…ここは……」

凪「こんな所……見たことがない」

愛紗「私もだ」

華琳「嫌な雰囲気ね……」

蓮華「ここに一刀が？」

桃香「何処にいるのでしょうか？」

……何してるんだ？こんな所で

愛紗「っ!!?」

蓮華「一刀!!?」

振り向くとそこにはご主人様が立っていた

今迄でいたかのように……

一刀「ど、どうしたの？」

華琳「どうしたの？じゃないわよ!!

いなくなって心配したのよ!?」

一刀「ご、ごめん」

冥琳「全く、人騒がせも程々にしろ、北郷」

愛紗「ひとまず無事でよかったです

なぁ、凪……凪？」

私は凪の方を振り向く凪は微かに震えていた

愛紗「凪？どうした？」

凪「…隊長、本当に…隊長ですか？」

一刀「もちろんだよ、何言ってるんだよ」

雪蓮「一刀」

一刀「なんだ？」

雪蓮「私の得物の名前、言ってみて」

愛紗「……？」

雪蓮殿や凪は何を言ってるのだ？

どう見てもご主人様であろう

更になぜご自分の得物の名など

一刀「……」

雪蓮「一刀……聞いてる？」

一刀「聞いてるよ」

雪蓮「じゃあ、言ってみて」

一刀「何言ってるんだよ雪蓮、

『南海覇狼』だろ？」

全員「「「「っ!!??」」」」

その瞬間全員が構えた

愛紗「貴様何者だ!!?」

一刀「あれ？違ったっけ？」

雪蓮「私の得物は『南海覇王』よ

狼ではなく王よ」

凪「貴様から隊長の気は感じられない

隊長は何処だ!?」

一刀「………何ともくだらない間違いをしてしまったな」

蓮華「おのれ貴様！一刀は何処だ!?」

一刀?「一刀？何を言っている孫権、貴様の目の前にいるであろう」

愛紗「っ!?」

ご主人様から禍々しい気が！？

更に目が……濁っている！？

……いや、感情がないに等しい

雪蓮「何者だ、お前は…」

一刀?「素直に教える訳がなかろう、孫策よ……」

華琳「一体何が目的なのだ？」

一刀?「さぁな…」

こいつ一体何者だ………？

何故ご主人様が？

？？A「む？」

？？B「うん？」

？？C「どうしたのだ？二人共」

？？A「何か良からぬもの感じてな」

？？B「私もお師匠様と同意見よぅ」

？？C「…っ!?…俺も今感じた……」

？？A「うむ、向こうからだな」

？？B「あらん？確かそっちの方角は……」

？？C「御遣い殿が治めている地だな」

　　　　　　　　　……終……